X-ファイル シーズン1
『X-ファイル』のシーズン1(全24話)は1993年9月10日にFOXでの放送が始まり、1994年5月13日に放送が終了した。 スタッフ
キャスト主要キャスト
主要ゲスト
製作構想1990年代初頭、クリス・カーターはFOXからテレビドラマの製作を持ちかけられていた。当時、カーターはウォルト・ディズニー・ピクチャーズでコメディ番組の製作に関わっていたが、ディズニーでの仕事に意義が見出せなかったため、FOXからの依頼を受けることにした[1]。370万人のアメリカ人がエイリアンに誘拐された可能性があるという報道や、1974年のテレビドラマ『事件記者コルチャック』、ウォーターゲート事件といったものを手がかりに、カーターは『X-ファイル』の構想を練り上げていった。1992年にはパイロット版の脚本を書き上げた。 カーターの最初の企画書はFOX重役によって没にされた。数週間後、カーターはコンセプトを一新した企画書を持ち込み、パイロット版作製の許可を得た。パイロット版をさらに深く掘り下げるにあたって、カーターは当時『NYPDブルー』の製作を務めていたダニエル・サックハイムに協力を仰いだ。2人は1988年のドキュメンタリー映画『The Thin Blue Line』やイギリスのテレビドラマ『第一容疑者』から多くのものを得た。その中でも、カーターが若い頃に見た『事件記者コルチャック』や『トワイライトゾーン』の影響は大きかったという。また、パイロット版の執筆時に公開された『羊たちの沈黙』を鑑賞したカーターは主人公をFBI捜査官にすることを思いついた。そうすることで、主人公が様々な事件に関与するもっともらしい理由が生まれると感じたからである[2]。さらに、カーターは『おしゃれ(秘)探偵』のように、主役2人をあくまでもプラトニックな関係にとどめることを決めた[3]。 シーズン1制作中の早い段階で、カーターはテン・サーティーン・プロダクションズを設立した。それから、ロサンゼルスでパイロット版の撮影を始めた。しかし、イメージに合うロケ地(特に森林)が見つからなかったため、バンクーバーに移って撮影を行うことになった[4]。野外での撮影が多かったため、通常1人で済むロケーション・マネジャーを2人雇わなければならなかった[5]。 キャスティング当時、デヴィッド・ドゥカヴニーはロサンゼルスを拠点に俳優活動を始めてから3年が経過していた。ドゥカヴニーは映画を中心としたキャリアの構築を目指していたが、マネジャーのメラニー・グリーンから『X-ファイル』の『序章』の脚本を見せられる。その脚本が素晴らしいものだったので、ドゥカヴニーは主役のオーディションを受けることを決めた[6]。ドゥカヴニーはオーディションを回想して「とても怖かった。」「ゆっくり話すよう心掛けた」と語っている。オーディションやって来たドゥカヴニーを見たカーターは「知的に見えない」と思ったという。そこで、カーターはドゥカヴニーに「来週からFBIの捜査官になった自分を想像できますか」と尋ねたという。それに対する答えを聞いたキャスティング監督はドゥカヴニーに対して大いに肯定的な評価を下した。また、カーターも「ドゥカヴニーは私があったことのある俳優の中でも、最高の脚本読解能力を持った人間の一人だ」と感じたという[7]。俳優との契約権はFOXが保有していたが、カーターはドゥカヴニーの起用は間違いないと感じていたという。また、それが正しい選択であったとも確信していた[8]。その予想通り、FOXはドゥカヴニーを起用した。モルダー役に決まったドゥカヴニーだが、その時点では、番組が9シーズンも続くほどの人気を獲得するとは思っていなかった[8]。 スカリーのキャスティティングは難航した。カーターは当時24歳の舞台女優ジリアン・アンダーソン以外の起用は考えられないとしていたが、FOXの重役陣は「主役2人の恋愛関係を描くこと」「アンダーソンよりも背の高く、足が長い、ブロンドでグラマラスな女優を起用すること」を要求してきた[9][10]。カーターは『こちらブルームーン探偵社』のような展開は避けるべきだと主張し、FOXの重役を説得することができた[11]。 ウォルター・スキナー副長官は従来の「書類を押し付けてくる上司」というステレオタイプに反して構築されたキャラクターで、「眠れる獅子」のようなキャラクターである[12]。ミッチ・ピレッジはシリーズに登場するほかの役のオーディションを受けていたが、落選し続けていた。そんな状況下で、製作スタッフから再度オーディションに来るようにとの通達が来て、ピレッジは困惑したという。困惑したままピレッジはカーターに会い、「あなたの演技は素晴らしいものでしたが、スキンヘッドに合う役がなかったのです。」と言われた。そして、ピレッジはウォルター・スキナー役のオーディションに挑み、気難しそうな男を演じて見せた。それを見たカーターは、ピレッジがこんなにも気難しさを醸し出せるのなら、スキナーは実際にはもっと親しみの持てる人間にしようと思ったという。スキナー役に決定したピレッジは「他の役に受からなかったことはむしろ幸運だったかもしれないと感じた。そのおかげで主要キャストに加われたのだから。」と当時を振り返って語っている[13]。 脚本執筆シリーズの製作が始まった頃、製作スタッフは番組が長期化するという見通しを持っていなかった。そのため、シリーズ全体の見通しが不透明であった[14][15]。