ルパン三世 ルパン暗殺指令
『ルパン三世 ルパン暗殺指令』(ルパンさんせい ルパンあんさつしれい)は、モンキー・パンチ原作のアニメ『ルパン三世』のTVスペシャルシリーズ第5作[1]。1993年7月23日に日本テレビ系の金曜ロードショーにて放送された。視聴率は22.0%[2]。 概要武器密売組織「ショットシェル」の金と組織の壊滅作戦を狙うルパンファミリーとショット・シェルとの駆け引きに加えて、銭形警部解任後のICPOルパン三世専従捜査官で、ルパン暗殺を狙う傭兵あがりのキースも入り混じって大混戦を展開する。 前年に放送されたTVスペシャル『ルパン三世 ロシアより愛をこめて』が視聴率的に今一つだったため、本作はそれまでのTVスペシャルシリーズを完結させる予定で製作された。しかし、本作の視聴率が好評だったためにTVスペシャルの続行が決まった。 この作品では劇場映画第2作『ルパン三世 カリオストロの城』に登場したフィアット・500が序盤シーンにのみ登場している。ボディーカラーは『TV第1シリーズ』をイメージしたらしくライトブルーだが、ナンバーは「R-33」である。ワイドフェンダーを装備していたが、荷物を山積みにして走る姿は『カリオストロの城』の劇中そのものである。また、オープニングのシーンでは『カリオストロの城』の回想シーン以来、実に14年ぶりにベンツSSK(ボディーカラーはグリーンであった)も登場するなど、TVスペシャルの完結編となる予定であったため、大幅に原点回帰がなされている。 『カリオストロの城』以来、ルパン一味と銭形警部が手を組んだ作品で、物語冒頭から手を組んでいたという珍しいパターンでもある。 この作品に登場する原子力潜水艦「イワノフ」は、過去作(『ルパン三世 PARTIII』最終話「原潜イワノフの抹殺指令」)にも同名の潜水艦として登場しているが、こちらも本作と同じ柏原寛司が脚本を担当した作品であり、いずれの作品でもイワノフは最終的に破壊されている。 製作TVスペシャルが開始されて以来、一貫して監督を務めてきた出崎統が降板し、『TV第1シリーズ』初期の演出を手がけたおおすみ正秋が22年ぶりに参加した[3]。 おおすみによると、制作会社の東京ムービー新社とは袂を分かつような形で『TV第1シリーズ』を降板したため疎遠になっていたが、「関係を元の状態に戻したい」という連絡があったことで同社を訪れたところ、そこで本作の監督を打診されたという。おおすみは後に「『TVスペシャルを今回で最後にしたい。貴方が始めた作品だから、貴方に最後を作ってほしい』と頼まれた」「ルパンで別れて再びルパンで出会うというのも、なんだか因果話みたいでおもしろい」と発言している。 『TV第1シリーズ』以降、ほとんどの作品に参加していた脚本監督の飯岡順一と話し合ったおおすみは、『TV第2シリーズ』などおおすみ降板後に築かれたルパンのイメージを壊さないことに留意しつつ、『TV第1シリーズ』初期のハードボイルドな作風に戻したという[4]。そのため、アフレコ時にはルパン役の山田康雄におちゃらけたセリフを言わないよう指示している(なお、山田は『カリオストロの城』のアフレコにおいて、監督の宮崎駿からも同様の指導を受け、「宮崎さんからも同じことを言われたよ」と笑いながら回想していたという)。 おおすみによって立ち上がった本作のコンセプトには「ストーリーよりも、まずキャラクターを明確に描く」「説明台詞など『説明のために物語がある』ようなことは排除し、説明を表現に置き換える」「現代に通用する作品にするため、光と陰の部分の強調、および各場面の光源がどこにあるかを明確にする」などがある。 キャラクターデザイン及び総作画監督には、江口寿志が起用された。