東京大学大学院情報学環教育部東京大学大学院情報学環教育部(とうきょうだいがくだいがくいんじょうほうがっかんきょういくぶ)は、東京大学大学院情報学環に併設されている教育機関である。[1]情報、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズムに関する学部レベルの教育部課程(正規課程)の教育を実施している。 概要1949年に設立された旧・東京大学新聞研究所(1992年より社会情報研究所、2004年に大学院情報学環に統合)教育部を前身とし、東京大学社会情報学研究所が2004年に大学院情報学環と合併したことに伴い、大学院情報学環・学際情報学府に大学院情報学環教育部が設置されている。所属する学生は教育部研究生と呼称されている。2004年から2008年までは教育部研究生は学際情報学府の所属であったが、2009年より情報学環に所属となった。情報学環教育部は一般の研究生制度とは異なり教育部研究生には単位/修了認定を行われるという点でユニークな教育課程を実施している。メディアや情報、マスコミ、ジャーナリズムの分野に関心をもつ学生を対象にした学部レベルの2年課程の教育部課程を実施していて入学試験は毎年2月に実施される。 教育部は、標準修業年限2年の教育課程を修了すると、単位取得を証する「成績証明書」と「正規の課程の修了証」を取得することができ、履修証明制度とは異なっている。 また、「大学院」と付くが、2年間の専門教育課程を修了しても修士号の取得ができない。放送局や新聞社、通信社、大手広告代理店などで活躍しているOBが多く、マスコミ界との太い人脈があるとされるため、芸能人が入学することもある。 沿革情報学環教育部の起源は、1929年(昭和4年)の東京大学文学部新聞研究室にまでさかのぼる。ドイツで興った新聞学を日本に移入しようとした小野秀雄が新聞学講座の開設を計画し、渋沢栄一を寄付発起人総代として貴族院議員の阪谷芳郎や大阪毎日新聞社主の本山彦一らを支援者として集めた[2]。国史学の三上参次、宗教学の姉崎正治、社会学の戸田貞三各教授の賛同は得たものの、文学部教授会は、「本学に於て新聞に関する研究をなすものは主として純学理上の研究をなすものにして、新聞の記者又は経営者の養成の如きは寧ろ間接なる事に属す[3]」として、純粋な学問ではないことを理由に講座の設置に反対した[4]。そのため、講座の代わりに新聞研究室として設置された[5]。文学部嘱託の小野秀雄が主任をつとめ、法学部・文学部・経済学部からそれぞれ1名ずつ指導教授、研究員が配置された[5]。 なお、講座開設を妨げられた小野は1932年に明治大学で新聞高等研究科[6]、上智大学で日本初[要検証 ]となる新聞学科を立ち上げ念願を果たすが、晩年の自著の中で、東大での講座反対は、当時文学部長だった滝精一が大阪朝日新聞社出身であったため、大阪毎日新聞社出身の自分を敵視したからであると述懐している[7]。 小さな組織だった新聞研究室は、戦後まもない1949年(昭和24年)に、GHQの民主化政策によって文系の学際的研究組織である独立部局の新聞研究所へと発展した[7]。新聞研究所は、「新聞および時事についての出版、放送又は映画に関する研究並びにこれらの事業に従事し、又は従事しようとする者の指導および養成」を目的とし、研究と同時に、これらのマスメディアで働く記者などの実務家を育成することを目的としていた。全国の大学組織の中でほかに類を見ないユニークな制度であり、学生の自治を重んじ、教員や同窓生も交えて自由闊達に議論をする学習の場として発展してきた。 1992年(平成4年)、新聞研究所は社会情報研究所として改組され、マスメディアに限定しない、情報に関わるあらゆる社会現象の研究を進めていくことになった。それに伴って教育部のカリキュラムも改定された。 2004年(平成16年)には、社会情報研究所が大学院情報学環と合併して発展的に解消し、教育部はそれまでの伝統を脈々と引き継ぎながら、文理融合型の教育活動を進めた。大学院設置基準第七条の三に定める「研究科以外の教育研究組織」としては、研究組織としては大学院情報学環が、教育組織として大学院学際情報学府が対応している。 