X-ファイル シーズン5
『X-ファイル』のシーズン5(全20話)は1997年11月2日にFOXでの放送が始まり、1998年5月17日に放送が終了した。なお、本シーズンとシーズン6の間には、劇場版第1作となる『X-ファイル ザ・ムービー』が製作された。劇場版第1作は両シーズンの間に起きた出来事を描写している。 スタッフ
キャスト主要キャスト
主要ゲスト
シーズンの概要スカリーのガンの原因がアブダクション(シーズン2の「昇天」3部作を参照のこと)にあると確信したモルダーは、治療法を知るために、シンジケートと取引する決意を固めた。自らの命を狙う人々から逃れるべく、モルダーは撃ち殺した殺し屋の死体を使って自死を偽装した[1]。病身のスカリーがFBI内部にシンジケートのスパイがいることを突き止めていた頃、モルダーは治療法を見つけるためにペンタゴンに潜入していた。そこで出会ったマイケル・クリッチュガウから、「エイリアンは政府がでっち上げたものにすぎない」と聞かされ、モルダーは自らの信条を大きく揺さぶられることとなった[2][3][4]。 シーズン後半、エイリアンの地球入植に反対する反乱軍という組織がアブダクション被害者を抹殺し始める。異星人側の動揺に気が付いたモルダーとスカリーは、その調査中にカサンドラ・スペンダーという女性に出会った。カサンドラは自分が何回もエイリアンに誘拐されたと主張する女性であるが、エイリアンが如何に素晴らしい存在であるかを世間に周知する運動に従事している女性でもあった[5][6]。カサンドラが失踪したことを受けて、モルダーはスカリーに催眠療法を受けてもらうことにした。エイリアンに誘拐された人たちが何をされたのかを正確に知るためである。その頃、シンジケートはブラックオイルのワクチンを開発することに血眼になっていた[7][8]。その後、チェスの世界大会で起きた殺人事件をきっかけに、モルダーとスカリーはギブソン・プレイズという少年の存在を知ることになる。彼にはテレパシー能力があった。しかし、X-ファイルの核心に迫りつつあった2人をシンジケートが放置するはずもなかった[9][10]。 製作脚本劇場版第1作の製作が決定したため、シーズン5は全体の流れが事前に確定された。これは『X-ファイル』にとって初めての試みであった(前の4シーズンでは製作途中で別のアイデアが採用されるということも多々あった)[11]。当初の予定では、シーズン5が『X-ファイル』のファイナル・シーズンになるはずだった。このシーズンを最後に、『X-ファイル』はテレビドラマシリーズではなく、映画シリーズとして展開される予定だった[12]。ドゥカヴニーは「『シーズン5まではテレビドラマでやろう。その先は映画で作っていこう』という話だったのだけどね」と述べている[13]。しかし、『X-ファイル』の好調ぶりを見たFOXはシーズン6とシーズン7の製作をカーターに依頼した。それを了承したカーターは、シーズン5を劇場版第1作とシーズン6第1話「ビギニング」につながるような形で製作することにした[14]。 撮影劇場版第1作の撮影のために、ドゥカヴニーとアンダーソンがシーズン5の撮影現場に来れないという事態が多々生じた。例えば、第3話の「アンユージュアルサスペクツ」と第15話「旅人」は過去の出来事を描いたエピソードであるため、2人の出演時間はかなり短いものとなっている[15]。実際、「アンユージュアルサスペクツ」は主役2人が映画撮影のためにロサンゼルスにおり、バンクーバーに来れない状況を乗り切るために製作されたエピソードであった。思案の末、第3話をローン・ガンメンの過去を描いた回にすると決めた製作サイドは、ヴィンス・ギリガンに脚本の執筆を任せた。なお、第6話「クリスマス・キャロル」と第10話「ドール」において、ドゥカヴニーの出演時間が短いのも、映画版の撮影があったためである[16]。 第5話「プロメテウス」はクリス・カーターが脚本と監督を務めたエピソードで、全体が白黒で撮影された。これはジェームズ・ホエールの『フランケンシュタイン』へのオマージュである[17]。グレースケールでの撮影となったために、撮影監督のジョエル・ランザムは光源の調整に通常以上の時間を費やした。『フランケンシュタイン』シリーズの雰囲気を醸し出すために、劇中の天候は暴風雨となっていたが、これはCGによるものである。また、カーターは広角レンズを入れたカメラを使用し、俳優たちにカメラに向かって演技するように命じた。こうした演出によって、今までのエピソードよりも超現実感を表現することができたとカーターは回想している[18]。 