イタリアの地震一覧 (イタリアのじしんいちらん)では、イタリア で発生した主な地震 の記録を年表 形式で記載する。
解説
1900-2017年の地震分布
イタリア周辺のユーラシアプレートとアフリカプレートの図
地中海周辺のM5.5以上の地震(1900-2016)
主な原因
イタリア付近は、アフリカプレート とユーラシアプレート が衝突し、互いに押し合っている地域で、テクトニクス 的にも地質学 的にも複雑な地域であり、地震活動が活発にみられる[ 1] 。イタリアは同じヨーロッパのギリシャ (南部)やトルコ (北西部)と同様に地震の多い国であり、古代・中世以降の地震被害の記録が数多く残されている。2500年の間に、イタリアでは3万回以上の地震が起きた。メルカリ震度階級 4以上のものだけに絞っても、560回以上起きている。20世紀では7回の地震が6.5以上のマグニチュードを有していた[ 2] 。イタリアで地震が多いのは、端的に言えばユーラシアプレート とアフリカプレート の収束境界部分にあたり断層 が多いためであり、プレートが年間4-10mmのペースで動いているからであるが、この地域は地質構造が日本以上に複雑で、単純なプレートの沈み込みなどでは説明できない[ 3] 。イタリアでは、中生代 以降の地殻変動により現在のイタリア半島 西岸に当たる地殻が今のコルシカ島 付近から東に移動してきた。この地殻の東縁では古期地中海 に当たる海洋プレート がこの地殻(アフリカプレート)に向かって沈み込み、付加体 や火山帯 を作りながら、現在のイタリア半島東岸に当たる地殻へと接近していった。やがて両者が衝突すると沈み込みは緩んで衝突・圧縮に変わり、アペニン山脈 を形成した[ 4] 。現在のイタリアの地震の分布をみると、アルプス の南西端からアペニン山脈へと長い弓のように連なっており、山脈と地震帯が一致している[ 5] 。ただし、イタリアにおいては日本のように規模の大きな地震は少ない[ 6] 。
研究と防災
イタリアの自然災害研究は従来から地震研究よりも火山研究に重点がおかれているものの[ 7] 、地震発生帯の研究などは行われている[ 8] 。イタリアでは古い文献など地震についての資料が数多く残され原因などを想像し関心を寄せていたが、地震の原因などの研究に関心が持たれたのは15世紀ごろからで、地震学の発展とともに地震の原因と地理的分布に関する研究が行われるようになったのは19世紀ごろとなる。近年は地震観測ネットワークなどが発展し、さまざまな観点から災害管理を行い都市計画や重要施設の建設や保護に活かされている[ 9] 。また、1992年に設置された「災害防護国民サービス」(イタリア語: servizio nationale della protezione civile)により、イタリア市民保護局 つまり全国的な組織を中心とした迅速で広域的な対応が可能となっている[ 10] [ 11] 。
法律
イタリアは1974年 に初めて地震対策法が制定され、それは鉄筋やコンクリートなどで建物を補強することを定めたものだったが[ 12] [ 13] 、南部のシチリア、カラブリア州が対象だった。その後、イルピニア地震 (1980年) や2002年のモリーゼ地震 [ 14] を経て、全土を危険度で4地域に分け耐震建築を義務づける改正法が2003年3月20日に導入された[ 15] [ 6] [ 16] [ 17] 。イタリアでは新たに耐震に関する法律の起草が2003年に始まった。その実行力を持つ法律の発布というのは、EUに参加する国の中で、共通に規定されている構造設計に関する法律であるユーロコード にしたがって調査されて2008年に制定された[ 18] 。
その一方、歴史的地域では耐震基準の順守が免除されており、新築の場合でも耐震構造が取り入れられないことが多い[ 19] 。また、地震対策法は負担が増えると予測される建設業界への配慮から、2010年までの猶予を設けていた[ 14] 。さらに、2016年8月の地震 では耐震補強を施された建物が倒壊しており、手抜き工事などの指摘もされている[ 20] 。また、新築の建物でも耐震性の少ない建物が多く存在している[ 6] [ 21] 。さらに、北部のフリウリ などはフリウリ地震 の経験から耐震建築が広がったが、中部や南部では耐震建築は広がっていない。新築の建物でも、1割から3割ほどである[ 21] 。2009年4月現在、学校や病院などの公的機関のうち、約8万か所が「高危険度」とされており、イタリア全土に2万2000校ある学校のうち、耐震基準を満たしているのは9000校である[ 22] 。
