六ヶ所村核燃料再処理事業反対運動
六ヶ所村核燃料再処理事業反対運動(ろっかしょむらかくねんりょうさいしょりじぎょうはんたいうんどう)とは日本原燃が青森県六ヶ所村で行っている核燃料サイクル事業に対する反対運動である。特に、2008年に本格稼動を予定していた六ヶ所再処理工場に対して強い反対が起きている。 六ヶ所再処理工場を中核とする日本原燃の使用済み核燃料再処理事業に対して日本国内では強い反対運動が起こっており、訴訟や本の出版、映画製作、講演会など様々に展開されている。主なものを以下に示す。 反対運動の一覧核燃サイクル阻止1万人訴訟「原子力発電はあまりにも危険であり、また原子力発電を推進する人々の言葉は嘘やごまかしばかり」との立場[1]から、本施設を含む4事業の認可取り消しを求めて提訴。2007年12月、最高裁判所で敗訴が確定した[2]。このグループは事業認可取り消しを求めて複数の訴訟を並行して行っているが、放射性物質による地下水汚染と設備の耐震性を争点とした訴訟は2006年6月に1審敗訴、2審では被告である原燃のデータ隠蔽が裁判所によって認定されたが、控訴そのものは棄却された[3]。 STOP ROKKASHO音楽家の坂本龍一らによる、主にポピュラー文化商品の製作者を中心とした反対運動STOP ROKKASHO。このグループは講談社より『ロッカショ:2万4000年後の地球へのメッセージ』(2007年)という本も出版している。この内容に対し「エネルギー戦略研究会」有志[4]、『エネルギーフォーラム』[5]、山名元(京都大学原子炉研究所・教授)[6]らは事実と異なる部分があまりにも多いと主張している。 六ヶ所村ラプソディー反原発論者で、本施設にも反対の立場である鎌仲ひとみ[7]が「中立の立場で」制作したとする映画『六ヶ所村ラプソディー』。この映画は各地で反原発の立場の論者の講演会とセットになった自主上映会が開催されている。代表的な講演者は鎌仲ひとみ、田中優、冨田貴史[8]、木下デヴィッド(プロサーファー)[9]である。 グリーンピース・ジャパン国際的環境保護団体グリーンピース (NGO)による反対運動[10]。六ヶ所再処理工場から40年間に渡って排出される放射能により、全世界で1万5000人のガン死亡者が増加すると主張している[11]。 『六ヶ所再処理工場』に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク(阻止ネット)日本の食糧自給率の向上などを目指した消費者運動を軸にする7つの呼びかけ団体(生活協同組合あいコープみやぎ、生活協同組合連合会きらり、生活協同組合連合会グリーンコープ連合、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、大地を守る会、NPO法人日本消費者連盟、パルシステム生活協同組合連合会)が600余りの賛同団体とともに、37万9,469筆(2008年1月28日現在)の署名運動や、メッセージカード、集会とパレード、国会の院内集会で反対運動をしている。「汚染された食品を食べない運動」ではなく、「消費者が、生産者と連携して、六ヶ所再処理工場による環境や食品の放射能汚染を阻止する運動」[12]であることが特徴である。 2009年8月に「六ヶ所再処理工場に関する衆議院議員選挙立候補予定者アンケート」の結果を公表[13]した。回答の傾向として、民主党、共産党、社民党に所属する議員は、工場の稼働による「風評被害対策をとること」「農水産物の汚染による人への被ばくの予防措置をとること」「地震対策に万全を期すこと」「稼働を中止すること」それぞれに賛成している。逆に、自民党所属の大半の方々からは回答を得られなかったが、木村太郎は「日本の安全基準とその技術は世界一のレベルであり、安全は確保されている。原子力エネルギーは最もエコである」との持論を展開されたと報告されている。 パタゴニアアウトドア用品メーカーのパタゴニアは原子力資料情報室や「六ヶ所村ラプソディ」に依拠して本事業に反対の立場を表明し、ウェブサイト内に本事業を非難するコーナーを設けていた[14] 議論本施設に対する反対運動の主な主張と、それに対する各種の反論・再反論を以下に示す。なお、これらの主張は必ずしも科学的に実証された主張ではなく、論争の最中である。 六ヶ所再処理工場からの放射能は1日で原発1年分に相当する反対運動をしている人々は、六ヶ所再処理工場が本格稼動した場合に空と海に放出する放射能が1日分で原発1年分になる[15][16]ので、本施設の稼働は中止すべきだと主張している。
六ヶ所再処理工場から排出される放射性物質が青森の米や魚を汚染する青森県は「本施設の稼働後には、米の炭素14が1kgあたり90ベクレル、魚のトリチウムが1kgあたり300ベクレル放射能で汚染される」と予測[20]している。国内の原子力施設で、日常的に環境や食糧を放射能汚染する施設は、六ヶ所再処理工場が初めてである。 こうしたものは口にしたくないという意見[21]が存在しているが、こうした情報が一人歩きすることで風評被害が発生することを懸念する声[22]もある。汚染された食品を食べない運動ではなく、生産者と消費者が手を結んで環境や食品を汚染させないための反対運動[12]が展開されている。
