ぼくは王さま
続編と併せて「王さまシリーズ」の名(理論社の広告では「王さまの本」)で知られるため、当稿ではシリーズ全体を紹介する。児童文学ということもあり、正式な表記は「王様」ではない。挿絵については、特筆していない部分は全て和歌山静子によるが、本の形態が変わるたび、同じ話のために和歌山がほとんど毎回違う挿絵を描き直している。出版社については、特筆していないものは理論社による。理論社以外の出版社から出た理由としては、理論社がシリーズとしてまとめる前に各出版社で執筆したか、理論社の人気シリーズとなった後他社にライセンスされたか、どちらかである(詳細は後述)。 作品誕生のきっかけデビュー後の寺村の作品はしばらくの間、お世辞にも面白いと言えない堅いものだったが「幼児のための童話集」編集長の松居直から二度も没をくらい「あなたが面白いと思うものを書いていいんですよ」の一言で開眼。三度目はたった一晩の約2時間で、規定ページ数が5ページだった所を8ページまでオーバーしつつ、ほとんど書きなぐりだった。この「ぞうのたまごのたまごやき」は、1959年に『母の友』に掲載され、業界の前評判は大変悪かったが、一度出版された後はたちまち子供の心をつかみ、以後寺村のライフワークとなった。 この作品の誕生の瞬間を、早大童話会時代から生涯の親友だった大石真は、「寺村輝夫という人が、なんと妙な作品を書いたものだ」「自分だけの鉱脈を掘り当てた作家は幸せである」と評している。 概要どこかの国に住む、どこかの王さまが主人公。城や衣装は中世ヨーロッパ風だが昔話ではなく、テレビ、コンピューター、近代兵器なども登場する。国の中には町が2つ、村が3つある。この国にはゾウやライオンがいるが、隣の国にはいない。この作品世界の雪は雲で作られるのでなく、ヤンコ星という星で作られる。ヤンコ星にもヤンコ星の王さまがいる。 作品の舞台が、お城からいきなりアフリカに飛ぶことがよくある。これは寺村がアフリカ好きであるためで、動物別ではライオンもよく出るが、ゾウのほうが出番が多い。ある話の設定が別の話には用いられないなど、その話限りの設定が用いられることが多い。エピソードにより長さが大きく異なるのも当シリーズの特徴である。本の体制によりページ数は微妙に異なるが、一番長いのは『魔法使いのチョモチョモ』で約200ページ(これだけ長い理由は後述)、一番短い話では約4ページである。また寺村は執筆中のページ数も把握しており、作品集として出す時にキチンと計算していたという。 お城王さまのスケジュールは全て「朝ごはんの時間」「べんきょうの時間」など細かく割り当てられており、王さまはいつも大臣にせかされて何とか毎日を暮らしている。そのスケジュールの知らせは、ラッパによる「テレレッテ、プルルップ、トロロット、タッター」(書かれるたび微妙に異なる)。当シリーズで最も有名な文言であり、寺村も独特の擬音には凝っていると語っていた。寺村の葬式でも和歌山が悼辞で読み上げている。 他に昼の鐘は「じゃらんぽ、がらんぽ、じゃらんぽ、がらんぽ」または「ごわーん、ほろんほろんほろん」、夜のチャイムは「チャーイム、チャーイム」。兵士の出動時にはサイレンも鳴る。時計台はこの国の標準時となっており、時間を確認するには電話で聞く手間が必要。時計台が壊されると時間がわからない。国民全員は7時に起きねばならず、違反すると投獄。就寝は見張りの兵士を除き8時(エピソードによっては9時もある)。時計台の中には、王さまと大臣しか知らない秘密の宝物庫があるはずだったが、後のシリーズでは王さまでも近寄ったらダメと大臣が言っていた。 池があり、外を流れる川と繋がっている。「ウソとホントの宝石ばこ」「モルト星の石」では、ストーリー展開に重要なアイテムが城に入ってくる原因となった。また電話もあり、隣の国と繋がっているが、ある時は電話機自体が大臣の部屋とコックの厨房にしかなかったり、別の話では王さまの目前にあったりする。 図書室もあり、何か調べるときに博士がよく使う。王さまも調べ物をしたことがある。ただし『王さまゆめのひまわり』でまた城の隣に図書館が作られた。王さまが大の玉子好きであるため、にわとり小屋もある。にわとり小屋からにわとりやヒヨコが逃げ出して王さまを追っかけたり、別に不思議な出来事も起きていないのに王さまがにわとりと会話したこともある。この他城内に動物園もあり、国民も利用可能。 登場人物登場人物名は、原作とアニメ版で異なる場合、原作 / アニメ版(特記がない限りOVA版)におけるものの順に記載する。また、「声」はアニメ版における担当声優で、特記がない限りOVA版 / テレビアニメ版における者の順に記載する。 すべてのシリーズに登場する人物
一部のシリーズに登場する人物
