CHAOS RINGS
『CHAOS RINGS』(ケイオスリングス)は、メディア・ビジョンが開発し、スクウェア・エニックスより発売された、スマートフォン/タブレット端末用のコンピュータRPG。2010年4月20日にiOS版がiPhone/iPod touch用アプリとして発売された。2010年8月12日にはiPad版が、2011年12月1日にはAndroid端末向けの移植版が発売[2]。 概要謎の闘技場「アルカ・アレーナ」に召喚され、殺し合うことを命じられた4組の男女ペアたちの死闘を描くRPG。剣と魔法のファンタジーの雰囲気を装いつつもSF的な内容が指向されている[1]。キャッチコピーは「新たなアダムとイヴが手にする禁断の果実、1万年の輪廻の先に待つものは……」というもので[3]、劇中用語として、旧約聖書の『創世記』に登場するアダムとイヴや、ノアの方舟のモチーフが登場している。 スクウェア・エニックスが販売したiOS用RPGとしては、移植やリメイクではない初めての完全新作である。発売当時としてはスマートフォン用ゲームの中でも比較的高めの価格が設定され[1]、また大規模な広告展開などは行われなかったが[4]、一方で口コミを中心に話題を集め[4]、配信開始から3日間で日本および米国を含む14カ国のApp Storeの売上ランキングで1位を獲得し、2010年12月にはApp Storeの「今年のベストiPhoneゲーム」に選出された。後に発売されたAndroid版も、2012年12月にGoogle Playの「ベストゲーム 2012」日本版のひとつに選出されている[5]。 スマートフォン用のゲームはゲーム専用機のものより劣るという認識が一般的であった制作当時にあって、携帯型ゲームハードに見劣りしない「スマートフォン最強のRPG」を目標に掲げて開発が行われた[1]。ストーリーは『428 〜封鎖された渋谷で〜』等を手掛けた北島行徳によるシリアスなもので、2人の男女×4組の主人公から1組を選んで物語を進めていく群像劇となっている。一方で本作はスマートフォン用のゲームとして、通勤中などの時間の合間に遊ばれることが想定され、いつでもゲームを切り上げられるようにイベントなどを短めにすることも意図された[4]。システム面では、画面上のキャラクターを操作して、エンカウントするモンスターを倒しそれによってキャラクターを強化させていくという、オーソドックスなRPGのスタイルを採っている[2]。戦闘システムには本作独自の要素も取り入れられたが[2]、対象となるユーザー層には「昔はゲームを愛好していたが、今は少し離れている人」といった層が想定され、新しさはありながらも分かりやすいという方向性が重視された[1]。 「豪華」[5] とも評されるゲーム中の楽曲は上松範康が手掛けており、ゲームの中でも欠かせない要素として重要視された[1]。劇中ではエンディングのほか、ダンジョンのBGMなど幾つかの場面で飛蘭が歌うボーカル曲も用いられたが、これは上松の発案で入れられたものであるという[1]。サウンドトラックは『CHAOS RINGS -Original Soundtrack-』が2010年6月23日よりiTunes Store限定で配信された、『CHAOS RINGS Ω -Original Soundtrack-』が2011年5月20日よりiTunes Store限定で配信された。2014年11月12日、『ケイオスリングス+ケイオスリングスΩ オリジナル・サウンドトラック』、『ケイオスリングスII オリジナル・サウンドトラック』、『ケイオスリングスIII オリジナル・サウンドトラック』が同時発売された[6]。 プロデューサーの安藤武博によれば、本作は好評であったとしつつも、もっと家庭用ゲーム機のRPGのようにストーリーを深くまで掘り下げて欲しいという意見も多かったとされ、次回作ではそうした要望に応えることが課題となったという[4]。2011年5月20日には本作の1万年前を描いた前日譚『CHAOS RINGS Ω』[7]、2012年3月15日には続編の『CHAOS RINGS II』[8]、2014年10月16日には『CHAOS RINGS III』と『CHAOS RINGS III プリクエル・トリロジー』(前3部作を同梱)が発売された[9]。 2016年5月31日をもってAndroid/iOS版の配信を終了(IIIを除く)。以降はPS Vita版のみの配信となる。 沿革
