労働安全衛生法
労働安全衛生法(ろうどうあんぜんえいせいほう、昭和47年6月8日法律第57号)は、労働者の安全と衛生についての基準に関する日本の法律である。 当時の日本の産業経済の発展は、世界にも類のない目ざましいものがあり、それに伴い、技術革新、生産設備の高度化等が急激に進展したが、この著しい経済興隆のかげに、多くの労働者が労働災害を被っているという状況にあった。この法律は、これらの問題点を踏まえ、最低基準の遵守確保の施策に加えて、事業場内における安全衛生責任体制の明確化、安全衛生に関する企業の自主的活動の促進の措置を講ずる等労働災害の防止に関する総合的、計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な作業環境の形成を促進することを目的として制定されたものである(昭和47年9月18日発基第91号)。内閣提出法案として、1972年(昭和47年)の第68回国会にて衆参両院の全会一致により成立した。労働基準法の第5章(安全及び衛生)ならびに労働災害防止団体等に関する法律の第2章(労働災害防止計画)、第4章(特別規制)を統合したものを母体とし、さらに新規の規制事項、国の援助措置に関する規定などを加えて制定された。同年6月8日公布、一部の規定を除き10月1日施行。 主務官庁
構成
目的等本法は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成と促進を目的とする法律である(第1条)。労働者の安全と衛生についてはかつては労働基準法に規定があったが、これらの規定を分離独立させて作られたのが本法である。したがって、本法と労働基準法とは一体としての関係に立ち、労働基準法の労働憲章的部分(労働基準法第1条~第3条)は労働安全衛生法の施行にあたっても当然その基本とされなければならない(昭和47年9月18日発基91号)。一方で、本法には労働基準法から修正・充実された点や新たに付加された特徴など、独自の内容も少なくない。 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない(第3条1項)。機械、器具その他の設備を設計し、製造し、若しくは輸入する者、原材料を製造し、若しくは輸入する者又は建設物を建設し、若しくは設計する者は、これらの物の設計、製造、輸入又は建設に際して、これらの物が使用されることによる労働災害の発生の防止に資するように努めなければならない(第3条2項)。建設工事の注文者等仕事を他人に請負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない(第3条3項)。事業者のみならず、設計者や注文者等についても一定の責務を課している。さらに、労働者は、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない(第4条)。労働基準法が「最低基準の確保」を目的としているのに対し、本法は最低基準を確保するだけでなく、より進んで適切なレベルの職場環境を実現することを目指している。 2以上の建設業に属する事業の事業者が、一の場所において行われる当該事業の仕事を共同連帯して請負った場合においては、当該届出に係る仕事の開始の日の14日前までに、そのうちの一人を代表者として定め(代表者の選定は、出資の割合その他工事施行に当たっての責任の程度を考慮して行なわなければならない)、これを(当該仕事が行なわれる場所を管轄する労働基準監督署長を経由して)当該仕事が行われる場所を管轄する都道府県労働局長に届け出なければならない(第5条1項、規則第1条)。届出がないときは、都道府県労働局長が代表者を指名する(第5条2項)。共同事業体(ジョイントベンチャー)等、複数の事業者が関わる現場では責任の所在があいまいになりがちであるため、事業者のうち一人の代表者のみをその事業の事業者とみなして本法に基づく義務を負わせるためである。 なお、本法には労働契約を直接規制する効力を持つ規定は存在しない。しかし労働者の安全・衛生に関する事項は労働条件の明示事項(労働基準法第15条)、就業規則の記載事項(労働基準法第89条)となっていて、その解釈基準については当然に本法が機能する。 前述のような条文との関係上、関連する法律や規則を含めると条文数は1500条を超える[1]。本法を主体に、労働安全衛生法施行令(施行令、政令)で細かな部分を規定する。実際の仕様等は「労働安全衛生規則」(安衛則(あんえいそく)、厚生労働省令)で決められる。参照の上確認が必要。 定義→「労働災害」も参照
→「労働者 § 労働基準法」も参照
→「作業環境測定」も参照
安全衛生管理体制詳細は各記事を参照のこと。
総括安全衛生管理者(第10条)、安全管理者(第11条)、衛生管理者(第12条)、安全衛生推進者・衛生推進者(第12条の2)、産業医(第13条)、作業主任者(第14条)、安全委員会(第17条)、衛生委員会(第18条)、安全衛生委員会(第19条)
