眠りによせて
「眠りによせて」(ねむりによせて)は、日本のロックバンド、L'Arc〜en〜Cielの1作目のビデオシングル。VHS版は1994年7月1日発売、DVD版は2003年12月17日発売。発売元はKi/oon Sony Records。 概要1stアルバム『DUNE』から約1年3ヶ月ぶりとなる新譜で、前作「Floods of tears/夜想花」以来約1年8ヶ月ぶりとなるシングル。また、本作はメジャーレーベル、Ki/oon Sony Records(ソニー・ミュージックエンタテインメントの社内レーベル)から発表したメジャーデビューシングルとなっている。なお、本作のレコーディングは、1994年初頭から始まったアルバム『Tierra』の録音作業の期間中に行われている。 本作の表題曲「眠りによせて」は、ボサノヴァテイストのアレンジに歪んだギターサウンドがのせられた楽曲となっている。当時の日本では、1980年代以降のHR/HMあるいはビートロックの影響下にあるバンドが数多くデビューしていたこともあり、この曲は、日本のメジャーシーンで鳴るロックと一線を画したような音源になっている。作曲者のkenは、この曲の印象について「たぶんボサノバとか、そういう音楽が気軽に流れてくる場所にいる人なら自然に聴けるかもしれないけど、最近のロックというフィールドの音楽ばかり聴いている人にはそう取られる(驚かれる)かもしれない[1]」と本作発売年に受けたインタビューで語っている。(詳細は楽曲解説の項目を参照) なお、この曲の制作でレコーディング・エンジニアを務めた比留間整は、アルバム『Tierra』発売時に受けたインタビューの中で、L'Arc〜en〜Cielについて「最近の若いバンドとはちょっと違う[2]」と述べている。また、比留間は同インタビューで、この曲の制作を振り返り「シングルになった曲ありますよね(「眠りによせて」)、ボサノバ調の。あれなんかあのまま録ったら普通のボサノバになっちゃうんですけど、それを歪んだギターの音をサビのところに入れて、ハードな感じで少しぎくしゃくした要素を入れると、当たり前じゃない感じになるというか。そういうところも録りながらアイディアを練っていくような感じでしたね。その場の思い付きでそういうサウンドを入れるような偶然性もあるんですけど。もともとさっき言ったような要望がメンバーからあった[2]」と語っている。 リリースリリースの経緯本作は、ビデオシングルと呼ばれる”VHSを音楽メディアとして用いた規格”でリリースされている。メジャーデビュー作品がビデオシングルとなったケースは極めて珍しいが、これはレコード会社の意向によるもので、メンバーはこのような特異な売り出し方を良しとしていなかったという[3]。 バンドのリーダーを務めるtetsuyaは2006年に受けた音楽雑誌『R&R NewsMaker』の田中学によるインタビューの中で、このリリース形態に関して「ビデオシングルって当時としてはめずらしかったので、"ビデオチャートで上位狙えるだろう"っていう狙いなんですけども、ソニーの狙いですね。メンバー的にはどうなんかなーって感じでしたけど[3]」と述懐している。また、後年hydeは「前作のビデオ(『TOUCH OF DUNE』)もそうだったけど、なんでこう上手くいかないのかな?っていう感じ[4][5]」「現実的にはこれぐらいしか出来ないのに、理想はもっと大きかった[5]」と述懐しており、販売形態の面で納得していない点があったことを示唆している。 ただ、メンバーの心情とは裏腹に、ビデオシングルという販売形態を採ったことによりオリコン週間ビデオチャートで初登場3位と[6]、メジャーデビュー作品としては高順位を記録する結果となった。 リリースプロモーションこの当時にメジャーレーベルと契約したロックバンドの中には、ひとつのお約束として、ライヴ会場に集まった観客の前で大々的にメジャーデビューを発表するバンドがいたという[7]。ただ、当時のL'Arc〜en〜Cielはこのトレンドを嫌い、メジャーとの契約について触れることを控えていた[7]。 バンドのリーダーを務めるtetsuyaは1996年に発売されたアーティストブックにおいて、メジャーと契約した当時を振り返り「ツアーでメジャー・デビューの発表はしませんでした。"ニュー・アルバムが出ますよ"っていう雑誌の広告に、キューン・ソニーのマークが入ってるだけ。だから、今まで一言もメンバーの口から"メジャー・デビュー"とか"メジャーに行く"っていうことは言ってないし、そういうふうに広告も打ってないですよ[8]」と語っている。また、2010年に受けたインタビューにおいても、tetsuyaは「当時、周りのバンドは"渋谷公会堂のライヴで重大発表あり"みたいに告知しておいて、そこでメジャー・デビューを発表するっていうのがトレンドだったんですよ。でも、僕らはあえてそういう発表を一切しなかった。ライヴでも言ってないし、広告も打ってないし、インタビューでも発言してないんです[7]」と述懐している。 リリース形態本作は、ビデオシングルと呼ばれる”VHSを音楽メディアとして用いた規格”で販売されている。2003年12月17日にはDVD版が未発売だった本作品に加え、『Siesta 〜Film of Dreams〜』『and She Said』『heavenly 〜films〜』の計4タイトルのDVD版、さらに『A PIECE OF REINCARNATION』と『ハートに火をつけろ!』の計2タイトルのDVD再発版が同時発売されている。 ミュージックビデオ表題曲「眠りによせて」のミュージック・ビデオは、高木照之がディレクターを務めた作品となっている。映像は、短編映像詩ともいえる作品に仕上げられている[9]。 ちなみにこのミュージック・ビデオは、2003年3月19日に発表したベストアルバム『The Best of L'Arc-en-Ciel 1994-1998』の初回限定盤特典DVDにも収録されている。また、2007年2月14日に発表したクリップ集『CHRONICLE 0 -ZERO-』にも収録されている。さらに、2019年12月11日には公式YouTubeアーティストチャンネルにおいて、YouTube Music Premium限定で映像の有料公開が開始されている。前述のYouTubeチャンネルでの有料公開開始から約2年4ヶ月後となる2022年4月1日からは、同サイトで映像の無料公開が開始されている。 収録曲
楽曲解説
参加ミュージシャン収録アルバム
参考文献
脚注
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