シリーズの根幹はエイリアンをめぐる陰謀であったが、製作陣はそれだけではシリーズ全体の勢いが持たないと判断し、モンスターや幽霊のエピソードを加えることにした[16]。また、本筋とは関係のない形でエイリアンが登場するエピソードも執筆された(シーズン1第9話「宇宙」など)。 シーズン1の放送が終了する前に、製作スタッフは「ミソロジー」の主要概念の多くを考案していた。こうした概念はシリーズ全体を通して使われることになった。シーズン1では、シリーズ最大の敵、シガレット・スモーキング・マンが登場した。また、モルダーの妹、サマンサの誘拐事件に関しても早い段階から真相をほのめかすような描写がなされた[17]。「ミソロジー」がはっきりとした形で視聴者に提示されたのはシーズン1最終話の「三角フラスコ」以降のことである[18]。「三角フラスコ」はシーズン2が製作されるかどうかがまだ不透明だった1994年初頭にその脚本が執筆された。そのため、X-ファイル課の閉鎖が盛り込まれた[15]。 シーズン1の主題クリス・カーターが『X-ファイル』の着想を『事件記者コルチャック』や『トワイライトゾーン』から得たとはいえ、カーター自身が語っているように、シリーズ全体のコンセプトはUFOに関する伝聞・言説に由来するものである。ジョン・エドワード・マックの一連の著作群(特に、「アメリカ人の3%がエイリアンに誘拐されたことがあると思っている」という研究)を読んだとき、カーターはシリーズの核となるテーマを発見したと思ったという[19]。カーターは『事件記者コルチャック』のように主人公が行った先々で奇怪な事件に遭遇し、一般人がそれを見事に解決するという不自然な展開を避けようとした。そこで、超常現象に関する事件に特化したFBIの部署を設定に加えた。そうすることで、主人公2人が毎週のように怪事件に遭遇しても、視聴者が違和感を覚えにくくなった[20]。構想の初期段階において、カーターは視聴者に違和感を抱かせないようにエピソードの大半を「超常現象かと思ったが、実はいたずらや偶然の類だった」というような内容にしようとしていた。しかし、主人公2人をFBI捜査官としたことで、このようなエピソードを作らずに済むようになった(ただし、シーズン3第20話「執筆」は例外であった)[21]。 構想の初期の段階で、主人公の1人を「真実を追う者」に、もう一人を「懐疑主義者」にすることが決まっていた。「真実を追う者」とはフォックス・モルダーのことである。子供時代に妹サマンサの誘拐現場を目撃し、それが宇宙人の犯行だと信じている人間である[20]。また、「懐疑主義者」とはダナ・スカリーのことである。スカリーは『羊たちの沈黙』に出てきたクラリス・スターリング捜査官にインスパイアされたキャラクターである。クラリス捜査官のように、「実際にいてもおかしくない」ようなキャラクターにする必要があると感じていたからこそ、カーターはFOX側の「セクシーな美女を起用しろ」という要求を拒否したのである[22]。 『X-ファイル』では、エイリアンの陰謀を軸にしつつも、主軸とは関係のない様々なエピソードが展開されている。そのことに関して、ダニエル・サックハイムは「『X-ファイル』は決まったスタイルがないというスタイルのドラマなんだ。こうした不定形のスタイルは、製作スタッフ全員が視聴者を怖がらせるような小品映画を作ろうとして生まれたものなんだ」と語っている[23]。 評価視聴率シーズン1第1話「序章」は1993年9月10日に放送され、1200万人が視聴した[24]。これを視聴率に直すと15%である[25]。第1話以降、視聴者数は低下の一途をたどり、第10話「堕ちた天使」では880万人の視聴者数にまで下落した[26]。しかし、それ以降のエピソードでは視聴者数が増加に転じ、最終話「三角フラスコ」は1400万人が視聴した[27]。 1993年度のテレビ番組の視聴者ランキングで『X-ファイル』は128番組中105位という結果に終わった[28]。しかし、FOXにとっては予想外の人気を博したドラマであったため、シーズン2の製作が決定した[29]。 批評家からの評価シーズン1に対する批評家からの評価は好意的なものが多かった[30]。『エンターテインメント・ウィークリー』は「テレビ番組の常識を覆すような作品。」と述べている[31]。『バラエティ』は「物語は目新しく、キャラクターも魅力にあふれている。」「『X-ファイル』はその勢いと想像力でテレビ業界にイノベーションを引き起こした」と評している[32]。IGNは「シーズン1のエピソードのいくつかはこれまでに見たことがないような作品で、卓越した作品に仕上がっている。」「テレビドラマの伝統とポッポカルチャーの流れがきちんと結びついている。」と述べている[33]。『デジタル・ビッツ』はシーズン1にA評価を下し、「『X-ファイル』はこれまでとは違ったものを生み出すことに挑戦し、それを成し遂げた。」「フィルム・ノワールのような撮影手法も印象に残った。」と述べている[34]。また、批評集積サイトのMetacriticには14件のレビューがあり、加重平均値は70/100となっている[35]。 なお、批評家の一部から、シーズン1に放送された「影」「輪廻」「ローランド」の3話のプロットがあまりにも似すぎているとの批判があった[36]。 エピソード
参考文献
出典
外部リンク |
Portal di Ensiklopedia Dunia