地震の一覧
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時期
名称
Mw
震源地
備考
62年2月5日
ポンペイ地震
5.2–6.1
カンパニア州 付近
ポンペイ 等に被害[ 23]
1117年1月3日
6.4以上
ヴェネツィア、パルマ等に被害
1169年2月4日
シチリア地震
M6.6
20,000人以上死亡
1293年9月4日
ナポリ地震
M5.8
1298年12月1日
リエーティ地震
M6.3
リエーティ全域に被害
1315年12月3日
ラクイラ地震
M5.5
コッレマッジョ大聖堂 等に被害
1348年1月25日
フリウリ地震
M6.7
10,000人近くが死亡
1349年
アペニン地震
M6.7
1352年12月31日
ウンブリア地震
M5.6
死傷者多数
1361年7月17日
プーリア地震
M6.0
約100人が死亡
1458年4月26日
ウンブリア地震
M5.8
数人が死亡
1461年11月26日
ラクイラ地震
M6.4
約150人が死亡
1505年1月3日
ボローニャ地震
Mw5.7
2人死亡
1511年3月26日
フリウリ地震
Mw6.5
およそ10,000人が死亡
1517年3月29日
イルピニア地震
Mw5.4
少なくとも数十人、最悪の場合100人が死亡
1542年6月13日
トスカーナ地震
Mw5.8
およそ150人が死亡
1561年8月15日
Mw6.4
およそ500人が死亡
1570年11月17日
Mw5.6
およそ70人から200人が死亡
1599年11月5日
Mw5.9
およそ40人が死亡
1639年10月7日
アマトリーチェ地震
6.2
アマトリーチェ 付近
推定死者500人。イタリア中部地震 と震源地はかなり近い
1654年7月23日
Val di Comino付近
Mw6.3
2,000人以下が死亡
1659年11月5日
Le Serre付近
Mw6.7
1,500人以下が死亡
1661年3月22日
Appennino Forivese付近
Mw5.9
少なくとも250人が死亡
1693年1月11日
ヴァル・ディ・ノート大地震
7.4
シチリア島 付近
推定死者6万人、カタニア で10,000人以上の死者(最悪の場合16,000人以上とも言われる)また、1月9日にも前震があった
1695年2月25日
イルピニア(ナポリ 周辺)付近
Mw6.6
数百人が死亡し、破滅的な被害が出たとされる
1702年3月14日
イルピニア近郊
Mw4.9
およそ400人が死亡
1703年1月14日
Monte Reatini(リエーティ 付近) it: Terremoto_dell'Aquila_del_1703
Mw6.5/6.8
6,000人から9,000人が死亡したとされ、アスコリ・ピチェーノ やラクイラ などに被害
1703年2月2日
リエーティ 付近 it: Terremoto_dell'Aquila_del_1703
Mw6.6
6,000人以上が死亡したとされ、アスコリ・ピチェーノやラクイラなどに被害
1706年11月3日
アブルッツォ州
Mw6.7
アブルッツォ州 やモリーゼ州 に大きな被害を出し、およそ2,400人が死亡
1726年9月1日
パレルモ 付近
Mw5.8
250人が死亡
1732年11月29日
イルピニア
Mw6.7
およそ1,942人が死亡、ナポリ 等の67のコムーネ に破壊的な被害
1743年2月20日
リボルノ 近郊
Mw7.0
112人が死亡したが、最も震源地に近いNardoでは、犠牲者は1名だった
1762年10月6日
Mw6.0
およそ500人が死亡
1781年2月5日
メッシーナ 近郊
Mw7.1
50,000人が死亡、地震は2分間続き、2月6日、7日、3月1日、28日にも大規模な余震があった
1789年9月30日
テヴェレ川近郊
Mw5.9
およそ500人が死亡、大規模な余震が相次いだ
1799年7月28日
Mw6.1
およそ100人が死亡、大規模な地震が3回あった
1805年7月26日
ナポリ地震
6.7
5,573人死亡
1806年8月26日
5.6
死者多数
1818年2月20日
イオニア海 地震
6.3
死者34人
