会計監査人(かいけいかんさにん)とは、株式会社における機関のひとつであり、会社の計算書類などを会計監査することを主な職務・権限とする。公認会計士または監査法人のみが就任することが出来る(会社法337条)。1974年の商法改正で会計監査人制度が創設された。
商法の旧会社編においては、会計監査人を会社の機関とは考えないのが多数説であったが、会社法においては「株主総会以外の機関」のひとつとして規定(会社法326条)され、会計監査人に対する株主代表訴訟(会社法847条)も可能になっている。
機関設計
会社法の下では、どのような株式会社においても定款に定めることにより設置することが出来る(326条2項)。ただし指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社以外の株式会社で会計監査人を設ける場合は、監査役も必ず設けなければならない(327条3項)。大会社または監査等委員会設置会社若しくは指名委員会等設置会社である場合は必ず設けなければならない(328条、327条5項)。(詳しくは公開会社の項目の表参照)
選任等
- 選任
- 監査役設置会社(監査役が複数の場合には監査役の過半数、監査役会設置会社では監査役会)においては、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役が決定する。(344条)。[注 1]
- 会計監査人が欠けた場合又は定款で定めた会計監査人の員数が欠けた場合において、遅滞なく会計監査人が選任されないときは、監査役は、一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければならない(346条4項)。
- 監査等委員会設置会社においては、監査等委員会が株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容を決定する(399条の2第3項2号)。
- 指名委員会等設置会社においては、監査委員会が株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容を決定する(404条2項2号)。
- 資格
- 公認会計士又は監査法人でなければならない(337条1項)。
- 任期
- 選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、再任されたものとみなされる(338条1項2項)。
- 報酬
- 会計監査人又は一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等を定める場合には、取締役は、監査役(複数いる場合は監査役の過半数、監査役会設置会社は監査役会、監査等委員会設置会社は監査等委員会、指名委員会等設置会社は監査委員会)の同意を得なければならない(399条)。
- 解任
- いつでも、株主総会の普通決議によって解任することができる(339条1項)。
- 監査役・監査役会・監査等委員会・監査委員会は、会計監査人が職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき等[注 2] は、(監査役が複数の場合は監査役の全員・監査等委員会・監査委員会の同意によって)その会計監査人を解任することができる(340条1項2項4項5項6項)。また、この場合には監査役(複数の場合には監査役の互選によって定めた監査役)・監査役会が選定した監査役・監査等委員会が選定した監査役・監査委員会が選定した監査役は、その旨及び解任の理由を解任後最初に招集される株主総会に報告しなければならない。(340条3項4項5項6項)。
- 退任
- 337条3項の欠格事由に該当した時。
- 死亡した時(民法653条)
- 監査法人・会社の解散。
職務
計算書類(およびその附属明細書)を監査する。事業報告(およびその附属明細書)については監査義務はない。
こうして監査を受けた計算書類が取締役会の承認を受け、さらに所定の要件を満たす場合には、計算書類は株主総会では「承認」は不要となり「報告」さえすればよい。
株主により責任追及等の訴えの提起を請求されることがある(847条)。
上場企業の会計監査
上場会社における会計監査は、2022年5月18日に改正公布された公認会計士法及び金融商品取引法により、2024年10月1日以降は上場会社等監査人登録制度に登録した会計監査人でしか会計監査は出来ない(公認会計士法34条34の2、公認会計士法34条34の3、金融商品取引法第193条の2第1項及び第2項)[1][2]。
上場会社等監査人名簿への登録の審査や上場会社等監査人名簿に登録された監査法人又は公認会計士の登録の取消の審査は日本公認会計士協会が行う(公認会計士法34条34の4、公認会計士法34条34の6)。
登録上場会社等監査人の登録番号は、大手監査法人(4大監査法人)が1000番台、準大手監査法人が2000番台、その他の監査法人が3000番台となっている。
上場企業の会計監査を行うことが可能である会計監査人は以下の通り(みなし登録上場会社等監査人は除く)[3]。
公認会計士法の附則第3条第3項及び第4条第3項の規定により、監査契約が終了するまで上場会社の監査が可能なみなし登録上場会社等監査人は以下の通り。また、上場企業は2024年10月1日以降はみなし登録上場会社等監査人を会計監査人の異動において会計監査人に選任することはできない。登録上場会社等監査人の登録を拒否された場合における契約中の上場会社の監査は事業年度終了までとなる[4]。登録を拒否された場合は拒否された日から3年間は上場会社等監査人登録制度に登録申請を行うことはできない(公認会計士法34条34の6)。
登録を拒否された会計監査人の名前は日本公認会計士協会では公表されないが、登録を拒否されたみなし登録上場会社等監査人からは監査契約を締結する上場企業に対して登録を拒否された旨の連絡が入り、当該する上場企業は後任の会計監査人の選定作業に入る。
- 登録審査中の会計監査人
- 登録を拒否された会計監査人
脚注
注釈
- ^ この点、平成26年6月27日法律第90号により改正がなされ、これにより会計監査人の選任機関の統一が図られた。改正前の条文は「監査役設置会社においては、取締役は、会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出すること等をするには、監査役、監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数の同意を得なければならない(1項)。また、監査役、又は監査役会は、取締役に対し、会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができる(2項・3項)。」。
- ^ 会計監査人としてふさわしくない非行があったとき,心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。
出典
関連項目
外部リンク
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4大監査法人(大手監査法人) | |
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準大手監査法人 | |
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中堅監査法人 (業務収入10億円以上) | |
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主な中小監査法人 |
- UHY東京監査法人(UHY)
- 八重洲監査法人(Kreston)
- 清陽監査法人(Baker Tilly)
- 海南監査法人
- 新創監査法人
- 監査法人日本橋事務所(Baker Tilly)
- 清稜監査法人
- アスカ監査法人(TIAG)
- 東邦監査法人
- かなで監査法人
- かがやき監査法人
- 史彩監査法人
- 監査法人ハイビスカス(Russell Bedford)
- 協立神明監査法人(HLB(英語版))
- 監査法人FRIQ
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解散 | |
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関連項目 | |
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()内は提携している国際ネットワーク。「大手」「準大手」の区分は公認会計士・監査審査会の『モニタリングレポート』準拠。
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登録上場会社等監査人 |
1000番台 (4大監査法人) | |
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2000番台 (準大手監査法人) | |
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3000番台 (その他の監査法人) | |
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みなし登録上場会社等監査人 |
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関連項目 | |
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みなし登録上場会社等監査人は登録申請が拒否された日の前日までに監査契約を締結した上場企業のみ会計監査が可能。
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