ユンカース・カム・ヒア
『ユンカース・カム・ヒア』(Junkers Come Here)は、1990年にCBS・ソニー出版より発行された木根尚登(TM NETWORK)の小説。 または、それをもとに公開されたアニメ映画、ラジオドラマ等のメディアミックス作品。 概要本作は木根尚登が、同じTM NETWORKのメンバーだった小室哲哉が飼っていたミニチュア・シュナウザー犬を主人公に描いたファンタジー小説である[1]。木根にとって処女作『CAROL』に続く小説第二弾で、1990年1月に発表された[1]。同年11月、続編となる『ユンカース・カム・ヒアⅡ』を出版。累計発行部数は50万部を記録[2]。その後、コミック、ラジオドラマ、朗読劇、OVAや映画など、様々なメディアミックス展開がなされた。全国小・中・高認定図書にも選ばれた。 ストーリー中に出てくるミニチュア・シュナウザーの「ユンカース」は、小室哲哉がイギリスのロンドン滞在時にペットショップで購入し飼っていた同名の犬がモデル。このペットショップは、イギリスのバンド、ペットショップボーイズの名前の由来となったメンバーの友人が働いてた店であった。躾は全て英語で行われていたため、小室がユンカースに対し「Junkers, come here(ユンカース、おいで)」と呼びかけるのを、木根が何度か耳にしていたことがタイトルの由来となった[3]。その後、モデルのユンカースは小室の元妻である大谷香奈子の元で、2005年6月6日に亡くなるまで育てられた[4]。 1995年には『美少女戦士セーラームーン』『おジャ魔女どれみ』などのヒット作を多く手がけた佐藤順一の監督により劇場アニメが制作され[5]、木根は映画の音楽を制作したほか、声優も担当した。公開年の毎日映画コンクールアニメーション映画賞を受賞するが、公開当時はあまり評判にならなかった[6]。上映館数も少なく、興行的に成功しなかったため、映像作品の発売は行われず、"幻の作品"になってしまった[6]。その後、『ユンカース・カム・ヒア』を観る会の結成、映画の舞台になっている東急世田谷線沿線の下高井戸シネマでの上映会、主人公の通う学校のモデルになった世田谷区立赤堤小学校での上映など、作品に感動した熱心なファンが地道な上映活動を続けたおかげで、本作の名は徐々に知られるようになって行った[6]。そしてBS、CSなどの放送を経て、2001年にようやくDVDが発売された[6]。 2018年2月24日、新文芸坐が行っているオールナイトのアニメ上映イベント「新文芸坐×アニメスタイル セレクション」が100回を迎えたことを記念して、これまでのプログラムから選りすぐった作品をラインナップして上映する「新文芸坐×アニメスタイル セレクション vol.100 100回記念シリーズ Best of Best」を開催。その第一回の4作品中の1本に本作品が選出された。上映日には佐藤順一監督も登壇してトークショーを行う[7]。 あらすじユンカース・カム・ヒア十六歳の麻生瞳は、ある日、ロンドンのペットショップで一匹のシュナウツァー犬、ユンカースに出会った。それは言葉を喋れる不思議な力を持った犬だった。 ユンカース・カム・ヒアⅡ三つの奇跡を残して姿を消したユンカース。瞳と両親はありとあらゆる手を尽くしてユンカースを探したが、その行方はわからないままだった。二年の月日が過ぎて高校を卒業した瞳は、わずかな望みをかけて、ユンカースと初めて出会ったロンドンへと向かう決意をする。 登場人物
書籍情報
ラジオドラマラジオドラマ化され、NHK-FM放送のラジオドラマ番組「サウンド夢工房」で放送された。
キャストスタッフOVA『ユンカース・カム・ヒア メモリーズ・オブ・ユー』のタイトルでOVA化され、1994年7月20日にバンダイビジュアルよりVHSビデオが発売された。キャラクターとストーリーはアニメオリジナルのものになっている。また翌年に公開された劇場アニメは、本作とは別物である。当初、テレビ朝日のテレビドラマ『クニさんちの魔女たち』(1994年4月11日-6月27日)の劇中アニメとして放映された。主役の4姉妹の声優は、ドラマに出演していた主人公の岡村4姉妹の女優それぞれが担当している。 あらすじ言葉を操り三つの「奇跡」を起こすことのできる不思議な犬ユンカースが暮らすことになった有村家は、30歳の長女から小学生の四女までの四姉妹だけで生活していた。母親は10年前パリで行方不明となり、その心労から父親もすでに亡くなっていた。ある日、テレビでパリ在住の新進デザイナーとして紹介された日本女性を見て四姉妹は呆然とする。あまりに行方不明の母親にそっくりだったからである。四姉妹は、ユンカースと共にパリへと旅立った。 登場人物
スタッフ
漫画森永あいによる漫画[8]。キャラクターや基本設定は原作のものを使用しているものの、内容は原作とはかなり異なる漫画オリジナルとなっている。
アニメ映画
『劇場版 ユンカース・カム・ヒア』として1995年3月18日に公開された[6]。1995年の第50回毎日映画コンクール アニメーション映画賞受賞作品[9]。 本作でアニメ版のスタッフは、「人の言葉を話す犬ユンカース」と「3つの願い」という部分のみを生かして、まったく新しい物語を作り出している[6]。アニメ的な誇張を排したキャラクターによるどちらかといえば地味なアニメであり、デフォルメやギャグも控えめで、大きな事件も起こらない[6]。小学6年生の少女の年上の家庭教師への憧れや留守がちな両親への複雑な想いを描きながら、淡々と物語は進むという、少女の心情を丹念に描いた誠実な作品である[6]。アニメーション監督の細田守は本作について、「アニメという手段でひとりの女の子の"実在感"を実写作品以上に強く浮き上がらせた」と絶賛している[10]。 あらすじ共働きで忙しい両親を持つ小学6年生の女の子、ひろみ。それでも彼女が元気でいられるのには理由があった。それは、1匹のシュナウツァー犬がずっとそばにいてくれたからだ。人間の言葉を話す不思議な犬、ユンカースが彼女を励ましてくれたおかげで彼女は寂しい思いをせずに済んでいた。ところがある日、ひろみは両親が離婚について話すのを立ち聞きしてしまう。思わぬことに動揺する彼女。しかし、両親の気持ちを何とか理解しようとする彼女は、「寂しい」という一言をどうしても言い出せなかった。そんな時、ユンカースが「君が願えば、ぼくは3つだけ奇跡を起こすことができるんだ」と告げる。 登場人物
スタッフ
サウンドトラック劇場映画「ユンカース・カム・ヒア」オリジナル・サウンドトラック(1995年4月21日、アポロン)。 ドラマアルバムドラマアルバム『ユンカース・カム・ヒア』(1995年11月21日、アポロン)。劇場版にオリジナル部分を加えたドラマCD。 朗読劇朗読劇『ユンカース・カム・ヒア 〜しゃべる犬と小さなキセキの物語〜』として2012年7月3日から7月8日までル テアトル銀座にて上演された[12]。 キャストスタッフ
YouTube「ユンカースチャンネル」2020年、小説『ユンカース・カム・ヒア』の出版30周年を記念して、YouTubeに「ユンカースチャンネル」が開設された[13]。トーク番組やリーディングドラマ(朗読劇)の配信を行う[13]。 出典
外部リンク
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