和歌山県
和歌山県(わかやまけん)は、日本の近畿地方に位置する県。県庁所在地は和歌山市。 日本最大の半島である紀伊半島の南西側に位置し、県南部には大規模な山地を有する。 概要令制国では、紀伊半島の由来ともなった紀伊国の大半に当たる[注釈 2]。和歌山とは「万葉集」(つまり和歌)に詠まれるほど風光明媚な「和歌の浦」からの豊臣秀吉の命名による。江戸時代は初期には浅野家、のちに御三家の紀伊徳川家の領地(和歌山藩)であった。附家老として田辺に安藤家、新宮に水野家を置いた。古くから「木の国」と謳われたほど山林が多く(中山間地域の比率が7割超)、紀伊水道や熊野灘を挟んで変化に富んだ海岸線が続く。また、このような深山幽谷の地形から高野山開基による仏教寺院や熊野三山などの神社信仰が発達しており、その一方で中世から近代にかけては紀ノ川沿岸を中心に全国から見ても大規模な都市が形成されていた。 和歌山市を中心とする県北部は紀北工業地域(広義の阪神工業地帯)に属し、沿岸部は製鉄所や石油製油所などの重化学工業が盛んである。一方、太平洋ベルトから外れた立地条件の悪さや平地が少ないことと自然保護政策の一環で確保できる工業用地の貧弱さ、そしてそれによる機械工業の不振から大阪府や兵庫県の様な過密都市圏の工業と比べると生産量は至って少ない。その他、県全域で果樹栽培を中心とする農業が盛んで、特に県中部でのみかん栽培や御坊市を中心とする花卉栽培、田辺市を中心とする梅などの特産品があり、他に小規模であるものの水産業、林業が盛んで、各地でのブランド育成が進んでいる(詳細は下記経済の項を参照)。 人口は和歌山市を中心に大阪府と隣接する県北部に偏重している。県中南部は険しい紀伊山地がある関係で狭隘な沿岸部を除いて人口希薄地帯である。近畿地方(関西圏)では唯一、ここ40年間の国勢調査(1970年 - 2010年)で人口減となっている県であり、他の関西2府4県がいずれも15% - 40%の高い伸びとなっている中で顕著な特徴となっている。和歌山市では大阪都市圏へのストロー現象が深刻で人口減少が続いている一方で、岩出市など諸都市のベッドタウンとして顕著な人口増を続けている都市も一部では見られる。 地理・地域
気候和歌山県は、紀伊半島沖を流れる黒潮の影響を受けるため年間を通して温暖である。ただ、山間部に限ると冬は厳しい寒さとなる。その中で最も寒い高野山は、冬場の平均気温が青森市や函館市といった北日本並みとなるほか、雪が降ることも多い。これに対して沿岸部には無霜地帯が存在する。夏から秋にかけて台風の襲来が多く、1951年(昭和26年)以降の台風上陸数は鹿児島県、高知県に次いで3番目に多い県である。中でも「伊勢湾台風」では、紀伊半島や東海地方などに甚大な被害をもたらした。
瀬戸内海式気候に属し、梅雨期と台風期を除けば降水量が少なく、年間日照時間が長い地域となっている。夏になると、和歌山市など平野部では連日のように熱帯夜が続き、かなり寝苦しい夜もあるものの、昼間はそれほど暑くはならない。しかし、紀伊山地と和泉山脈・金剛山地の間に位置する北東側は内陸性気候(夏と冬、昼と夜の気温差が大きい)の傾向があるため、猛暑になることがある。1994年8月8日に伊都郡かつらぎ町で40.6℃(1933年7月25日に山形市で観測された当時の日本歴代最高気温記録である40.8℃に次ぐ記録)を観測している。なお、北東側は寒暖差を利用したブドウをはじめとする様々な果物の栽培が行われている。 冬は晴れることが多いため、放射冷却が強まった朝は平野部でも冬日になることがある。そのうえ、強い冬型の気圧配置になると雪雲が和歌山市内に流れ込むことがあり、ごく稀にうっすらではあるが積雪することがある。さらに、南岸低気圧が紀伊半島沖を通過した時にはまとまった積雪となることもあり、平野部で10cm以上の積雪はほぼすべて南岸低気圧によるものである。
太平洋側気候に属し、年間日照時間が長い地域となっている。年間降水量は2,000mm程度でそれほど多くない。御坊市など沿岸部の夏は蒸し暑いが、海洋性気候の特徴である海風が吹き、ほとんど猛暑にならないため比較的過ごしやすい(東牟婁郡串本町潮岬など県南部の沿岸部にも同様の特徴がみられる)。 太平洋側気候に属し、年間日照時間が2,200時間を超え、全国1位2位を争うほど日照時間が長い地域となっている。一方、年間降水量はかなり多く、特に東側は4,000mmにも達する日本でも有数の多雨地帯である。夏から秋にかけて台風が頻繁に通過することから「台風銀座」と呼ばれている。また、台風本体が遠くにある場合でも、南から流れ込む暖湿流の影響で南東側を中心に大雨を降らせて、被害をもたらすことがある。
