ロビン・トロワー (Robin Trower [traʊə(r)] [ 1] 、1945年 3月9日 - )は、イングランド ・ロンドン出身のブルース 、ロック ・ギタリストである。1967年から1971年までプロコル・ハルム に在籍した後、ロビン・トロワー・バンドを率いて様々なソロ・プロジェクトを行なった。
ジミ・ヘンドリックス 的な曲作りと良く似た粘り気のあるブルージーなサウンドから「ジミの再来」とも評された[ 2] 、代表的な「ヘンドリックス・フォロワー」の一人である[ 3] 。
来歴
初期の活動
少年時代、B.B.キング 、オーティス・ラッシュ らブルース・ギタリストに影響を受けた。1959年、ゲイリー・ブルッカー らと4人編成のR&Bバンドのパラマウンツ を結成した。
パラマウンツは1962年 頃から本格的に活動し、1963年 にコースターズ の'Poison Ivy 'のカヴァー[ 4] でデビュー・シングルを発表。ローリング・ストーンズ は彼らを「イングランド最高のR&Bバンド」と評し[ 2] 、前座として起用した。彼らは計6枚のシングル盤をリリースしつつ、ビートルズ の前座や、サンディ・ショー 、クリス・アンドリュース などのバックバンドを務める。
1966年11月、トロワーはパラマウンツを脱退して、ジャムというブルース・トリオを始めるが短命に終わる。
プロコル・ハルム
1967年7月、元パラマウンツのブルッカーに誘われて、ブルッカーが中心になってデビュー・シングル「青い影 」を大ヒットさせたばかりのプロコル・ハルム に加入する。
トロワーはプロコル・ハルムで順調にキャリアを重ねるが、1970年、ドイツでジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス と共演した際にヘンドリックスのプレイに感銘を受けた[ 3] 。同年9月にヘンドリックスが死んだ後、1971年にプロコル・ハルムが製作したアルバム『ブロークン・バリケーズ 』に「ジミに捧げる歌」として「ソング・フォー・ア・ドリーマー」を提供し[ 5] 、ギターをフェンダー・ストラトキャスター に替えるなど[ 2] 、ヘンドリックスからの影響と自己解釈によるプレイ・スタイルを強め、確立していった。
こうして他のメンバーとの音楽性の相違が大きくなった結果、彼は同年7月、『ブロークン・バリケーズ』の発表と相前後してプロコル・ハルムを脱退した。
ロビン・トロワー・バンドを率いたソロ・プロジェクト
脱退後、元ストーン・ザ・クロウズ のベーシストのジェイムズ・デュワー らと短期プロジェクトのジュードを結成するが不調に終わる。彼はデュワーと元ジョー・ジャマー・バンドのドラマー、レグ・イサドア を誘い、ロビン・トロワー名義のソロ・プロジェクトを実現させるためのロビン・トロワー・バンドを結成した。
(註:ロビン・トロワー・バンドはトロワーのソロ・プロジェクトの通称であり、アルバム名義は「ロビン・トロワー」である)
1973年2月、ソロ・プロジェクト最初のライヴをウィーンで行い、続いて元プロコル・ハルムのマシュー・フィッシャー をプロデューサーに迎えて3月にソロ・デビュー・アルバム『過去よりの再帰』をリリース。このアルバムの売り上げはふるわなかった(全米チャート106位)ものの、再度フィッシャーと制作して翌1974年にリリースしたセカンド・アルバム『魂のギター』がアメリカで大ヒットし(全米チャート7位、ゴールド・ディスク獲得)、更に米『ギター・マガジン』誌において、1974年度ベスト・ギター・アルバムに選ばれる[ 2] など、アメリカで高い人気を得る。トロワーは、このアルバムの成功は、ビートルズのレコーディング・エンジニアとして有名なジェフ・エメリック の功績が大きかったと述べている[ 6] (ジェフ・エメリック#ビートルズ以降 も参照) 。
1975年、ドラムを元スライ&ザ・ファミリー・ストーン のビル・ローダン に替え、フィッシャーがプロデューサーを務めた『遥かなる大地』をリリース。アメリカでの人気(全米チャート5位、ゴールド・ディスク獲得)のみならず、本国イギリスでもチャートイン[ 7] 。日本での評判も高まり[ 8] 、トロワーのギタリストとしての評価は固まる。更に1976年、1975年のヨーロッパツアーにおけるストックホルムでのライヴ盤『ロビン・トロワー・ライヴ!』により、人気・評価ともに絶頂期をむかえ[ 5] [ 9] 、つづく全米ツアーは史上最大のP.A.システムを使う[ 10] という大がかりなものとなった。
