東京メトロ半蔵門線
半蔵門線(はんぞうもんせん)は、東京都渋谷区の渋谷駅から墨田区の押上駅までを結ぶ、東京地下鉄(東京メトロ)が運営する鉄道路線である。『鉄道要覧』における名称は11号線半蔵門線。 路線名の由来は沿線に所在する皇居の門の一つ、半蔵門から。車体および路線図や乗り換え案内で使用されるラインカラーは「パープル」(#8f76d6、紫)[6]、路線記号はZ[注釈 1]。 東京メトロの路線の中で全線の所要時間が最も短く(全線の距離は銀座線の方が2.5 km短い)、また東京メトロの路線の中で最も駅数が少ない。一方、渋谷駅からは東急田園都市線と、押上駅からは東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)及び日光線と相互直通運転を行っており、直通運転先(東急田園都市線中央林間駅 - 東武日光線南栗橋駅間)を含めた運行距離は98.5 kmにも及ぶ。これは2024年3月現在、東京メトロの特別料金不要列車としては副都心線直通列車の海老名駅(相鉄本線) - 小川町駅(東武東上線)間(116.4 km)、千代田線直通列車の取手駅(常磐緩行線) → 伊勢原駅(小田急小田原線)間(100.3 km)、同じく副都心線直通列車の元町・中華街駅(みなとみらい線) - 小川町駅間(100.1 km)に次ぐ第4位の長さとなっている[注釈 2]。 概要半蔵門線は、東京メトロの路線としては南北線とともに地上区間が存在しない路線となっている[注釈 3]。 東京都内の地下鉄の中では都営地下鉄を含めて自社単独駅が最も少ない。渋谷駅から押上駅までの全14駅中、他線との連絡のない駅は半蔵門駅のみである。水天宮前駅も開業以来長い間他線との乗り換えができなかったが、2018年(平成30年)3月17日より水天宮前駅と人形町駅が連絡駅に指定されたことにより[報道 1]、それまで接続駅が無かった日比谷線との乗り換えが可能となったことで[注釈 4]、東京都内の地下鉄では唯一、すべての地下鉄路線と乗り換えが可能な路線となった。 路線データ
建設の経緯1968年(昭和43年)の都市交通審議会答申第10号において、東京11号線は「二子玉川方面より三軒茶屋、渋谷、神宮前、永田町、九段下、神保町および大手町の各方面を経て蛎殻町に至る路線」として初めて示された[7][注釈 5]。1972年(昭和47年)の同答申第15号では、終点が深川扇橋[注釈 6]へと延長された[8]。 また、同答申では住吉 - 押上間のルートが、東京8号線(有楽町線)の一部(豊洲 - 東陽町 - 住吉 - 押上 - 亀有)として示された[8]。この時点では東京11号線との接続は予定されていなかったが、1985年(昭和60年)の運輸政策審議会答申第7号において、東京11号線の計画が錦糸町、押上経由で松戸へとさらに延長され、住吉 - 押上 - 四つ木間が東京8号線との共用区間とされた。このうち渋谷 - 押上間が半蔵門線として1978年(昭和53年)から2003年(平成15年)にかけて順次開業しており、また二子玉川 - 渋谷間は1977年(昭和52年)に東京急行電鉄の新玉川線(現・東急電鉄の田園都市線)として開業している。 千代田線、有楽町線に次ぐ「バイパス3路線」の一つで、銀座線の混雑緩和と渋谷副都心の発展寄与、皇居西北地区の都市再開発への貢献を狙いとしてルート設定がなされた[9]。しかし、沿線の地権者による反対運動が発生したこと[10]、さらにバブル崩壊とそれに伴う当時の営団の減収などが原因で押上までの開通が当初予定より大きく遅れることとなった。半蔵門 - 九段下間では地下鉄建設に当たっての説明不足や環境悪化を理由に一坪共有運動が起こった[11][12]。このため、営団は土地収用法を基に強制収用の申請をしたが、一連の土地買収に10年ほどの期間を要した[11]。 