エクテノサウルス
エクテノサウルス(学名: Ectenosaurus)はモササウルス科に属する絶滅した海トカゲの属。アンゴラサウルスやプラテカルプスと共にプリオプラテカルプス亜科に分類される。本属は主にアメリカ合衆国カンザス州とテキサス州のサントニアンの堆積層から知られている。 属名は「長く伸びたトカゲ」を意味し、ギリシャ語の ectenes ("drawn-out") とギリシャ語の sauros ("lizard") に由来しており、長く伸びた鼻口部を反映している。 記載![]() 保存された頭骨の長さは約74センチメートルであり、これに基づいてエクテノサウルスの全長は5-7メートルに達したと推定されている。本属は他のモササウルス科から明確に区別される、複数の特異的な特徴を持つ珍しいモササウルス科の属である。最も顕著な特徴は細長い顎であり、プロトサウルスやプルリデンスといった細長い顎を持つ他のモササウルス科と同様に長く伸びた血管を持っていた。 Russell (1967) では、歯の形状・前頭骨の形状・方形骨の巨大なあぶみ骨上突起の形状が、エクテノサウルスとプラテカルプスの近縁性の根拠と考えられた。吻部が長く伸びていること、鼻孔の縁から前前頭骨が除かれていること、そしてあぶみ骨の上下の突起が癒合していることに基づき、ラッセルはエクテノサウルスをプラテカルプスから区別した[1]。 ウロコと運動標本 FHSM VP-401 にはエクテノサウルスの皮膚の印象化石が明瞭に保存されており、外皮だけでなく動作と推進についても結論を導くことができる。ウロコは2.7×2.0ミリメートルであり、エクテノサウルスよりも小型のプラテカルプスの標本 LACM 128319 に見られる鱗(3.8×4.4ミリメートル)よりも遥かに小さい[2]。 小型で堅く固定されたウロコの結合、および交互に交差した螺旋と縦方向の繊維束による複雑な編み目構造により、エクテノサウルスの胴部の前方が堅かったことが示唆されている。また、この体の部位が運動の間にも極めて堅く、他のモササウルス科の種と同様に尾ビレを振って推進力を得ていることが示唆されている。かつてモササウルス科の運動として有力な見解であった、体全身をヘビのようにくねらせる動作は不可能だった[2]。 発見の歴史エクテノサウルスは元々プラテカルプスの種 P. clidastoides として1894年に記載された。タイプ標本はC・H・スタンバーグあるいはB・バウアーがカンザス州ローガン郡で収集し、ミュンヘンのバイエルン国立古生物学地質学博物館に所蔵されたが、この標本は第二次世界大戦で破壊されてしまった可能性が高い。さらに保存状態が良い第二の標本はジョージ・スタンバーグが1953年に発見し、当初は Clidastes velox として同定された。タイプ標本 GFS 109-53 は後肢と尾が侵食で失われていたが、長さ約3メートルで大部分が関節していた[3]。 この標本は発見後フォートヘイズ州立大学のキャンパス内に位置するスタンバーグ記念博物館に展示されたが、1999年に博物館は閉鎖・移転した。博物館移転後、標本は保管庫に収納されている[3]。1963年に標本はデイル・ラッセルが研究して Clidastes velox ではなく Platecarpus clidastoides を代表すると断定した。その後、彼の論文 Systematics and Morphology of American Mosasaurs (1967) において、彼は本種を新属エクテノサウルスとして本種を再記載した[1]。 分類エクテノサウルスは発見以降はほぼ常にプリオプラテカルプス亜科として扱われており、これは長らくプラテカルプスの種として分類されていたことが一因である。しかしながら、プログナトドンと近い関係を共有していることから、モササウルス亜科とする解析もある[4]。以下のクラドグラムは Simões et al. (2017)[5]を簡略化し、プリオプラテカルプス亜科だけを提示してエクテノサウルスと他のプリオプラテカルプス亜科の属の関係性を示している。
出典
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