統括安全衛生責任者(第15条)、元方安全衛生管理者(第15条の2)、店社安全衛生管理者(第15条の3)、安全衛生責任者(第16条) 労働災害防止計画厚生労働大臣は、労働政策審議会の意見をきいて、労働災害の防止のための主要な対策に関する事項その他労働災害の防止に関し重要な事項を定めた計画(労働災害防止計画)を策定しなければならず(第6条)、策定したとき、変更したときは遅滞なく、これを公表しなければならない(第8条)。厚生労働大臣は、労働災害の発生状況、労働災害の防止に関する対策の効果等を考慮して必要があると認めるときは、労働政策審議会の意見をきいて、労働災害防止計画を変更しなければならない(第7条)。厚生労働大臣は、労働災害防止計画の的確かつ円滑な実施のため必要があると認めるときは、事業者、事業者の団体その他の関係者に対し、労働災害の防止に関する事項について必要な勧告又は要請をすることができる(第9条)。 現在、2023年(令和5年)4月からの5年間を計画期間とする「第14次労働災害防止計画」の期間中であり、「労働災害を少しでも減らし、労働者一人一人が安全で健康に働くことができる職場環境の実現」を目指し、以下の目標を掲げて各種取組が進んでいる[2]。
労働災害防止計画は、1958年(昭和33年)に閣議決定された「第一次産業災害防止五カ年計画」を嚆矢とし、1964年(昭和39年)の労働災害防止団体法によって法定化されたものを労働安全衛生法の制定に際し取り込んだ。この制度は、労働災害の防止の徹底を期するためには、個別の事業者のみでなく、政府、事業者の団体など関係者が打って一丸となって対策を総合的かつ計画的に実施することが効果的であると考えられるところから、政府における労働災害防止の主管大臣である厚生労働大臣が、労働災害防止についての総合的な計画を中長期的な展望に立って策定し、この計画にのっとって、自らも具体的な施策を講ずるとともに、事業者、事業者の団体等の関係者に労働災害防止に関する指針を示し、その自主的活動を促進しようとするものである[3]。 事業者等の講ずべき措置
建築物で、政令で定めるものを他の事業者に貸与する者(建築物貸与者)は、当該建築物の貸与を受けた事業者の事業に係る当該建築物による労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。ただし、当該建築物の全部を一の事業者に貸与するときは、この限りでない(第34条)。「政令で定めるもの」とは、事務所又は工場の用に供される建築物とする(施行令第11条)。本条は、有償、無償に関係なく適用される。具体的には、避難用出入口の表示、警報設備の備付け及び有効保持、所定数の便所設置等が定められている(規則第670~678条、石綿障害予防規則第10条等)
一の貨物で、重量1トン以上のものを発送しようとする者は、見やすく、かつ、容易に消滅しない方法で、当該貨物にその重量を表示しなければならない。ただし、包装されていない貨物で、その重量が一見して明らかであるものを発送しようとするときは、この限りでない(第35条)。ILO第27号条約(日本も批准)実施のための国内法としての性格も有する[6]。本条の「発送」には、事業場構内における荷の移動は含まない。「発送しようとする者」とは、最初に当該貨物を運送のルートにのせようとする者をいい、その途中における運送取扱者等は含まない(昭和47年9月18日基発602号)。「その重量が一見して明らかであるもの」とは、丸太や石材、鉄骨材等、外観により重量が推定できるものを指す。海上コンテナ貨物についての本条の重量表示は、当該コンテナにその最大積載重量を表示されていれば足りる。
ガス工作物、電気工作物、熱供給施設、石油パイプラインを設けている者は、当該工作物の所在する場所又はその附近で工事その他の仕事を行なう事業者から、当該工作物による労働災害の発生を防止するためにとるべき措置についての教示を求められたときは、これを教示しなければならない(第102条、施行令第25条)。1970年(昭和45年)の大阪・天六ガス爆発事故に教訓を受けて立法されたものであり、当該工作物との接触あるいは破壊が直ちに重大な労働災害に結びつくようなものの設置者に、必要な事項の教示義務を課したものである。事業者が教示を求めるだけの慎重さを有し、そして設置者が本条を遵守すれば、多数の公衆を巻き添えにした大阪のガス爆発事故のような災害も、当然、未然に防止することができることになる[7]。
機械等特定機械等特に危険な作業を必要とする機械等(特定機械等)を製造しようとする者は、あらかじめ都道府県労働局長の許可を受けなければならない(第37条)。「特定機械等」とは、以下の物である(別表第一、施行令12条)。
太字の特定機械等については、製造・輸入・再設置・再使用時に登録製造時等検査機関による製造時等検査を受けなければならない(第38条1項)。この検査に合格すると、移動式の物については検査証が交付される(第39条1項)。 特定機械等を設置(移動式の物を除く)したとき、特定機械等の主要構造部分に変更を加えたとき、特定機械等(建設用リフトを除く)で使用を休止したものを再び使用しようとするときには、労働基準監督署長の検査を受けなければならない(38条3項)。この検査に合格した場合、検査証の交付又は既に交付されている検査証に裏書が行われる(第39条2項、3項)。 検査証の有効期間の更新を受けようとする者は、登録性能検査機関が行う性能検査を受けなければならない(第41条2項)。なお、建設用リフトについては、検査証の有効期間が設置から廃止までとされるため、性能検査は行われない。 検査証を受けていない特定機械等は、使用してはならず、また検査証とともにするのでなければ譲渡・貸与してはならない(第40条)。 42条機械等特定機械等以外の機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもの(本項で「42条機械等」という。)は、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置(本節で「規格等」という。)を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない(第42条)。 別表第二の機械等「42条機械等」のうち別表第二に掲げられるものは次のとおりである。