2020年(令和2年)時点において未開業の押上 - 四ツ木 - 松戸の区間については、2000年(平成12年)の運輸政策審議会答申第18号で「2015年(平成27年)までに整備着手することが適当である路線」として位置付けられている。 1998年(平成10年)からは柏、我孫子、松戸の各市をはじめ茨城県の龍ケ崎、牛久、つくばなどの自治体で「地下鉄11号線延伸市町協議会」も結成され、松戸から柏市南部・我孫子市布佐方面さらに茨城県までの延伸も国などへ要請しているが、現時点で開業の見通しは立っていない。なお、東京メトロでは押上延伸を以って「全線開業」としている[報道 2]。その一方で、2030年代半ばの開業を目指して建設中の有楽町線豊洲 - 住吉延伸区間については、東京メトロと東武鉄道との間で東武伊勢崎線・日光線から半蔵門線を経由し有楽町線延伸区間へ相互直通運転することで基本合意したと2025年4月17日に発表された。今後運転計画については協議の上決定するとしている[報道 3]。 →詳細は「東京直結鉄道」を参照
沿革
運行形態東急電鉄・東武鉄道と3社相互直通運転をしている。半蔵門線を挟んで東急側は渋谷駅から田園都市線の中央林間駅まで、東武側は押上駅から伊勢崎線久喜駅および日光線南栗橋駅までそれぞれ運転される。 運行系統上では東急田園都市線と一体的となっており、押上方面は平日始発の清澄白河発東武動物公園行と半蔵門発押上行、渋谷方面は平日最終の押上発水天宮前行と押上発渋谷行を除くすべての列車が東急田園都市線と直通している。 列車はすべて各駅停車であるが、線内では乗り入れ先の列車種別(急行・準急・各駅停車)で案内している。この種別は東急・東武の間で共通するものではなく、それぞれの線内で独立したものであり、渋谷駅・押上駅到着の時点で線内または乗り入れ先の種別に変更している(変更がない列車もある)。 平日朝ラッシュ時は2 - 3分間隔、夕ラッシュ時は3 - 4分間隔、日中時間帯は5分間隔(1時間に12本)で運行されている。この時間帯の渋谷方面は基本的に中央林間行である。押上方面は、押上行と東武スカイツリーライン直通列車(急行)が交互に運転されている。 朝の押上方面には、半蔵門駅(1本のみ)・清澄白河駅発着列車もある。日中の清澄白河駅発着の列車は2009年6月6日のダイヤ改正で廃止された。 車両基地は自社路線内に用地を確保できなかったため、東急田園都市線の鷺沼駅の横に鷺沼検車区として置かれている。
東急田園都市線直通![]() 日中は1時間に急行3本、準急3本、各駅停車6本の計12本(すべて中央林間行)が運行されている。平日を中心に長津田行があるほか、鷺沼行も少数設定されている。東急田園都市線には当線に乗り入れない列車もあり、その一部は当線の渋谷 - 半蔵門間を回送の上、半蔵門駅の引上線で折返す。この回送費用は東急負担で行われている。 東急5000系のうち15編成の4・5・8号車には6扉・座席格納車両が連結されていた。平日朝の押上方面の電車では東急田園都市線の始発駅から半蔵門線の半蔵門まで6扉車の座席が使用できなかった[注釈 11]。ホームドア設置の兼ね合いから6扉車は順次4扉車に置き換えられ[報道 17]、2017年4月20日を最後に廃止された[34]。 東武スカイツリーライン・伊勢崎線・日光線直通日中は久喜行と南栗橋行が1:1の割合で運転されている[報道 18]。直通運転を開始した2003年3月19日から2006年3月17日までは、日中は1時間あたり3本(内訳は東武動物公園行が2本、南栗橋行が1本)であった。日中の清澄白河駅折り返しの列車も1時間に4本設定されていたため、清澄白河駅、押上駅、東武線曳舟駅で時間調整が頻繁に行われていた。 2006年3月18日のダイヤ改正以降、早朝深夜と9時台をのぞき1時間に6本(10分間隔)となった。昼間時は南栗橋行と久喜行の急行が交互に運行されるようになった。時間帯やダイヤの都合により、北越谷駅(準急)・東武動物公園駅発着もある。直通列車は急行または準急(朝・夜間のみ運転)に限られる。