総和法 M が正則であるとは、収束級数については通常の和と一致することである。総和法 M が正則であることを示す定理は(アーベルの定理が原型的な例であることから)M に対するアーベル型定理という(また、正則であるという代わりに「M についてのアーベル型定理が成り立つ」というように述べることもできる)。これの「部分的に逆」の結果を与えるタウバー型定理は、より重要で一般にはより捉えにくい(呼称は、原型的な例をアルフレッド・タウバーが与えたことによる)。ここで「部分的に逆」というのは M が級数 Σ を総和し、かつ「ある特定の付加条件を満たす」ならば、Σ はそもそも収束級数であるということを言っている。「なんらの付加条件をなにも課さない形でタウバー型定理が成立する」ならば M は収束級数だけしか総和できないという意味になる(これでは発散級数の総和法としては役に立たない)。
の評価のために s0 = a0 および sn+1 = sn + an+1 で定まる数列 s を合わせて考える。収束級数の場合には、数列 s はその極限値として a に収束する。総和法を、級数の部分和の列からなる集合から値の集合への写像とみることができる。数列の集合に値を割り当てる任意の総和法 A が与えられれば、対応する級数に同じ値を割り当てる級数総和法(series-summation method)AΣ に機械的に翻訳することができる。こういった総和法について、値を数列の極限や級数の和にそれぞれ割り当てるものという解釈を与えたいならば、持っていて欲しい「あるべき性質」というものがいくつかある。
正則性(Regularity): 総和法 A が正則(regular) であるとは、部分和の列 s が x に収束するならば A(s) = x となること、あるいは同じことだが、s に対応する級数 a に対して A に対応する級数総和法 AΣ が AΣ(a) = x を満たすことをいう。
線型性(Linearity): 総和法 A が線型(linear) であるとは、それが定義される限りにおいて数列全体の成す線型空間上の線型汎関数となること、つまり A(r + s) = A(r) + A(s) かつ A(ks) = kA(s) が成り立つときにいう。ただし k はスカラー。級数 a の項 an = sn+1 − sn は数列 s 上の線型汎関数で逆も成り立つから、A が線型であることは、対応する級数総和法 AΣ がその項全体の上の線型汎関数となることに同値である。
安定性(Stability): s が初項 s0 の数列で、s′ を s の初項を落として、残りの項は s0 を引くことによって得られる数列とする。つまり、s′n := sn+1 − s0 とするとき、総和法 A が安定(stable) であるとは、A(s) が定義されることと A(s′) が定義されることが同値で、A(s) = s0 + A(s′) が成立するときにいう。同じことだが、各 n について a′n := an+1 とすれば AΣ(a) = a0 + AΣ(a′) が成り立つとき、級数総和法 AΣ は安定であるという。
有限再可付番性: 二つの列 s と s′ が適当な全単射f: N} → N で各 i について si = s′f(i) となるようにできるとき、自然数 N ∈ N で i > N なる任意の i において si = s′i が存在するならば A(s) = A(s′) が成り立つ。
言葉を変えれば、s′ は s の有限個の項を並べ替えただけでそれ以外全く同じ数列ということである。注意すべきはこれが安定性よりも弱い条件であることで、実際「安定性」を示す任意の総和法は「有限再可付番性」も持つが、逆は真でない。
また、二つの相異なる総和法 A, B が共有すべき良い性質として一貫性あるいは無矛盾性(consistency) といわれるものがある。A, B が一貫しているあるいは互いに矛盾しないとは、A, B の双方で値の割り当てられている任意の級数 s に対して A(s) = B(s) が成り立つことを言う。二つの総和法が互いに無矛盾で、一方が他方よりも多くの級数に和を割り当てることができるならば、総和可能な級数の多いほうを、他方より強い(stronger) 総和法という。
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