シリーズここで使用しているシリーズ名は「王さまの本III」「ちいさな王さま」シリーズ以外は便宜上つけたもので、理論社やファンの慣例ではない。表題作のタイトルは、第一シリーズ新版以外はほとんど言い回しが統一されており、区別しやすくなっている。かっこ内は個々の短編の発表年月でなく、作品集としての発行年月。フォア文庫版は第一シリーズ旧版・第二シリーズ・ちいさな王さまシリーズの3シリーズを基本に作られているため、この3シリーズに対し、表題作や収録形態が一部変更されている所のみ解説する。他の作家と共にアンソロジーとして収録されているケースは非常に多いので、原則として略した。またそうした場合、作品名の表記が「ハアト星のはな」「魔法使いのチョモチョモ」など、微妙に変更されることが多い。 第一シリーズ旧版シリーズの初期は順序と発行年がそろっていないものがあるが、これは長い年月をかけてシリーズがそろえられたためである(事情の一部については後述)。
当巻からはエピソードの大半が書き下ろしとなっている。
以後のシリーズは全て、本文中にカラーページを入れるなど、旧版よりカラフルになっている。 第一シリーズ新版1998年 - 1999年に、ページ数を150ページ程度に減らして収録作品を再構成した(ただし「きんのたまごが6つある」は未収録)。表題作のタイトルが不統一なのはこの理由による。一部表記の漢字化、差別語などの修正もある。1999年版からは背表紙に小さく「新版」と書かれている。
第二シリーズ
ぼくは王さまIII一冊一エピソードシリーズ。書き下ろしと以前のシリーズからのシングルカット双方から作られている。ストーリーはさらに簡素になり、童話でなく絵本に近い。またレギュラーキャラにワン=大臣、ツー=コック、ホウ=博士(この名前は前述した「ぞうのたまごのたまごやき」から)、算数の先生=テン先生と名前がつき、チョモチョモも再登場した。
王さまのカラー童話第一シリーズ旧版までしか出ていなかったころ、「おしゃべりなたまごやき」「ぼくは王さまIII」以外にも、シングルカットと書き下ろし双方から作られた、絵本に近い形態の本が講談社から1971年 - 1972年に出ていた。和歌山の絵は比較的初期のため、王さまの服がガウンでなく、小学生文庫版と同じ、ズボンとタスキがけになっているのが特徴のひとつ。絶版となったが、2009年に理論社から「王さまのえほん」として再版。色とわかち書きが修正されている。
新・王さまえほん2012年に理論社で刊行が開始された絵本シリーズ。
ちいさな王さまシリーズいつものヒゲの大人の王さまでなく、小学校に通っており、どうみても王子様である小さな王さまが主人公。「勉強嫌いで学校にも行かない王さまが、もし学校に行ったら?」という発想が、このシリーズのヒントになった。大臣など他のレギュラーのキャラシフトはそのままだが、外見は全員変更されており、パラレルワールドと言える。1巻で懸垂式モノレールが開業したため、城から学校まではモノレール通学になっている。発表時期としては第一シリーズ新版と重なるが、キャラが違うため便宜上この位置にまとめた。
その他の発行形態(番外編など)
その他の発行形態(再録)その概要は漫画などと比べても複雑を極める。現版では判明している限りのバージョン違いについて、可能な限り作品発表順に挙げている。なお、寺村の死後著作権を引き継いだ長男が、次男と共にこれまでの仕事を調査しまとめる構想を表明したが、息子は著述業や出版とは関係ないサラリーマンであり、本業との兼ね合いなど生活環境の都合もあって、構想は進んでいない。
アニメOVA
1996年に「TOEI Vキッズ・シリーズ」としてDVDアニメ化された。登場キャラの絵柄や名前などの設定は「ぼくは王さまIII」に近い。ただしとなりの国のお姫さまは、第一シリーズ旧版に近いデザインとなっている。チョモチョモが各エピソードの冒頭で狂言回しをつとめるが(この時の部屋の中には、寺村の趣味であるアフリカグッズが飾られていたり、脇に王さまシリーズの本が置いてあったりというお遊びが見られる)、劇中では余り関わらず、少し魔法を使うだけ。また呪文は「…ルーズル、ロー」に変更されている。
テレビアニメ2013年2月6日にテレビアニメ化が発表され、同年4月より6月までBS11にて放送された[3]。本編のナレーションは新井里美[2]、「あいうえおうさま」のナレーションはチョー。第7回以降の本編は再放送となり、7月から9月までは同時間帯でのリピート放送を行った。また、2018年より同局で「あいうえおうさま」の再放送がプライムタイム中心に放送されている[注釈 1]。 スタッフ出典:[2]
主題歌各話リスト
第12話の翌週(6月29日放送分)は「あいうえおうさま」のうち「あ」から「ぬ」まで、リピート放送第12話の翌週(9月28日放送分)は同じく「ね」から「ん」までを一挙放送。 放送局
その他のメディア化ラジオドラマ化された他、「ウソとホントの宝石ばこ」「サーカスにはいった王さま」「ニセモノばんざい」「魔法使いのチョモチョモ」などが舞台劇化されている。「ウソとホントの宝石ばこ」は寺村の地元である田無で上演、7回の公演が全席満員になった。「ニセモノばんざい」では前半のヤマ場がオートバイレースだったが、劇ではこれを自転車に変更、舞台上で実際に自転車を乗り回した。 脚注注釈出典
外部リンク
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