劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY
『劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY』(げきじょうばんブリーチ メモリーズ・オブ・ノーバディ)は、2006年12月16日に公開された日本の長編アニメーション映画[1]。久保帯人による漫画作品『BLEACH』を原作とするテレビアニメシリーズの劇場版アニメーション第1作[3]。阿部記之が監督を務め、studioぴえろが制作した[1]。 アメリカ合衆国では2008年6月11日から12日まで限定劇場公開された[3]。 黒崎一護とオリジナルキャラクター・茜雫の交流を軸に描いた物語が展開される[4]。 あらすじ空座町で欠魂(ブランク)と呼ばれる霊生物が大量発生する異変が起き、死神代行・黒崎一護と朽木ルキアが対応にあたる。そこに所属を明かさない死神の少女・茜雫が現れ、一護はその奔放な振る舞いに翻弄される[4]。同じころ、尸魂界(ソウル・ソサエティ)でも空座町の風景が上空に浮かぶ異変が発生する[4]。これらの現象は、現世と尸魂界の狭間に広がる断界で、新たに出現した空間・叫谷が急速に拡張し、ふたつの世界に密着したことが原因で起きたものであった。 浦原喜助は、一連の現象の背後に輪廻を外れた魂魄から抜け落ちた記憶の集合体・思念珠を巡る動きがあると推測する。一護は浦原の代わりに思念珠を探すこととなり、茜雫も一護の手伝いをすると約束をする。そんな中、厳龍率いる闇の一族・ダークワンが茜雫を狙って現世に現れる。黒崎家に匿われた茜雫は、自らの家族について語ろうとするが、混濁した記憶に戸惑いを見せる。 翌日、思念珠を探していた一護と茜雫は、事故で亡くなった少年の魂魄と出会い、離ればなれになった父親の魂魄との再会を手助けする。少年と父親は、茜雫のまわりに集まっているたくさんの魂魄によって再会を果たすことができたといい、その魂魄は茜雫が呼んでくれたのだと礼を述べるが、茜雫は親子の言葉の意味を理解できず動揺する。その直後、中央四十六室の命を受けた死神たちが現れ、茜雫を拘束しようとする。尸魂界は、茜雫こそが現世に戻った思念珠であり、厳龍がその力を使って世界破壊を目論んでいると結論づけたのであった。一護は尸魂界の決定に異を唱えるが、そこに再びダークワンが現れ、茜雫は叫谷へと連れ去られる。 かつて尸魂界を追われた一族の末裔である厳龍は、思念珠の力によって現世と尸魂界を衝突させることで、宿願である世界の崩壊を実現しようとしていた。茜雫は欠魂の依り代として叫谷の中心に備え付けられ、叫谷との融合を始める。十二番隊隊長・涅マユリは、隊首会の席で欠魂と思念珠の性質を説き、世界の崩壊が1時間後に迫っていることを明かす。ルキアは叫谷に向かった一護への援軍を求めて隊首会に訴えるが、山本総隊長はこれを退け、叫谷との接地面を鬼道砲で空間ごと消滅させることを決断する。 一護のもとには、護廷十三隊の死神たちが命令を侵して集結し[5]、各所で繰り広げられる戦闘の末、厳龍の部下は殲滅される。厳龍も一護に敗れ、茜雫は一護によって奪還される。鬼道砲が発射され叫谷の崩壊が始まる中、一護たちは現世への帰還に成功するが、ふたつの世界の融合はすでに始まっていた。茜雫は一護と世界を守るため、断界面で欠魂のエネルギーを爆発させ、融合を回避させる。 力を使い果たした茜雫は、一護に背負われて墓地を訪れ、生前の記憶を確かめようとする。墓碑にその名はなかったが、一護からこの町で生きていたと告げられると安堵し、消滅する。ルキアは一護に対し、欠魂のエネルギーが尽きると、茜雫に関するすべての記憶は人々から失われることを伝える[6]。 やがて日常に戻った一護のもとに、風に乗って赤いリボンが舞い降りる。一護の前を茜雫によく似た少女が駆け抜けていく。一護は手にしたリボンを見つめ、再び歩き出す。 登場人物→詳細は「BLEACHの登場人物」および「護廷十三隊」を参照
オリジナルキャラクター
設定
スタッフ
制作テーマ監督の阿部記之は、サブタイトル(「誰のものでもない記憶[20]」)に込められた意味と作品のテーマについて以下のように語っている。
