アーシヴィスイト=ニピサット、氷と海の間のイヌイットの狩場
アーシヴィスイト=ニピサット、氷と海の間のイヌイットの狩場(アーシヴィスイト=ニピサット、こおりとうみのあいだのイヌイットのかりば)は、デンマークの世界遺産の一つである。グリーンランドのイヌイット(カラーリット)にとっての夏季野営地だったアーシヴィスイト周辺から、デービス海峡に面するニピサット島周辺の海域までを対象とする文化的景観であり、数千年に及ぶパレオ・イヌイットやイヌイットの海洋動物やカリブーの狩猟・漁撈・採集文化を伝えている[1]。 登録経緯この資産が世界遺産の暫定リストに記載されたのは2003年1月29日のことであり、2017年1月24日に正式推薦された[2]。世界遺産の推薦に当たっては、すでに世界遺産リストに登録されている資産などとの比較研究が必要になる。この資産の推薦では、アラスカ、カナダ、シベリア等の文化的景観と比較されているものの、世界遺産リスト登録物件で同じグリーンランドのグリーンランドのグヤダー:氷冠縁辺部における古代スカンジナビア人とイヌイットの農業景観(アーシヴィスイト=ニピサットの推薦時点では、暫定リスト記載物件)しか挙げられていなかった。推薦国の主張では、新世界の北極圏に関わる資産が他にないというのが理由だった[3]。それに対し、世界遺産委員会の諮問機関である国際記念物遺跡会議 (ICOMOS) は、比較研究の妥当性やこの資産の顕著な普遍的価値を認め、「登録」を勧告した[4]。 それを踏まえた第42回世界遺産委員会では、委員国から登録を歓迎する発言が多く寄せられ、問題なく登録された[3]。デンマークの世界遺産としては10件目、グリーンランドの世界遺産としては前年登録のグリーンランドのグヤダー:氷冠縁辺部における古代スカンジナビア人とイヌイットの農業景観に続いて2年連続3件目である。 登録名この物件の正式登録名は、英語: Aasivissuit – Nipisat. Inuit Hunting Ground between Ice and Sea、フランス語: Aasivissuit-Nipisat. Terres de chasse inuites entre mer et glaceである。その日本語訳は、以下のように揺れがある。
登録範囲登録範囲はグリーンランドの地方行政区画でいえば、全域がケッカタに属している[2]。 デービス海峡の海域から、島やフィヨルド、さらに内陸の氷床の一部に至る東西約235 km、南北約20kmほどの東西に細長い範囲が登録され、その面積は417,800 ha(4,178 km2)になる[2]。この面積は日本の都道府県で言えば東京都のほぼ2倍に相当し、グリーンランドの世界自然遺産イルリサット・アイスフィヨルドよりもやや大きい。その一方、通常設定される緩衝地帯は、この物件には設定されていない[10][注釈 1]。世界遺産は2005年以降、緩衝地帯を設定するのが普通だが、範囲が十分に広い場合などには設定しないことも認められる(世界遺産#緩衝地帯参照)。この物件について、緩衝地帯は設定されていないが、その代わりに管理体制を今後も整備していく必要性も指摘されている[10]。 主要な登録地この遺産はまとまった範囲が登録されたものであり、個別の構成資産の集積体とは異なる。ただし、ICOMOSの勧告書では、「7件の鍵となる場所」(seven key localities) が挙げられている。その概要を一覧表にまとめると以下のとおりである(アーシヴィスイト周辺が東端、ニピサット島周辺が西端にあたる)。
登録基準この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。
なお、世界遺産委員会の審議では、委員国から気候変動の影響を受けやすい資産であることから、啓発活動への意義を指摘する意見もあった[3]。 保護登録範囲は全て公有地であり、グリーンランド自治政府の管理下にある[14]。各種文化遺産保護関連の法令の対象となっており、一部地域にラムサール条約登録地が含まれる[14]。 脚注注釈
出典
参考文献
座標: 北緯67度03分50.15秒 西経51度25分59.54秒 / 北緯67.0639306度 西経51.4332056度 |
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