周本 絵梨香(しゅうもと えりか、1988年3月5日 - )は、日本の女優である[1]。融合事務所所属[2]。
略歴
琉球大学在学中に役者を志し、蜷川幸雄主宰の『さいたまネクスト・シアター』の設立オーディションに応募、1225名の中から合格し1期生メンバーとなる。
2009年さいたまネクスト・シアター旗揚げ公演『真田風雲録』でデビュー。その後、全てのネクストシアター公演に参加。
2010年『美しきものの伝説』は第18回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞。同作では松井須磨子役を務める。
2014年『蒼白の少年少女たちによるカリギュラ』ではカリギュラの情婦セゾニア役を務める。
2018年第21回 鶴屋南北戯曲賞を受賞した『薄い桃色のかたまり』(作・演出岩松了)では、主人公若い男を探す恋人ミドリ役を務めた。
劇団公演以外でも蜷川幸雄作品の多くに出演し、『海辺のカフカ』岡持節子役、『尺には尺を』マリアナ役、『NINAGAWAマクベス』マクダフ夫人役など、重要な役どころを務め劇評でも好評を得ている。
『海辺のカフカ』のワールドツアーでは、ロンドンバービカン・センター、ニューヨークリンカーン・センター、ソウルLGアートセンター、シンガポールエスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ公演に参加。
『NINAGAWAマクベス』でもロンドン、プリマス、ニューヨーク、香港、シンガポール公演に参加している。
映像作品では、2013年フジテレビドラマ「ショムニ2013」を皮切りに、2015年TBSドラマ「まっしろ」柴田歩役、2018年TBSドラマ「きみが心に棲みついた」稲垣栞里役でそれぞれレギュラー出演。
他には映画「あゝ、荒野」Netflixドラマ「火花」などに出演している。
現在も蜷川幸雄主宰さいたまネクスト・シアター所属。
出演
舞台
- 「真田風雲録」(2009年、演出:蜷川幸雄、作:福田善之、彩の国さいたま芸術劇場) - 三味線弾き娘 役
- 「音楽劇 ガラスの仮面」(2010年、演出:蜷川幸雄、作:青木豪、彩の国さいたま芸術劇場 ほか地方公演) - 白鳥麗子 役
- 「美しきものの伝説」(2010年、演出:蜷川幸雄、作:宮本研、彩の国さいたま芸術劇場) - 松井須磨子 役
- 「血の婚礼」(2011年、演出:蜷川幸雄、作:清水邦夫、Bunkamura シアターコクーン ほか地方公演) - 花屋の妹 役
- 「ルート99」(2011年、演出:蜷川幸雄、作:岩松了、彩の国さいたま芸術劇場) - カネコ 役
- 「蒼白の少年少女たちによるハムレット」(2012年、演出:蜷川幸雄、作:ウィリアム・シェイクスピア、彩の国さいたま芸術劇場) - 黙劇王妃 役、劇中振付
- 「ボクの四谷怪談」(2012年、演出:蜷川幸雄、作:橋本治、Bunkamuraシアターコクーン ほか地方公演) - 女子大生 役
- 「ザ・ファクトリー2 『火刑』」(2012年、演出:蜷川幸雄、作:テネシー・ウィリアムズ、彩の国さいたま芸術劇場) - デュブネ夫人 役
- 「蒼白の少年少女たちによるオイディプス王」(2013年、演出:蜷川幸雄、作:ソフォクレス、彩の国さいたま芸術劇場) - 侍女 役
- 「国家~偽伝、桓武と最澄とその時代~」(2013年、新国立劇場) - 高野新笠 / 石塚 役
- 「鴉よ、おれたちは 弾丸をこめる」(2013年、演出:蜷川幸雄、作:清水邦夫、彩の国さいたま芸術劇場 / パリ日本文化会館 ほか)
- 「ザ・ファクトリー4 "ヴォルフガング・ボルヒェルトの作品からの九章 ―詩・評論・小説・戯曲より―」(2013年、演出:蜷川幸雄、作:ヴォルフガング・ヴォルフェルト、彩の国さいたま芸術劇場) - 娘役
- 「蒼白の少年少女たちによる『カリギュラ』」(2014年2月、演出:蜷川幸雄、作:アルベール・カミュ、彩の国さいたま芸術劇場) - セゾニア 役
