ケヴィン・スペイシー・ファウラー(Kevin Spacey Fowler, 1959年7月26日 - )は、アメリカ合衆国の俳優。1990年代中ごろからは脚本家・映画監督・プロデューサーとしても活動している。
2004年から11年間にわたってロンドンのオールド・ヴィック・シアターの芸術監督を務めるなど演劇界でも活躍したが、2017年以降は未成年に対する性加害の告発と訴追が相次いで表舞台から遠ざかった[1]。2023年のイギリスにおける刑事訴訟の無罪判決などを受け、ヨーロッパを中心に小規模ながら活動を再開しつつある[2]。
来歴
ニュージャージー州サウスオレンジにて、3人兄弟の末っ子として生まれる。1963年に南カリフォルニアに転居。ノースリッジ軍人学校に通うも、喧嘩(同級生にタイヤを投げつけた)が原因で退学。ロサンゼルスの高校に転入したころから本格的に俳優への道を志すようになる。一時期、スタンダップ・コメディアンとして活動したのち、1979年にニューヨークへ渡り、ジュリアード学院に入学するが2年で中退[3]。1981年にシェイクスピア・フェスティバルで舞台デビューした。
1986年には『心みだれて』で映画デビューを果たすと、1991年にはニール・サイモン作の舞台『ロスト・イン・ヨンカーズ』でトニー賞を受賞。歌・ダンス・演技の全てをそつなくこなす俳優として次第に業界関係者の注目を集めるようになる。
1995年に『セブン』の演技で注目を浴び、同年の『ユージュアル・サスペクツ』でアカデミー助演男優賞をはじめとして数多くの映画賞を受賞し、映画俳優としての地位を確固たるものとした。1999年には『アメリカン・ビューティー』でアカデミー主演男優賞を受賞。同年にはユージン・オニール作の舞台『氷人来る(英語版)』への出演も話題になった。
2004年の映画『ビヨンド the シー 夢見るように歌えば』では、監督・製作・脚本・出演の4役を務めた。ロンドンのオールド・ヴィック・シアターの芸術監督を、2004年から2015年まで務めた。
2006年公開の『スーパーマン リターンズ』では、かつてジーン・ハックマンが演じた悪役レックス・ルーサーをハックマンと見まがうほど、役に入り込み演じたことで批評家・観衆双方の絶賛を得た。
モノマネが得意で、これまでアル・パチーノ、クリストファー・ウォーケン、ジャック・レモン、ビル・クリントンなどのモノマネを披露したことがある。
2015年、名誉ナイトとして第2位のKBE (Knight Commander of the Order) を受勲[4]。
性加害の告発と訴訟
2017年10月、俳優のアンソニー・ラップが14歳の時にスペイシーから性加害を受けたと告発した[5][6]。これを発端に、多くの人物が次々と同様の告発を行った[7][8]。
告発の結果、Netflixはスペイシーとの一切の関係を打ち切り、主演映画『Gore』の配信を中止。主演ドラマ『ハウス・オブ・カード』シーズン6のキャストからもスペイシーを外した(彼が演じたフランシス・アンダーウッドは死亡した設定となった)[9]。撮影を終えて公開間近であった映画『ゲティ家の身代金』は、クリストファー・プラマーが代役に立てられ、スペイシーの全出演シーンが撮り直された。
2018年公開の映画『ビリオネア・ボーイズ・クラブ』は、告発より前の2016年に完成していたこともあり、性加害を容認しない旨とキャスト・スタッフの努力を届けたいという思いを配給側が発表した上で、スペイシーの出演シーンに手を加えず公開に踏み切った[10]。
2018年12月、スペイシーは自身の公式YouTubeチャンネルに動画を投稿、みずから登場して疑惑を否定した[11]。パトリシア・アークエット、エレン・バーキン、ジョン・ファヴロー、ロブ・ロウらがTwitter上で反応を示し[12]、動画は1000万回以上再生された[13]。
同月、当時18歳の男性への強制わいせつ容疑で刑事告訴された。しかし翌2019年7月に被害者証言の不在を理由に告訴は取り下げられた。この男性はのちに民事裁判でも訴えていたが、結局訴えを取り下げている。
また、イギリスで男性4人に対する9件の性犯罪容疑についても刑事訴追を受けたが、2023年7月26日、サザーククラウン裁判所の陪審は全ての罪状に対して無罪評決を下した[14][15]。
私生活
結婚歴は一度もない。セクシャリティを含む私生活についてはほとんど明かしていなかったため[16]、ゲイではないかと長年にわたり指摘され続けていたが、本人は否定していた[17][18][19][20]。
しかしながら2017年10月、1986年に14歳のアンソニー・ラップに性的暴行を加えたとラップ本人から告発された[21]。この件を「深く酔っていて覚えていない」としながらも謝罪し、同時にゲイであるとカミングアウトした[22]。
このカミングアウトに対しては「同性愛とペドフィリアの間に何らかの関係があるという偏見を強化した」「セクハラ告発から注目をそらすための巧妙な策だ」という主旨の批判が同業者及びLGBT関係者から殺到した[23][24][25]。
その後、15人もの告発者がスペイシーに同様の行為を強要されたと告発した[26]。
高校ではメア・ウィニンガム、ヴァル・キルマーと同級生だった[27]。在学中にメアがマリア役、スペイシーがトラップ大佐役で『サウンド・オブ・ミュージック』を上演したこともある。
フィルモグラフィ
出演
映画
テレビシリーズ
ゲーム
監督・製作
日本語吹き替え
主に担当しているのは、以下の三人である。
- 石塚運昇
- 『隣人』(ソフト版)で初担当。2018年に亡くなるまで大半の作品を吹き替え、「スペイシーの声」として知られていた[29][30][31]。
- 仲野裕
- 『アウトブレイク』(ソフト版)で初担当。当初、同作のみの担当となっていたが『モンスター上司』で再登板。以降、上述の石塚に代わる形で多く吹き替えを担当している[32]。
- 田中秀幸
- 『L.A.コンフィデンシャル』(ソフト版)で初担当。『セブン』(日曜洋画劇場版)など主に初期の代表作を多数担当し、持ち役として知られている[33]。
