コプト・エパクト数字 (コプト・エパクトすうじ、英語 : Coptic Epact Numbers )は、Unicode のブロック の一つ。
解説
10世紀 ごろの、アラビア文字 で書かれたコプト語 による、会計文書や天文学 のテキストなどの一部の写本において用いられた[ 1] 数字体系を収録している。
コプト語では多くの場合コプト文字 そのものをそのまま数字として扱ったコプト数字(ギリシャ数字 、キリル数字 などと同様のシステム)が一般的に使用されていたが、伝統的なコプト数字は10世紀当時コプト語の当時の主要な方言であるボハイラ方言 (英語版 ) でしか使われておらず、ファイユーム方言ではごく一部のみでしか使われておらず、サイード方言では全く使われていなかったため相互理解が困難であったことから、行政手続きにおいて数字を表現する場合に単語として記述しなければならなかった。単語として記述する煩雑さを解決するため、当時のアラビア文字で書かれたコプト語を用いるコプト・アラビアコミュニティにより、アラビア文字で用いられていた数字(アラビア・インド数字 )の筆記体 にあたるルミ数字記号 をもとにしてこの数字体系が導入された。本数字体系もコプト語コミュニティにおいてはコプト数字に対する筆記体として扱われている[ 1] 。
元々単に「コプト数字(Coptic Numbers)」というブロック名で提案がなされていた[ 2] が、本来の古典的なコプト数字との区別ができなくなるため、ギリシャ語 の ἐπακτός「輸入された」という単語に由来する「エパクト(Epact)」という本数字体系の別名を加えて現在のブロック名となった[ 1] [ 3] 。
0 を表す数字はなく、ローマ数字 などのようにそれぞれの位に独立して数字が割り当てられている。1の位、10の位、100の位にそれぞれ単独の数字が9つずつ割り当てられており、1,000以上の数値は数値を1,000倍することを表すダイアクリティカルマーク U+102E0
𐋠 COPTIC EPACT THOUSANDS MARK
を下に付けることによって表現する。1,000,000以上の数値についてはこの記号を重複して付けることによって表現される。書字方向 はラテン文字 やコプト文字などと同様に左から右に横書き(左横書き )される。しばしば、数字であることを明示するため、数値全体に蛇行した上線が付けられ、これはUnicode上ではアラビア文字 ブロックに存在するU+0605 ARABIC NUMBER MARK ABOVE
が用いられる[ 1] 。
当初はルミ数字記号 と同一の文字体系ではないかという疑念があり、重複した符号化を懸念して追加に反対の声もあった[ 4] が、各数字の字形がルミ数字記号とは大きく異なる[ 5] ため、現在は別の文字体系として独立したブロックに符号化されている。
Unicodeのバージョン7.0において初めて追加された。
収録文字
コード
文字
文字名(英語)
数価
用例・説明
記号
U+102E0
𐋠
COPTIC EPACT THOUSANDS MARK
数字の下に付き、数価を1,000倍する文字幅を持たない結合記号。
1,000,000倍する場合は重複して付けられる[ 1] 。
数字
U+102E1
𐋡
COPTIC EPACT DIGIT ONE
1
U+102E2
𐋢
COPTIC EPACT DIGIT TWO
2
U+102E3
𐋣
COPTIC EPACT DIGIT THREE
3
U+102E4
𐋤
COPTIC EPACT DIGIT FOUR
4
U+102E5
𐋥
COPTIC EPACT DIGIT FIVE
5
U+102E6
𐋦
COPTIC EPACT DIGIT SIX
6
U+102E7
𐋧
COPTIC EPACT DIGIT SEVEN
7
U+102E8
𐋨
COPTIC EPACT DIGIT EIGHT
8
U+102E9
𐋩
COPTIC EPACT DIGIT NINE
9
数値
U+102EA
𐋪
COPTIC EPACT NUMBER TEN
10
U+102EB
𐋫
COPTIC EPACT NUMBER TWENTY
20
U+102EC
𐋬
COPTIC EPACT NUMBER THIRTY
30
U+102ED
𐋭
COPTIC EPACT NUMBER FORTY
40
U+102EE
𐋮
COPTIC EPACT NUMBER FIFTY
50
U+102EF
𐋯
COPTIC EPACT NUMBER SIXTY
60
U+102F0
𐋰
COPTIC EPACT NUMBER SEVENTY
70
U+102F1
𐋱
COPTIC EPACT NUMBER EIGHTY
80
U+102F2
𐋲
COPTIC EPACT NUMBER NINETY
90
U+102F3
𐋳
COPTIC EPACT NUMBER ONE HUNDRED
100
U+102F4
𐋴
COPTIC EPACT NUMBER TWO HUNDRED
200
U+102F5
𐋵
COPTIC EPACT NUMBER THREE HUNDRED
