ペンタン
別称
Quintane;
[ 2] Refrigerant-4-13-0
識別情報
バイルシュタイン
969132
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
DrugBank
ECHA InfoCard
100.003.358
EC番号
Gmelin参照
1766
MeSH
pentane
RTECS number
UNII
国連/北米番号
1265
InChI=1S/C5H12/c1-3-5-4-2/h3-5H2,1-2H3
Key: OFBQJSOFQDEBGM-UHFFFAOYSA-N
特性
化学式
C5 H12
モル質量
72.15 g mol−1
外観
無色の液体
匂い
ガソリンのような臭気[ 3]
密度
0.626 g/mL; 0.6262 g/mL (20 °C)
融点
−130.5 - −129.1 °C
沸点
35.9 - 36.3 °C
水 への溶解度
40 mg/L (20 °C)
log POW
3.255
蒸気圧
57.90 kPa (20.0 °C)
kH
7.8 nmol Pa−1 kg−1
酸解離定数 pK a
~45
塩基解離定数 pK b
~59
λmax
200 nm
磁化率
-63.05·10−6 cm3 /mol
屈折率 (n D )
1.358
粘度
0.240 mPa·s (at 20 °C)
熱化学
標準生成熱 Δf H o
−174.1~−172.9 kJ mol−1
標準燃焼熱 Δc H o
−3.5095~−3.5085 MJ mol−1
標準モルエントロピー S o
263.47 J K−1 mol−1
標準定圧モル比熱 , C p o
167.19 J K−1 mol−1
危険性
GHS 表示 :
Danger
H225 , H304 , H336 , H411
P210 , P261 , P273 , P301+P310 , P331
NFPA 704 (ファイア・ダイアモンド)
引火点
−49.0 °C (−56.2 °F; 224.2 K)
260.0 °C (500.0 °F; 533.1 K)
爆発限界
1.5–7.8%[ 3]
致死量または濃度 (LD, LC)
3 g kg−1 (皮膚, ウサギ) 5 g kg−1 (経口, マウス)
130,000 mg/m3 (マウス, 30分) 128,200 ppm (マウス, 37分) 325,000 mg/m3 (マウス, 2時間)[ 4]
NIOSH (米国の健康曝露限度):
TWA 1000 ppm (2950 mg/m3 )[ 3]
TWA 120 ppm (350 mg/m3 ) C 610 ppm (1800 mg/m3 ) [15分][ 3]
1500 ppm[ 3]
関連する物質
関連するアルカン
特記なき場合、データは常温 (25 °C )・常圧 (100 kPa) におけるものである。
ペンタン (英 : pentane )とは、炭素数5つの直鎖状のアルカン である。天然ガス や石油エーテル 、ガソリン 等に含まれている。
名称
ペンタンも含めて、直鎖状のアルカンをノルマルアルカン と総称する[ 5] 。ペンタンには分枝した構造異性体 が2つ、つまり、イソペンタン とネオペンタン が存在し、構造異性体を含めた総称として、俗に「ペンタン」と呼ぶ場合もある。そこで、これらと区別する際に、n -ペンタン (ノルマルペンタン )と呼ぶ場合がある。
しかしながら、IUPAC命名法でペンタンと言えば、直鎖状のn -ペンタンを指す。なお、構造異性体であるイソペンタンをIUPAC名で言えば2-メチルブタンであり、ネオペンタンをIUPAC名で言えば2,2-ジメチルプロパンと、きちんと区別できる。その上に、IUPAC名は化合物の構造を言い表している。
よって本稿では、これ以降、IUPAC名に従って記載する。
物理化学的性質
常圧でのペンタンの沸点は36 ℃であり[ 6] したがって、常温・常圧でペンタンは液体として存在する。常圧での沸点が常温を上回る、最短の炭素鎖の直鎖状アルカンが、ペンタンである[ 6] [ 7] [ 注釈 1] 。なお、液体であっても色は無い。また、ペンタンの揮発性は比較的高く、揮発してきたペンタンを、ヒトの嗅覚は感知できる。
アルカンは一般に可燃物であり、酸素と化合して燃焼し、水と二酸化炭素に変化する。この反応は発熱反応であるため、アルカンの燃焼反応は、アルカンと酸素が供給され続ける限り、外部からエネルギーを与えずとも、勝手に持続し得る[ 8] 。ペンタンもまた可燃物であるだけでなく、さらに、揮発性が高く、引火点が-49 ℃と引火し易いため、その取り扱いには注意が必要である。
日本では消防法 に定める第4類危険物 の特殊引火物 に該当し、法規制されている。
利用
ペンタンには多くの利用法が知られており、以下に、その例の一部を記載する。
発泡剤
発泡スチロール 製造に際して発泡剤 として利用される。
熱媒体
安価な低沸点の流体として、地熱発電 の1種であるバイナリー発電 に於いて、蒸気タービン を回すための媒体として用いる場合がある。水より低温でも沸騰して蒸気になるため、水では沸騰しない低い温度の熱源を利用できるためである。
要するに、比較的低い温度の熱源に、液化したペンタンを曝して沸騰させて気体にし、液体から気体になった際に体積が急激に膨張した圧力で、蒸気タービンを回し、その回転を利用して発電機を駆動するのである。なお、蒸気タービンを回した後は、何らかの方法で再びペンタンを液体に戻して、ペンタンは循環させて使用する[ 注釈 2] 。
九州電力の八丁原発電所 には日本国内初のバイナリー発電施設があり、2006年からペンタンを利用したバイナリー発電を実施している。
有機溶媒
室温で液体として存在する直鎖状アルカンの中では、ペンタンが最も揮発性が高いため、実験室では蒸発させ易い溶媒として利用される場合がある。液相クロマトグラフィー の溶媒としても使われる場合がある。
ペンタンは多くの非極性溶媒(有機塩素化合物 、芳香族 、エーテル など)と自由に混和する。しかし、ペンタンは非極性で官能基が無いため、非極性でアルキル鎖に富んだ化合物しか溶かせない。
脚注
注釈
^ 参考までに、1気圧において、融点が25 ℃を上回る最短の炭素鎖の直鎖状アルカンは、オクタデカン である。つまり、オクタデカンよりも炭素鎖の長い直鎖状アルカンは、常温常圧で固体として存在する。逆に、本文から論理的に自明なように、ブタン よりも炭素鎖の短い直鎖状アルカンは、常温常圧で気体として存在する。
^ 熱媒体として使い方が行われ得るのは、ペンタンだけではない事を、念のために断っておく。例えば、アルカンであれば、プロパン が冷凍庫での熱媒体として用いられる場合がある。また、蒸気タービンを回す熱媒体としては、他に、アンモニア なども利用され得る。
出典
外部リンク