2013年3月16日のダイヤ改正より、昼間時の行先が久喜行・久喜行・南栗橋行の30分サイクルに変更となり、平日夜間帯の急行の運転時間帯も拡大された。2022年3月12日のダイヤ改正で昼間時は南栗橋行と久喜行が交互運行に戻った。 現在、半蔵門線からの東武線内普通列車は設定されていないため、通過駅へは東武線内の曳舟駅や北千住駅・西新井駅などでの乗り換えが必要となる。一方、東武からの日中の急行以下の速達列車は全列車が半蔵門線直通である。 東武線押上駅 - 曳舟駅間はとうきょうスカイツリー駅 - 曳舟駅と同一路線扱いではあるものの、曳舟駅で改札を出場しなくても重複乗車は可能であり、同駅および浅草駅へそのまま向かうことができる。 臨時列車東急田園都市線 - 半蔵門線 - 東武伊勢崎線の3社直通運転を利用して、多客期に臨時列車を運行した事例がある。このうち、館林・南栗橋以北に直通する列車には分割併合の兼ね合いから東武30000系が使用された。
2017年7月11日から同21日までの火曜日から金曜日の朝には、東急田園都市線の平日朝ラッシュ時の混雑緩和を目的として、同線からの直通特急列車「時差Bizライナー」(中央林間→押上)を運行した。当線内は各駅に停車した[報道 20][報道 21]。 弱冷房車・車椅子スペース・女性専用車
押上延長後の半蔵門線各駅の発車標には、時刻や行先とともに車両の所属会社が「(会社名)の車両です」といった形で表示される[35]。これは車椅子スペースが設置された車両の連結位置が東武と東急・東京メトロで異なるためである[36][35]。「○両目に車椅子スペースがあります」という表示だと表示装置が表示できる字数を超えてしまうため、「(会社名)の車両です」と表示しているという[36]。 なお、東武の車両は原則2・9号車、東京メトロと東急は原則3・9号車に設置されている(東急5000系は中間車全車、東急2020系は全車に設置)が、転入・転出や車両組替・リニューアル工事等により、原則以外の車両に設置されている場合もある。 平日朝始発から9:30まで(渋谷方面行〈B線〉は押上9:20発まで)のすべての列車は、進行方向最後尾の車両が女性専用車となっている(実施区間は渋谷方面行きは東武線→押上→渋谷間、押上方面行きは東急田園都市線→渋谷→押上間、9:30で女性専用車の扱いは取りやめとなる)[37]。
車両自社車両
直通先の東武伊勢崎線では、日比谷線とも相互直通運転が行われており、また同区間内の竹ノ塚駅付近に日比谷線車庫の一つである千住検車区竹ノ塚分室があることから、日比谷線用車両と並ぶ光景も見られる。 乗り入れ車両現在の乗り入れ車両
過去の乗り入れ車両
車両運用
どの列車がどの会社に所属する車両で運転されるかは列車番号を見ることで判別できる。現在、列車番号末尾アルファベットの「S」が東京メトロ車両、「K」が東急車両、「T」が東武車両となっている[注釈 12]。列車番号は『MY LINE 東京時刻表』(交通新聞社)などで確認ができる。 また、6桁の数字で表記されている東急方式の列車番号では、上3桁が運行番号を表し、001 - 026が東急車、051以降の奇数番号が東京メトロ車、050以降の偶数番号が東武車となっている。 なお、直通運転に際して各社間で走行距離をなるべく均一にする関係などから、東武車が東急田園都市線から半蔵門・清澄白河・押上などで折り返す列車にも使用されている。同様に、東急田園都市線でも長津田 - 中央林間の区間運転列車の一部にメトロ車および東武車が使用されている。 通常はそれぞれの運行番号に対応した車両で運行されるが、夜間に生じたダイヤの乱れによってメトロ・東武・東急の車両が各自の車両基地に戻れない状況が生じるなど、車両運用になんらかの不具合が生じた場合は、所定メトロ車が充当される運用を東急車で運行する、あるいはその逆といったように、他社の車両による代走が行われることがある。 利用状況2023年(令和4年)度の最混雑区間(A線、渋谷 → 表参道間)の混雑率は109%である[報道 23]。 