300
U+102F6
𐋶
COPTIC EPACT NUMBER FOUR HUNDRED
400
U+102F7
𐋷
COPTIC EPACT NUMBER FIVE HUNDRED
500
U+102F8
𐋸
COPTIC EPACT NUMBER SIX HUNDRED
600
U+102F9
𐋹
COPTIC EPACT NUMBER SEVEN HUNDRED
700
U+102FA
𐋺
COPTIC EPACT NUMBER EIGHT HUNDRED
800
U+102FB
𐋻
COPTIC EPACT NUMBER NINE HUNDRED
900
小分類
このブロックの小分類は「記号」(Sign )、「数字」(Digits )、「数値」(Numbers )の3つとなっている[ 6] 。
記号(Sign )
この小分類には他の数字について数値を1000倍するための、文字幅を持たない結合記号1つのみが収録されている。
数字(Digits )
この小分類には基本的な1の位の数字 が収録されている。
数値(Numbers )
この小分類には10の位以上の数字が収録されている。Unicode上では1の位の数値を表すdigitと10の位以上の数値を一つの文字であらわしたnumberを区別している。
文字コード
履歴
以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。
バージョン
コードポイント[ a]
文字数
L2 ID
ドキュメント
7.0
U+102E0..102FB
28
L2/10-114
Anshuman Pandey (12 April 2010), Towards an Encoding for Coptic Numbers in the UCS (WG2 N3786) (英語)
L2/10-206
Anshuman Pandey (21 June 2010), Final Proposal to Encode Coptic Numbers (revised; WG2 N3843R) (英語)
L2/10-333
Michael Everson (8 September 2010), Towards the encoding of a complete set of Coptic numbers (WG2 N3886) (英語)
L2/10-421
Anshuman Pandey (26 October 2010), Proposal to Rename the Block Name for Coptic Numbers (WG2 N3958) (英語)
L2/11-035
Azzeddine Lazrek (1 February 2011), Opposition about encode Coptic Epact numeral system (英語)
L2/11-062
Anshuman Pandey (8 February 2011), Final Proposal to Encode Coptic Epact Numbers (英語)
L2/11-065
Deborah Anderson (9 February 2011), Comparison of Coptic Epact vs. Rumi digits (英語)
^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。
出典
^ a b c d e SEI / Anshuman Pandey (2011年2月8日). “Final Proposal to Encode Coptic Epact Numbers ” (英語). Unicode. 2025年3月26日閲覧。
^ Anshuman Pandey (2010年4月12日). “Towards an Encoding for Coptic Numbers in the UCS (WG2 N3786) ” (英語). Unicode. 2025年3月26日閲覧。
^ Anshuman Pandey (2010年10月26日). “Proposal to Rename the Block Name for Coptic Numbers (WG2 N3958) ” (英語). Unicode. 2025年3月26日閲覧。
^ Azzeddine Lazrek (2011年2月1日). “Opposition about encode Coptic Epact numeral system ” (英語). Unicode. 2025年3月26日閲覧。
^ Deborah Anderson (2011年2月9日). “Comparison of Coptic Epact vs. Rumi digits ” (英語). Unicode. 2025年3月26日閲覧。
^ "The Unicode Standard, Version 15.1 - U102E0.pdf" (PDF) . The Unicode Standard (英語). 2025年3月26日閲覧 。
関連項目