1823年3月5日
シチリア地震
6.1
およそ20人が死亡
1835年10月12日
6.1
およそ115人が死亡し、240人以上がけが
1836年4月25日
カラブリア地震
6.2
200人以上が死亡
1851年8月14日
6.3
およそ1000人が死亡
1857年12月16日
バジリカータ地震
7.0
バジリカータ州 付近
死者12,000人
1905年9月8日
カラブリア地震 (1905年) (英語版 )
7.2
カラブリア州 付近
推定死者557~2,500人
1907年10月23日
カラブリア地震
167人が死亡
1908年12月28日
メッシーナ地震
7.1/7.2
メッシーナ海峡
推定死者82,000人から12万人[ 24] 近代ヨーロッパにおいて最大の被害を出した地震
1914年5月8日
シチリア島地震
約70人が死亡
1914年10月26日
イタリア北部地震
5.3
1人が死亡、ピエモンテ州 やトリノ 近郊で被害があった
1915年1月13日
アベッツァーノ地震
6.7
ラクイラ 付近
推定死者29,978–32,610人 イタリアにおいて死傷者の多い地震のひとつ
1916年8月16日
4人死亡
1917年4月26日
ウンブリア地震
約20人死亡
1918年11月24日
シチリア島地震
100人死亡
1919年6月29日
トスカーナ州地震
6.2
100人以上死亡
1920年9月7日
トスカーナ近郊
6.8
171人が死亡
1927年12月26日
ラツィオ州
4.8
2人死亡
1928年3月27日
フリウリ地震
11人死亡
1930年7月23日
イルピニア地震 (1930年) (英語版 )
6.6/6.7
イタリア南部
死者1,404人
1930年10月30日
アンコーナ 付近
18人死亡
1933年9月26日
アブルッツォ州
12人死亡
1936年10月18日
フリウリ地震
5.9
19人死亡
1943年10月3日
マルケ州
15人死亡
1962年8月21日
イルピニア地震(1962年) (イタリア語版 )
6.4
イタリア南部
死者400人、1000人以上が負傷
1976年5月6日
フリウリ地震
6.9
ジェモーナ・デル・フリウーリ 付近
死者990人[ 25]
1980年11月23日
イルピニア地震 (1980年)
6.9
イタリア南部
死者2,483–4,900人[ 26] 戦後のイタリアで最も規模が大きい地震で、これを機にイタリアの防災対策は変容を強いられた
1997年9月26日
ウンブリア・マルケ地震 (英語版 )
5.7-6.1
イタリア中部
双子地震
2002年10月31日
モリーゼ地震 (2002年) [ 27]
5.9
モリーゼ州
双子地震
2009年4月6日
ラクイラ地震
6.3
ラクイラ 付近
死者309人
2012年5月20日 同5月29日
イタリア北部地震
20日6.1 29日5.8
サン・フェリーチェ・スル・パーナロ 付近
死者20日7人、29日20人
2016年8月24日
イタリア中部地震 (2016年8月)
6.2
イタリア中部
死者298人
2016年10月26日 同10月30日
イタリア中部地震 (2016年10月)
6.6
イタリア中部
死者3人
2017年1月18日
イタリア中部地震
5.0-5.5
イタリア中部アブルッツォ州 付近
死者29人(ファリンドラ で発生した雪崩 によるもの)
2017年8月21日
イスキア島地震
4.0
イタリア南部イスキア島 付近
死者2人、40人以上が負傷
被害の大きな地震
震源地か名称
時期
Mw
死者
メッシーナ地震
1908年12月28日
7.24
死者100,000人、津波などによる
ヴァル・ディ・ノート大地震
1693年1月11日
7.41
60,000人が死亡、津波などによる[ 28]
カラブリア地震
1783年2月5日
6.91
50,000人死亡、震災後の火災などによる[ 29]
アベッツァーノ地震
1915年1月13日
6.99
30,519人が死亡
ヴェローナ
1117年1月3日
6.49
死者30,000人
イルピニア 近郊
1456年12月5日
6.96(Mw)
死者30,000人
カタニア
1169年2月4日
6.60(Mw)
20,000人が死亡
バジリカータ
1857年12月16日
6.96(Mw)
12,000人が死亡
Nicastro(今日のLamezia Terme)
1638年3月27日
