令和4年台風第14号
令和4年台風第14号(れいわ4ねんたいふうだい14ごう)は、2022年9月14日に日本の南の海上(小笠原近海[3])で発生し[4]、9月18日に非常に強い勢力で鹿児島県に上陸した台風である[注 1]。アジア名は「ナンマドル(Nanmadol)」[注 2]。 この年は、ラニーニャ現象の影響で平年よりも日本の近くで台風が発生する傾向にあった[6]。 経過![]() 9月9日・午前9時に気象庁は、日本の南海上で熱帯低気圧が発生したと、天気図上に示した。その後数時間で低圧部となったものを再度熱帯低気圧に発達したと解析した[注 3]。 9月12日・午前11時にJTWCは、臨時発表にて熱帯低気圧形成情報(TCFA)を発表した。 9月13日・午前3時に気象庁は、この熱帯低気圧が台風に発達する可能性を発表した。 9月14日・午前3時、 気象庁は、熱帯低気圧が台風に発達したと発表した[7]。 9月15日・午前6時、985hpaとなり、暴風域をともなった[8]。さらに、975hpaと勢力を強め、最大風速は30m/sとなった。 ![]() 9月16日、台風は大型で強い勢力となり、同日9時に非常に強い勢力となった。その勢力を発達させながら、北東に進んだ[9]。同日14時ごろ、名古屋大学の坪木和久教授らは航空機から台風の眼の観測を行った[10][11]。 その後、急速に勢力を強め、17日午前1時には925hpaとなり、最大瞬間風速70m/sとなった。そして、同日午前3時中心気圧910hpa、最大風速55m/sと猛烈な強さとなり[12]、大東島地方へ接近した。大東島地方では、午後1時に一部が暴風域に入り、屋根が飛ぶなどの被害が起きた。 9月17日・午前11時、気象庁は緊急記者会見を開き、「経験したことのないような暴風、高波、高潮、記録的な大雨のおそれ」があるとして、暴風波浪高潮大雨特別警報を九州北部と九州南部に発表する可能性について解説した[13]。大型で猛烈な台風であったため[14]、報道では「過去最強クラスの勢力」「危険台風」などという表現も用いられた[15][16][17][18]。 9月17日、気象庁が鹿児島全域で2013年の運用開始以来3度めとなる、台風を要因とする特別警報(暴風・波浪・高潮)を発表した[注 4]。沖縄以外で発表されるのは初めてのことである[19]。 当初はその後、熊本県・長崎県・佐賀県・福岡県などでも発表する可能性があるとした。その後、大型で非常に強い台風に勢力を落とすが、種子島では、9時9分最大瞬間風速43.5m/s、7時42分には最大瞬間風速42.1m/sを記録した。屋久島町の尾之間では、9時10分最大瞬間風速43.5m/sを観測した[20]。また、屋久島空港で最大瞬間風速50.9m/sを観測した。同日7時50分、大東島地方の暴風警報を解除した。気象台では高波に注意するよう呼び掛けている。そして、午前9時、鹿児島市で最大瞬間風速39.1m/s、長崎県雲仙普賢岳で38.5m/sを観測した[21]。 9月18日・午後1時頃、屋久島では実測値で932.3hPa、種子島では946.3hPaをそれぞれ観測した。これは過去最低記録である。[22] 9月18日・午後3時10分、宮崎県で猛烈な雨が降り続き大雨特別警報を発表した[23]。その後、午後5時30分頃指宿市を台風の中心が通過した[注 5]。 9月18日・午後7時、台風は鹿児島市付近に上陸した[26]。上陸時の中心気圧は935hPaで、日本に上陸した台風の中では過去4番目に低い(現行の強さ表現となった2000年以降では最も低い気圧)[27]。鹿児島県内を北上中の午後9時14分には、大分県佐伯市蒲江で最大瞬間風速50.4m/sを観測した。 しかし、九州の山間部を通ったので水蒸気を取り込むことができず、急速に勢力を落とした。 そのため、九州北部に台風による特別警報(暴風、波浪、高潮)が出されることはなかった。 9月19日、気象庁は「台風14号が午前3時ごろ、福岡県柳川市付近に上陸した」と発表[28]。 9月19日・午前3時、福岡県柳川市付近に再上陸、九州を中心に台風本体の発達した雨雲がかかり続けた[29]。 9月19日・午前11時、宮崎県に発表していた大雨特別警報を大雨警報に切り替えた[30]。 9月19日・午後4時半頃、島根県出雲市付近に再上陸した[31]。 9月20日・午前4時過ぎ、新潟県新潟市付近に再上陸した[32]。 9月20日・午前9時、三陸沖で温帯低気圧に変わった[33]。 事後解析では、上陸時の気圧は935hPaから940hPaに下方修正された。これにより日本で過去4番目に低い気圧で上陸した結果は過去5番目に低い気圧で上陸したことになった。ただし勢力の表記には変更はなく、非常に強い勢力で日本に上陸したと解析されたため、「平成30年台風第21号以来の非常に強い勢力での日本列島上陸」は正式記録となった。[34][35]
特徴この台風の特徴として、秋台風としては動きが遅いこと、勢力を維持したまま上陸したことの2つが挙げられる。 台風の動きがここまで遅くなったのは、偏西風が例年より北寄りである北海道側で吹いていたため、偏西風に乗れず速度が上がらなかったことが要因である。また、進路上の海水温が例年よりも高かったために強い勢力を維持したまま上陸し、九州地方を中心に非常に強い雨が長時間降った。[36] 影響・被害被害状況