太字のものを製造・輸入した者は、登録個別検定機関が行う個別検定(機械等を個々に検定する)を受けなければならない(第44条)。この検定に合格した機械等には、その旨の表示(個別検定合格標章を付す、刻印を押す、刻印を押した銘板を取り付ける等)を付さなければならない。斜体のものを製造・輸入した者は、登録型式検定機関が行う型式検定(型式の内容、製造体制等の審査、サンプル試験により検定する)を受けなければならない(第44条の2)。この検定に合格した機械等には、当該機械等の見やすい場所に型式検定合格標章を付さなければならない。これらの表示が付されていない機械等は、使用してはならない。また、厚生労働大臣又は都道府県労働局長が、42条機械等を製造・輸入した者が、規格等を具備していない、検定に合格していない機械に合格した旨の表示がされている等と認められるものを譲渡・貸与した場合に、その者に対し当該機械等の回収・改善を図ることその他必要な措置を取るよう命ずることができる(第43条の2)。 平成26年の改正により、外国に立地する機関も検査・検定機関として登録ができるようになった(外国登録製造時等検査機関等、第52条の3)。 第38条の検査、性能検査、個別検定又は型式検定の結果についての処分については、審査請求をすることができない(第111条)。 施行令13条3項の機械等「42条機械等」のうち施行令13条3項で定められているものについては、検定制度がない。 危険物及び有害物![]()
→詳細は「製造等禁止物質」を参照
ジクロロベンジジン、ジクロロベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずるおそれのある物で、政令で定めるもの(第1類特定化学物質)を製造しようとする者は、あらかじめ、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。厚生労働大臣は、この許可の申請があった場合には、その申請を審査し、製造設備、作業方法等が厚生労働大臣の定める基準に適合していると認めるときでなければ、この許可をしてはならない(第56条、施行令別表第三)。 爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの(第2類特定化学物質)又は上記厚生労働大臣の許可を必要とする物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあっては、その容器)に、以下の事項を表示しなければならない。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。容器又は包装を用いないで譲渡し、又は提供する者は、所定事項を記載した文書を、譲渡し、又は提供する相手方に交付しなければならない(第57条、施行令18条)。
労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第1類特定化学物質(通知対象物)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない(第57条の2、施行令18条の2)。
化学物質による労働者の健康障害を防止するため、既存の化学物質として政令で定める化学物質以外の化学物質(新規化学物質)を製造し、又は輸入しようとする事業者は、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める基準に従って有害性の調査(当該新規化学物質が労働者の健康に与える影響についての調査)を行い、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。有害性の調査を行った事業者は、その結果に基づいて、当該新規化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を速やかに講じなければならない。厚生労働大臣は、この届出があった場合には、厚生労働省令で定めるところにより、有害性の調査の結果について学識経験者の意見を聴き、当該届出に係る化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要があると認めるときは、届出をした事業者に対し、施設又は設備の設置又は整備、保護具の備付けその他の措置を講ずべきことを勧告することができる。有害性の調査の結果について意見を求められた学識経験者は、当該有害性の調査の結果に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。ただし、労働者の健康障害を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。ただし以下の場合は届出は不要である(第57条の4、施行令18条の4)。