ゲームシステムゲームの進行プレイヤーは4組の男女ペアのいずれかを主人公として選び(ゲーム開始当初は2組のみ選択可能)、物語を進めていく。選んだペアによって異なったシナリオが用意されている[2]。 キャラクターは3DCG、クオータービューのフィールドは2DCGで描かれる。キャラクターを描画する3DレンダリングエンジンにはエイチアイのMascotCapsuleが採用されている[1]。主人公の移動は画面の任意の位置をフリック入力することで行われ、右手でも左手でも操作できるように配慮されている[2]。プレイヤーは「ホーム」と呼ばれる部屋を拠点として、巨大な方舟「アルカ・アレーナ」の内部に自然を模して作られたダンジョンへと赴き、出現するモンスターを倒して経験値や所持金を獲得していくことで、キャラクターをレベルアップさせたり、ショップで性能の高い武器や防具を入手したりしていく。ダンジョンに侵入する際には出現モンスターの強さを自由に選ぶことが可能で、より強い敵が出現するダンジョンでは経験値などの見返りも多い[13]。また特定のジーン(後述)を装備することで、エンカウントそのものが発生しないようにすることもできる。各ダンジョンには幾つかのパズルが用意されており、いずれもあまり難解ではなが[2]、パズルのルールはダンジョンごとに異なる。ダンジョンの最深部に到達してボスキャラクターを倒すとシナリオが進行し、プレイヤーに選ばれなかった他の男女ペアとのバトルロイヤルを勝ち抜いていく。 エンディングに到達するとスタッフロールが流れて物語が終了するが、エンディングを見ることで別の結末へと続くシナリオルートが選択可能となったり、新たに選択できる主人公ペアが増えたりしていく。また、一度クリアしたペアは、クリア時のステータスを引き継いだまま再スタートすることもできる。4組のペアの物語をクリアすることで真のエンディングへの道が開示される。物語の進行度はオープニング画面のメニューからチェックすることが可能となっている。 戦闘システムプレイヤー側のパーティ人数は最大2人で、戦闘はリアルタイム性のないターン制ストラテジーを採用している。プレイヤーは各ターンの冒頭で2人のキャラクターの行動を指定し、敵味方が素早い順に1回ずつ攻撃を行う。全てのキャラクターが手番を終えると次のターンに移る。 本作における特徴的なゲームシステムとして[2]、プレイヤーは行動を指定する際、最初に「ソロ」「ペア」のいずれかを選択するというものがある。「ソロ」では2人に別々の行動を指定でき、異なる敵を攻撃したり、攻撃と回復を同時に行ったりすることができ、また後述のブレイクゲージを2回分の手番で大きく変動させることができるが、攻撃や回復の威力は小さくなる。もう一方の「ペア」では2人が息を合わせて同じ相手に同じ行動を行うもので、行動の威力や効果を倍以上に高めることができ、後述のジーンによる魔法や特殊能力、補助効果などもペア間で共有され、回復効果などもペア全体に及ぶようになる。その反面、敵からのダメージや状態異常の効果もペアに及ぶようになり[13]、通常の倍のダメージを受けることになるため、ハイリスクかつハイリターンな選択となる。プレイヤーにはこうした一長一短を見極め、攻撃手段を状況に応じて使い分けていく戦略性が求められる[2]。 画面左上には「ブレイクゲージ」と呼称される、敵味方で共有される円形のゲージが表示されている。戦闘開始時には互角となっているが、味方の攻撃を当てるとゲージが優位な状況に傾き、逆に敵の攻撃を受けるとゲージが不利な状況に傾く。味方が優位な状況ではゲージが青緑色に輝き、敵に与えるダメージや回復効果が大きくなると同時に受けるダメージが軽減されるなど有利な補正を受けるが、劣勢の状況ではゲージが赤くなり逆のペナルティを受ける[13]。ゲージが互角の状態まで引き戻されると、画面に大きく「BREAK!!」の表示が現れ、劣勢を立て直した側に大きなチャンスが与えられる。 