クリプトン・フューチャー・メディア

クリプトン・フューチャー・メディア株式会社
Crypton Future Media, Inc.
本社がある日本生命札幌ビル
種類 株式会社
市場情報 非上場
略称 クリプトン、CFM
本社所在地 日本の旗 日本
060-0003
北海道札幌市中央区北3条西4-1-1
日本生命札幌ビル11F
設立 1995年7月
業種 情報・通信業
法人番号 8430001005253 ウィキデータを編集
事業内容 音楽制作ソフトウェアの開発・販売
キャラクターライセンス事業
デジタルコンテンツ開発・運営
音楽配信プラットフォームの運営
WEBシステムの開発・運営
ローカルプロジェクトの企画・運営
様々な技術の企画開発
代表者 代表取締役 伊藤博之
外部リンク https://www.crypton.co.jp/
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クリプトン・フューチャー・メディア株式会社: Crypton Future Media, Inc.)は、北海道札幌市中央区本社を置き、「音」に関連する製品を開発・販売する日本企業バーチャルシンガー初音ミク」の権利元(開発・発売元)としても知られ、ライセンスビジネス、ライブコンサート等のイベント、デジタルコンテンツ、ローカルプロジェクトも展開している[1][2][3]

概要

創業者は伊藤博之[4]。伊藤はクリプトン社を「メタ・クリエイター」と称しており、主に創作を支援するための各種ツールやサービスの提供、および新たな機会を創出する事業を展開する[4]CIは『「音」で発想するチーム』。社名に意味はなく、適当な乱数から検索に引っかからない名前を生成した[5]

1995年にサウンド素材の輸入販売事業で起業し、サンプリングCD/DVDや効果音、BGMライブラリ、ソフトウェア音源の開発・輸入・販売を手がけ、楽器店、コンピュータショップ、ソフトウェア流通業者などと取引を行う[6](→#歴史・変遷)。

初音ミクの大ヒット以降は様々なメディアミックスに手を広げることになったが(→初音ミクのメディア展開)、当初のクリプトン社にはライセンスビジネスのノウハウが不足していた為、他社に教わりながらノウハウを蓄積していった[2]

同社はミクたちピアプロキャラクターズが出演するライブコンサートを手掛ける他、長年の実績から他社のコンテンツのコンサート制作も依頼されるようになり、その第一弾として「あんさんぶるスターズ!」のコンサートを手掛けた[1]。以後、著名なコンテンツのコンサートに関わるようになる(→#イベント初音ミクの関連イベント)。

初音ミクなどで世界規模(グローバル)のビジネスを展開しながら企業自体は北海道に根ざしているが、これは伊藤の「地方にいても世界と勝負できる」「地方にクリエイターを増やしたい」というグローカル的な考えに基づく[7](→#ローカルプロジェクト)。

生成AI関連で「YouTube」と協業し、同技術の音楽活用について議論を進める[8]

北海道リート投資法人」のスポンサーで、「北海道アセットマネジメント」の中心的役割を担う幹事会社の一社でもある[9][10]

バーチャルシンガー

同社の歌声合成ソフトはパッケージイラストにキャラクター(バーチャルシンガー)を採用しており、パッケージに描かれたバーチャルシンガーをイメージした名称であることから「バーチャルシンガー・ソフトウェア[注 1]」と呼称されている[11]

中でも初音ミクは販売開始と共に「初音ミク現象」と呼ばれるムーブメントを起こし、「ボカロ」と呼ばれる文化(音楽ジャンル)が誕生[12][13]。無数の個人クリエイターによる創作を促す一方でキャラクターとして他企業との公式コラボレーションも展開し、さまざまな業界を巻き込みながら海外に進出[14][15]バーチャルシンガーとしてワールドワイドに活躍するようになる[16]。ミクの登場はネット発の文化・音楽を大きく変えたと言われている[17]

クリプトン社はこのムーブメントを受けて開設したバーチャルシンガー関連のCGM型投稿サイト「ピアプロ」の運営や、自社の音楽レーベル「KarenT(カレント)」によるバーチャルシンガーを使って作られた楽曲の販売なども始めた。ピアプロ及びピアプロキャラクターズという名称は、この6体のバーチャルシンガーが生み出し続ける現象「創作の連鎖(Peer Production,ピアプロダクション)[18]」が由来となっている[19]

同社は内製の音声合成エンジンの開発にも取り組み、NTエンジン[注 2]やM9エンジンなどを創出[20][21]。AI技術を導入していく上で「音質の向上」や「自然な調整の利便性」、「各キャラクターの“らしさ”は守りたい」ということを課題として挙げている[21]

キャラクターの二次創作については「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)」および「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCL)」を採用しており、“非営利”での作成・公開が認められている[19]