江口はデザインを起こす前に『TV第1シリーズ』の作画監督をしていた大塚康生にメインキャラクターの参考用イラストを描いてもらい、それを元に本作のデザインを起こしたという[注 1]。そのため、TVスペシャル初期の馬面ルパン(劇場映画第1作『ルパン三世 ルパンVS複製人間』などに近いデザイン)から従来の猿面ルパンに戻されたほか、逆に次元は前髪が帽子の下からはみ出ているという今までにないデザインとなっている。また、江口は後年に、ルパンのジャケットを黄色に変更したかったが不採用となったことを明かしている[6]。 江口によると、作画期間はわずか2か月だったという。レイアウトにはすべて目を通したものの、全場面の絵や動きを確認することはできず、原画は各作画監督に任せる体制となったという[7]。 絵に関しては、おおすみの「セル画特有の“隈から隈まで塗ってあります”という描き方には飽きた。だけど、日本の背景技術はリアリズムという側面で世界一だと思う」という考えから、背景とセルの絵が剥離しないようなものにすることを目指し、原画の段階から陰ではなく絵のスタイルとして黒く塗り潰した部分を挿入するなどの工夫がされている。 山田は本作出演時点で体調を崩していた。アフレコの休憩中に疲労困憊に見舞われた本人の希望から後半の収録は椅子に座って行ったが、それまでは役者としてのプライドから座っての収録など無かったため異例だったという[8]。 この作品からステレオでの制作・放送に移行した[注 2]。BGMにはそれまでとは異なり、シンセドラムや当時の最新式のシンセサイザーが多数使用されている。 おおすみは放送から数年後の取材で「(制作現場が)殺伐としててモノを作るって感じじゃなかった」とし、本作が納得のいく仕上がりでは無かった事を明かした。だが、その中で満足が行ったというのが山田への演技指導だったといい、山田は健康状態が芳しく無かったものの、演技に関しては「素晴らしい出来だった」と評している。なお、本作が高視聴率、高評価を受けた事により、『TV第1シリーズ』の長年の恨みを果たしたのでは?とインタビュアーに振られた際、ルパンが再放送で人気を獲得した経緯に触れ「フィルム自体に変わりはない」と評価や視聴率に関心が無い事を明かした[9]。 あらすじルパンと次元はとある仕事でヘマを犯し、アジトを警官隊に包囲されてしまう。しかし、そこに現れた銭形は警官隊を解散させると単身で乗り込んでくる。訝しがるルパンを後目に、銭形は自身がルパンの専従捜査官を解任されたことを明かす。銭形に替わってルパン捜査に就いたのは、傭兵あがりで捜査対象を殺すことも厭わないことで知られるキース・ヘイドン捜査官であった。銭形は謎多き武器密売組織「ショットシェル」の壊滅捜査を命じられたとのことであった。銭形を哀れに思ったルパンは「ショットシェル」から大金を盗み、ついでに壊滅させる計画を立てる。銭形は大金強奪は知らず、純粋に自分のためにショットシェルを壊滅させようとしていると感謝してルパンに協力する。 ショットシェルがロシアの最新鋭原子力潜水艦「イワノフ」を狙っていることを知ったルパンらは、彼らをおびき出し、コンタクトを取るために、イワノフ強奪を狙う。イワノフを動かすにはロシア核物理学研究所に所属する若き女性天才物理学者カレン・クオリスキー教授が必要であり、同じく彼女の身柄を狙うショットシェルの機先を制して不二子と五ェ門が彼女を先に拉致し、その後、銭形を加えたルパン一味はまんまとイワノフの強奪に成功する。 実はカレンは、少女時代に目の前で父が彼の相棒であった次元に射殺されていた。このためカレンは機をみて父の仇を討とうとし、油断させるため彼から拳銃の手解きを受ける最中、出自を明かして次元を撃とうとする。しかし、これはキースの襲撃によって有耶無耶となってしまう。 