小作人らによって使用されていた展示中の外便所。ルイジアナ州綿の博物館(Louisiana State Cotton Museum)、ルイジアナ州レイク・プロビデンス
外便所の建物には、使用者のプライバシーの保護と快適性の保持や、雨水の流入などからのトイレ自体の保護などといった目的がある。仮に雨水がトイレの穴に入り込むと、その量によっては穴が氾濫し、未処理の糞尿が分解される前にそれらを下層土壌に洗い流してしまう可能性がある。建物は一般的に実用に徹したシンプルな設計で、材木または合板でできている。これは、屎尿を貯めるスペースがいっぱいになったとき簡単に移動できるようにするためである。スペースのサイズと使用量によっては、これはかなり頻繁に行われる場合があり、場合によっては毎年行われる。「ジャックパイン」ボブ・キャリー("Jackpine" Bob Cary)は、「誰でも外便所を建てることができるが、だれもが良い外便所を建てることができるわけではない」("Anyone can build an outhouse, but not everyone can build a good outhouse.")[2]と自身の著作に記している。建物は通常長方形または正方形であるが、時には六角形の外便所も建てられてきた[3]。
バイオトイレが外便所に用いられる場合もある。ワーム・ホールド・プライビー (Worm hold privies) というバイオトイレは、家庭用コンポスターでも用いられるシマミミズを利用して排泄物を分解するシステムで、バーモント州のグリーン・マウンテン・クラブで使用されている。バイオトイレもまた規制の対象である[14]。
オーストラリアの学者ジョージ・セドン (George Seddon) は、自身の著書で次のように記述した。「20世紀前半、都市や田舎町の典型的なオーストラリアの裏庭には、『ダニー・レーン(dunny lane、下肥収集人が外便所へ行くための細い小路)』から隠し扉を通じて屎尿収集用の受け皿を回収できるように、裏庭の柵に隣接した外便所があった」("the typical Australian back yard in the cities and country towns (中略) a dunny against the back fence, so that the pan could be collected from the dunny lane through a trap-door")[23]。ダニー・レーンは現在かなりの金額の価値がある[24]。
一部の外便所は豪勢なつくりであった[29]。たとえば、ジョージア州ストーン・マウンテンの州立公園にある[30]南北戦争以前のものは、レンガ造りの外壁で、3つの便座を備えていた。コロニアル・ウィリアムズバーグにある外便所は、仮設の木造建築から、高級感のあるレンガ造りのものまで様々である[31]。第3代アメリカ合衆国大統領のトーマス・ジェファーソンは、別荘に八角形の形をした建物の外便所を建設した[31]。このような外便所は、時に過剰な建築物であり、非実用的で派手だと見なされ、「built like a brick shithouse(レンガ造りの外便所のように建てられた)」(がっしりいい体をした、の意)という直喩が生まれた。
たとえば、ドラム缶を排泄物を溜めるスペースとして用いている場所がある。ドラム缶はヘリコプターで運び入れ、運び出さねばならず、それには多額の費用がかかる。また、一部の公園などでは、「パック・イット・イン、パック・イット・アウト」("pack it in, pack it out"、「自分の出したごみは全て持ち帰る」)ルールが義務付けられている。このルールはエベレストでも定められており、登山客は自身が出した排泄物を含むごみを全て持ち帰る必要がある。排泄物を持ち帰るためには「遠征樽」("expedition barrels")[34]または「便所樽」("bog barrels")と呼ばれる缶が使用されており、登山者が下山途中で中身を捨てたかを調べるために、登山の終わりに重さを量られる[35]「トイレット・タンク」も設置されている[36][37]。近年では、少なくとも登山者らの健康を守るために山をきれいに保つ必要がある、という認識が広まりつつある[34]。
高所にある便所
2007年8月29日に、インヨ国有林(英語版)内の海抜約14,494フィート (4,418 m)のホイットニー山の山頂に存在する、アメリカ本土で最も高いところにある外便所(建物ではなく、低い岩壁に囲まれた簡素な構造)が撤去された。さらに、国有林内の他の2つの外便所も、ヘリコプターによる大型下水ドラム缶の輸送に伴うコストと危険性のために閉鎖された。現在、マウント・ホイットニー・トレイル (Mount Whitney Trail) を訪れる年間約19,000人のハイカーは、合衆国森林局 (National Forest Service) の許可を取得し、簡易トイレのWagbag(二重密封式衛生キット)を使用しなければならない。前述の「"Pack it in; pack it out"」がスローガンとなっている[38]。太陽光発電トイレも導入されたが、排泄物を十分に圧縮しないという問題が発生したため、本格的に採用されるには至らなかった。また、ハイカーが簡易トイレを持ち歩くことで、パーク・レンジャーらのトイレに関する業務を無くし、より重要なレンジャーの任務に集中することができるようになった[39]。近年、アメリカの国立公園では、Wagbagの導入と外便所の撤去が行われる傾向にある[38]。外便所の設置費用は高く、アメリカ合衆国国立公園局がある外便所を建設した際の費用は333,000ドル超であった[40]。
また同年、モンブランの山頂近くに2つの外便所が設置された。これらはヨーロッパで最も高い場所(4260m)にある外便所となる。コンテナに溜められた利用者の排泄物はヘリコプターによって運ばれる。2つの外便所は、年間30,000人のスキーヤーとハイカーに利用され、糞尿が春の雪解けで山の表面に広がってモン・ブラン(フランス語で「白い山」)がモン・ノワール(フランス語で「黒い山」)になることを軽減することができる[41]。モンブランの来訪者の排泄物に関する問題は以前から指摘されており、2002年の書籍『Le versant noir du mont Blanc』(「モンブランの黒い丘の中腹」)ではその問題が明らかにされている[42]。
