ぼくは航空管制官シリーズ
『ぼくは航空管制官シリーズ』(ぼくはこうくうかんせいかんシリーズ)は、1998年9月から株式会社テクノブレインより順次発売されたWindows対応の日本初の航空管制シミュレーションソフトのシリーズである。通称・略称は『ぼく管シリーズ』(ぼくかんシリーズ)、『ぼく管』である。2015年現在、第4シリーズである『ぼくは航空管制官4』まで発表されている[3]。 元々はPCゲームであったが、PlayStation版[4]、PlayStation Portable版、ゲームボーイアドバンス版、携帯電話・PHS版[5]、ニンテンドーDS版、ニンテンドー3DS版[6]、iOS版[7]など派生ソフトも生まれている。日本国外への移植も行われており、北アメリカ・ヨーロッパ向けに英語版の『I Am An Air Traffic Controller』[8][9]や『Air Traffic Chaos』[10]がリリースされているほか、台湾向けには中国語版の『夢幻飛機場』[11]が発表されている。 概要それまでの航空業界を題材としたシミュレーションゲームは、航空機の操縦を目的としたゲーム[12]や、航空会社を題材とした経営シミュレーションゲーム[13]などがあった。前者は飛行機の操縦、後者は航空業界をメインとしていたのに対して、『ぼくは航空管制官シリーズ』では航空交通管制をメインとしたところが最大の特徴である。プレイヤーは航空管制官となって、航空機の飛行・離着陸・地上移動について指示を行う。2025年までにPC版のみでシリーズ累計約20万本の売上を記録している[14]。 一般に、フライトシミュレーションなどの航空系のゲームは多くの専門知識を要求し、操作も高度な技術を要することが多い。さらに航空英語のNATOフォネティックコードなど無線交信の知識も要求される。しかし、本ゲームは『お子さんから年配者まで、幅広い年齢層の方にお楽しみいただける、ちょっぴり知的な頭脳ゲームです』[15]と銘打たれており、簡単な操作で気軽にプレイできる工夫がなされている(一部キーボードのショートカット機能を利用することも可能だが、基本的にマウス操作でゲームは完結する)。簡単な操作性に加えて、ゲーム初心者・航空初心者向けのチュートリアルも用意されており、ゲームをはじめるにあたって航空に関する知識はほとんど不要である。このように初心者向けに多くの配慮がなされているが、航空の知識をもつ中級者・上級者も楽しむことができ、プロフェッショナルのパイロットや航空管制官、あるいは、それらを目指す人々にも、このゲームの愛好家がいるという[16]。テクノブレインでは後に航空管制官の訓練に使用するシミュレータ『ULANS(ウラノス)』を開発し、国土交通省に納入している[14]。 ゲームのジャンルは航空管制シミュレーションである[2](初期作品はシミュレーター色は強くなかったが、後期の作品では現実を忠実に再現するシミュレーターの要素も強い)。一方で、航空機を配する工夫に知恵を絞るパズル風シミュレータとしての特徴もあわせもっている[1]。 開発スタッフ
開発の経緯ぼくは航空管制官11990年代、『ぼくは航空管制官シリーズ』を開発するようになるまでは、テクノブレインはPCソフトの外注をしていた。当時は、不況の影響で先行きが不透明になる中、芦達剛(代表取締役)らは新しいビジネスモデルを模索していた。そのころ、社員を率いて大阪国際空港へ飛行機を見に行くことがあったという。受注が途絶え倒産寸前の中「最後に完全オリジナルのゲームを作りたい」との思いの中で大阪空港の土手に出かけた際[14]、『飛行機は眺めているだけでも楽しい』[16]と感じた芦達は、『飛行機を眺めるソフト』[16]を創ろうと思いいたった。ただ飛行機を眺めるというだけの商品では芸がないので、ある社員が「飛行機は全部管理されている」と言ったことをきっかけにパズルゲームとして航空交通管制の要素を加えることにしたという[14]。しかし、当時のテクノブレインのソフト開発は外注専門で、自社製品を創るノウハウはまだなかった。そんな会社が自社製品を売り出すことはリスクを抱えることになるが、議論の末、初代『ぼくは航空管制官』の制作にのりだすことになった。 当初、テクノブレイン社内に航空交通管制の専門知識はほとんどなく、運輸省に取材を申し込むも受け入れられず航空業界のつてを辿り一般財団法人航空交通管制協会に監修をしてもらえることになった[14]。管制協会側もパイロットばかりが注目される風潮の中で航空管制官の存在を広めたい思いがあり監修が引き受けられ[14]、空港などにも足しげく通い、取材を重ねた(プレ取材の段階では、特に空港側にアポイントメントを取らずに行くこともあった上、飛行機ではなく建物の写真[33]を重点的に撮影していたため、警察官に職務質問されることもあったという)。取材にあたっては、地元航空ファンから、その空港のマニアックな詳細な情報を仕入れたという。その後、正式に空港事務所に取材に行き、詳細を詰める作業を行った。こうして得た情報を基に開発が進められることになった。 開発にあたっては、当時の芦達はDirectXの詳細な仕組みまでは理解が及んでいなかったという。