近年まれに見る巨大台風ではあったが、上陸直前に衰えはじめたことや、災害への警戒が呼びかけられたことなどから、その勢力の割に被害の規模は比較的小さかった[39]。
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韓国では釜山の地下鉄駅で1人が負傷した。蔚山では18日の夜から19日の朝まで、数百世帯が最大3時間停電した[56]。また、済州島北部の海岸では1人の行方不明者が出た [57]。 特別警報9月17日・21時40分、気象庁は鹿児島県に暴風・波浪・高潮特別警報を発表した[58]。台風等を要因とする特別警報が沖縄県以外に発表されるのは初めてのことであった[59][60]。19日3時前には高潮が[61]、8時には暴風・波浪の特別警報が[62]解除若しくは警報や注意報へ切り替えられた。 また、宮崎県では9月18日15時10分に大雨特別警報を発表された[63]。19日午前に解除若しくは警報や注意報へ切り替えられた[64]。 災害救助法の適用9月18日、内閣府は台風による災害発生の可能性があるとして、福岡県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県の全市町村に対して災害救助法を適用することを発表した。災害発生前の段階での事前適用は、2021年の同法改正により可能になったもので、この規定による適用は今回が初の事例となった[65]。 9月18日午後4時時点での災害救助法の適用自治体は、山口県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県の計132市130町24村[66]。 避難指示等の状況
交通
9月18日、九州新幹線は熊本駅と鹿児島中央駅の間で、終日運転を見合わせた。また、博多駅と熊本駅の間で正午ごろから運転を見合わせた[71]。 9月19日、九州新幹線全線、山陽新幹線の広島駅と博多駅の間、博多南線が終日運転を取りやめた[72]。また、山陽新幹線の広島駅と新大阪駅の間は始発から本数を減らして運行し、14時頃から順次運転を取りやめた。東海道新幹線も午後から名古屋駅と新大阪駅の間で運休し、東京駅と名古屋駅の間を大幅に運転本数を減らした[73]。
9月17日、午後から宮崎―鹿児島中央間を走るJR九州の「きりしま」などの特急列車が順次運休になった。 9月18日、JR九州の路線で幅広く運休や遅延が発生しており、特急は全て運転を見合わせた[74]。JR西日本でも山口県や瀬戸大橋線などで運休となった[75]。JR四国も瀬戸大橋線や特急列車に運休が発生している[76]。 19日はJR各社や私鉄で各地で運休や遅延が発生している。 ![]()
9月17日 、空の便では、九州発着便を中心に160便以上が欠航となり、約9800人に影響が出た[77]。
強風や大雨のため九州地方、中国地方及び四国地方の一部の高速道路の一部で通行止めが発生した[78]。 電力9月19日 午前7時現在、日本全国であわせて31万7800戸余りが停電している[81]。
携帯電話
氾濫危険水位NHKによると19日5時までに5の県で氾濫危険水位を超えている河川があるとなっている。
ダム小丸川水系にある木城町の松尾ダムと美郷町の渡川ダム、それに五ヶ瀬川水系にある延岡市の祝子ダムについて、水位が上昇していることから18日午後5時までに緊急放流を開始した。 また、19日は山口県の周南市にある向道ダムや山口県と広島県にまたがる小瀬川ダムでも緊急放流した[82]。 その他大手コンビニチェーンのセブンイレブンは九州、中国地方の店舗のうち約610店舗を17日午後9時以降順次、臨時休業することを発表した。また、同じく大手コンビニのファミリーマートやローソンも九州の一部店舗で計画休業することが決まっている[83]。 各地でイベントや[84][85]公共施設、ショッピングモールやデパートなどの商業施設などで[86]臨時休業や営業時間の変更が相次いでいる[87]。 台風が中国地方を通過中の9月19日には、台風に吹き込む南風の影響でフェーン現象が起こったことで新潟県と東北地方の日本海側を中心に気温が上がり、新潟県三条市で37.2℃、秋田県にかほ市で36.1℃などを観測。 日本政府の対応![]() 内閣総理大臣の岸田文雄は18日午後、総理大臣官邸で台風第14号に関する関係閣僚会議を開催し[89]、国民の安全確保のための万全対応を指示した[90]。これにより、9月20日にアメリカのニューヨークで開催される国連総会に出席するための出発の予定が9月19日であったが、1日遅らせた9月20日出発となった[91]。 2022年10月28日、政府はこの台風による大雨を激甚災害に指定することを閣議決定し、この政令は同年11月2日に公布されることになった[92]。 脚注注釈出典
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