ハウス・オブ・カード 野望の階段
『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(ハウスオブカードやぼうのかいだん、原題:House of Cards) は、ボー・ウィリモンがショーランナーを務め、映画監督のデヴィッド・フィンチャーと主演男優のケヴィン・スペイシーらが製作総指揮するアメリカ合衆国のドラマシリーズ。アメリカ合衆国ではNetflixが配信し、インターネット配信で初公開されたドラマシリーズとして史上初めてプライムタイム・エミー賞を受賞した[1]。本作の原型は1990年にイギリスでテレビ放映されたドラマシリーズ『野望の階段』である[2]。 アメリカ合衆国では2013年2月1日にシーズン1を、2014年2月14日にシーズン2を、2015年2月27日にシーズン3を、2016年3月4日にはシーズン4を、2017年5月30日にはシーズン5を、それぞれ13話ずつ配信開始した。シーズン5以降はボー・ウィリモンがショーランナーの立場から外れた。最終シーズン6は8話に短縮され、2018年11月2日に配信された[3][4]。 2016年3月以降、日本ではNetflixでアメリカ合衆国と同時に配信されている。 あらすじシーズン1主人公フランク・アンダーウッド(ケヴィン・スペイシー)はホワイトハウス入りを目指す下院議員。大統領候補ウォーカーを応援し、彼が当選した暁には国務長官のポストをもらう約束をしていた。しかし、大統領に当選したウォーカーはフランクを裏切り、別の人物を候補とする。耐えがたい屈辱を味わったフランクは、NPO法人「クリーン・ウォーター」の代表を務めるキャリア・ウーマンである妻クレア(ロビン・ライト)とともに権謀術数を駆使してホワイトハウス入りを目指す。フランクは記者のゾーイと関係を持ち、偽の情報を流して国務長官候補を陥れる。州知事の副大統領就任に伴う州知事選挙に、貸しのある議員ルッソを出馬させる。だが操れなくなると腹心のダグ・スタンパーにコールガールのレイチェルを使ってルッソを陥れさせ、自殺に見せかけて殺害する。副大統領を再び州知事選に出馬させ、自分が副大統領となる。 シーズン2ゾーイと仲間の記者グッドウィンがフランクの犯罪を嗅ぎ付けたため、フランクはゾーイを殺害し、グッドウィンを陥れて刑務所に入れる。スタンパーは秘密を握るレイチェルに惚れ、始末せずに隠すが、大怪我をさせられて逃げられる。フランクとクレアは大統領夫妻と親しくなり、夫婦間の問題について知る。実業家のタスクと大統領への影響力をめぐって争い、タスクと大統領が繋がる資金洗浄疑惑をかきたてる。意図的に中国との外交摩擦を作り出し、密かに大統領弾劾を働きかけて大統領を辞職に追い込み、ついには大統領の座につく。 シーズン3大統領となったフランクは支持率が低迷する中で再選を目指し、違法すれすれの予算転用で失業者救済プログラム"アメリカ・ワークス"を推進する。中東をめぐる外交闘争ではロシア大統領と渡り合うが、国連大使に抜擢したクレアは経験不足による失点を重ねて辞職する。大統領予備選で女性候補ヘザー・ダンバーにリードされたフランクは旧知の女性議員ジャッキー・シャープを第三の候補として立候補させ、ダンバーを攻撃させる。だがフランクのあまりの冷酷さにシャープは裏切ってダンバーを支持し、シャープの元恋人で大統領首席補佐官のレミー・ダントンは辞職する。レイチェルに大怪我をさせられたスタンパーは後遺症に苦しんでフランクから遠ざけられ、一時はダンバーのために働くが、欺いてフランクのもとに戻り首席補佐官となる。スタンパーはレイチェルを探し出し、躊躇しながらも殺害する。クレアは選挙戦の前面に出て闘うが、単なる道具として使われる事に不満を募らせ、選挙戦の最中にフランクのもとを去る。 シーズン42016年大統領予備選のさなか、クレアは自分の政治キャリアを追求し、リアン・ハーヴェイを選挙参謀として下院議員選への立候補をもくろむが、フランクが阻止する。グッドウィンがフランクを狙撃して重傷を負わせ、クレアが代わりにペトロフと交渉してガソリン危機を終息させる。共和党の大統領候補のコンウェイが優勢に大統領選を進めるなか、肝臓移植を受けて回復したフランクはクレアと和解し、クレアの母の死を利用して民主党副大統領候補とする。