自然公園地域区分和歌山県には以下の9市6郡20町1村がある。町の読み方はすべて「ちょう」、村は「むら」である。 紀伊国の大部分を近代以降引き継ぐ和歌山県の地域区分には、紀北・紀南の二分法と紀北・紀中・紀南の三分法との2つが用いられることが多い[2]。紀北・紀南の二分法は、近世和歌山藩における口六郡・両熊野という地域区分をほぼ引き継いだものである[3]。 紀北とは紀伊国北部の略とされ、有田郡ないし日高郡以北を指す[4]。それに対し、紀南とは狭義には西牟婁郡(田辺市を含む)および東牟婁郡(新宮市を含む)を指し、二分法を採る場合には日高郡以南とする[5]。紀中とは、第二次世界大戦後に地域開発上の要請から生じた新しい概念で[6]、紀北と紀南の境となる有田郡(有田市を含む)と日高郡(御坊市を含む)を指す[7]。 しかし、こうした本来の用法があるものの、これら一群の地域区分が何を指すのかが曖昧となっている状況もある[8]。例えば、紀南を指して「南紀」と呼ぶ場合があるが、南紀とは南海道紀伊国の略に由来して紀伊国全体を指す語であり[5]、紀南は南紀に対し下位の概念である。こうした混同は、戦後の観光ブームの中で、観光上の要請から和歌山県南部を表す観光用語として南紀が広められ、昭和40年代ごろの昭和元禄と呼ばれた経済成長の時代に南紀と紀南が同義語として用いられるようになった[9] もので、和歌山県在住者でも紀南と南紀が混同されることもある[10]。 また、田辺市・西牟婁郡・東牟婁郡・新宮市を開催地として1999年(平成11年)に開催された南紀熊野体験博の会期中に、伊都郡・橋本市が「北紀高野」を謳って観光キャンペーンを行ったが、「北紀」という名称には歴史的に根拠がないものであることから、批判がなされた[11]。 一方、県による行政的な地域区分は郡に基づく7区分で、それぞれの地域に振興局を設置している。 →「§ 中世」も参照
北部
中部
南部
歴史先史人類が県域に足跡を遺したのは、今から約2万5千年前の後期旧石器時代であったと考えられている。このころはまだ、寒冷化気候で、高地にはカラマツが生い茂り、低地にはブナ林が広がり、ナウマンゾウやオオツノシカ・ヒグマなどの大型哺乳動物が生息していたと推測されている。遺跡は40カ所ばかり発見されている。 縄文時代の遺跡が百数十カ所見つかっている。しかし、発掘調査はほとんど行われていない。和歌山市の鳴神貝塚は近畿で初めて発見された貝塚である。その他、竪穴建物跡が確認されたのは、和歌山市川辺遺跡、橋本市芋尾遺跡、野上町安井遺跡、広川町鷹島遺跡などがあり、竪穴建物に加えストーン・サークルが見つかった海南市溝ノ口遺跡がある。 年表
人口![]()
2023年4月1日時点の和歌山県推計人口は89万5931人で、調査を始めた1967年以降、初めて90万人を下回った。減少は27年連続で、特に近年、自然減(死亡数と出生数の差)が急増。ここ1年の出生数は死亡数の3分の1ほどにとどまっている[13]。 和歌山人口動態2024年現在約88万人となっており減少傾向が続いている。
政治県政県庁、市役所、および町村役場において、企画員という和歌山県独自の職階を置いている。一般に、課長級ないしは課長補佐級の職に当たる。 歴代公選知事→詳細は「和歌山県知事一覧」を参照
県議会→「和歌山県議会」を参照
会派構成(2025年7月4日現在)[15]。
選挙区
財政平成19年度
平成18年度
地方債の残高
地方債等の合計残高:8,484億8,300万円(連結会計)
平成17年度
平成16年度
国政特徴として「自民王国」であり、自由民主党が保守新党を合併してからは自由民主党が衆参全議席を独占していたが、2009年(平成21年)8月30日投票の第45回衆議院議員総選挙では、1区と2区で民主党公認候補が当選、自民の牙城を崩したものの、2012年(平成24年)投開票の第46回衆議院議員総選挙では、2区で自民党候補が議席を奪還した。 衆議院参議院経済・産業→「Category:和歌山県の企業」も参照
工業和歌山市、海南市は阪神工業地帯の南端に位置し、出荷額は大きい。 和歌山の目立った工業に鉄鋼業と石油産業がある。鉄鋼業の出荷額は県内産業(出荷額ベース)の3割強に相当し、石油産業と合わせれば県内産業(出荷額ベース)の6割弱を占める[16]。 大規模工場としては、和歌山市の日本製鉄(関西製鉄所和歌山地区)、花王(和歌山工場)の主力工場、三菱電機(冷熱システム製作所)など、有田市のENEOS(和歌山製油所)などがある。 地場産業では、海南市の家庭日用品(水回り用品は国内の約8割を占める。主な大手企業に、アイセン工業、イシミズ、オーエ、ヨコズナクリエーション、ワコー株式会社など)がある。その他、御坊市の麻雀牌とサイコロ、有田市の蚊取り線香、田辺市のボタン、橋本市のパイル織物(新幹線や高級車のカーシートなどに用いられる)などが有名。 和歌山市南部の三葛と紀三井寺を中心とするニット産業は日本一で、丸編みニットは全国シェアの37%を占める[17]。 農業![]() 和歌山県は本州最南端に位置し温暖な気候で果物の栽培が非常に盛んなため、果樹王国といわれている。以下は主なものを記す。
