仙台市交通局3000系電車

仙台市交通局3000系電車
仙台市交通局3000系
基本情報
運用者 仙台市交通局
製造所 日立製作所笠戸事業所
製造年 2023年9月 -
製造数 88両(4両×22編成・予定数)
運用開始 2024年令和6年)10月24日[1]
投入先 南北線
主要諸元
編成 4両編成(2M2T)
軌間 1,067 mm(狭軌
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
最高運転速度 75 km/h
起動加速度 3.5 km/h/s
減速度(常用) 3.7 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
編成定員 580人
車両定員 145(座席45)人
車両重量 31.9 - 36.4 t
編成重量 136.1 t
全長 21,750 mm(先頭車)
20,000 mm(中間車)
全幅 2,886 mm
車体幅 2,800 mm
全高 3,992 mm(空調装置高さ)
4,020 mm(パンタグラフ折りたたみ高さ)
床面高さ 1,110 mm
車体 アルミニウム合金
ダブルスキン構造
台車 日本製鉄製 モノリンク式ボルスタレス台車
SS193M形・SS193T形
主電動機 かご形三相誘導電動機(全閉外扇式)
日立製作所製 HS32531-15RB形
主電動機出力 160 kW
駆動方式 WN駆動方式
制御方式 ハイブリッドSiC素子VVVFインバータ制御
制御装置 日立製作所製 VFI-HR2420H形(1C2M×2群制御)
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
応荷重装置遅れ込め制御保安ブレーキ、動力台車のみ耐雪ブレーキ
保安装置 ATCATO
備考 出典[2]
2024年度
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仙台市交通局3000系電車(せんだいしこうつうきょく3000けいでんしゃ)は、仙台市交通局仙台市地下鉄南北線用として2023年令和5年)から製造を開始した通勤形電車2024年令和6年)10月24日より営業運転を開始した[1]

概要

1987年昭和62年)の南北線開業時から運行している1000N系が耐用年数を迎えることから、置き換えのために製造された[3]。南北線では開業以来初めての新型車両である。

2022年度(令和4年度)より製造を開始し、2023年(令和5年)8月初めに1編成目が落成。9月11日に仙台港へ到着し、同日より富沢車両基地に搬入[4]。基地内試験調整や本線走行試験を経て[5]2024年令和6年)10月24日から営業運転を開始した[6][7]

今後2030年度(令和12年度)までに最大22編成88両を製造し[8]、従来の1000N系を置き換える[注 1][9]

2024年(令和6年)10月16日日立製作所と共同でグッドデザイン賞を受賞[10]

解説

車体

車体外板は耐食アルミニウム合金製のダブルスキン構造[3]で、無塗装ヘアライン仕上げとして環境負荷低減と軽量化をねらっている[10]。先頭車の車両長は1000N系の考え方を踏襲し全車で同じ定員を確保するため、中間車の20mに対して乗務員室の分だけ長い21.75mとなっている[3]

デザインコンセプトは「南北線車両からの進化」。先頭形状が「くの字型」であるほか、乗降扉の窓を楕円形とするなど、従来の1000N系のスタイルを継承する[11]。また前面窓まわりはサイドまで回り込んだブラックフェイス化することで未来的な印象に仕立て[3]前照灯後尾灯を前面ラインと一体化させて進化したイメージを創出した[6]。側面には前面窓とのバランスを考慮した太さとなる、濃淡2色の緑色帯を上部に配置する[12]

なお、エクステリアデザインは3案の中から市交通局のホームページ、地下鉄駅設置の投票箱、および南北線沿線に所在する小学校の6年生生徒による投票で決定した[6]

車内

内装は1000N系の配色を受け継ぐカラーデザインとし、ホワイト系とグリーン系で仕上げた[13]座席は片持ち支持方式で、ドア間は6人掛け、車端部は3人掛けのロングシートとしている。一般席のモケットは定禅寺通のケヤキ並木をモチーフとし、葉をあしらったようなグリーンの楕円模様を採用。優先席のモケットは暖かみのある赤を基調とした[11][14][15]。袖仕切板は木目調となっている[16]

貫通路の扉は運転士の車内見通しの良さを確保するため全面ガラス張りとし、衝突防止ステッカーに仙台市ゆかりのモチーフを配置している[3]