ロシア及びヨーロッパ最高峰のエルブルス山(標高5642m)の標高4206m地点には、世界で「最も厄介な外便所」("nastiest outhouse")がある。この外便所は雪に囲まれ、岩の上に組まれた木製の土台の上に設置されており、排泄物はパイプを伝って山肌へ直接流される。衛生面や利便性の面で常に低い評価を受けているが、同時にユニークな体験ができるとも考えられている[43]。外便所はロシアとジョージアの国境近くにあり、ある作家は「...そこにいるときはヨーロッパのようには感じられない。中央アジアまたは中東のように感じる。」("...it does not much feel like Europe when you're there. It feels more like Central Asia or the Middle East.")[44][45]と述べた。
オーストラリアでは、外便所は俗に「ダニー」("dunny")と呼ばれる。「private」の古風な表現である「privy」は、北アメリカ、スコットランド、およびイングランド北部で外便所を表す単語として使用されている。"bog"という単語も使用され、バイオトイレの一種である"treebog"という造語に見ることができる。また、トイレを意味する婉曲表現としては、"back house"、"house of ease"、"house of office"などが挙げられるほか、ウェールズ英語には"little house"[48](ウェールズ語:tŷ bach)という語がある。"house of office"は、17世紀のイングランドで一般的であり、サミュエル・ピープスの『日記』に何度も登場した。[50]
バージニア州をはじめとする北アメリカの一部地域では、"johnny house"という語が使用される場合がある[51][52][53]。また、北アメリカのスカウト運動では、外便所を表す用語として一般的に"kybo"が用いられる。これは、臭気を減らすために外便所の穴から振りかける灰汁または石灰を、Kyboブランドのコーヒー缶を使用して携帯していたことが由来とされる。"Keep Your Bowels Open"(いつも便通を良くしておく)は、逆成略語(既存の"wiki"という単語を"what i know is "の頭字語であるとする、といったもの)であるとされる[54][55]。一時的なキャンプ地では、浅い穴の上にテントや防水シートを設置する場合があるが、これを"hudo"と呼ぶ場合もある。
ある用語が外便所のみを指すのか、それともトイレ全般を指すのかを判断するのは簡単ではない。
神話
Tsi Ku Niangとしても知られるTsi-Kuは、中国の外便所と占いの女神とされている。女性は外便所に行き、Tsi-Kuに尋ねることで未来を知ることができると言われている[56][57]。
^Bahne, Charles (2012). Chronicles of Old Boston: Exploring New England's Historic Capital (print). New York: Museyon, Signature Book Services distributor. p. 74. ISBN978-0-9846334-0-1
^Kamensky, Jane (2008). The Exchange Artist: A Tale of High-Flying Speculation and America's First Banking Collapse (print). New York: Viking Press/Penguin Books. p. 184. ISBN978-0670018413
^Ward Bucher (1996) Dictionary of Building Preservation, ISBN0-471-14413-4
^Pepys, Samuel (1892), Bright, Mynors; Griffin, Richard, eds., The Diary of Samuel Pepys, p. 245.
^「1660年10月23日――...地下室に降りていくと...、わたしは足を芝土の山の中に入れた。ミスタ・ターナーのhouse of officeはそれでいっぱいで、それがわたしの地下室に入ってきた。」("October 23, 1660: ...going down into my cellar..., I put my foot into a great heap of turds, by which I find Mr Turner's house of office is full and comes into my cellar.")ように[49]。
^Lee Pederson. "Language Regions." The New Encyclopedia of Southern Culture: Volume 2: Geography. Richard Pillsbury, ed. University of North Carolina Press, 2014. p. 97.ISBN9780807877210
^Robert Becker, Nancy Lancaster: Her Life, Her World, Her Art. A.A. Knopf, 1996. p. 68. ISBN9780394567914
^J. David McNeil. ""A Part of Americana." Floyd County Virginia Heritage Book 2000. S. Grose, 2001.
Cary, "Jackpine" Bob (2003). The All-American Outhouse – Stories, Design & Construction (print). Cambridge, MN: Adventure Publications. ISBN978-1-59193-011-2
Harrison, Peter Joel (2002). Garden Houses and Privies, Authentic Details for Design and Restoration (print). New York, NY: John Wiley & Sons. ISBN978-0-471-20332-2
Morna E., Gregory; Sian, James (2006). Toilets of the World (paperback). London: Merrell Publishers Ltd. ISBN1-85894-337-X