定款定款(ていかん)とは、法人の目的・組織・活動・構成員・業務執行などについての基本規約・基本規則そのもの(実質的意義の定款)、およびその内容を紙や電子媒体に記録したもの(形式的意義の定款)のこと。 日本法における定款
日本法の場合、会社から一般社団法人や一般財団法人、特殊法人(日本銀行・日本放送協会等)に至るまで根本規則は定款と呼ばれる。かつての財団法人においては根本規則は「寄附行為」といったが、2008年12月の一般社団・財団法人法の施行以降は「定款」に統一されている。ただし、私立学校法の学校法人など根本規則が「寄附行為」となっている法人もある(私立学校法30条など)。また、宗教法人法の宗教法人のように「規則」となっている法人もある(宗教法人法12条など)。 定款の記載事項には以下の分類がある。
民法に基づいて設立された社団法人(民法法人)については、この分類のうち任意的記載事項や相対的記載事項に関する条文が無かったため、その有効性等に学問上、疑義があった(ただし、判例は任意的記載事項の有効性は認めていた。)。しかし、民法の「法人」に関する規定は、2008年12月1日をもって廃止され、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」という。)に改組されるに当たり、同法12条によって、一般社団法人ないし公益社団法人(≒現行法の民法法人)の定款にも任意的記載事項及び相対的記載事項が認められる事が明文化された。一方、会社法上の法人については、最初から上記の三つの記載事項の存在が予定されている条文がある(会社法29条、577条)。
(注意)
以下では、会社法上の会社と一般社団・財団法人法上の一般社団法人・一般財団法人を例に説明する。 会社法
この節では、会社法は条数のみ記載する。 会社の定款定款の意義定款の意義については、商法学上、商事自治法の一種であるとし、旧商法68条が他の法源と並べて定款を挙げている事、作成後に加入した社員をも拘束する事等から、「法源」の一種としての性質を認める学説が存在する[1][2] [3][4][5]また自治法規としての性質を認める学説が存在する[6]他、また定款の作成は法律行為の一種合同行為であるとされる。 定款自治会社法に株式会社の定款の変更(改正)は株主総会の特別決議に拠る(会社法466条、309条2項11号)と規定されているが、株主総会の決議は定款自治(ていかんじち)と説明されている[7]。また株主民主主義と言われる事もある。株主総会の決議そのものが物理的に不存在である場合や、手続きや決議内容に瑕疵のある定款変更は、株主総会決議の瑕疵を主張する(不存在確認の訴え(830条1項、834条16号)、株主総会決議無効確認の訴え(830条2項、834条16号)、株主総会決議取消しの訴え(831条1項、834条17号)の各種訴えにより、無効や取消となる。 電子定款設立時に作成される定款の原本(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、相互会社に限る)は、印紙税法により課税文書とされ、収入印紙を貼付なければならない。しかし、当該原本を電子文書で作成した場合、同法による文書には該当しないとされていることから、4万円の節税となる。 2004年3月1日より紙で作成した定款だけでなく、電子(PDFなど)で作成した定款でも、認証を受けられるようになった。 従来、電子定款の認証を行うことができる公証人の数が少なく、設立する県によっては電子定款によるメリットを受けることができないという問題点があったが、2007年4月、ようやく全都道府県での利用ができるようになった。 定款の作成発起人や設立時社員など、法人を設立しようとする者が作成し署名又は記名捺印する(一般社団・財団法人法10条・152条、会社法26条1項)。 定款記載事項株式会社の定款記載事項
持分会社の定款記載事項
定款の成立株式会社の場合には会社法30条が「公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない」と定めており、公証人による定款の認証作業が必要となる[8]。これに対して、持分会社の場合は、公証人の認証は必要はなく、設立時社員全員の署名又は記名捺印があればよい。 定款の変更株式会社の定款の変更原則として特別決議を要する(会社法466条、309条2項11号)。 以下の例外がある。 持分会社の定款の変更定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意を要する(637条)。 以下の例外がある。 一般法人法この節では、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般社団・財団法人法、一般法人法)は条数のみ記載する。 定款の作成設立時社員など法人を設立しようとする者が作成し署名又は記名捺印する(一般社団・財団法人法10条・152条1項)。 なお、一般財団法人の場合、設立者は、遺言で設立する意思を表示することもできる。この場合においては、遺言執行者は、当該遺言の効力が生じた後、遅滞なく、当該遺言で定めた事項を記載した定款を作成し、これに署名し、又は記名押印しなければならない(一般社団・財団法人法第152条2項)。 定款記載事項一般社団法人の定款記載事項
一般財団法人の定款記載事項
定款の成立一般社団法人・一般財団法人については一般法人法13条・155条が「公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない」と定めており、公証人による定款の認証作業が必要となる。 定款の変更一般社団法人の定款の変更社員総会において、総社員の半数以上であって、総社員の議決権の3分の2以上[注釈 3]の賛成が必要(一般法人法49条、146条)。 なお、旧社団法人(民法旧規定)では総社員の4分の3以上の同意が必要とされ(民法38条。定款に別段の定めができる)、主務官庁の許可を受けなければ効力を生じないとされていた。 しかし、公益法人制度改革関連3法では、公益法人の定款変更に関して、行政庁が裁量権を働かせない事が原則とされ、実質的に定款変更の要件が緩和された事から、一般社団法人は、定款変更の際に主務官庁の許可等は要しないものとされ、公益認定により公益社団法人[注釈 4]となった後も「主務官庁の許可」[注釈 5]は原則的に必要とせず、ただ定款変更決議後、行政庁への届出をすればよいことになった。ただし、公益事業の質的又は量的変更を来たす定款変更は、今まで通り「主務官庁の許可」[注釈 5]が必要とされていることに注意を要する(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律11条、13条)。 一般財団法人の定款の変更評議員会において、変更できる。ただし、法人の目的と評議員の選任・解任の方法については、定款に定めがある場合か、予見不可能な事情の変更があって裁判所の許可を得た場合以外は、評議員会においても変更できない(一般法人法200条)。 特定非営利活動法人特定非営利活動促進法の特定非営利活動法人(NPO法人)の絶対的記載事項は次の事項である(特定非営利活動促進法11条1項)。
このほか設立当初の役員は定款で定めなければならない(特定非営利活動促進法11条2項)。 他の法域の会社の基本規約以下の法域ではMemorandum of AssociationやArticles of Associationなど複数の態様の基本規約が存在し[9]、特にArticles of Associationは法域によって意味も日本語訳も異なる[10]。 イギリスイギリスでは1985年会社法によりMemorandum of Association(基本定款)とArticles of Association(通常定款)の2つの基本規約を定めることとされた[9]。なお、イギリスにおけるArticles of Associationは日本語訳では「通常定款」と訳されている[10](アメリカのArticles of Associationとは日本語訳が異なる[10])。 →「MOA (基本規約)」および「AOA (基本規約)」を参照
インド等インドなどでは会社の基本規約としてMemorandum of AssociationとArticles of Associationの2つがある[11]。これらの国のMemorandum of Associationは「基本定款」、Articles of Associationは「付属定款」と訳されている[11]。 →「MOA (基本規約)」および「AOA (基本規約)」を参照
アメリカアメリカ合衆国のArticles of AssociationはArticles of incorporationと同義であり[10]、米国法のArticles of Associationは日本語訳では「基本定款」と訳される[10](イギリスのArticles of Associationとは日本語訳が異なる[10])。 →「AOI (基本規約)」を参照
脚注注釈出典
関連項目
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