イベント

自社IPおよび他社関連のイベントの制作・協力・監修も行っている。

クリプトン社のCGMチームに所属する関本亮二が初音ミク達のライブプロデュースを担当し、「初音ミク マジカルミライ」や「HATSUNE MIKU EXPO」、アーティストとのコラボ、番組出演などを展開している[22]

2022年7月にライブ事業を軸とする「雷音株式会社」が設立され、関本が代表取締役、伊藤が取締役に就任[23][注 3]。本社と共に在籍し、業務にあたっている[25]

  • 自社IP

主なサービス

以下はクリプトン公式サイトより[28]

  • SONICWIRE(ソニックワイヤ):サウンド素材配信サイト
  • piapro(ピアプロ):CGM型コンテンツ投稿サイト
  • KARENT(カレント):バーチャル・シンガー楽曲配信レーベル
  • ROUTER.FM(ルーター・エフエム):ミュージシャンが世界で音楽を売るサービス
  • gigle(ギグる):音楽ライブ情報サイト
  • 雪ミク スカイタウン:ショップ&ミュージアム
  • SONOCA(ソノカ):スマホ用音楽カード
  • Domingo(ドミンゴ):地域情報発信スマートフォンアプリ
  • ミライスト CAFE x SWEETS x BARシメパフェ文化の発祥カフェ(現在は閉店)
  • kiite(キイテ):音楽発掘サービス

ローカルプロジェクト

  • 道内の様々な地域振興企画・事業に携わる[6]
  • 2010年2月より北海道を応援する「雪ミク」が主役のフェスティバル「SNOW MIKU」を開催(以降、毎年開催)[6]
  • 同年10月には札幌市と「シティプロモート連携協定」を締結[6]
  • 北海道の小果実をPRする萌えキャラクター「リトルベリーズ」を制作。
  • 新型コロナウイルスに感染した人物に接触した可能性を通知するシステムを開発し、自治体等へ提供した[29]
  • 北海道リート投資法人」にスポンサーの一社として参画[10]
    • 同リートの資産を運用する「北海道アセットマネジメント」で幹事を分担[9]

歴史・変遷

1995年7月に起業[6]

2001年からCSP推進室(後のモバイルコンテンツチーム[30])を立ち上げ、携帯電話の着信音向けに効果音販売サービスを始める[3][6]

2004年、世界初となる日本語対応の歌声合成ソフト「MEIKO」、2006年に歌声合成ソフト「KAITO」の初の製品が発売[6]

2007年8月、歌声合成ソフト「初音ミク」の初の製品が発売[6]

2007年12月には歌声合成ソフト「鏡音リン・レン」、2009年1月には歌声合成ソフト「巡音ルカ」の初の製品が発売[6]

2013年11月、代表取締役の伊藤博之に「藍綬褒章」が授与される(秋の褒章:新規産業功績)[31]

2015年4月、「株式会社ACT NOW(アクトナウ)」を設立し、地域密着型のクラウドファンディングサービス「ACT NOW」がスタート[6]

2017年、「あんさんぶるスターズ!DREAM LIVE -1st Tour “Morning Star!”-」の3DCGライブにて企画制作を担当(2nd Tour以降も制作を担当)[6]。以後、ホロライブキズナアイミライアカリAdoヒプノシスマイクなどの他社関連のライブイベントを手掛けるようになる[6]

2022年7月に新法人「雷音株式会社」が設立され、クリプトンから関本亮二が代表取締役に、伊藤博之が取締役に就任[注 3][23][25]

2024年3月、Youtubeの生成AIサポートプログラム「YouTube Music AIインキュベーター」日本展開にあたってYoutubeと協業し、音楽生成モデル「Lyria(リリア)」の検証や生成AIの音楽活用に関して議論を進めていくことなどを発表[8][32]

評価・反応

  • 入澤拓也エコモット代表取締役) - 創業時から、音にこだわり、音に関する事業しかやらない! という信念で、世界No.1のボーカルソフトをつくりました。北海道で自分たちクリエイトして生んだ価値を、世界に届ける、まさに、Think Globally, Act Locallyを体現している会社です[7]
  • 内海州史セガ代表取締役社長 執行役員COO) - ボーカロイドを初音ミク等のキャラクターと融合させて、埋もれていた才能を開花させ、日本の新たな文化にまで進化させ、ビジネスとして音楽、ゲーム、映像にわたり影響を及ぼしているところがすごい![7]

脚注

注釈

  1. ^ なお・(中黒記号)が付かない場合もある。例を挙げるとYoutubeの初音ミク公式チャンネルでは、チャンネル概要欄に『バーチャルシンガーソフトウェア』と記載されている。
  2. ^ 産総研が一部技術を提供[20]
  3. ^ a b なお、社内のインキュベーション制度ではないとされる[24]。チームの構成や資本関係などの具体的な情報は不明。