六ヶ所再処理工場から海中に放出される放射能が三陸の海産物を汚染する田中優は、再処理施設が海中に放出する放射性物質は太平洋には拡散せず、親潮に乗って三陸沖の漁場に滞留し、生物濃縮によって魚介類に蓄積するので、再処理施設の稼働は中止すべきであると主張している(前出動画資料参照)。 水産学者の水口憲哉は、田中と同様の事実認識にもとづき、「六ヶ所再処理工場は、今世紀最大の海洋汚染の発生源」と形容したとされる[23]。 六ヶ所再処理工場から日常的に放出する放射能によって、世界全体で1万5000人が癌で死亡するグリーンピースは、ロンドン大学のバーソロミュー・メディカル・カレッジで放射線生物学の学位を取得した環境コンサルタント、イアン・フェアリー(Ian Fairlie)に委託して作成させた報告書[24]を2008年2月に発表[25]した。 この報告書によると、六ヶ所再処理工場が1年間の本格稼働で地球全体の集団線量(環境に放出する放射性物質から地球上のすべての人々が受ける被曝放射線量を合計した推計値)が7400[人・Sv]になるとし、これを「直線しきい値無し仮説」を採用した上で比例計算により評価すると「毎年、世界でおよそ370人が癌で死亡すると計算される」としている。予定されている40年間、再処理工場が最大能力の運転を休み無く続けた場合では「世界全体で1万5000人が癌で死亡する」としている。 国際連合の原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、全世界で合計250[GW・年]の原子力発電を100年間続けた場合の地球全体の最大集団線量を1500[人・Sv]と推算[26]しており、六ヶ所再処理工場の影響はその約5倍になる。
イギリスやフランスの再処理工場周辺では白血病が増えているので、六ヶ所再処理工場でも同様の事態が懸念されるイギリス(セラフィールド)やフランス(ラ・アーグ)の再処理施設周辺では、小児白血病が増えている[31]。このような再処理工場は稼動してはならない。
六ヶ所再処理工場で製造されるプルトニウムは使い道がないプルサーマルを利用する高速増殖炉の実用化の計画は年々遅れており実現する見込みがないと小出裕章は2004年に述べた[38]。福島県や新潟県は再処理施設で製造されるプルトニウムを用いたプルサーマル発電を拒否しているし、高速増殖炉も計画が難航しているので、プルサーマル発電は日本国内では実施出来ない。よって再処理施設も不要であるとの指摘が提出されている[39]。
六ヶ所再処理工場は日本が核武装するためにある六ヶ所再処理工場で取り出すことのできるプルトニウムは、不安定なプルトニウム240の含有量が高くて原子爆弾の製造には不向きである。しかし、核燃料サイクルで計画されている高速増殖炉と組み合わせることにより、原子爆弾の製造が可能な兵器級のプルトニウムを生産可能になる[43]。 六ヶ所再処理工場が年間に海に放出する放射能は47000人分の致死量に相当する田中優は、再処理施設が海中に放出する放射性物質が年間で47000人分の致死量にもなり[44]、しかもこれは太平洋には拡散せずに海流の影響で三陸から関東の沿岸に滞留すると指摘している(前出動画資料参照)。 六ヶ所再処理工場で製造される物質であるプルトニウムは角砂糖5個分で日本が全滅する猛毒である川田龍平は参議院でプルトニウムについて「角砂糖が五個で日本人全員、日本の住んでいる人口全員の致死量、史上最悪の毒性と言われる」と言及した[45]。 六ヶ所再処理工場は過大な費用がかかるので中止すべきである原子力資料情報室などは、本施設の建設・維持にかかる費用が過大であり、また当初示されていた費用を遙かに超えていることを問題視し、最終的に国民の支払う電気料金が押し上げられると指摘し、再処理工場の稼働を中止すれば最終的な負担は大幅に軽減出来るとし、再処理工場の稼働を中止するよう求めている[47]。
また、原子力資料情報室は、電気事業連合会の試算が稼働率100%を前提としているので、実際の費用はこの試算より必ず増えるとしている[47]。
六ヶ所村核燃料再処理工場からプルトニウムが排出され、三陸から房総半島先端の沿岸部のサーファーに劣化ウラン弾被害と同じような被害をもたらす田中優はセラフィールド再処理施設がプルトニウムを排出したことを根拠に、本施設からもプルトニウムが海中に排出されるとしている。田中によると、プルトニウムは恐るべき猛毒であり、「少しでも入ってくるとすぐ白血病がおこったり骨髄腫がおこったり」するとし、プルトニウムは水に溶けにくい物質であるが、水に溶けにくい物質を水の中に入れると気泡の中に集まる性質があるので、海面近くで息を吸い込むことが多いサーファーに劣化ウラン弾と同様の被害をもたらすと主張している(田中、前出動画)。
再処理工場の直下に未知の活断層がある渡辺満久・中田高らの研究グループは2008年5月、再処理工場の直下にこれまで知られていなかった活断層を発見したと日本地球惑星科学連合大会で発表。最大でM8程度の地震が発生する可能性があるとし、耐震性を再確認すべきであるとした[53]。
アメリカのプルトニウム政策と六ヵ所再処理工場中村政雄(元読売新聞論説委員)の取材によると、アメリカ連邦政府周辺の核不拡散政策関係者は六ヵ所再処理工場におけるプルトニウム抽出が北朝鮮にウラン再処理の口実を与えているとの理解で一致しており、また北朝鮮以外のアジア諸国が今後ウランを再処理してプルトニウムを抽出しようとする際にも、その正当性を主張する論拠として日本のプルトニウム抽出が引き合いに出されることを懸念しているとされる。 アメリカ政府は1988年の日米原子力協定があるので公式に六ヵ所再処理工場への反対はしていないが、代わりにロックフェラー財団などの有力財団が出資している核管理研究所と天然資源保護協会という組織が六ヵ所再処理工場反対運動に秘かに協力している可能性があることを中村は指摘している[55]。 同調者日本弁護士連合会は2006年に六ヶ所再処理工場のアクティブ試験についての会長声明を出した[56]。 参議院議員の川田龍平は、9万人強の反対署名を受ける形で、2007年11月27日の参議院環境委員会において、この問題についての質問を行った[57]。 脚注
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