コンウェイに対抗するためにイスラム教過激組織のICOの幹部を捕えると、ICOがアメリカ人を人質にして幹部の解放を求める。ハマーシュミットが前大統領、シャープ、ダントンらの証言を得てフランクの陰謀を暴露する中、アンダーウッド夫妻は報道とICOの両方に対抗して選挙に勝つため、混沌を作り出そうと決意する。 シーズン5シーズン5は2016年大統領選挙本選の数日前から始まる。フランクはICOによるテロの脅威を強調して疑惑報道から注意をそらそうとする。選挙日当日、投票率の伸び悩みで劣勢となったフランクは、データ・サイエンティストのエイダン・マカランにテロの脅威をでっち上げさせ、2州での投票を停止させる。次期大統領も副大統領も定まらず、規定に従って上院はクレアを副大統領に選出するが、下院は同数となり大統領は確定しない。クレアが暫定大統領になり2州で再投票が行われるが、コンウェイは失言を犯して敗北する。コンウェイの選挙参謀だったマーク・アッシャーと、商務省副次官のジェーン・デイビスがアンダーウッド夫妻の側近となる。アレックス・ロメロ下院議員は大統領選での不正を調査委員会で追及し、ホワイトハウス内部からのリークを入手したハマーシュミットはゾーイ・バーンズ殺害を追及する。都合の悪いことを知りすぎたマカラン、スピーチライターのトマス・イェイツ、選挙参謀のリアン・ハーヴェイは殺され、デュラント国務長官は階段から突き落とされる。フランクはクレアからの恩赦を期待して、大統領職を辞任する。自分を巡る疑惑があまりに多いため、クレアを大統領とするために、自分が内部からリークして混沌を作り出したと言う。ダグ・スタンパーはゾーイ殺しの罪を被ってホワイトハウスを去る。史上初の女性大統領となったクレアが恩赦を与えるかどうかは不明なままとなる。 シーズン6前シーズンの数か月後から、旧姓のヘイルを名乗って大統領となったクレアと少女時代のフラッシュバックが描かれる。フランクは死に、ゾーイ殺害を自白したダグは精神療養施設に入っている。民主党支持者で大富豪のビルとアネットのシェパード兄妹はセス・グレイソンを雇い、副大統領となったマーク・アッシャーを通してクレアを操ろうとする。クレアはジェーン・デイビスを使ってこれに対抗する。シェパード家所有の工場が汚染事故を起こし、アネットの息子ダンカンは違法なアプリを広めて批判者の情報を収集する。ダグは自白を翻し、療養施設を出てフランクの遺言を調査する。フランクの悪事を知るデュラント前国務長官は友人のジェーン・デイビスの助けで死を装いクレアから逃亡する。アッシャーとシェパード兄妹の圧力のもとでクレアは従順を装いながら、ペトロフを利用してシェパード兄妹に打撃を与える。アッシャーに脅迫されたクレアは職務が不可能なほどの心痛を装い、シェパード兄妹とアッシャーはクレアの解任を謀る。だがこれを予想していたクレアは解任に賛成した閣僚全員を解任して女性に置き換え、アッシャーに対する疑惑をリークして辞任させる。クレアは秘密を知りすぎたデービス、デュラント、そしてジャーナリストのハマーシュミットを暗殺させる。クレアはフランクの子を妊娠し、母なる大統領として絶大な人気を得る。シェパード兄妹はクレアの権限を制限しようとして失敗し、クレアの流産誘導にも失敗する。クレアはダンカンを逮捕させて報復する。クレアは亡き夫の評判を貶め、フランクを敬愛するダグを怒らせる。クレアは国民の関心をそらすために核戦争の危機を作り出す。アネットが主導したクレアの暗殺は失敗し、ダグはフランクの子を宿すクレアを殺害することができず、フランクの名声を守るために彼を殺害したことを認め、クレアに殺害される。 原作との違い本作は、イギリスのマイケル・ドブズ(サッチャー首相政権で首席補佐官を務めた)の小説『ハウス・オブ・カード』と、1990年から1995年にBBCが製作し、アンドリュー・デイヴィスが脚色したテレビドラマ『野望の階段(I~III)』を原作にしている。このイアン・リチャードソン主演の原作版は人気を博し、日本でもNHKで放映されている。これを、映画『スーパー・チューズデー~正義を売った日~』の脚本家ボー・ウィリモンが、舞台をアメリカに置き換えて企画した。主人公の名前はフランシス・アンダーウッドだが、イギリス版ではフランシス・アーカート。アーカートのほうがアンダーウッドより年齢は高いと思われ、アーカートが老いた自分を意識するという描写が多い。アーカートはイギリス保守党の議員で、庶民院(アメリカでいう下院)の院内総務長である。BBC版の第1シリーズはドブズの小説の悲劇的結末と異なり、BBC版の第2シリーズ(「野望の階段II」)と第3シリーズ(「野望の階段III 最終章」)につなげることができるように変更された。 登場人物主要人物