出典

  1. ^ a b 初音ミクアーカイブ 2019, p. 124-125.
  2. ^ a b 初音ミクアーカイブ 2019, p. 328-329.
  3. ^ a b BTミク 2014, p. 122-123.
  4. ^ a b マジミラ2013公式ブック 2013, p. 48-49.
  5. ^ 「音の同人だった」――「初音ミク」生んだクリプトンの軌跡”. ITmedia (2008年8月21日). 2013年2月12日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m 沿革 - クリプトン・フューチャー・メディア
  7. ^ a b c 地方にクリエイターを増やしたい 「初音ミク」の生みの親が描く、その先の未来”. Forbes JAPAN (2025年3月17日). 2025年3月17日閲覧。
  8. ^ a b 初音ミク開発企業と協業 ユーチューブ、AIで音楽”. 産経ニュース (2024年3月21日). 2024年6月9日閲覧。
  9. ^ a b 会社概要 | 北海道アセットマネジメント株式会社
  10. ^ a b ニトリ、石屋製菓、クリプトンなど20社出資の地域特化リート「北海道リート投資法人」設立へ前進、6月資産運用会社始動 | リアルエコノミー、2022年5月18日
  11. ^ 初音ミクたち歌声合成ソフトウェア製品がリパッケージ!2024年中に新製品も発売予定!”. クリプトン・フューチャー・メディア (2024年7月1日). 2024年7月2日閲覧。
  12. ^ ミクはなぜ世界を変えたのか 2014, p. 148-149.
  13. ^ ミクペディア 2013, p. 50-51.
  14. ^ BTミク 2014, p. 118-119.
  15. ^ BTミク 2014, p. 120-121.
  16. ^ 7ぴあ2022.07 2022, p. 3.
  17. ^ ミクはなぜ世界を変えたのか 2014, p. 2-4.
  18. ^ piapro.net.
  19. ^ a b BTミク 2014, p. 112-115.
  20. ^ a b 谷井将人 (2020年11月27日). “VOCALOIDじゃない「初音ミク NT」、きょう正式発売 音源の一部は後日提供”. ITmedia (アイティメディア株式会社). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2011/27/news105.html 2020年11月29日閲覧。 
  21. ^ a b 【初音ミク「マジカルミライ 2024」】バーチャルシンガー製品関連ステージ - Youtube - クリプトン/ピアプロTV、2024年8月31日
  22. ^ MIKU EXPO 2016公式ブック 2016, p. 40-巻末.
  23. ^ a b 雷音 株式会社”. 2022年8月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月4日閲覧。
  24. ^ 初音ミクを開発「クリプトン・フューチャー・メディア株式会社」の柔軟な働き方”. MoreJob株式会社. 2025年6月4日閲覧。
  25. ^ a b 【プロセカ】“プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE”(セカライ)はどう作られているのか? - ファミ通
  26. ^ magicalmiraiの2022年4月4日のツイート、2025年6月4日閲覧。
  27. ^ NEWS - キングレコード
  28. ^ クリプトン公式サイト.
  29. ^ 初音ミクのクリプトン、新型コロナの追跡システム”. 日本経済新聞 電子版. 2020年6月2日閲覧。
  30. ^ 事業部名変更のお知らせ クリプトン・フューチャー・メディア株式会社
  31. ^ 「藍綬褒章」受章のお知らせ”. クリプトン (2013年11月5日). 2024年7月19日閲覧。
  32. ^ YouTube、音楽へのAI活用を日本で研究 初音ミクのクリプトンと協力”. インプレス (2024年3月21日). 2024年3月22日閲覧。

関連項目

参考文献

自社運営サイト

書籍

  • 『HATSUNE MIKU MAGICAL MIRAI 2013 OFFICIAL GUIDE BOOK』KADOKAWA、2013年。 
  • 『BT BOOKS 初音ミク』美術出版社、2014年。ISBN 978-4568430868 
  • 『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』太田出版、2014年。ISBN 978-4778313968 
  • 『HATSUNE MIKU EXPO JAPAN TOUR 2016 OFFCIAL GUIDE BOOK』piapro/クリプトン・フューチャー・メディア、2016年。 
  • 『初音ミク アーカイブ』グッドスマイルカンパニー、2019年。 
  • 『7ぴあ 2022年7月号』株式会社セブン・イレブン・ジャパン、2022年。 

外部デジタルメディア

  • 根津禎「実録 開発物語 パソコン用歌声合成ソフト「初音ミク」(第1回)出会いは着メロから」『日経エレクトロニクス』(971) [2008.2.11]、日経BP社、107-110頁、ISSN 0385-1680。 

外部リンク

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