そこで、DirectXについて勉強に勉強を重ね、ついにはそれを凌駕する自前のライブラリを作り上げるまでになった。結果、グラフィックスからサウンド、オーサリングに至るまで、ほとんどテクノブレインの独自規格が作られたという[16]。こうして、初代『ぼくは航空管制官』は世に出ることになった。 初代『ぼくは航空管制官』は当初3000本を生産し航空専門雑誌に広告を掲載し口コミで評判が広がり初回生産分は短期に売切れ増産を行い[14]、好調な売り上げを記録し[34]、以後、同社の目玉商品となった。 ぼくは航空管制官2『ぼくは航空管制官2』(2001年10月18日発売)の開発では、ちょうどアメリカ同時多発テロ事件(同年9月11日)に時期が重なった。当時、テクノブレインではエアラインとの重要なやりとりを行う時期であったが、エアライン側はそれどころではない事態に陥っていた。ゲームに実在のエアラインを登場させる上で必要な使用許可も危ぶまれていたようだが、忙しい合間を縫って全日本空輸(ANA)の担当者が『(テロで大変なこのようなときにこそ)こういうソフトが必要だ』[16]と芦達に伝え、ゴーサインを出したという。のちになって、『ぼく管』は一介のゲームソフトではなく『航空業界の信頼』[16]を背負うことになったのだ、と芦達は語っている。こうして、アメリカ同時多発テロ事件の約1ヶ月後の10月18日に『ぼくは航空管制官2 東京ビッグウィングA』はリリースされた。 シリーズ
ゲームのシステム『ぼくは航空管制官シリーズ』に共通のルールは、おおむね以下のとおりである。
以下に、ゲームに登場する一般的な旅客機の出発・到着便の流れを示す[36][37]。ただし、有視界飛行(計器などに頼らない目視での運行)をする航空機や軍用機などはこの限りではない。
出発便
到着便
その他架空の航空会社テクノエアぼくは航空管制官2以降のシリーズを通して登場する、お馴染みの架空の航空会社。ゲーム中において、ステージによっては機体などにトラブルが発生する場合があるが、ゲーム中とはいえ実在の航空会社に深刻なトラブルを発生させることを避けるため、このテクノエアがシナリオ上のトラブルを発生させる役割を担っている[40][41]。これまでに、テクノエアは大小様々なトラブルを起こしているものの、機体を全損したり、死傷者を出したりするような大事故は起こしていない。ぼくは航空管制官3 大阪パラレルコンタクトに特に多く登場している。また、携帯機版では同じポジションに当たる架空の航空会社としてエアソニックが登場している(AirSonic、携帯機版開発のソニックパワード社より)。 ただ、最近では制作に当たって許諾を得られなかった航空会社の代用として、トラブルなしで登場することもあり、ぼくは航空管制官3 成田ワールドウィングスでは、一度も事故やトラブルを起こさなかった。その理由は、全日本空輸が登場できなかったことから、その代用であるためである。 テクノエア(TechnoAir)は略称・愛称、コールサインであり、正式名称はTechnobrain Airlinesである(航空会社コードはTBA)。航空事業者としてのテクノエアは、DHC-8のような小型機からボーイング747のような大型機、ボーイング727Fを中心とした貨物機、飛行船、コンコルド、ドリームリフター、果てはF/A-18Eなどといった戦闘機まで保有している。路線は日本国内の長距離・短距離路線から国際線までと幅広く就航しているという設定になっている。ノーマルカラー(ホワイトとライトブルー)、”エコボン”さながらのグリーン塗装、ましてやゴールド塗装機まである。 テクノエア以外にも、海外版や特定の航空会社の協力のみで制作された作品では、実在の航空会社を元にした架空の航空会社が登場する場合もある。
AirShopゲーム中でテクノブレインのオンラインショップであるAirShopの商品を運送する架空の航空会社AirShop(えあしょっぷ)が登場する。AirShopはコールサインでもある。また航空会社コードはASPである。ただし、ぼくは航空管制官4以降は貨物機だけではなく旅客機も使用している。
その他テクノエア系航空会社作品によってはテクノエア以外の航空会社が登場し、飛行船やプライベート機を運航する。またぼくは航空管制官4成田では複数の会社が海外の航空会社として登場し、本作に登場しない航空会社の代用として就航している。
ユーザー特典の先行予約販売ユーザー登録者のみを対象として行なわれている販売形態で、一般発売の概ね1ヶ月前にはユーザーへ先行予約の通知メールが届く。メール内で指定されたアドレスから申し込みすると、一般発売の1週間程度前にはユーザーの手元に届くというもの。このため、ユーザー登録者は一般発売前に無理なく全ステージをクリアすることも可能である。メーカー公認のフライングゲットといえる事例であり、ユーザー登録者への特典としてのみならず、不正コピー防止策としての側面もある。 関連項目外部リンク脚注注釈出典
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