「ギヴ・ミー・ラヴ」(Give Me Love (Give Me Peace On Earth))は、ジョージ・ハリスンの楽曲である。1973年5月にスタジオ・アルバム『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』からの先行シングルとして発売され、同作にオープニング・トラックとして収録された。シングル盤は、Billboard Hot 100で『マイ・スウィート・ロード』以来2度目となる第1位を獲得。このほか、イギリス、カナダ、オーストラリアなど世界各国のシングルチャートでトップ10入りを果たした。
アルバム『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』に収録されているほとんどの楽曲と同じように、ハリスンは1971年から1972年にかけて「ギヴ・ミー・ラヴ」を書いた[4]。この期間中、ハリスンはニューヨークで2つの慈善コンサートを開催し、ライブ・アルバムの発売やコンサート・フィルムの公開の準備をするなど[5]、バングラデシュ独立戦争の難民を支援することに専念していた[6]。これに加え、ハリスンは人道支援プロジェクトが抱えるビジネスや法律上の問題に悩まされていた[7]。作家のアンドリュー・グラント・ジャクソンは、著書『Still the Greatest: The Essential Solo Beatles Songs』で、この最後の問題に対してのハリスンの欲求不満が、『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』に収録の楽曲の多くに陰湿な雰囲気をただよわせることになったとしている[8]。
歌詞の中で、ハリスンは物理的な世界における人生のヴィジョンを表現している[17]。曲は楽器のパッセージから始まり、カルマと絶え間ない再生のサイクルから解放されたいという願いを歌う[18][19]コーラスに続く[20]。これらの歌詞には、シンプルかつ普遍的なメッセージが込められており[14][21]、当時の時代背景からハリスンの個人的な精神的探求と同じく、1960年代の「平和と愛」の精神と関連づけられている[22]。また、2つのブリッジで、ハリスンは「Oh ... my Lord」というフレーズの中に、「Om」という呪文を取り入れている[16][23]。
本作が第1位を獲得した週のBillboard Hot 100では、ハリスン、マッカートニー、プレストンの楽曲がそれぞれ3位以内にランクインしており[52]、ビートルズが同チャートの上位を占めたのは1964年4月25日の週以来となった[56]。シャフナーは、ビートルズ関連の作品がアメリカのチャートの上位を占めていることから、この時期について「ビートルマニアの黄金期を思わせる」と表現している[57]。2013年10月時点で、1973年6月30日の週のチャートは、元ビートルズの2人がアメリカのシングルチャートで上位2位を占めた唯一の例となっている[58]。
『オールミュージック』のリンゼイ・プラナーは、本作を「穏やかなロッカー」と表現したうえで本作へのハリスンのギターの貢献を強調し、同じようにホプキンスの「ソウルフルなキーボードの演奏とフィル」も注目に値すると評している[14]。『ポップマターズ(英語版)』のゼス・ランディは、本作について「陽気な曲」「ハリスンの最も象徴的かつ、愛されているNo.1シングル」と表現している[63]。2004年に出版された『The Rolling Stone Album Guide』に寄稿したマック・ランドールは、本作について「ハリスンの最も美しい曲の1つ」と評している[71]。
サイモン・レングは、本作のギター・ラインについて「あまりにも心地よすぎる」とし、「『リヴィング・イン・ザ・マテルアル・ワールド』は、より強いオープニング・ソングではほとんど楽しめなかっただろう…驚くほど表現力豊かなギターのステートメントであふれる豪華なバラード『ギヴ・ミー・ラヴ』は、感動的な3分間において『オール・シングス・マスト・パス』が持つ感情的な力を忘れずにいる」と付け加えている[30]。アンドリュー・グラント・ジャクソンは、著書『Still the Greatest: The Essential Solo Beatles Songs』で、「ギヴ・ミー・ラヴ」によってハリスンが「バングラデシュ・コンサートでやろうとしていたこと、そしてビートルズがより理想主義であった時期にやろうとしたことの本質」を捉えたと考察している[15]。また、ジャクソンは本作がハリスンの「神への最上級の嘆願」であるとし、「ボーカルが歌詞に込められた切望と完璧に合っている」「『愛こそはすべて』や『イマジン』に並ぶ、水瓶座の時代を最も純粋に表現した例」と付け加えている[15]。
2003年に公開された『コンサート・フォー・ジョージ』のドキュメンタリーの中で、エリック・クラプトンはお気に入りのハリスンの楽曲の1つとして、「イズント・イット・ア・ピティー」とともに本作を挙げている[74]。AOL Radioが2010年に行なった視聴者投票「10 Best George Harrison Songs」では第5位[75]、『Ultimate Classic Rock』が発表した「Top 10 George Harrison Songs」では第4位にランクインした[76]。『ローリング・ストーン』誌のデヴィッド・フリックは、「25 Essential George Harrison Performances」と題したリストで本作を挙げ、「柔らかくて、親密な賛美歌」と説明している[77]。
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