魔法には火・水・風の3系統があり、互いがじゃんけんのような三すくみの関係にある。属性を持っているキャラクターは優位な属性に対して耐性を得るが、不利な属性が弱点となる。属性のある魔法を使用するとその魔法を使用したキャラクターの属性も変化し[13]、受けるダメージに修正を受けるほか、通常攻撃などの無属性の攻撃も属性攻撃へと変化する。魔法やアイテムの中には、敵や味方の属性を強制的に変更させることのできるものもある。 ジーンキャラクターの成長には、経験値によるレベルアップのほか、「ジーン(遺伝子)」と呼称される特殊能力を獲得していくことで行われる。各キャラクターは「ジーンプレート」と呼称される4つの装備欄にジーンを装備することができ、ジーンごとに備わった攻撃や回復の魔法を使用できるほか、能力値の向上や魔法への耐性、自動的なカウンター攻撃といった能力を付与することができる。 4つのジーンプレートのうち下3つに装備できるジーンの種類は「モンキー」「タイガー」「ドラゴン」などといったモンスターの系統ごとに分かれており、その系統のモンスターを倒すことでジーンが成長し、新たな特殊能力を獲得するチャンスを得る。自分より強いモンスターを倒すと高い確率で新たなジーンを獲得できる[13]。モンスターから獲得したジーンはゲーム全体で共有されており[13]、新たに別の主人公を選んでゲームを開始したり、別の主人公でゲームを継続した後に中断していた主人公のシナリオを進めた場合なども、他の主人公のシナリオで獲得したジーンを使用することができる。 1つめのジーンプレートにセットできる「ヒューマン」のジーンには、「戦士」「魔法使い」の2種類があり、物語開始時には主人公ごとに固有の技や能力が備わっている。このジーンは物語を進め、プレイヤーに選ばれなかった他のペアを倒すことで、倒したペアが初期習得している固有能力を奪い取って成長していく。このジーンはペアとなる2人の間で交換したり同じものを装備したりすることも可能だが、シナリオ間で共有はされず、ゲーム中で他のペアに倒されて直接対決のなかったペアの能力は獲得できない。 ストーリー世界が闇に覆われ、終焉の時を迎える場面から物語は始まる。各大陸から最強の戦士として集められた5組の男女が我に返ると、そこは「アルカ・アレーナ」と呼称される、どこに所在するとも知れない巨大な闘技場の中であった。彼らは詳しい理由も説明されないまま、「代弁者」を名乗るロボットのような存在から、生き残りを賭けた殺し合いを強要されることになる。優勝者には不老不死が与えられるというが、参加を拒んだり、闘いに負ければ死が待っている。あまりに理不尽な要求に物言いをつけた1人が見せしめのように殺害させられ、他の参加者たちは仕方なく代弁者に命じられるまま男女でペアを組み、まずはモンスターの徘徊するダンジョンに向かわされ、戦いに参加するための資格とされる一対の指輪を探すことになる。 プレイヤーが最初に選択することができるのは、4組のペアのうち2組、エッシャーとミューシャ、またはシャモとイルカの物語である。いずれもパートナーの親を殺した罪に直面しつつも、パートナーとの関係を築いていくという物語が描かれる。彼らはこの戦いにおける数々の不可解な点、それぞれ因縁や恋愛関係のある男女がペアを結ばされることの意味や、彼らの戦闘能力を引き出すかのようなモンスターとの戦い、知力を試すかのようなパズルの数々に首を傾げつつも、指輪を手にし、顔見知りとなった相手との最初の殺し合いを乗り越える。そしてパートナーの絆を深めることで更なる戦いの資格と、絆を深めた2人で生き残るというモチベーションを得て、決勝戦を制して最強のペアとなる。 勝ち残ったペアは優勝者の力量を試すために挑んできた代弁者を返り討ちにし、アルカ・アレーナから外の世界へと出る機会を得るが、そこで「方舟闘技場」を意味するアルカ・アレーナの真実を知らされる。いわく、この宇宙は「クオリア」と呼ばれる概念的存在によって終焉を迎えようとしており、あらゆるパラレルワールドも破滅の結末へと収束してしまう。しかし物語の舞台となる地球に現れるクオリアは、「特異点」と呼ばれる弱点であり、アルカ・アレーナを創設した人々は、この惑星の人類をクオリアに対抗できる存在へと進化させようとしているのだという。