等エントロピー過程(isentropic process)とは、系のエントロピーが一定な熱力学過程[1][2]。任意の可逆断熱過程は等エントロピー過程であることを証明できる。
背景
熱力学第二法則によれば次が成り立つ。

ここで、
は加熱によって系が獲得するエネルギー量、
は系の温度、
はエントロピーの変化量である。等号があるのは、可逆過程の場合を意味している。可逆等エントロピー過程では、外部との熱エネルギーのやりとりがないので、断熱過程でもある。非可逆過程の場合、エントロピーは増大する。したがって系から熱を奪う(冷却する)ことで内部エントロピーを一定に保ち、等エントロピーな非可逆過程とする。したがって、非可逆等エントロピー過程は断熱過程ではない。
可逆過程の場合、等エントロピー変化は周囲の環境からその系を熱的に「絶縁」することでなされる。温度はエントロピーの熱力学的共役変数であり、したがって共役過程は等温過程である。等温過程では系は外界(恒温槽)と熱的に「接続」されている。
等エントロピー流
等エントロピー流 (isentropic flow) は、断熱的で可逆な流れである。すなわち、流れに対してエネルギーは加えられず、摩擦や散逸によるエネルギー損失も起きない。理想気体の等エントロピー流において、流線に沿った圧力、密度、温度の関係式が定義できる。
等エントロピー関係式の導出
閉鎖系において、系全体のエネルギー変化は、行った仕事と追加された熱の総和である。

体積の変化で系がなした仕事は次の式で表される。

ここで
は圧力、
は体積である。エンタルピー (
) の変化は次のようになる。

可逆過程は断熱過程なので(すなわち、熱を外界とやり取りしない)、
である。ここから次の重要な2つの式が導出される。
, および
または 
⇒ 
すると、比熱比は次のようになる。

理想気体では
は定数なので、理想気体であることを前提として上の式を積分すると、次が得られる。
であるから

理想気体の状態方程式
を使うと、次のようになる。


また、
(モル単位)が成り立つので、
かつ 


以上から、理想気体の等エントロピー過程について、次が成り立つ。
または 
理想気体の等エントロピー関係式一覧
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前提は次の通り。



- ここで:
= 圧力
= 体積
= 比熱比 = 
= 温度
= 質量
= 特定の気体の気体定数 = 
= 標準気体定数
= 特定の気体の分子量
= 密度
= 定圧比熱
= 定積比熱
参考文献
- Van Wylen, G.J. and Sonntag, R.E. (1965), Fundamentals of Classical Thermodynamics, John Wiley & Sons, Inc., New York. Library of Congress Calatog Card Number: 65-19470
脚注・出典
- ^ Van Wylen, G.J. and Sonntag, R.E., Fundamentals of Classical Thermodynamics, Section 7.4
- ^ Massey, B.S. (1970), Mechanics of Fluids, Section 12.2 (2nd edition) Van Nostrand Reinhold Company, London. Library of Congress Catalog Card Number: 67-25005
関連項目