直通先の東急田園都市線から乗り入れる乗客が多いが、渋谷駅は乗車人員よりも降車人員が多く、2019年までの混雑率は東急田園都市線内よりやや低い170%程度で推移していた。一方で、渋谷駅や東急田園都市線内には、列車本数を増発する余地がないことから、この数値は20年あまり横ばいとなっている。2013年3月16日に東急東横線渋谷駅が地下化されると、それまで銀座線に直接乗り換えていた利用者の一部が半蔵門線に乗り換え、同一ホームで乗り換えられる表参道駅で銀座線に乗り換えるようになり[46]、2013年度の最混雑区間の混雑率は175%に悪化した。 もう一方の押上駅からは東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)が乗り入れるが、4路線が接続する北千住駅が実質的なターミナル駅となっており、北千住駅で都心方面の別路線に乗り換える乗客も一定数存在するため、押上駅方面から乗り入れる乗客は少ない。押上駅は渋谷方面への始発列車が終日設定されており、終日にわたって混雑率は低い。 2007年度の一日平均通過人員は、渋谷 - 表参道間が472,123人で最も多い。押上方向に進むに連れて通過人員が減少し、神保町 - 大手町間が229,678人である。大手町駅は乗車人員と降車人員がほぼ同数であり、大手町 - 三越前間が229,456人と横ばいになるが、それ以降は再度通過人員が減少し、錦糸町 - 押上間が105,799人で最も少ない[47]。 近年の輸送実績を下表に記す。表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
駅一覧
各駅のホームに向かう階段に設置されている駅一覧表は、副都心線の開業で駅一覧表が更新された際に、渋谷の乗り換え案内に従来表参道での乗り換えを推奨していたために存在しなかった銀座線が、副都心線のほかに新たに加えられた。ただし、押上駅の副名称の導入に伴って更新されたものでは再び削除されている。 発車メロディ2018年8月時点では東京メトロの路線の中で唯一発車メロディ(発車サイン音)が一切導入されていない路線であったが、同年9月8日に青山一丁目駅に初めて導入され、同月13日より東急が管理している渋谷駅を除く全駅で使用を開始した[報道 24]。すべてスイッチの制作で、塩塚博と福嶋尚哉が作曲および編曲を手掛けた[50]。 半蔵門駅と三越前駅にはご当地メロディが採用され、前者では国立劇場の最寄り駅であることにちなんで、歌舞伎の黒御簾音楽の「てんつつ」と人形浄瑠璃文楽の「寿式三番叟」、後者では民謡「お江戸日本橋」をアレンジしたものを使用している。
PASMO利用時の運賃計算東京メトロおよび乗り入れている東武鉄道では、PASMOやSuicaなどの交通系ICカード(以下PASMOで代表)を利用することができるが、東武伊勢崎線押上・北千住経由で半蔵門線と日比谷線を乗り継いだ場合はPASMOの仕様上、東武線の運賃は計算されず、全線東京メトロ線経由で計算される(東京メトロのみで途中改札を出ずに乗車できる経路があるため[53])。 また、北千住駅では東京メトロ・東武・東日本旅客鉄道(JR東日本)の3社が改札および構内を共用しており、中間改札がない[注釈 13]関係上、東武伊勢崎線押上・北千住経由で半蔵門線と千代田線(綾瀬駅・北綾瀬駅方面、町屋駅方面)を乗り継いだ場合も、同じく全線東京メトロ線経由で計算され、表参道駅または大手町駅経由と同一の金額が引き落とされる。 2018年3月17日付で水天宮前駅と日比谷線人形町駅が乗換駅に指定されたことに伴い、水天宮前駅以東など両駅接続で運賃が計算される区間が発生している(例:清澄白河駅 - 北千住駅間など)。 脚注注釈
出典
報道発表資料
新聞記事
参考文献
関連項目外部リンク
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