事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第1類特定化学物質、第2類特定化学物質及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない。事業者は、この調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない(第57条の3)。事業者は、調査を行ったときは、次に掲げる事項を、調査対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない(規則第34条の2の8)。調査は、調査対象物を原材料等として新規に採用し、または変更するときに行う。
安全のための教育本法の精神を具体化するために、各事業活動において必要な資格を有する業務を免許や技能講習、安全衛生教育といった形で取得することを義務付けている。 安全衛生教育
→詳細は「安全衛生教育」を参照
技能講習![]() →「技能講習による資格一覧」も参照
事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるもの(施行令20条に定める16業務)については、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。この有資格者が当該業務に従事するときは、これに係る免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない(第61条)。 技能講習は、登録講習機関により、学科講習又は実技講習によって行い、当該技能講習を修了した者に対しては遅滞なく、技能講習修了証を交付しなければならない(第76条)。 労働者の就業に当たっての措置事業者は、中高年齢者その他労働災害の防止上その就業に当たって特に配慮を必要とする者については、これらの者の心身の条件に応じて適正な配置を行なうように努めなければならない(第62条)。「特に配慮を必要とする者」とは、具体的には身体障害者や出稼ぎ労働者等が該当する(昭和47年9月18日、旧労働省労働基準局長名通達602号)。「中高年齢者」が具体的に何歳以上の者を指すか労働安全衛生法上の定めはないが、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則第2条で「中高年齢者」を45歳以上の者と定めていることから、実務上もこれに準じて解釈されている。 事業者は、労働者の健康に配慮して、労働者の従事する作業を適切に管理するように努めなければならない(第65条の3)。 事業者は、潜水業務その他の健康障害を生ずるおそれのある業務で、厚生労働省令で定めるもの(高圧室内業務)に従事させる労働者については、厚生労働省令で定める作業時間についての基準に違反して、当該業務に従事させてはならない(第65条の4)。「厚生労働省令で定める作業時間についての基準」とは、潜水業務・高圧室内業務とも具体的には高気圧作業安全衛生規則に定めがある。 事業者は、一定の疾病にかかった労働者については、あらかじめ産業医その他専門の医師の意見を聴いて、その就業を禁止しなければならない(病者の就業禁止、第68条、規則第61条)。 →詳細は「就業制限 § 疾病による」を参照
事業者は、労働者の受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう)を防止するため、当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする(第68条の2)。「第12次労働災害防止計画」では、「2017(平成29)年までに職場で受動喫煙を受けている労働者の割合を15%以下とする」目標を掲げ、受動喫煙の健康への有害性に関する理解を得るための教育啓発や事業者に対する効果的な支援を実施することとしている。 事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない(第69条)。 作業環境測定→詳細は「作業環境測定」を参照
事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働大臣の定める作業環境測定基準に従って、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない(第65条)。都道府県労働局長は、作業環境の改善により労働者の健康を保持する必要があると認めるときは、労働衛生指導医(労働衛生に関し学識経験を有する医師のうちから、厚生労働大臣が任命する非常勤の医師)の意見に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、作業環境測定の実施その他必要な事項を指示することができる。 健康診断→詳細は「労働安全衛生法による健康診断」を参照
安全衛生改善計画
→詳細は「安全衛生改善計画」を参照
