『アイアン・マン』(The Iron Man: The Musical by Pete Townshend) は、イングランドのロック・ミュージシャンのピート・タウンゼントが1989年に発表したソロ・アルバム。イングランドの児童文学者のテッド・ヒューズが1968年に発表した小説『アイアン・マン 鉄の巨人』(The Iron Man)[注釈 1]を翻案したミュージカルのスタジオ・アルバムである[4][5]。
解説
経緯
本作には、ジョン・リー・フッカー、ニーナ・シモン、デボラ・コンウェイ(英語版)、ロジャー・ダルトリーらが独唱者として客演した[5][注釈 2]。タウンゼントは主人公のホガース少年の役を務め、1曲を除く全曲を作詞作曲し、プロデュースも担当した。
タウンゼントとダルトリーはジョン・エントウィッスルと合流して、1983年に解散したザ・フーの名義で、タウンゼント作の「ディグ」とクレージー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウンの1968年の大ヒット曲「ファイアー」[注釈 3]を演奏している[4][注釈 4]。
「フレンド・イズ・ア・フレンド」[6]と「アイ・ウォント・ラン・エニイモア」は、シングルとして発売された[7]。アメリカ合衆国では「ファイアー」のプロモーション用シングルが制作された[8]。
内容
登場人物
- ホガース少年 (Hogarth) - 10歳の少年。物語は彼の視点から語られる。
- ビクセン (The Vixen) - ホガース少年の良心。いつも彼に勇敢に、正しく、素早く思考するように促している。
- アイアン・マン (The Iron Man) - 自己維持能力を持ち、究極的に人間の脅威になる機械やシステムを破壊するようにプログラムされた巨大なロボット。
- スペース・ドラゴン (The Space Dragon) - ドラゴンの姿で宇宙から到来した巨大なアナーキーな精神。
- ホガースの父 (Hogarth's Father) - 農夫で、人々をアイアン・マンに対する無益な抵抗に駆り立てる。
- 森の生き物
- カラス (The Crow)
- カケス (The Jay)
- カエル (The Frog)
- フクロウ (The Owl)
- アナグマ (The Badger)
あらすじ
配役
トラックリスト
特記のない限り、ピート・タウンゼント作詞・作曲。
- アイ・ウォント・ラン・エニイモア - "I Won't Run Any More" - 4:51 ボーカル:ピート・タウンゼント、デボラ・コンウェイ
- オーバー・ザ・トップ - "Over the Top" - 3:31 ボーカル:ジョン・リー・フッカー
- マン・マシーンズ - "Man Machines" - 0:42 ボーカル:サイモン・タウンゼント
- ディグ - "Dig" - 4:07 演奏:ザ・フー
- フレンド・イズ・ア・フレンド - "A Friend Is a Friend" - 4:44 ボーカル:ピート・タウンゼント
- アイ・イート・ヘビー・メタル - "I Eat Heavy Metal" - 4:01 ボーカル:ジョン・リー・フッカー
- オール・シャル・ビー・ウェル - "All Shall Be Well" - 4:02 ボーカル:ピート・タウンゼント、デボラ・コンウェイ、チャイナ
- ワズ・ゼア・ライフ - "Was There Life" - 4:19 ボーカル:ピート・タウンゼント
- ファースト・フード - "Fast Food" - 4:26 ボーカル:ニーナ・シモン
- フール・セッズ... - "A Fool Says..." - 2:51 ボーカル:ピート・タウンゼント
- ファイアー - "Fire" (Arthur Brown, Vincent Crane, Mike Finesilver, Peter Ker) - 3:47 演奏:ザ・フー
- ニュー・ライフ/リプリーズ - "New Life/Reprise" [注釈 5]- 6:00 ボーカル:チャイナ、ピート・タウンゼント、ニコラ・イマニュエル
2006年のUS盤(Hip-O Records)のボーナス・トラック
- "Dig" (Simon Townshend vocal version) – 4:09
- "Man Machines" (long version) – 4:34
- "I Eat Heavy Metal" (demo) – 4:04
2010年の日本盤(インペリアル)のボーナス・トラック
日本盤CDは1989年に、当時のヴァージン・ジャパンからリリースされたが[9]、後に2007年にインペリアルから再発盤が出され[10]、さらに2010年にはボーナストラックとしてフィルモア・ウェストにおけるライブ音源が追加された盤が出た[11]。