車椅子ベビーカー等に対応した車椅子・ベビーカースペースが各車両に1か所ずつ設けられている[17]。2段横手すりのうち下段には、介助者やベビーカー利用者の腰当てとしてクッションが巻き付けられた[3][17]。バリアフリーのため車両は低床化し、従来最大で約6cmあったホームとの段差を約3cmまで縮小[7]。さらに端部を傾斜形状に面取りすることで先端では約2cmとした[10]

全ての乗降口の上部に21.5インチ液晶ディスプレイ(LCD)式の車内案内表示器(PIS:Passenger Information System)を装備し、日本語英語中国語韓国語の4か国語で行先や次駅、緊急時の案内表示を行う[3][18]。障がい者団体との意見交換会での要望により、弱視の乗客にも見えやすいよう黒地に白字を採用した[10]

防犯対策として、1両あたり4台の防犯カメラが配置されている[19]LTE通信と非常通報検知機能により指令所等で車内の状況を速やかに把握できるほか、終点駅で降車しなかった乗客を認識し検知することが可能である[3]

戸閉装置にはラック・アンド・ピニオン方式の電気式戸閉装置を導入し、戸挟み時や引込み時にはドアの速度低下を検知して弛めと押し付けを自動で繰り返す[3]

空調装置三菱電機製のCU788形集中式で、能力は52.33kW (45,000kcal/h) を有する[2]

乗務員室

乗務員室内は黒色のカラーリング、主幹制御器は右手操作式ワンハンドルマスコン(力行1 - 4段・常用1 - 7ブレーキ、非常位置)を採用した[17]速度計や圧力計といった計器類は廃し、これらは液晶ディスプレイ(LCD)画面に表示するグラスコックピットを採用している[17][注 2]。LCD画面は3基あり、左側からホーム監視映像表示器、日立製作所製車両情報管理装置Synaptra(シナプトラ)」表示器、メーター表示器としている[18]。なお、ATO運転時は、力行・ブレーキ操作とも28段ずつの多段制御を行い、乗り心地の向上を図っている[2]

走行機器など

制御装置には日立製作所製のハイブリッドSiC素子(3,300V - 1,200A)によるVVVFインバータ制御を採用した[2][18]。主電動機は日立製作所製の160 kW出力 全閉外扇式かご形三相誘導電動機を使用している[2][18]。補助電源装置は富士電機製の静止形インバータ (SIV・CDA2103形)を採用した[2]。定格出力は160 kVAを有しており、中間車に1台ずつ搭載する[2]

台車日本製鉄製のモノリンク式軸箱方式のボルスタレス台車で、形式は動力台車がSS193M形、付随台車はSS193形[2]基礎ブレーキは動力台車が片押し式の踏面ブレーキ(ユニットブレーキ)、付随台車は1軸2枚のディスクブレーキである[2]

形式

車両番号は、千位の数字は3000系の車系を示す3、百位の数字は車種(形式)を意味しており、下2桁は編成番号を表している。なお、第1編成の編成番号は31である[11]。3400形と3500形は1000N系と同様、将来的な6両編成化に備え欠番となっている。

 
富沢

号車 1 2 3 4
形式 3100形
(Tc1)
3200形
(M1)
3300形
(M2)
3600形
(Tc2)
機器配置 CP VVVF
SIV,,BT
VVVF
SIV,,BT
CP
車両重量 32.0 t 36.4 t 35.8 t 31.9 t
車両番号 3131
3231
3331
3631
凡例
  • VVVF:VVVFインバータ装置、SIV:補助電源装置、CP:空気圧縮機、BT:蓄電池

沿革

  • 2020年令和2年)
    • 1月7日 - 仙台市交通局より、3000系電車の物品発注・入札実施(7区分)の告示が行われる[20]
    • 2月28日 - 3000系電車の入札が開札され、告示された7区分すべての落札者が決定。このうち車体製造は日立製作所が担当することになり、総落札金額は175億807万4,000円になった[21]
  • 2021年(令和3年)
    • 3月 - 車両デザインの投票が行われる[6]
    • 5月18日 - 仙台市のホームページで、車両デザインが決定したことが発表される[6]
  • 2023年(令和5年)
    • 9月11日 - 第1編成が仙台港に到着。富沢車両基地への搬入を開始[7]
    • 11月 - 深夜における本線走行試験を開始[5][22]
  • 2024年(令和6年)

