船舶に乗り組む衛生管理者
船舶に乗り組む衛生管理者[注 1](えいせいかんりしゃ、英: Health Supervisor[注 2])とは、船員法に規定する必置資格者のひとつで、船内の衛生管理に必要な業務に従事する者をいう[2]。別称は船舶衛生管理者。日本国内および日本政府があらかじめ申し合わせを行った改正STCW条約締約国で効力を有する[3]。学校等における教育を必須とせず試験の合格並びに証書の交付により、診察・投薬・注射・縫合などの医療行為が部分的に可能となる日本で唯一の資格である。 概要近海区域以遠を航行区域とする総トン数3000トン以上の船舶などでは、乗組員の中から衛生管理者を選任する必要がある[4]。衛生管理者は次節に述べる衛生管理者適任証書を有する者の中から選任する[4]が、やむを得ない場合は国土交通大臣の許可を得たうえで、資格を有していない者を選任することができる[5]。衛生管理者を乗り組ませる船舶は、2019年8月時点で349隻である[6]。 衛生管理者は、必要に応じ医師の指導を受けながら、船員の健康管理や保健指導、作業環境衛生、居住環境衛生、食料と用水の衛生保持など、船内の衛生管理に関する業務に従事する[7]。 厚生労働省管轄の労働安全衛生法による衛生管理者と類似しているが、船舶の乗組員においては海上労働の特殊性に鑑み労働基準法等の代わりに船員法が適用される[8]ため、両資格は根拠法及び主務大臣も異なる「衛生管理者」として並存している。両資格の業務面での決定的な相違点は、緊急時には医師の助言等を受け投薬・注射などの医療行為を部分的に許されていることである[6][9]。このほか血圧の測定、止血なども行うため、船内では医務室などで勤務する[要出典]。 なお、近海区域以遠を航行区域とする総トン数3000以上の船舶のうち、最大搭載人員100人以上の船舶では、船舶に乗り組む医師(船医)を乗船させることになっている[6][10]。また、船医や衛生管理者を乗り組ませない船舶では、一定の海技免状を有するなどの条件を満たす乗組員から「衛生担当者」を選任し、衛生管理の業務を担当させる[6][11]。「衛生担当者」は、海員が常時10名以下の船舶などでは船長が兼務することができる[6][12]。 衛生管理者適任証書資格の認定国土交通大臣(受付窓口は地方運輸局等)から衛生管理者適任証書の交付を受けるには、大臣が執行する衛生管理者試験に合格するか、大臣がこれと同等以上の知識・技能を有すると認定する者である必要がある[13]。 後者には、以下の者などが該当する[14]。
適任証書には、船員法に基づく衛生管理者であることとともに、改正STCW条約第6章第4規則に適合するものであることが明記されている[1]。 試験衛生管理者試験は通例、西暦の奇数年12月に関東運輸局本局(横浜市)、偶数年12月に神戸運輸監理部本庁舎(神戸市)にて国土交通省が直接実施する。試験日の1ヶ月前までに国土交通大臣が官報で公示する[15]。 受験資格
試験科目登録講習先述の通り、講習を修了する事によっても、衛生管理者適任証書の交付を受ける事ができる[14]。 唯一の大臣登録講習機関となっている船員災害防止協会(船災防)が行う講習は以下の3種類あり、最終日の検定試験に合格すると修了となる[18]。
再講習一定条件の外航船舶(特定船舶)に乗り組む衛生管理者に限り、5年ごとに大臣に登録された再講習の受講が義務付けられている。一般社団法人外航船員医療事業団が唯一の大臣登録再講習機関となっており、横浜掖済会病院、名古屋掖済会病院、大阪掖済会病院、神戸掖済会病院のいずれかを会場に年1-2回、100時間の講習を行っている。 他の資格の受験資格
脚注注釈出典
参考文献
関連項目外部リンク
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