- "A Friend Is a Friend" (Live at the Fillmore West, 1996)
- "All Shall Be Well" (Live at the Fillmore West, 1996)
参加ミュージシャン
- ドラムス
- ベース
- ピアノ
- 金管楽器
- Peter Beachill[12] – #4
- John Barclay[13] – #4
- サクソフォーン
- ギター、その他のキーボード
- ストリングス
- Pat Halling[15](リーダー) – #10
- コーラス・ヴォーカル
- Gina Foster[16]
- Derek Green[17]
- Janice Hoyte[18]
- Ruby James[19]
- Julian Littman[20]
- Michael Nicholls
- Earnestine Pearce[21]
- Raymond Simpson
- The Children of St. Stevens and Orleans School[22]
本作未収録の関連楽曲と別バージョン
- "Real World" (instrumental) - 「フレンド・イズ・ア・フレンド」の12インチ・シングル、CDシングル[23]に収録されてリリースされたバージョンで、タウンゼンドの『Scoop 3』(2001年)に収録されたものとはミックスが異なる。
- "Penny Drop" - enのラジオ番組の音源:DIR Broadcasting がアナログ盤でプロモーション盤を制作した。
- "Dig" (demo) - 1989年にイギリスで発表されたCDシングル「アイ・ウォント・ラン・エニイモア」に収録[7]。
- "Iron Man Recitative", "Can You Really Dance?", "Man and Machines (demo)" - 『Scoop 3』に収録。
- "Dig" (concert version) - 本作発表後に行なわれたザ・フーの結成25周年記念ツアーのライブ・アルバム『ジョイン・トゥゲザー』に収録。
舞台公演と映画化
このミュージカルは、1993年にロンドンのヤング・ヴィクで初演された[24]。この公演が好評だったのを受けて、ワーナー・ブラザースはこの物語の映画化を決定し、さらに大きく異なる翻案を加えて長編アニメーション映画『アイアン・ジャイアント』(1999年)を公開した[注釈 6]。ミュージカルの楽曲は使用されていないが、タウンゼントは原作の翻案に携わり、エグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされた[27]。また、1992年にザ・フーの『トミー』(1969年)をミュージカル化したデス・マカナフ(Des McAnuff)が、プロデューサーの一人としてクレジットされた。
タウンゼントは本作の発表日と相前後した1989年6月28日に、アメリカNBCの人気番組『レイト・ナイト・ウィズ・デヴィッド・レターマン』にニコルス、ワトキス、チャイナらと共に出演し、「フレンド・イズ・ア・フレンド」を披露した。彼はまた、同年6月から11月まで行なわれたザ・フーの結成25周年記念ツアー[注釈 7]で、「ディグ」と「フレンド・イズ・ア・フレンド」を取り上げた。
脚注
注釈
- ^ マーベル・コミックのアメリカン・コミックス『アイアンマン』とは無関係な作品である。
- ^ Starringとして、ジョン・リー・フッカー、ニーナ・シモン、デボラ・コンウェイ、ロジャー・ダルトリー、ピート・タウンゼンドの5人、also starringとして、チャイナ、ニコラ・エマニュエル、クリーヴランド・ワトキス、ビリー・ニコラス、サイモン・タウンゼンドの5人の名前が記された。
- ^ このシングルは、ザ・フーのマネージャーだったキット・ランバートがプロデュースし、ランバートともう一人のマネージャーだったクリス・スタンプが設立したトラック・レコードから発表された。タウンゼントは、クレージー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウンをランバートに紹介し、アソシエイト・プロデューサーを務めた。
- ^ ザ・フーは、Special Guests on "Dig" and "Fire"と記載された。
- ^ ザ・フーの「マジック・バス」のライブ演奏がごく一部だけ盛り込まれている。
- ^ 映画化に際して、マーベル・コミックの『アイアンマン』との混同を避けるために、アイアン・ジャイアントに改名された。
- ^ 1989年6月21日から9月3日までアメリカ合衆国とカナダ、10月6日から11月2日までイングランドで行なわれた。ニコルス、ワトキス、チャイナや、本作の参加ミュージシャンであるサイモン・フィリップスやジョン・バンドリックも参加し、ニコルスが音楽監督を兼任した。
出典
引用文献
外部リンク