2004年の大学院情報学環教育部便覧には、「本教育部が研究組織(教員組織)である大学院情報学環に設置されているのは、このように附置研究所に設置されていたという歴史的経緯による。」という記載があるが、東京大学ホームページや、情報学環・学際情報学府要覧の掲載を見る限り、2004年以降、組織図の上では所在が確認できない。 2012年年度(平成24年度)からは、混迷する時代状況や大学を取りまく内外情勢の変化に対応するかたちで改革を行った。 教育部研究生東京大学大学院情報学環教育部研究生は大学院情報学環教育部に入学し、教育部課程の授業を履修することになる。その特徴は以下の通りである。
授業科目情報学環教育部では、以下の4領域を研究している。
科目としては、領域情報社会論、メディア・ジャーナリズム論、情報技術論、情報産業論、特別演習(研究生合宿)などが開講されている。 情報産業論では、新聞論、出版論、広告論、情報と法、情報技術論では情報と交通、ITS、Physical Computingといった授業がある。 これらの授業は、学部・大学院の講義との同時履修を考慮して、午後2時50分~8時の時間帯で開講されている。 学歴に対する扱い沿革新聞研究所は、国立大学の附置研究所としては、唯一の教育研究組織として設置され、教育部に入所した学生は本科研究生と呼称されていた。その後、呼称は、社会情報研究所教育部研究生、情報学環教育部特別研究生、教育部研究生と変わるが、教育部課程を修了すると正規の課程の修了証や成績証明書が発行される。この扱いは新聞研究所時代から、現在まで同様である。また、入学金および学費についても、認可された教育課程として、新聞研究所教育部から現在に至るまで非課税扱いとなっている。 2019年の便覧から「学生定期健康診断の対象外である」と記載が追記されその後クレームによりその記載が削除されたりするなど、学籍、学歴について一部に誤解があり、正規の学生のはずなのに差別されている点も残る。2022年5月まで、東京大学コンプライアンス基本規則「第2条(3) 学生とは、本学に所属する学部学生および大学院生をいう。」とされていたが、総長との懇談会での教育部研究生からの指摘を受け、現在は、「学生とは、本学の規則に基づき、入学、聴講又は履修を許可された者をいう」と改定されている。 現在東京大学大学院情報学環教育部における正規の課程(教育部課程)を修了したという学歴となる。 学生身分の正式名称は「大学院情報学環教育部研究生」である。教育部の教育課程(教育部課程)は学位を与える課程ではないが、修業期間を2年とし、所定の単位を取得することで「正規の課程の修了を認定」する修了証を与えており、学校教育法上の「学生」である。従って入学金および授業料は、東京大学の学部生の授業料に準じ、標準在学年数と修了に必要な単位数に基づき設定されており、入学金、授業料ともに非課税である。 主に学部生向けを対象とする教育課程であり、副専攻(サブメジャー)や、(履修区分を意味する)プログラムと誤解されることも多いが、単位認定がなされ成績証明書が発行され、所定の単位を取得することで情報学環教育部における正規の課程の修了証が授与されるが学位記ではない。 全学科の在籍者を対象とする、学生教育研究災害障害保健(学研災)Aタイプ(大学が保険料を負担)に教育部研究生は一括加入している。また、授業目的公衆送信補償金制度にも情報学環・学際情報学府として加入しており、授業の課程に必要な資料については個々に著作権利者の許諾なく、オンラインの授業で利用が可能である。 教員吉見俊哉、北田暁大、林香里ら情報学環の教授・准教授のほか、ジャーナリストやテレビ、映画、出版関係者、広告代理店クリエーター、映像・放送技術者といった外部講師による講義、OBOGによる同窓会講義もある。 著名な出身者(新聞研究所出身者を含む)
一度でも在籍すれば、修了しなくても東京大学新聞研究所・社会情報研究所・大学院情報学環教育部同窓会に所属することができる。 脚注注釈
出典参考文献
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