このほかにも、大塚芳忠、大塚明夫、菅生隆之、池田勝なども複数回、声を当てている。
脚注
- ^ Ritman, Alex (2024年7月16日). “Why Is Kevin Spacey Suddenly Being Honored With Awards in Europe?” (英語). Variety. 2024年9月22日閲覧。
- ^ Brandle, Lars (2024年7月4日). “Kevin Spacey to Receive Lifetime Achievement Award in Taormina” (英語). Variety Australia. 2024年9月22日閲覧。
- ^ Stated on Inside the Actors Studio, 2000
- ^ “ケビン・スペイシーに英国名誉ナイトの称号”. 映画.com (2015年6月22日). 2015年6月22日閲覧。
- ^ Nordyke, Kimberly (2017年10月29日). “'Star Trek' star claims Kevin Spacey made a pass at him at age 14; Spacey apologizes, comes out as gay”. The Hollywood Reporter. https://www.hollywoodreporter.com/news/general-news/star-trek-star-claims-kevin-spacey-made-a-pass-at-him-at-age-14-1052828/ 2017年10月30日閲覧。
- ^ Felman, Kate (2017年10月29日). “Anthony Rapp accuses Kevin Spacey of trying to seduce him when he was 14”. New York Daily News. http://www.nydailynews.com/entertainment/anthony-rapp-claims-kevin-spacey-seduce-14-article-1.3598031 2017年10月29日閲覧。
- ^ Miller, Mike (2017年11月2日). “Kevin Spacey accused of sexual misconduct by eight House of Cards employees: report”. People. http://people.com/movies/kevin-spacey-accused-of-sexual-misconduct-by-eight-house-of-cards-employees-report/ 2017年11月3日閲覧。
- ^ Brown, Mark; Weaver, Matthew (2017年11月2日). “Kevin Spacey: Old Vic accused of ignoring sexual misconduct allegations”. The Guardian. https://www.theguardian.com/culture/2017/nov/01/old-vic-accused-of-ignoring-sexual-misconduct-by-kevin-spacey 2017年11月3日閲覧。
- ^ Adalian, Joe. “House of Cards Will Return for a Final 8-Episode Season Without Kevin Spacey” (英語). Vulture. http://www.vulture.com/2017/12/house-of-cards-will-return-for-a-final-8-episode-season.html 2017年12月4日閲覧。
- ^ Stolworthy, Jacob (2018年6月20日). “Kevin Spacey returning to cinemas for first time since sexual assault allegations”. The Independent (London, England: Independent Print Ltd.). https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/films/news/kevin-spacey-new-film-billionaire-boys-club-sexual-misconduct-allegations-release-date-trailer-a8407801.html 2018年7月25日閲覧。
- ^ Politi, Daniel (2018年12月25日). “Kevin Spacey Releases Bizarre, Stomach-Churning Video as Authorities Unveil Sexual Assault Charge”. Slate. San Francisco, California: The Slate Group. 2018年12月26日閲覧。
- ^ Henderson, Cydney (2018年12月25日). “Alyssa Milano, Ellen Barkin, more react to Kevin Spacey's 'creepy' Frank Underwood video”. USA Today (Mclean, Virginia: Gannett Company). https://www.usatoday.com/story/life/people/2018/12/25/patricia-arquette-rob-lowe-react-kevin-spacey-weird-video/2411652002/ 2019年1月4日閲覧。
