ウガリト文字 (ウガリトもじ、英語 : Ugaritic )は、Unicode のブロック の一つ。
解説
紀元前14世紀 ~紀元前13世紀 ごろに現在のシリア 南西部のラス・シャムラ にあたる地域で話されていた、アフロ・アジア語族 セム語派 中央セム諸語 に属するウガリット語 や、紀元前2300年~紀元前1000年ごろに現在のシリアのハブル川 上流域に築かれたミタンニ 王国で話されていたフルリ・ウラルトゥ語族 に属するフルリ語 を表記するためのウガリト文字 を収録している。
ウガリト文字は音素文字 のうち、ヘブライ文字 やアラビア文字 のように基本的に母音を表記せず、子音字のみで綴られるアブジャド に分類される。ただし、頭子音を持たない母音については独立した音節文字 が割り当てられている。また、書字方向についてはヘブライ文字などとは異なり、ラテン文字 などと同様に左から右への横書き(左横書き )である。単語毎に分かち書き されるが、スペース ではなく専用の記号U+1039F 𐎟 UGARITIC WORD DIVIDER
が用いられる。
字形は他のメソポタミア 諸言語で用いられた楔形文字 (シュメール語 、アッカド語 など)や古ペルシャ文字 (古代ペルシャ語 )などと同じような形状をしているが、音素との対応がこれらの文字体系とは大きく異なるためUnicodeにおいては符号位置を分けられている。
符号位置の順序はおおむね伝統的なウガリト文字の順序に従っている。
Unicodeのバージョン4.0において初めて追加された。
収録文字
コード
文字
文字名(英語)
用例・説明
ラテン文字転写
字母
U+10380
𐎀
UGARITIC LETTER ALPA
音節[ʔa]を表す。
ʾa
U+10381
𐎁
UGARITIC LETTER BETA
音素[b ]を表す。
b
U+10382
𐎂
UGARITIC LETTER GAMLA
音素[ɡ ]を表す。
g
U+10383
𐎃
UGARITIC LETTER KHA
音素[x ]を表す。
ḫ
U+10384
𐎄
UGARITIC LETTER DELTA
音素[d ]を表す。
d
U+10385
𐎅
UGARITIC LETTER HO
音素[h ]を表す。
h
U+10386
𐎆
UGARITIC LETTER WO
音素[w ]を表す。
w
U+10387
𐎇
UGARITIC LETTER ZETA
音素[z ]を表す。
z
U+10388
𐎈
UGARITIC LETTER HOTA
音素[ħ ]を表す。
ḥ
U+10389
𐎉
UGARITIC LETTER TET
音素[tˤ]を表す。
ṭ
U+1038A
𐎊
UGARITIC LETTER YOD
音素[j ]を表す。
y
U+1038B
𐎋
UGARITIC LETTER KAF
音素[k ]を表す。
k
U+1038C
𐎌
UGARITIC LETTER SHIN
音素[ʃ ]を表す。
š
U+1038D
𐎍
UGARITIC LETTER LAMDA
音素[l ]を表す。
l
U+1038E
𐎎
UGARITIC LETTER MEM
音素[m ]を表す。
m
U+1038F
𐎏
UGARITIC LETTER DHAL
音素[ð ]を表す。
ḏ
U+10390
𐎐
UGARITIC LETTER NUN
音素[n ]を表す。
n
U+10391
𐎑
UGARITIC LETTER ZU
音素[ðˤ]を表す。
ẓ
U+10392
𐎒
UGARITIC LETTER SAMKA
音素[s ]を表す。
s
U+10393
𐎓
UGARITIC LETTER AIN
音素[ʕ ]を表す。
‘
U+10394
𐎔
UGARITIC LETTER PU
音素[p ]を表す。
p
U+10395
𐎕
UGARITIC LETTER SADE
音素[sˤ]を表す。
ṣ
U+10396
𐎖
UGARITIC LETTER QOPA
音素[q ]を表す。
q
U+10397
𐎗
UGARITIC LETTER RASHA
音素[r ]を表す。
r
U+10398
𐎘
UGARITIC LETTER THANNA
音素[θ ]を表す。
ṯ
U+10399
𐎙
UGARITIC LETTER GHAIN
音素[ɣ ]を表す。
ġ
U+1039A
𐎚
UGARITIC LETTER TO
音素[t ]を表す。
t
U+1039B
𐎛
UGARITIC LETTER I
音節[ʔi]を表す。
ʾi
U+1039C
𐎜
UGARITIC LETTER U
音節[ʔu]を表す。
u
U+1039D
𐎝
UGARITIC LETTER SSU
音素不明。外来語に用いられる。
ś
約物
U+1039F
𐎟
UGARITIC WORD DIVIDER
単語境界を表す。
小分類
このブロックの小分類は「字母」(Letters )、「約物」(Punctuation )の2つとなっている[ 1] 。
字母(Letters )
この小分類にはウガリト文字のうち、基本的な字母が収録されている。
約物(Punctuation )
この小分類にはウガリト文字で用いられる句読点 などの約物 類が収録されている。
文字コード
ウガリット文字 (英語版 ) [1] [2] Unicodeコンソーシアムによる公式の表 (PDF)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
A
B
C
D
E
F
U+1038x
𐎀
𐎁
𐎂
𐎃
𐎄
𐎅
𐎆
𐎇
𐎈
𐎉
𐎊
𐎋
𐎌
𐎍
𐎎
𐎏
U+1039x
𐎐
𐎑
𐎒
𐎓
𐎔
𐎕
𐎖
𐎗
𐎘
𐎙
𐎚
𐎛
𐎜
𐎝
𐎟
備考
1.^ Unicodeバージョン13.0現在
2.^ 灰色のエリアはコードポイントが割り当てられていないことを示す。
履歴
以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。
バージョン
コードポイント[ a]
文字数
L2 ID
ドキュメント
4.0
U+10380..1039D,1039F
31
L2/01-141
Michael Everson (1 April 2001), Proposal to encode Ugaritic in the UCS (英語)
^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。
出典
^ "The Unicode Standard, Version 15.1 - U10380.pdf" (PDF) . The Unicode Standard (英語). 2025年3月31日閲覧 。
関連項目