7.00(Mw)
10,000人以上の死者
フリウリ 近郊
1348年1月25日
6.66(Mw)
死者990人
脚注
^ 世界の主な地震 (気象庁 )
^ http://www.protezionecivile-imbersago.com/rischio-sismico.html
^ Why Italy gets so many earthquakes, and how to survive one (The Independent)
^ News Archive - The Earth Institute, Columbia University (2010年6月24日時点のアーカイブ )
^ Fourth earthquake rattles Italy: Are more dangerous tremors on the way?(CNN 2016/10/31)
^ a b c 中村功、「防災体制のありかたについての一考察:イタリア・ラクイラ地震を発端に 」『松山大学論集』 2010年 21巻 4号 p.233-264, NAID 110009456617 , 松山大学総合研究所
^ イタリアの火山監視・研究体制(暫定版) (文部科学省 )
^ Zonazione sismogenetica ZS9(地震発生帯) (イタリア国立地球物理学火山学研究所 )
^ Description of the seismic risk (イタリア市民保護局)
^ 野村直人、佐藤滋、「イタリアにおける震災復興プロセスに関する研究 」 『都市計画論文集』 2015年 50巻 3号 p.387-393, doi :10.11361/journalcpij.50.387
^ 1992年2月24日 法律第225号
^ 朝日新聞2009/4/11外報より。2017年3月に閲覧。
^ 2 febbraio 1974, n. 64 Provvedimenti per le costruzioni con particolari prescrizioni per le zone sismiche. (GU Serie Generale n.76 del 21-03-1974) 地震対策法の全文(イタリア語)。
^ a b “朝日新聞「外報」”. 朝日新聞 . (2009年4月11日). 2009-04-11
^ DEL PRESIDENTE DEL CONSIGLIO DEI MINISTRI 20 marzo 2003, 地震対策法の全文(イタリア語)
^ Ordinanza PCM 3274 del 20/03/2003 (イタリア官報 )
^ O.P.C.M._20_marzo_2003_n.3274 (イタリア市民保護局)
^ イタリアでの耐震設計の取り組み ウンブリア州立新緊急避難センターを例に (関東学院大学 アルベルト・パルドゥッチ教授)
^ 【イタリア地震】政府が非常事態宣言 余震で救助難航 (BBC)
^ イタリア地震、手抜き工事・耐震偽装疑惑多数
^ a b 毎日新聞2009年4月10日
^ 朝日新聞2009年4月11日
^ Patterns of Reconstruction at Pompeii (ヴァージニア大学 人文科学先進技術研究所)
^ it:Terremoti in Italia nel XX secolo
^ Friuli. 40 anni dal terremoto (イタリア放送協会 ニュース)
^ USGS (September 4, 2009), PAGER-CAT Earthquake Catalog , Version 2008_06.1, United States Geological Survey , http://earthquake.usgs.gov/data/pager/catalogs/
^ 2002年イタリア南部の地震関連情報 (一般社団法人 日本地震工学会事務局)
^ [1] シチリア・ノートの 1693 年ヴァル・ディ・ノート大地震からの復興—移転再建をめぐって(日本建築学会大会学術講演梗概集)
^ en:1783 Calabrian earthquakes
参考資料
関連項目
周辺国の地震一覧
外部リンク
中世に起きた地震の紹介
要素
種類
メカニズム 観測
調査 被害 対策
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