桂男
桂男(かつらおとこ)は、中国の神話において月に住んでいるとされる伝説上の住人、または日本の妖怪。前者の意味から「桂男」は「美男」のことをさす慣用句としてもつかわれる。 概要月で木を切り続ける桂男の物語(「呉剛伐桂」)は、中秋節の起源に関する中国神話の三つのエピソードの一つで、月のウサギ(玉兎)がいる理由などがこの「呉剛伐桂」で説明されている。 桂男の伝説にはいくつか種類がある。 伝説1呉剛の妻が炎帝の孫伯陵戦国期から漢代にかけて成立した『山海経』の「海内経」には、呉剛を「呉権」と記して、
という一節がある。 伝説2唐末(860年ごろ)に編纂された『酉陽雑俎』には、きわめて簡潔に、以下の記述がある。
中国文学に登場する「呉剛伐桂」李白の「贈崔司戶文昆季」には次のような一節(第25、26句)がみられる。
日本における流伝桂男の伝説は早い時期から日本にも伝わっており、平安時代の私撰集『拾遺抄』にも「久かたの月の桂もをるばかり家の風をもふかせてしがな」という歌がある[1]。月と桂(かつら)は古くから文学上でも結びつけられており、『万葉集』では「目には見て手には取らえぬ月の内の桂のごとき妹をいかにせむ」と詠まれている[2]。 『伊勢物語』の中では、後に中宮となる藤原徳子と恋をした美男として知られる在原業平に比される主人公に対し、『万葉集』の歌を踏まえて、月の桂のように余人が触れてはならぬ人に通じた男という含みを持たせて「桂男の君のような」という表現を行って以来、日本文学において「桂男」は単に美男のことも指すようにもなった。 妖怪としての桂男![]() 桂男は江戸時代の奇談集『絵本百物語』にも描かれており「月の中に隅あり。俗に桂男という。久しく見る時は、手を出して見る物を招く。招かるる者、命ちぢまるといい伝う。」などとあり、「見るたびに 延びぬ年こそうたてけり 人のいのちを月はかかねど」という歌があるとして紹介している[3]。 和歌山県東牟婁郡下里村(現・那智勝浦町)に桂男と呼ばれる妖怪の伝承があったと記録されている。満月ではないときに月を長く見ていると、桂男に招かれて命を落とすことにもなりかねないという[4]。 桂男は月の兎と同様に、もとはインドの説話が中国を経て伝わったものだともいわれるが、日本神話では月の神である月読が保食神を殺害したといわれることから、月の神に死のイメージが伴っている。桂男に招かれて寿命が縮まるという説は、そのような伝説・神話が重なって付与されたのではないかと考えられている[1]。 備考日本の忍者が用いたと伝えられた忍術にも「桂男の術」という術がある。平時より敵陣に自分たちの味方となる忍者を忍ばせて様々な活動をさせるものであり、敵陣にいる自軍の忍者を、月にいる桂男に例えて呼んだものである[5]。 桂男にちなんだ作品脚注
外部リンク
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