- 「海辺のカフカ」(2014年6月 - 7月、演出:蜷川幸雄、作:村上春樹、上演台本:フランク・ギャラティ、彩の国さいたま芸術劇場 ほか) - 岡持節子 役
- 「リチャード二世」(演出:蜷川幸雄、作:ウィリアム・シェイクスピア)※第3回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞 受賞
- 初演:2015年4月、彩の国さいたま芸術劇場
- 再演:2016年2月、彩の国さいたま芸術劇場
- 「海辺のカフカワールドツアー」(2015年5月 - 11月、演出:蜷川幸雄、作:村上春樹、上演台本:フランク・ギャラティ、 ロンドン バービカン・センター / ニューヨーク David H. Koch Theater リンカーン・センター / 彩の国さいたま芸術劇場 / 赤坂ACTシアター / ソウル LGアートシアター / シンガポール エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ) - 岡持節子 役
- 「尺には尺を」(2016年5月 - 6月、演出:蜷川幸雄、作:ウィリアム・シェイクスピア、 彩の国さいたま芸術劇場) - マリアナ 役
- 「1万人のゴールド・シアター2016」(2016年12月、作・演出:ノゾエ征爾、企画・原案:蜷川幸雄、さいたまスーパーアリーナ)
- 「NINAGAWA・マクベス」ワールドツアー(2017年6月 - 11月、演出:蜷川幸雄、作:ウィリアム・シェイクスピア、彩の国さいたま芸術劇場 / ロンドン バービカン・センター / プリマス Theatre Royal Plymouth / 香港文化中心 / シンガポール エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ / 2018年7月:ニューヨーク David H. Koch Theater リンカーン・センター) - マクダフ夫人 役
- 「薄い桃色のかたまり」(2017年9月 - 10月、作・演出:岩松了、彩の国さいたま芸術劇場) - ミドリ 役
- 世界最前線の演劇2「第三世代」(2018年11月、演出:中津留章仁、作:ヤエル・ロネン、彩の国さいたま芸術劇場) - オリート 役
- 「海辺のカフカ フランス公演」(演出:蜷川幸雄、作:村上春樹、上演台本:フランク・ギャラティ、2019年2月:パリ 国立コリーヌ劇場 / 2019年5月 - 6月:赤坂ACTシアター) - 岡持節子 役
- S-IST Stage「ひりひりとひとり」(2022年6月10日 - 19日、よみうり大手町ホール)[3]
ドラマ
映画
その他
- コンサート 「村上春樹を『聴く』」(2016年3月、天王洲銀河劇場)
- 日世70周年スペシャルムービーWEBCM「ソフトクリーム探偵」(2017年5月)
劇評
演劇最強論-ing【連載】ひとつだけ 徳永京子編(2015/9)―『海辺のカフカ』より
そしてもうひとり、さいたまネクスト・シアターの周本絵梨香も、村上春樹が書いた“戦争がもたらす肉体の悲劇”を静かに深く請け負う。夫を軍隊に取られた若い女性の欠落感は、時空に穴だって開けるのだ。ちなみに村上は、初演を開演から少し遅れて観て、その後もう1度、最初から観劇している。芸術新潮9月号のエッセイによれば、5月のロンドン公演をカズオ・イシグロが観て、村上に素晴らしかったと感想を言ったそうだ。
長谷部浩の劇評 TheaterGoer Directory【劇評48】蜷川幸雄の遺作『尺には尺を』。最後の贈り物。より
周本絵梨香のマリアナは、ひたむきさを前面に出して、現代ではありえない行動に説得力を持たせた。
十二月に蜷川は入院しているので、稽古場には立てなかった。それにもかかわらず、まぎれもなく蜷川作品となっているのは、蜷川の演出がいかなるものであるのかを熟知し、蜷川ならばどんなだめ出しをするかを徹底して想像し、検証する作業を怠らなかったからろう。蜷川は、自分が手塩にかけたスタッフ、キャストから最後の贈り物をもらって逝った。そして観客もまた、その贈り物を受け取ることができた。
脚注
外部リンク