数学の一部門としての差分法(さぶんほう、英: difference calculus, calculus of finite difference)あるいは和分差分学(わぶんさぶんがく、英: discrete calculus)は、(微分法および積分法を柱とする)微分積分学の離散版にあたる。微分積分学が(極限の概念を定式化し得る)連続的な空間上の函数(特に実数直線上で定義された函数)に興味が持たれるのに対して、和分差分学では離散的な空間、特に整数全体の成す集合 ℤ 上で定義された函数(すなわち数列)に注目する。差分法は級数の計算にも応用される。
差分および和分
よく知られた連続的な微分法は

で定義される微分作用素 D に基づくのに対し、離散的な差分法は

で定義される差分作用素 Δ に基づく。
逆演算は、連続的な微分積分学における不定積分に対応するものとして、離散的な不定和分 ∑f(x) が差分作用素に対して

を満足するものとして定義される。ただし、δ は連続的な微分積分学における D に対する d と同様の意味で(ここでは)Δ に対する符牒である。また C は整数 x に対して定数となるような任意の函数 (C(x + 1) = C(x)) とする。
定積分に相当する定和分は、上の限界を固定しない通常の和 F(x) を用いれば
![{\displaystyle \sum \nolimits _{a}^{b}f(x)\,\delta x=\sum _{k=a}^{b-1}f(k)=[F(x)]_{a}^{b}=F(b)-F(a)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/9931cc86d0f6bc9e43a7e8d343e33888c15673d1)
なる関係にある。
性質
固有函数

微分作用素の作用の下で不変な函数が e を底とする指数函数であったことに対応する事実として、差分作用素の作用の下では2 を底とする指数函数が不変である。これを確かめるのは容易い。
階乗冪函数
下降階乗に関しては単純な規則が存在する。任意の整数 m に対して
![{\displaystyle x^{\underline {m}}={\frac {x!}{(x-m)!}}={\begin{cases}\overbrace {x(x-1)\dotsb (x-m+1)} ^{m{\text{ factors}}}&{\text{for }}m\geq 0\\[5pt]\underbrace {\frac {1}{(x+1)(x+2)\dotsb (x-m)}} _{|m|{\text{ factors}}}&{\text{for }}m<0\end{cases}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/0a8806af833417a1dd736562d7531bfc3f5b67ae)
と書くことにすれば、和分差分学における振る舞いを

![{\displaystyle \sum \nolimits _{a}^{b}x^{\underline {m}}\,\delta x={\begin{cases}[{\frac {x^{\underline {m+1}}}{m+1}}]_{a}^{b}&{\text{when }}m\neq -1\\[8pt][H_{x}]_{a}^{b}&{\text{when }}m=-1\end{cases}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/02f684d8d1257c83c3d4b62d4c013d1d96bab3bc)
のように表すことができる。ここに Hn は n-番目の調和数である。この意味で、調和数は自然対数の離散版となるものということになる。
なることも用いた。
積の差分法則と部分和分
連続的な微分積分学における積の微分法則に対応する、差分に関する積の法則が

なる形で成り立つ。シフト作用素 E を Ef(x) := f(x + 1) で定めれば、短く

と書くこともできる。これを逆に用いて、連続的な部分積分に対応する部分和分の式

が得られる。
注
参考文献
関連文献
関連項目
外部リンク