シーズン5最終話「ジ・エンド」以降、『X-ファイル』はバンクーバーではなく、ロサンゼルスで製作されることとなった。これは「家族との時間を大事にしたい」というドゥカヴニーの要望を受けてのことであった[13]。チェス大会のシーンでは、地元のファンたちがエキストラに起用されたが、これはバンクーバーへの感謝の思いを込めてのことであった。ロケ地として使用されたのはロジャーズ・アリーナ(バンクーバー・カナックスの本拠地として知られている)であった。スタッフたちはエキストラに志願する人を5000人前後と見積もっていたが、実際には1万2000人以上の志願者が出た[19]。「ジ・エンド」で監督を務めたR・W・グッドウィンはエキストラに指示を出す際に、アリーナのビデオスクリーンを使用した。撮影の合間の休憩時間には、スクリーン上に特別映像が映し出されたのだという。また、ドゥカヴニーとアンダーソンに質問できる時間や小道具の競売の時間がとられた。バンクーバーで5年間ともに仕事をしたスタッフたちとの別れを惜しんだクリス・カーターは、第2チームの監督として「ジ・エンド」の製作に参加した[19]。 評価視聴率シーズン5第1話「帰還 Part.1」は1997年11月2日にFOXで初放映され、視聴率にして16.1%、2734万人の視聴者を得た。この数字はシーズン4第1話「支配者」が記録した2111万人の視聴者数を大きく上回るものであった。また、「帰還」はシーズン5のエピソードの中で最も多くの視聴者数を稼いだエピソードとなった[20][21]。シーズン後半になると視聴者数が減少し始めたが、それでもなお、1エピソード当たりの平均視聴者数は2000万人弱となった[22]。シーズン最低の視聴者数を記録したのは第17話「万霊節」(1344万人)であった[20]。シーズン最終話「ジ・エンド」は1876万人の視聴者数を獲得したが、この数字はシーズン4最終話「ゲッセマネ」が記録した数字(1985万人)を下回るものであった[20]。 1997年度の全米視聴者数ランキングで、シーズン5(平均視聴者数1980万人)は第11位となった。シーズン5は『X-ファイル』のシーズンの中で最も視聴者数が多かったシーズンであるとともに、1997年度に放送されたFOXのテレビ番組の中で最も視聴者数の多かった番組でもある[22][23]。 批評家からの評価『エンターテインメント・ウィークリー』は本シーズンにA-評価を下し、「シーズン5は『X-ファイル』が創造性の頂点に達したことを示すエピソードである(その頂点がいつまで続いたかに関しては見解が割れるだろう)。驚異に満ちていた。」「単発のエピソードの多くが古典的名作のような雰囲気を醸していた。」と絶賛している[24]。『ニュー・ストレーツ・タイムズ』のフランシス・ダスは「シーズン5はとても面白かった。」「いくつかのエピソードは刺激的で、思わず笑いが出てしまうような作品であった。」と述べている[25]。こうした絶賛評の一方、『シネファンタスティック』のポーラ・ヴィタリスは本シーズンを「駄作が混じっているシーズンだった」と述べている[26]。 シーズン5全体の出来は絶賛されたが、個々のエピソードの出来栄えにはムラがあった。「プロメテウス」は「『X-ファイル』のハイライトとなるエピソードだった」「古典的な雰囲気が漂う傑作」「単発エピソードとしては、シリーズ最高の出来であろう」と絶賛された。また、ホラー要素とコメディ要素がミックスされた「吸血」も絶賛されている[27][28]。一方、酷評されたエピソードも本シーズンには存在する。『A.V.クラブ』のトッド・ヴァンデルワーフは「分裂」に関して「『X-ファイル』のエピソードの中でも最悪の出来だろう」と述べている[29]。また、スティーヴン・キングが脚本を手掛けた「ドール」はストーリーの出来が悪いと酷評された[30]。 受賞本エピソードはプライムタイム・エミー賞において、16のノミネーションを獲得した。俳優陣ではデヴィッド・ドゥカヴニー(主演男優賞)、ジリアン・アンダーソン(主演女優賞)、リリ・テイラー(ゲスト女優賞)、ヴェロニカ・カートライト(ゲスト女優賞)の4名がノミネートされた。また、クリス・カーターは脚本賞と監督賞にノミネートされた。しかし、受賞にまで漕ぎ着けたのは「プロメテウス」の芸術賞と「キル スウィッチ」の編集賞の2つに留まった。第55回ゴールデングローブ賞では、作品賞(ドラマ部門)、主演男優賞(ドラマ部門)、主演女優賞(ドラマ部門)の3部門にノミネートされたが、受賞は逃した。 エピソード一覧
参考文献
出典
外部リンク |
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