政治家と官僚たち
政治家のスタッフたち
実業家たち
マスコミ関係者
その他
エピソード→詳細は「ハウス・オブ・カード 野望の階段のエピソード一覧」を参照
受賞歴
製作発注Netflixは米国内2700万人のユーザーの視聴傾向の分析から本作のヒットを確信し、1億ドルを出資して2シーズン26エピソードを発注した[2]。
タイトルタイトルの「ハウス・オブ・カード」は英語で「(トランプの)カードで作った家」、つまり「壊れやすい家」という意味があるが、英語の「ハウス」そのものに「議会」「議院」、「カード」には「戦略上の駒」「切り札」の意味もあり、様々なカードを切りながら政界を上り詰めつつも、いつ崩壊しかねないスリルといったダブル・ミーニングを持つ。 演出本作のユニークな演出のひとつが、主人公フランクがカメラを通じて視聴者に語りかけるスタイルである。これは原作のイギリスのTVドラマ『野望の階段』及び戯曲『リチャード三世』を踏襲している。[6] 本作の収録直前、主演のケヴィン・スペイシーはオールド・ヴィック・シアターで『リチャード三世』の舞台に立っていたが、本作の主人公フランクとリチャード三世に共通点があると思いながら、フランク役を演じたという。第5シーズン以降は、クレアもまた視聴者に語りかける。 脚本メイン脚本家のボー・ウィリモンは1998年にある上院議員の選挙キャンペーンに参加したのを手始めにヒラリー・クリントン元国務長官らと働き、2004年の民主党大統領予備選ではハワード・ディーン候補と働いた。作品にはこの政治経験が生かされている。 監督ジョディ・フォスターやクレア役のロビン・ライトなど、有名女優がいくつかのエピソードの監督を務めている。 シーズン6製作とケヴィン・スペイシーのスキャンダルシーズン6は発注され、撮影は2017年10月に開始された[7]。ところが2017年10月30日、ケヴィン・スペイシーの未成年男子へのセクシャル・ハラスメント疑惑が明らかになった後、シーズン6が最終シーズンになると発表された[8]。その翌日、シーズン6の撮影は無期限に中止された[9]。2017年11月3日、Netflixはスペイシーを起用してのハウス・オブ・カードの製作は行わないと発表した[10]。2017年12月4日、Netflixはケヴィン・スペイシーを外し、シーズン6を8話に短縮して2018年に撮影を再開すると発表した[3]。 日本での放送・発売・配信日本ではスマートフォン向けマルチメディア放送サービス「NOTTV」とBS、CS、ケーブルTVなどの映画専門チャンネル「IMAGICA BS」が2013年10月よりシーズン1を、2014年6月からシーズン2を、2017年3月からはシーズン3を、2017年6月21日からはシーズン4を放送している。 DVDとBlu-ray Disc(いずれも「デヴィッド・フィンチャー完全監修パッケージ仕様」)は、シーズン1が2014年6月4日に、シーズン2が2014年10月3日に、シーズン3が2016年7月6日に、シーズン4が2016年8月3日に、シーズン5が2017年10月4日に、シーズン6が2019年6月5日にいずれもソニー・ピクチャーズエンタテインメントから発売された。 Netflixは2015年9月から日本でサービスを始めた時点では今作品を配信せず、半年後の2016年3月4日より全シーズンの配信を開始した。その後は新シーズンを全世界と同日に配信した。2020年4月現在、全シーズンがAmazon Prime Videoでも配信されている。 2016年10月からはフジテレビが地上波とBSフジでシーズン1を放送した。 2020年4月17日よりWOWOWは、全シーズンの放送を開始した。シーズン5、6はテレビ初放送になる[11]。 出典
参考文献
外部リンク
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