- ^ https://www.youtube.com/watch?v=JZveA-NAIDI
- ^ “Kevin Spacey: 'Humbled' actor found not guilty of sexual offences against four men”. Sky news. (2023年7月26日). https://news.sky.com/story/kevin-spacey-found-not-guilty-of-sexual-offences-against-four-men-12922423 2023年7月27日閲覧。
- ^ “スペイシー被告に無罪評決 英、性的暴行など全9件”. 共同通信. (2023年7月27日). https://web.archive.org/web/20230726202621/https://nordot.app/1056954426149126908 2023年7月27日閲覧。
- ^ Jeff Mauro (July/August 2006 エラー: 日付が正しく記入されていません。(説明)). “Kevin Spacey's balancing act”. Player. http://www.drivingmrspacey.com/Player2006.htm ⚠
- ^ “Playboy interview”. http://www.kevinspacey.de/Presse/Playboy_englisch/playboy_englisch.html
- ^ “Kevin Spacey: fighting back”. http://www.rochestergoesout.com/mov/a/amesid.html
- ^ Interview by Lesley White, portraits by Peter Marlow (1999年12月19日). “Spacey's Odyssey”. The Sunday Times Magazine. http://www.drivingmrspacey.com/TheSundayTimesMagazine.htm
- ^ Sara Bliss (2007年5月). “The Drama King”. Gotham Magazine. http://kspacey.egloos.com/257064
- ^ Kanetkar, Riddhima (2017年10月29日). “Kevin Spacey: Sexual Advances On Teenaged Anthony Rapp Was ‘Inappropriate Drunken Behavior’”. International Business Times (New York). http://www.ibtimes.com/kevin-spacey-sexual-advances-teenaged-anthony-rapp-was-inappropriate-drunken-behavior-2607825 2017年10月29日閲覧。
- ^ https://twitter.com/KevinSpacey/status/924848412842971136
- ^ “Zachary Quinto Slams Kevin Spacey For Coming Out Amid Sexual Harassment Allegations”. 2017年10月30日閲覧。
- ^ “Kevin Spacey Criticized for Using Apology to Anthony Rapp to Come Out”. 2017年10月30日閲覧。
- ^ “Kevin Spacey's Coming Out Was the Worst in History”. 2017年10月30日閲覧。
- ^ Puente, Maria. “Kevin Spacey scandal: A complete list of the 15 accusers” (英語). USA TODAY. 2023年1月29日閲覧。
- ^ “Driving Mr. Spacey - interview with actor Kevin Spacey”. Interview. (1997年2月). http://findarticles.com/p/articles/mi_m1285/is_n2_v27/ai_19192185/
- ^ “ケヴィン・スペイシーが猫になるコメディ「メン・イン・キャット」公開”. 映画ナタリー. (2016年9月21日). https://natalie.mu/eiga/news/202500 2016年9月21日閲覧。
- ^ “日本語版にはプロの声優陣を起用! 韓国映画史上最大のヒット作『10人の泥棒たち』【最新シネマ批評】”. Pouch[ポーチ] (2013年6月21日). 2025年5月1日閲覧。
- ^ “『ジュラシック・ワールド』キャスト&吹き替え声優まとめ クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワードら豪華俳優陣が出演”. VG+ (バゴプラ) (2021年12月10日). 2025年5月1日閲覧。
- ^ “声優の石塚運昇さんが死去 中川翔子「あの声がない世界なんて」”. クランクイン!- エンタメの「今」がわかる 映画&エンタメニュースサイト (2018年8月17日). 2025年5月1日閲覧。
- ^ 編集部, ABEMA TIMES (2021年4月19日). “「まちカドまぞく」第6話、“渋すぎる声”の猫に衝撃 洋画吹き替え風味にファンから反響 | アニメニュース | アニメフリークス”. ANIME FREAKES. 2025年5月1日閲覧。
- ^ “声優・田中秀幸さんのお誕生日。演じたキャラで優しい人が多いのは、本人の影響?”. マグミクス. 2025年5月1日閲覧。
関連項目
外部リンク
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