1976年9月にリリースされた『ロング・ミスティ・デイズ』はエメリックと共同で自らプロデューサーを務めたアルバムで、サウンドがポップ寄りに変化し[ 2] 、彼にとって唯一とも言えるシングル・ヒット「カレドニア」(全米シングルチャート82位)を出す。その後、元スライ&ザ・ファミリー・ストーンのベース、ラスティ・アレン を加え、デュワーはヴォーカリストという4人編成でツアーを行い、1977年1月には初来日する[ 注釈 1] 。ボビー・ウーマック らソウル系を手がけていたドン・デイヴィスをプロデューサーに迎え、1977年『白昼の幻想』、1978年『キャラバン・トゥ・ミッドナイト』と、より米国マーケットを狙ったアルバム[ 8] をリリースする。後に彼は当時を回想して「ジミの影響から逃れようとしていた[ 3] 」とも述べている。アレンが脱退してトリオ編成に戻ったバンドと共に1979年、原点回帰的な『地獄脱出』をリリースするがセールスは伸びず[ 11] 、翌1980年5月、トロワーは7年間に亘った、ほぼ同一のメンバーからなるロビン・トロワー・バンドを率いたソロ・プロジェクトを終了する。
1980年代以降
2008年のライブ
1981年、元ロビン・トロワー・バンドのローダンを連れてジャック・ブルース とトリオを結成し[ 12] 、同年、バンド・アンサンブル重視のアルバム『B.L.T. (ジャック・ブルース+ビル・ローダン+ロビン・トロワー)』[ 13] を発表。翌1982年にはローダンをロビン・トロワー・バンドのオリジナル・メンバーだったイサドアに替えて、ブルースとの共作『Truce』[ 14] を発表。これらのアルバムではファンク からハードロック まで多彩な音楽を演奏した。
1983年、元ロビン・トロワー・バンドのデュワーと再び組み、『虹色の戦慄』をリリースする。
その後はアルバム・リリースの場をインディーズ・レーベル に移し、1994年にはV12 Records[ 15] を設立した。1991年のプロコル・ハルム再結成に参加したのち、ブライアン・フェリー のアルバム2作[ 注釈 2] に共同プロデューサー及びギタリストとして参加し[ 16] 、1995年3月の日本公演にも同行した。
2008年、26年ぶりのブルースと共作アルバム『セブン・ムーンズ』[ 17] [ 18] を発表。2009年にはブルース、ゲイリー・ハズバンド とのトリオでライブを行ない、ブルースとの共作名義で『セヴン・ムーンズ・ライヴ』[ 19] を発表した。
近年ではV12 Recordsから散発的にアルバムをリリースしながら、2008年には欧米ツアー行うなど、ソロ初期の曲も含めたライヴ活動を続けている。
ディスコグラフィ
スタジオ・アルバム
『過去よりの再帰』 - Twice Removed from Yesterday (1973年) ※旧邦題『ロビン・トロワー』
『魂のギター』 - Bridge of Sighs (1974年)
『遥かなる大地』 - For Earth Below (1975年)
『ロング・ミスティ・デイズ』 - Long Misty Days (1976年)
『白昼の幻想』 - In City Dreams (1977年)
『キャラバン・トゥ・ミッドナイト』 - Caravan to Midnight (1978年)
『地獄脱出』 - Victims of the Fury (1979年)
『虹色の戦慄』 - Back It Up (1983年)
『ビヨンド・ザ・ミスト』 - Beyond the Mist (1985年) ※スタジオ&ライブ
Passion (1986年)
Take What You Need (1988年)
『イン・ザ・ライン・オブ・ファイヤー』 - In the Line of Fire (1990年)
『20th・センチュリー・ブルース』 - 20th Century Blues (1994年)
Someday Blues (1997年)
Go My Way (2000年)
Living Out of Time (2004年)
Another Days Blues (2005年)
What Lies Beneath (2009年)
The Playful Heart (2010年)
Roots and Branches (2013年)
Something's About To Change (2014年)
『ホエア・ユー・アー・ゴーイング・トゥ』 - Where You are Going To (2016年)
『TIME AND EMOTION』 - Time And Emotion (2017年)
Coming Closer to the Day (2019年)
『ユナイテッド・ステート・オブ・マインド』 - United State of Mind (2021年) ※with マキシ・プリースト 、リヴィングストン・ブラウン
No More Worlds to Conquer (2022年)
Joyful Sky (2023年) ※with Sari Schorr
Come and Find Me (2025年)
ライブ・アルバム
『ロビン・トロワー・ライヴ!』 - Robin Trower Live! (1976年)
『ライヴ・イン・コンサート』 - BBC Radio 1 Live in Concert (1992年) ※1975年録音
『キング・ビスケット・ライヴ』 - King Biscuit Flower Hour Presents: Robin Trower in Concert (1996年) ※1977年録音