また、阿部は本作の制作に際し、永井豪の短編作品『真夜中の戦士』に描かれた「『自分は本当は何者なのか』『そもそも自分は人間なのか』という疑問や不安というテーマ」を参考にしたと語っている[21]。 ネーミング・デザイン原作者の久保帯人は、茜雫・巌龍・欠魂などのオリジナルキャラクターのデザインやネーミング、設定類のネーミングを担当した[22]。ぴえろからシナリオを受け取った際、オリジナルキャラクターのデザイン依頼を受けた久保であったが、シナリオのチェックを進めるうちにアイデアが湧き、設定類のネーミングも手掛けることになったという[13]。ネーミングに関しては「『BLEACH』らしい名前を意識して変えさせてもらったものが多い」と語っており、叫谷をその一例として挙げている[18]。 →「§ オリジナルキャラクター」、および「§ 設定」も参照
久保は当時、作業時間が1週間しか作れなかったため、できる限りの要望を書き出すことに苦労したと語っている[13]。また、シナリオ面でも久保の提案によってキーアイテムの変更などがなされた[23]。 演出・作画登場人物が使用する武器や戦い方などの演出方法に関しては、劇場の画面の大きさや迫力のある音響効果に合わせてスケールの大きなものにすることが意識された[20]。また、阿部は「登場人物たちがお互いに関わり合うことで何かに気付き、その気持ちに変化が起こっていく様子や、弱いものを利用して野望を達成しようとする敵に対する怒りなどの感情表現」にも注力したと語っている[20]。 本作の制作はテレビシリーズの制作と並行して進められたこともあり、人手不足を補うために制作スタッフの増強が行われた[20]。プロデューサーの萩野賢は、美形が多く似せるのが難しいキャラクターの特徴を、初参加のスタッフは短い時間の中でつかまなければならず、大変だったと思うと振り返っている[20]。 美術作中に登場する町は東京都八王子市がモデルとなっており、制作にあたってロケハンが行われた[24]。南大沢駅の駅前や周辺のショッピングモールが再現されている[25]。 音楽音楽は鷺巣詩郎が担当した[7]。テレビシリーズと同様に、レコーディングは鷺巣が音楽制作の拠点とするロンドン・パリ・東京のスタジオで行われたが、本作では特にロンドンの比重が高かったという[26][注 1]。ロンドンでのレコーディングには、ヴァイオリニストのギャヴィン・ライト率いるロンドン・セッション・オーケストラ (Gavyn WRIGHT and London Session Orshestra) が参加した[26]。鷺巣はオリジナル・サウンドトラックのセルフライナーノーツにおいて、ソプラノ・シンガーのキャサリン・ボット (CatherineBOTT) の参加を特筆すべき事項のひとつに挙げており、「この素晴らしいソプラノ・シンガーのパフォーマンスは今回の劇場版に、ギャヴィンのオーケストラとともに『このうえない輝き』を与えてくれた」と賛辞の言葉を残している[27]。 キャスティング本作にはゲスト声優としてお笑いトリオの安田大サーカスとタレントの森下千里が出演した[20]。萩野によると、安田大サーカスの起用は小さな子供にも客層を広げることを目的としたものであった[20]。 封切り日本国内2006年12月16日より有楽町スバル座ほかにて公開された[28]。興行通信社の調べによると、公開2日間の興行収入は約1億4,200万円を記録し、国内映画ランキング(全国週末興行成績)において初登場5位にランクインした[28]。キネマ旬報社の調べによると、最終の興行収入は6億6,000万円となった[2]。 日本国外アメリカ合衆国で『BLEACH』の作品展開を行うビズメディアは、ナショナル・シネメディアグループのNCM FATHOMの配給により、2008年6月11日・12日に全米の300館を超える劇場にて本作の上映会を開催した[3]。上映会では阿部記之、萩野賢、工藤昌史のインタビューも紹介された[3]。アニメ!アニメ!はこの上映会について、「作品の高い人気と好調なビジネス展開のなかで行われる新作映画のプロモーションの一環とみられる」とし、「通常の劇場公開というよりも、全国規模のファン向けイベントの色彩が強い。また映画は今後発売するDVDのプロモーションと考えていいだろう。」と分析した[3]。また、同年7月には、同国のサンディエゴ市内にて本作の特別上映会が開催された[29]。