ショットシェルの代表ジョン・クローズから、イワノフ購入のコンタクトを受けたルパンは、潜水艦から核ミサイルなどの装備を撤去した上で、さらに彼らが狙っているカレンもハワイで下ろし、その護衛役として五ェ門と銭形をつける。その上でルパン・次元・不二子の3人で案内されたショットシェルの本拠地であるミクロネシア海域の孤島へ向かう。 表向きルパンらを快く出迎えたジョンは、カレンの行方を探りつつ、ルパン達をビジネスパートナーとして、自分が核関連兵器に手を出そうとしていることを明かす。その一環として、アメリカの廃棄された原子力潜水艦の原子炉や、ロシアの廃棄された原子力潜水艦の強奪を依頼し、ルパンも彼を油断させるため引き受け成功させる。並行してとある建物一棟まるまるが、ショットシェルの現金を貯めている金庫であることを突き止める。 一方、カレンを軟禁しているハワイの家をキースが急襲してくる。五ェ門は射出型ナイフで胸を刺されて海中に落下して行方不明となり、カレンは今度こそ次元を殺すため自分の意思でキースに付き従う。実はキースはショットシェルの秘密社員であり、ルパン逮捕(殺害)の表の任務以外にもジョンの命令でカレンの行方を捜していた。 現金強奪計画当夜。ジョンに勘づかれるも、多額の現金を盗み出し、イワノフに積み込むことに成功する。後は島から逃げ出すだけのところ、そこにカレンを連れたキースが現れ、襲撃してくる。キースを引き受けた次元を殺そうとするカレンであったが、彼から父の死の真相を教えられ動揺する。その間に、建物内に逃げ込んだ次元をキースは家屋ごと手榴弾で爆破してしまう。不二子はジョンに捕まってしまい、ルパンは辛くもイワノフのミサイルに乗り込んで脱出し、五ェ門らが待っているはずのハワイへと向かう。一方でカレンはキースの手からジョンに引き渡されるが、彼への協力を拒み、不二子と同じ部屋に拘禁される。 ハワイに到着したルパンは銭形から五ェ門が殺されたことなどを話すが、ひょんなことから実は生きていた彼と再会する。実は、五ェ門はキースの放った射出型ナイフを咄嗟の判断で斬鉄剣の刃に当てていたのだった。これが功を奏し、深手を負いながらも心臓は無傷だったことと、島の漁師に救助されたという幸運が重なり、命拾いしたのであった。3人はリベンジの為、再びショットシェルの本拠地へ乗り込み、お手製の爆撃機で島を破壊する。その後、島に降りたルパンは拘禁部屋から脱出した不二子やカレンと合流するが、再びキースの襲撃に遭う。絶体絶命の危機の中で死んだと思われていた次元が現れキースを撃ち彼は倒れる。次元は飛び込んだ家屋の中に地下室を発見したため、ここに逃れることで命拾いしたのであった。カレンは次元に銃口を向けるが、そこに実は生きていたキースが立ち上がって銃を乱射する。ルパンと次元の銃撃で今度こそキースは死ぬが、流れ弾に当たってカレンが致命傷を受ける。カレンは次元に抱きかかえられながら、イワノフの自爆装置のスイッチを託して息を引き取る。 そこにジョンと彼の部下たちが現れる。ルパンに激怒しつつも不二子の機転によって殺すことは諦め、イワノフを新たな本拠地として活動することを宣言する。そしてルパンらを島に残して出航したジョンたちであったが次元が自爆装置のスイッチを入れ、イワノフは大爆発して沈没する。 後日、カレンの葬儀を終えたルパン一行はショットシェルの資金がフランスの人工衛星に移されていたことを知る。ショットシェルを壊滅させた功績でルパン捜査に復帰した銭形を出し抜いた後、一行はスペースシャトルに乗り込み宇宙に向かう。そして人工衛星から溢れ出す大量の札束を手にし大喜びの不二子を見たルパン達は女の執念は怖いと呆れるのであった。 登場人物メインキャラクター
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