リリアン・ギッシュ (英 : Lillian Gish 、1893年 10月14日 - 1993年 2月27日 )は、アメリカ合衆国 の女優 、映画監督 である。サイレント映画 時代を代表する映画スターであり、映画女優としてのキャリアは75年間に及ぶ。D・W・グリフィス 監督作品で清純可憐な役柄を演じたことで知られ、「アメリカ映画のファーストレディ(The first Lady of American cinema)」と呼ばれた。
生涯
ドロシーとリリアン、主演女優ヘレン・レイと。『Her First False Step 』 (1903年)
リリアンと妹のドロシー(D・W・グリフィスと)
1973年
リリアンの母方の先祖は第12代米国大統領ザカリー・テーラー (イングランド系アメリカ人 )。父方の先祖はフランス系 出自との説もあったが、近年の伝記では、ドイツ のライン川 付近のザール 地方のヴォルファースヴァイラー にいたフランス系の家系で、当地からアメリカに移民してきたことが指摘されている(ドイツ系アメリカ人 およびフランス系アメリカ人 )。
母親が女優だった縁で、5歳から舞台に立っていた。妹のドロシー も女優。友人だったメアリー・ピックフォード を訪ねてバイオグラフ社を訪れた際、彼女にD・W・グリフィス を紹介され、母と妹と共に映画に出ることになった。その後もグリフィスとコンビを組み、サイレント映画を代表する大作『國民の創生 』や超大作『イントレランス 』に出演した。D・W・グリフィスに対して、リリアンは一生敬愛の念を持っていた。
1919年の『散り行く花 』では、幸薄い少女ルーシーを演じる。この作品により映画は第八芸術として世に認められたと言われる。
1920年には、妹のドロシー・ギッシュが主演の『亭主改造』を監督するも、監督作品はこの一作のみである。なお、ドロシーとは私生活でも大変仲が良く、他の女優ではヘレン・ヘイズ などとも親交が深かった。
1921年の大作『嵐の孤児 』を最後にグリフィスの元を離れた後、初期メトロ・ゴールドウィン・メイヤー のスターとして、ヴィクトル・シェストレム 監督作品の『真紅の文字』(1926年)や『風 』(1928年)に出演。サイレント期を代表する女優として活躍する。
1930年代以降は舞台出演が主になっているが、時折映画にも出演。1987年公開の『八月の鯨 』(リンゼイ・アンダーソン 監督)では、90歳を超えているとは思えない若々しい容姿で瑞々しい演技を披露した。
1970年には生涯の業績を評価されてアカデミー名誉賞 を受賞[ 1] 。また、1984年にはアメリカン・フィルム・インスティチュート から生涯功労賞を受賞している[ 2] 。1999年には、同じくアメリカン・フィルム・インスティチュートが選出した「最も偉大な女優50選」で第17位に選出された[ 3] 。
1993年2月27日に老衰による心不全の為、アメリカニューヨーク州マンハッタンのアパートで死去(99歳没)[ 4] 。生涯独身であった。
主な出演作品
映画
公開年
邦題 原題
役名
備考
1912
牧場の春 In the Aisles of the Wild
若い娘
1913
母の心 The Mothering Heart
若い妻
1914
アッシリアの遠征 Judith of Bethulia
若い母親
1915
國民の創生 The Birth of a Nation
エルシー
清き心 Enoch Arden
アニー・リー
1916
ダフネと海賊 Daphne and the Pirate
ダフネ・ラ・トゥール
暴風の後 Sold for Marriage
マルファ
イントレランス Intolerance: Love's Struggle Throughout the Ages
揺り籠を揺らす女
1918
世界の心 Hearts of the World
マリー・スティーブンソン
偉大なる愛 The Great Love
スージー・ブロードプレインズ
人類の春 The Greatest Thing in Life
ジャネット・ペレ
1919
幸福の谷 A Romance of Happy Valley
ジユニー・ティンバーレイク
散り行く花 Broken Blossoms or The Yellow Man and the Girl
ルーシイ
スージーの真心 True Heart Susie
スージー
大疑問 The Greatest Question
ネリー・ジャービス
1920
亭主改造Remodeling Her Husband
監督のみ
東への道 Way Down East
アンナ・ムーア
1921
嵐の孤兒 Orphans of the Storm
アンリエッタ
1923
ホワイト・シスター The White Sister
アンヂエラ
1924
ロモラ Romola
ロモラ
1925
ベン・ハー Ben Hur
戦車競走シーンの観衆エキストラ (ノンクレジット)
1926
ラ・ボエーム La bohème
ミミ
真紅の文字 The Scarlet Letter
ヘスター
1928
風 The Wind
レティ
1930
白鳥 One Romantic Night
アレクサンドラ王女
1933
彼の二重生活 His Double Life
アリス・チャリース
1942
暁の勝利 Commandos Strike at Dawn
ミセス・ベルゲセン
1946
初恋時代 Miss Susie Slagle's
スージー・スレイグル
白昼の決闘 Duel in the Sun
ローラ
アカデミー助演女優賞 候補[ 5]
1948
ジェニイの肖像 Portrait of Jennie
マザー・メアリー・オブ・マーシー
1955
蜘蛛の巣 The Cobweb
ヴィクトリア・インチ
狩人の夜 The Night of the Hunter
レイチェル・クーパー
1958
私に殺された男 Orders to Kill
ミセス・サマーズ
1960
許されざる者 The Unforgiven
マチルダ・ザカリー
1966
歌声は青空高く Follow Me, Boys!
ヘティ・ザイベルト
1967
消えた拳銃 Warning Shot
アリス・ウィロウズ
危険な旅路 The Comedians
ミセス・スミス
1978
ウエディング A Wedding
ネティ
1983
ハンボーン Hambone and Hillie
ヒリー・ラドクリフ
1986
くたばれ! ハリウッド Sweet Liberty
セシリア・バージェス
1987
八月の鯨 The Whales of August
サラ
自伝
『リリアン・ギッシュ自伝 - 映画とグリフィスと私』(リリアン・ギッシュ、アン・ピンチョット著、鈴木圭介 訳、筑摩書房・リュミエール叢書、1990.8)
The Movies, Mr. Griffith, and Me (with Ann Pinchot) (1969)の翻訳
脚注
外部リンク
1928–1950 1951–1975 1976–2000 2001–現在
1973-1980 1981-2000 2001-2020 2021-2040