This Was Now '74–'98 (1999年) ※1974年、1998年録音
『リビング・アウト・オブ・タイム / ライブ2005』 - Living Out of Time: Live (2006年)
RT@RO.08 (2009年)
Robin Trower at The BBC 1973–1975 (2011年) ※1973年-1975年録音
State To State: Live Across America 1974–1980 (2013年) ※1974年-1980年録音
Rock Goes To College 1980 (2015年) ※1980年録音
プロコル・ハルム
『青い影 』 - Procol Harum (1967年)
『月の光 』 - Shine On Brightly (1968年)
『ソルティ・ドッグ 』 - A Salty Dog (1969年)
『ホーム 』 - Home (1970年)
『ブロークン・バリケーズ 』 - Broken Barricades (1971年)
『放蕩者達の絆 』 - The Prodigal Stranger (1991年)
『シンフォニック・プロコル・ハルム〜青い影』 - The Long Goodbye (1995年) ※オーケストラとの共演盤
ジャック・ブルースとの活動
『B.L.T. (ジャック・ブルース+ビル・ローダン+ロビン・トロワー)』 - B.L.T. (1981年)
Truce (1982年)
『セヴン・ムーンズ』 - Seven Moons (2008年)
『セヴン・ムーンズ・ライブ』 - Seven Moons Live (2009年) ※ライブ
サウンドトラック
The Good Humor Man (2005年) ※日本未公開[ 20]
日本公演
1977年
1月22日、24日 東京・中野サンプラザ
1月25日 大坂・大坂厚生年金会館
1月26日 名古屋・名古屋市公会堂
1月28日 東京・中野サンプラザ
脚注
注釈
^ 東京、大阪、名古屋で計5回の公演を行なった。
^ 『タクシー 』(1993年)と『マムーナ 』(1994年)。
出典
^ Robin Trower - Day Of The Eagle - 3/15/1975 - Winterland (Official)
^ a b c d e 伊藤秀世 『ロビン・トロワー・クラシック・コレクション』(東芝EMI) ライナーノーツ
^ a b c Chris Welch "Robin Trower-Portfolio"(Chrysalis CP28-1026) ライナーノーツ
^ “Discogs ”. 2025年2月14日閲覧。
^ a b 赤岩和美 監修 『ブリティッシュ・ロック大名鑑』 ブロンズ社、1978年
^ GALLAGHER, MARRIOTT, DERRINGER, TROWER "ROCK CHRONICLES",Dan Muise,2002,ISBN 978-0634029561
^ Chart Archive Robin Trower-For Earth Below [1]
^ a b 『ロック貴重盤 1967~1979』、シンコー・ミュージック、1988年、ISBN 4-401-61263-9
^ Chart Archive Robin Trower-Live [2]
^ 1976 Chrysalis press release [3]
^ Chart Archive Robin Trower-Victims Of The Fury [4]
^ Shapiro, Harry (2010). Jack Bruce: Composing Himself: The Authorised Biography by Harry Shapiro . London: A Genuine Jawbone Book. pp. 227-228. ISBN 978-1-906002-26-8
^ “Discogs ”. 2025年2月15日閲覧。
^ “Discogs ”. 2025年2月15日閲覧。
^ allmusic.com V12 Records [5]
^ Buckley, David (2004). The Thrill of It All: The Story of Bryan Ferry & Roxy Music . London: Andre Deutsch. pp. 270-275. ISBN 0-233-05113-9
^ “Discogs ”. 2025年2月15日閲覧。
^ Shapiro, Harry (2010). Jack Bruce: Composing Himself: The Authorised Biography by Harry Shapiro . London: A Genuine Jawbone Book. pp. 278-279. ISBN 978-1-906002-26-8
^ “Discogs ”. 2025年2月15日閲覧。
^ IMDb "The Good Humor Man" Full Cast & Crew [6]
外部リンク