計画の届出事業者は、特定機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の30日前までに、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない(第88条1項)。この届出は、所定の様式に当該機械等の種類に応じて必要事項を記載し、図面等を添付して行う(規則第86条)。ただし、上記の危険性または有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置並びに労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針に従って事業者が行う自主的活動の措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、届出は免除される(規則87条)。この免除の認定は、3年ごとにその更新を受けなければ、その期間経過によって効力を失う(規則第87条の6)。
事業者は、建設業に属する事業の仕事のうち重大な労働災害を生ずるおそれがある特に大規模な仕事で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の30日前までに、所定の様式によって厚生労働大臣に届け出なければならない(第88条2項)。「厚生労働省令で定めるもの」とは、具体的には以下の仕事である(規則第89条)。
事業者は、建設業及び土砂採石業(建設業に属する事業にあっては、前項の厚生労働省令で定める仕事を除く)で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の14日前までに、所定の様式をもって労働基準監督署長に届け出なければならない(第88条3項)。「厚生労働省令で定めるもの」とは具体的には以下の仕事である(規則第90条)。なお2項、3項については、1項のような免除認定を受けることはできない。
届出があった計画のうち、厚生労働大臣は高度の技術的検討を要するものについて、都道府県労働局長は高度の技術的検討を要するものに準ずるものについて審査をすることができる。この審査を行うに当たっては、学識経験者の意見を聴かなければならない。審査の結果必要があると認めるときは、届出をした事業者に対し、あらかじめ届出をした事業者の意見をきいたうえで労働災害の防止に関する事項について必要な勧告又は要請をすることができる(第89条、第89条の2)。労働基準監督署長又は厚生労働大臣は、計画の届出に係る事項が法令に違反すると認めるときには、当該届出をした事業者に対し、その届出に係る工事若しくは仕事の開始を差し止め、又は当該計画を変更すべきことを命ずることができる。 なお、平成26年改正により、「一定規模以上の事業場における建設物・機械等の設置・移転・主要構造部分の変更」における計画の届出の規定は廃止された(改正前の第88条1項)。 監督機関等労働者は、事業場に本法又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。事業者は、申告したことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(第97条)。 労働基準監督官は、本法を施行するため必要があると認めるときは、事業場に立ち入り、関係者に質問し、帳簿、書類その他の物件を検査し、若しくは作業環境測定を行い、又は検査に必要な限度において無償で製品、原材料若しくは器具を収去することができる。ただし、この立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。医師である労働基準監督官は、第68条(病者の就業禁止)の疾病にかかった疑いのある労働者の検診を行なうことができる(第91条1項、2項、4項)。労働基準監督官は、本法の規定に違反する罪について、刑事訴訟法の規定による司法警察員の職務を行なう(第92条)。 都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、危害防止措置基準に違反する事実があるときは、その違反した事業者、注文者、機械等貸与者又は建築物貸与者に対し、作業の全部又は一部の停止、建設物等の全部又は一部の使用の停止又は変更その他労働災害を防止するため必要な事項を命ずることができる(第98条1項)。労働基準監督官は、労働者に急迫した危険があるときは、第98条1項の権限を即時に行うことができる(第98条3項)。危害防止措置基準に違反する事実がない場合においても、労働災害発生の急迫した危険があり、かつ、緊急の必要があるときは、必要な限度において、事業者に対し、作業の全部又は一部の一時停止、建設物等の全部又は一部の使用の一時停止その他当該労働災害を防止するため必要な応急の措置を講ずることを命ずることができる(第99条)。
報告厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる(第100条)。この命令を出す場合においては、「報告をさせ、又は出頭を命ずる理由」及び出頭を命ずる場合には「聴取しようとする事項」を通知するものとする(規則第98条)。
適用除外
なお、機械等または有害物に対する流通規制については、労働基準法の適用範囲より拡大され、政令で定める一定の機械等または有害物の製造等を行なう者は、何人も、この法律による規制を受けることとなっている(昭和47年9月18日発基91号)。 関連文献・記事
脚注関連項目
外部リンク
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