そして選りすぐられ最強の人類として選ばれた男女は、それ自体がタイムマシンであるアルカ・アレーナによって1万年前の世界へと送られて人類の祖となり、さらにその子孫の中から最強の人類を再びアルカ・アレーナで選りすぐって1万年前に送り込む、という時間のループを2千回も繰り返しているというのである。最初のエンディングでは、勝ち残ったペアは騙されて1万年前に送られてから事実を聞かされ、結果的にその状況を受け入れる。しかし最初のエンディングを見ることによって、そうなる前に事実にたどり着く別ルートのシナリオが開示され、ペアは1万年前に送り込まれることを良しとせず、現在のアルカ・アレーナを支配している「全能者」に勝負を挑む展開となる。最初のペアの片割れのなれの果てでもある全能者は、自分に戦いを挑んできたペアの力量を試し、それがクオリアに対抗できる域に達しているかを見極めようとする。全能者に勝利したペアは、全能者の行いは正当化できるものではないとして否定しつつも、自分の意思でクオリアと戦うことを決意し、第2のエンディングとなる。 第2のエンディングを見ることで残りの2組のペア、オーガとヴァティー、およびアユタとマナのペアの物語が選択可能となる。1万年前のアルカ・アレーナで優勝したことによって不老不死を得て現在の人類の祖となったオーガらと、アルカ・アレーナを創設した最初のペアの片割であり毎回記憶をリセットしながら戦いに参加し続けてきたアユタは、互いに因縁浅からぬ間柄であり、物語はアルカ・アレーナの秘密へと迫っていく。その中で、既に方舟の維持が限界に近づいており、そのために戦いのルールが非道なものへとねじ曲げられていることが語られ、また各登場人物のシナリオ間は互いにパラレルワールドとなっており、シナリオごとに各登場人物の置かれた状況がやや異なっていることが示される。 全てのペアの物語を終えると、時空の収束により、結末の異なる4つのパラレルワールドを経てきた4組のペアが合流する展開となり、クオリアとの最終決戦が開始される。4組のペアは地球を呆気なく消滅させてしてしまったクオリアの力に戦意を挫かれつつも、世界のためではなく自分自身のために戦うことを決意する。戦いはまるで勝機のないもののように思われたが、彼らの戦いの結果として未来の可能性が開かれ、より科学文明の進んだ時空から宇宙戦艦の大艦隊が援軍として駆けつける。宇宙艦隊の斉射によってクオリアは殲滅され、戦いを終えた4組のペアはクオリアから救済された元の時空へと戻ってゆき、全能者は全ての作業の完了を宣言して消滅する。その後はクリア後のおまけがあるものの[注釈 1]、本編の物語は幕を閉じる。 登場キャラクターiOS版には発売当初はボイスがなかったが、2011年8月のアップデート以降でボイスが追加された[11]。Android版は最初からボイスつき。人気声優を集めた配役や、多くの場面で台詞がボイスつきとなっている仕様は、発売当時のスマートフォン用アプリとしては物珍しいものであった[14]。 プレイヤーキャラクター4組のペアのうち、ゲーム開始時にプレイヤーに選ばれた1組が主人公のペアとなり、他のキャラクターはバトルロイヤルでの優勝を競うライバルとして登場する[2]。選択した主人公のシナリオによって設定が変化する者もいる。
その他のキャラクター物語の冒頭には、プレイヤーキャラクターにならないもう1組のペアが登場するが、ゲーム開始直後に死亡し退場してしまう。
スタッフ
漫画北島行徳原作、パク・ジンジュン作画による、本作と世界設定を共有する漫画版が、『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)で連載中。単行本はヤングガンガンコミックスより既刊2巻(2012年8月25日現在)が発売されている。 原作ゲームのシナリオを担当した北島が自ら漫画のネームも担当している[20]。内容は漫画版独自の内容となっており、原作ゲームには登場しない人物を主人公に据えているが原作ゲームのキャラクターも登場する内容となっている。
音楽
脚注注釈
出典
関連項目
外部リンク |
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