上映会のオープニングには、サンディエゴ・コミコンにゲスト参加するため同市内を訪れていた久保帯人が登壇した[29]。 評価売上DVDの完全生産限定版は発売初週に20,000枚、通常版は19,000枚の売上を記録し、オリコンDVD総合部門ランキングにて1位と2位を独占した[30]。 受賞アニメ・エキスポを運営する日本アニメーション振興会 (The Society for the Promotion of Japanese Animation) が発表した「2009 SPJA Industry Awards」では、本作がBest Feature Filmにノミネートされた[31]。また、本作に登場する朽木ルキアがBest Female Characterに、英語吹き替え版でルキア役を演じたミシェル・ラフがBest Voice Actress (English) にそれぞれ選出された[32]。 主題歌
DVD / Blu-ray2007年9月5日にアニプレックスから、DVDが完全生産限定版と通常版の2形態で発売された。完全生産限定版には、本編ディスクに加え、キャストによる映像付き本編コメンタリーを収録した特典ディスク1、完成披露試写舞台挨拶映像や劇場用トレーラーなどを収録した特典ディスク2が同梱された。また、工藤昌志による描き下ろしジャケット(デジパック仕様)、ブックレット、19枚のピンナップセットも付属された[34]。 2022年12月14日にはアニプレックスからBlu-ray Discが発売された[35]。
サウンドトラック
本作のオリジナル・サウンドトラック。2006年12月13日にアニプレックスから発売された[36]。各楽曲の作曲はテレビシリーズに引き続き鷺巣詩郎が手掛けている[36]。初回特典として工藤昌史による「描き下ろしオリジナル・ステッカー」が封入された[36]。 収録曲
関連書籍
イベント本作の公開に伴い、2006年11月4日に池袋サンシャインシティ噴水広場にてラジオ番組『BLEACH “B” STATION』の初となる公開録音イベントが開催された[41]。 2006年12月3日にニッショーホールにて完成披露試写会が行われ、阿部記之(監督)、久保帯人(原作)、森田成一(黒崎一護 役)、折笠富美子(朽木ルキア 役)、安田大サーカス(ゲスト声優)、森下千里(ゲスト声優)が上映前の舞台挨拶に登壇した[8]。また、スペシャルゲストとして登場したAqua Timezによるシークレットライブが行われ、本作の主題歌「千の夜をこえて」が演奏された[8]。 2006年12月9日、10日に北海道・ノルベサ内イベントスペースにて「劇場版「BLEACH」公開記念 BLEACHフェスタinノルベサ」が開催された[41]。9日には森田成一と斎藤千和(茜雫 役)によるトークショーが実施された[41]。 2006年12月9日から2007年1月9日まで、池袋・サンシャイン60にて「MEMORIES OF EVERYBORDY'S FESTA IN 池袋サンシャイン60展望台」が開催された[5]。会場では映画のパネル展やアニメイト池袋本店と連動したグッズ販売が実施された[5]。アニメイト池袋本店では、2006年12月9日から12月24日まで「MEMORIES OF EVERYBORDY'S FESTA IN アニメイト池袋」が開催された[41]。会場ではアニメ設定などが展示されたほか、グッズ販売が実施された[41]。 タイアップ
特別番組映画の公開に先立ち、2006年12月10日に特別番組『劇場版BLEACH公開記念!「BLEACH攻略ナビ!!」』がテレビ東京にて放送された[44]。同番組には安田大サーカスと森下千里が出演した[44]。また、同月11日(10日深夜)、18日(17日深夜)にはテレビシリーズからセレクトした6話を2週連続で一挙放送する『劇場版BLEACH公開記念!「BLEACH NIGHT 決戦前夜」』がテレビ東京にて放送された[44]。同番組にはAqua Timezと俳優の栗山千明がゲスト出演した[45][46]。 テレビ放送2007年12月24日、月曜朝9時よりテレビ東京にて放送された[47]。 脚注注釈出典
参考文献雑誌・書籍
ライナーノーツ外部リンク |
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