漁業和歌山県沖に黒潮(日本海流)があるため、漁業は盛んである。
林業和歌山県は平野部が少なく山地が地域の大部分を占めるため、古くからスギ・ヒノキを中心にした山林業が盛んである。 全国の山林はほとんどは国有林であるが、和歌山県では大部分が民有林である。また、古くからの良材の産地(秋田、京都、宮崎、奈良など)は、民有林が多い。2001年(平成13年)、間伐の遅れによる森林の荒廃や林業労働力の高齢化が著しくなったため、三重県と共同で緑の雇用事業を提唱し、軌道に乗せた。 県内に本社を置く主要企業
県内に拠点事業所を置く主要企業
生活・交通警察交通鉄道バス隣接する奈良県や三重県が1社独占に近いのに対し、当県は地域により細かく事業者が分かれている。南海電鉄の系列(☆)の影響が強いが近鉄系(★)や独立系も少なくない。カッコ内は主な走行自治体。
空港このほか、和歌山市内からは大阪府内にある関西国際空港までのリムジンバスが運行されており、所要時間は約40分である。 道路※全国でも珍しく、県内の3桁一般国道は全線が和歌山県管理である。 →「和歌山県の県道一覧」を参照
医療・福祉→詳細は「Category:和歌山県の医療機関」を参照
→「和歌山県災害拠点病院」を参照
→「和歌山県保育所一覧」を参照
教育![]() 私立
私立
マスメディア県内に本社を置くマスメディアは少ないものの、近畿広域圏に属することから、県北部を中心に在阪の民間放送局を視聴・聴取できるなど、大阪府との結びつきが強い。 県内に本社・拠点を置く企業
→「Category:和歌山県のケーブルテレビ局」を参照
文化・スポーツ方言
食文化→「Category:和歌山県の食文化」も参照
→詳細は「日本の郷土料理一覧 § 和歌山県」を参照
伝統工芸
→詳細は「日本の伝統工芸品の一覧 § 和歌山県」を参照
スポーツ→「Category:和歌山県のスポーツチーム」も参照
スポーツ協会・連盟など観光→詳細は「和歌山県の観光地」を参照
→「近畿地方の史跡一覧 § 和歌山県」、および「和歌山県の城」も参照
和歌山市、白浜町、那智勝浦町などが代表的。日本有数の温泉地であり、かつ和歌山マリーナシティ・ポルトヨーロッパ、アドベンチャーワールド、白浜エネルギーランドなどのレジャー施設もあり、夏には海水浴客も多く訪れる。 また特徴的な観光として、社寺参拝(熊野三山、高野山、西国三十三所の1番青岸渡寺・2番紀三井寺など)があり、最も客数が多い。熊野三山への参詣道と高野山は、2004年(平成16年)7月7日に世界遺産に登録された。しかし、神社の数が沖縄県に次いで少ない400社である。また最近は、古式捕鯨で有名な熊野灘がホエールウォッチングのスポットとして新たに注目され始めている。 和歌山市を中心とする紀北地方では大阪方面からの日帰り旅行客が多く、日帰り入浴・遊歩道・ハイキングコース・キャンプ場などが多数設置されている。他には、釣り・花見・観光果樹園なども特色である。 有形文化財建造物→詳細は「和歌山県指定文化財一覧」を参照
文化施設![]()
スポーツ施設→詳細は「Category:和歌山県のスポーツ施設」を参照
対外関係
和歌山県を舞台とした作品→詳細は「和歌山県を舞台とした作品一覧」を参照
人物→「和歌山県出身の人物一覧」を参照
和歌山県名誉県民和歌山県名誉県民の称号は、1967年(昭和42年)10月14日に制定された和歌山県名誉県民条例(和歌山県条例第34号)に基づき、「和歌山県の発展に卓絶した功績があり、ひとしく県民の敬愛を受ける者」へ贈られる(条例第1条)[21]。対象者は、和歌山県知事が和歌山県議会の同意を得て選定することが定められる(条例第2条)。名誉県民に選定された者には、顕彰状、徽章や記念品の金盃も贈られるほか(条例第3条)、知事が定める礼遇や特典を受けられる(条例第4条)[21][22]。
観光大使など県が大使を委嘱している著名人を記載する。 脚注注釈出典
参考文献
関連項目
外部リンク
行政観光
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