脚注

注釈

  1. ^ 1000N系の在籍数は21編成であるが、安定的な運行のための予備車両を考慮のうえで計画した。
  2. ^ ただし、架線電圧計、バッテリー電圧計はアナログ計器として運転席右側に設置されている。

出典

  1. ^ a b c 南北線新型車両3000系の営業運行を10/24に開始します”. 仙台市交通局. 2024年9月21日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i 交友社「鉄道ファン」2024年4月号新車ガイド3「仙台市交通局3000系」pp.50 - 51。
  3. ^ a b c d e f g h i RAILFAN』第806号、鉄道友の会、2024年8月、6-11頁。 
  4. ^ 地下鉄新型車両「3000系」、夜の仙台を行く 大型トレーラーで2時間かけ車両基地へ”. 河北新報オンライン (2023年9月13日). 2023年9月13日閲覧。
  5. ^ a b 仙台市交通事業経営計画(令和3~12年度) 個別管理・評価シート(令和5年度計画)” (PDF). 仙台市交通局. 2023年4月8日閲覧。
  6. ^ a b c d e f 地下鉄南北線の新型車両デザインが決定しました(発表資料)”. 仙台市 (2021年5月18日). 2022年5月12日閲覧。
  7. ^ a b c d 地下鉄南北線、新型車両11月から走行試験、来秋営業運転へ 仙台市交通局”. 河北新報オンライン (2023年5月19日). 2023年5月19日閲覧。
  8. ^ 仙台市地下鉄 南北線 新型車両 3000系 4両編成22本製造、ブラックフェイスで緑帯はルーフ部へ”. 鉄道チャンネル (2021年5月20日). 2022年5月12日閲覧。
  9. ^ 仙台市地下鉄南北線、新型車両は無塗装のアルミ合金製になる?”. マイナビニュース (2020年1月18日). 2022年5月13日閲覧。
  10. ^ a b c d 地下鉄南北線の新型車両3000系が「2024年度グッドデザイン賞」を受賞しました” (PDF). 株式会社日立製作所. 2024年11月13日閲覧。
  11. ^ a b c 仙台市地下鉄南北線 新型車両3000系を公開、走行試験へ”. マイナビニュース (2023年10月27日). 2023年10月29日閲覧。
  12. ^ 選ばれたのはこれ 地下鉄南北線の新デザイン、仙台市が発表”. 河北新報オンライン (2021年5月18日). 2023年2月26日閲覧。
  13. ^ 南北線新型車両3000系特集”. 仙台市交通局. 2023年10月20日閲覧。
  14. ^ 【開業以来〝初〟】仙台地下鉄・南北線 新型車両が「陸路」で搬入 来年秋デビューへ”. ミヤギテレビ (2023年9月13日). 2023年9月14日閲覧。
  15. ^ 仙台市地下鉄南北線 「杜の都」を随所に表現した新型車両の内部を初公開、小学生向けに内覧会”. 河北新報オンライン (2023年10月27日). 2023年10月29日閲覧。
  16. ^ 仙台市地下鉄の新型車両を小学生に公開 2024年秋に導入予定”. khb東日本放送 (2023年10月27日). 2023年10月29日閲覧。
  17. ^ a b c d 交友社「鉄道ファン」2024年4月号新車ガイド3「仙台市交通局3000系」pp.48 - 49。
  18. ^ a b c d 日立製作所「日立評論」2025年1月「4. 仙台市交通局 地下鉄南北線新造車両3000系」(インターネットアーカイブ)。
  19. ^ 仙台市交通事業経営計画 2021-2030(令和3~12年度)” (PDF). 仙台市交通局. 2023年2月26日閲覧。
  20. ^ 仙台市交通局 物品発注情報
  21. ^ 仙台市交通局 大型案件の入札結果一覧
  22. ^ a b 仙台市地下鉄南北線 新型車両「3000系」営業時間中の試験走行始まる”. 河北新報オンライン (2024年2月14日). 2024年2月14日閲覧。
  23. ^ 仙台市交通局 3000系車両 GOOD DESIGN AWARD
  24. ^ 地下鉄南北線の新型車両3000系が「2024年度グッドデザイン賞」を受賞しました 日立製作所(2024年10月16日)

参考文献

  • 交友社鉄道ファン
    • 2024年4月号新車ガイド3「仙台市交通局3000系」(仙台市交通局 鉄道事業部 車両課・矢吹 大智)

外部リンク

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