メリジオナリスゾウ
地質時代
後期鮮新世 - 前期更新世
分類
学名
Mammuthus meridionalis Nesti, 1825
シノニム
Archidiskodon meridionalis [ 1]
Mammuthus gromovi (Alexeeva & Garutt, 1965)
Mammuthus meridionalis vestinus
M. m. voigtstedtensis (Dietrich, 1965)
Elephas meridionalis [ 2]
和名
メリジオナリスゾウ[ 3] メリディオナリスゾウ[ 2] メリディオナリスマンモス[ 4]
英名
Southern Mammoth
メリジオナリスゾウ (Mammuthus meridionalis )[ 3] 、またはメリディオナリスゾウ [ 2] 、メリディオナリスマンモス [ 4] は哺乳綱 長鼻目 ゾウ科 の化石種 のマンモス である[ 5] 。
分類
メリジオナリスゾウ、トロゴンテリーゾウ 、ケナガマンモス 、コロンビアマンモス 、ピグミーマンモス (英語版 ) と人間の大きさの比較。
南方マンモス (Southern Mammoth)、南方ゾウ (Southern Elephant)[ 6] 、古マンモス 、クラグゾウ (Crag Elephant)[ 1] とも呼ばれる。
後期鮮新世 のアフリカ大陸 やブリテン諸島 や中国 など広範囲に分布していたMammuthus rumanus (英語版 ) を先祖に持つと考えられている[ 7] 。
地中海 では、クロアチア とユーゴスラビア 付近のアドリア海 から亜種の M. m. adriacus が発見されており[ 8] 、クレタ島 には小型化した子孫のクレタドワーフマンモス (英語版 ) が生息していた。
比較的に近い子孫にはトロゴンテリーゾウ が存在していることからも、トロゴンテリーゾウのさらに後代の子孫であるケナガマンモス やコロンビアマンモス やサルデーニャマンモス (英語版 ) [ 9] もメリジオナリスゾウの子孫となる[ 10] [ 11] 。
分布
後期鮮新世 から前期更新世 (約250万年前から約150万年前)にかけてヨーロッパ や中央アジア などに分布していたが[ 5] 、先祖であるMammuthus rumanus (英語版 ) がブリテン諸島 や中国 にも到達していたのに比較すると本種の確認されている分布はより限定的であった[ 7] 。
一方で、中国北東部の黄河 の支流である渭水 の流域に産する標本がメリジオナリスゾウと見なされることもある[ 6] 。また、形態的にメリジオナリスゾウや子孫であるトロゴンテリーゾウ に近い化石種 は日本列島 でも発見されており、日本列島にはメリジオナリスゾウやトロゴンテリーゾウを含めた「古型マンモスゾウ類」とケナガマンモス が分布していた。これらの中で、前者にはさらに「メリジオナリスゾウ型」とトロゴンテリーゾウの系譜である「シガゾウ型」と「プロキシムスゾウ型」が見られたとされる[ 12] 。
形態
メリジオナリスゾウの牙(象牙 )。イタリア ・トスカーナ州 のモンテヴァルキ の博物館(イタリア語版 )の所蔵。
メリジオナリスゾウは遠い子孫のケナガマンモス よりもはるかに大きく、近い子孫であるトロゴンテリーゾウ も含めた他のマンモスの大型種やデイノテリウム などに匹敵するなど、長鼻目 全体でも大型の部類であった。最大級の個体は肩の高さが約4メートル 以上、推定体重が10 - 11トン 以上もあったとされている[ 5] 。一方で、地中海 のクレタ島 に生息していたクレタドワーフマンモス (英語版 ) は本種の子孫と考えられているが、島嶼矮小化 (英語版 ) を経たためか非常に小型化している。
後世の子孫であるトロゴンテリーゾウ やコロンビアマンモス やケナガマンモス と同じように頑丈で捻じれた2本の牙を持っていた。臼歯 の歯冠は低くて臼歯自体の板も一枚当たりの厚みがある代わりに数が少ないが、厚いエナメル質 の隆起を有していた。これらの特徴から、比較的に温暖な地域の森林地帯 で木の葉と潅木 を餌とする食生活を送っていたと考えられており、軟体部は発見されていないものの、体毛は濃くなかった可能性も示唆されている[ 5] [ 13] 。
生態
オランダ の南ホラント州 のテーマパークに展示されている生体の復元想像像。
本種と共に発見されてきた他の動物相 や植生 の化石 から判断すると、本種が好んでいた気候は現在のヨーロッパ と同程度または多少ながらもより温暖であった可能性が指摘されており、(たとえば間氷期 のような)比較的に温暖な時代の落葉樹林 に生息していたと思われる。このような特徴は、ジョージア とイスラエル から産出した化石から推測される初期のマンモス属 の好んだ地形(草原 などの開けた場所)とは対照的とも言えるが、樹木や低木 を餌としていただろう点は共通している[ 5] 。
餌のほとんどは木の葉や枝などであり、現在もヨーロッパに普遍的に見られるオーク やトネリコ やブナ などに留まらず、ドクニンジン 、サワグルミ の仲間、ヒッコリー などの現在のヨーロッパでは珍しい植生も摂取していたことが示唆されている[ 5] 。
絶滅
ヨーロッパでは、時代の変容と共に最終的には子孫であるトロゴンテリーゾウやアンティクースゾウ (英語版 ) に取って代わられたと思われる[ 10] [ 11] [ 14] 。
発見されてきた標本に見られた剥片 などの石器 で付けられたと思われる傷跡などの痕跡から、本種も他の多くのメガファウナ と同様にヒト属 によって狩猟の対象とされていたことが示唆されている。とくにジョージア のドマニシ では、約180万年前の地層からホモ・ゲオルギクス による狩りの痕跡が多数発見されている[ 15] 。また、スペイン のタラゴナ でも約130万年前から約80万年前に人類と接触していた可能性を示す標本が得られている[ 16] [ 17] 。一方で、これらの痕跡の中には直接の狩猟ではなく、メリジオナリスゾウの死骸を当時の人類が利用していただろう事例が含まれていると指摘される場合もある[ 18] 。
関連画像
人間との大きさの比較。
生体の復元想像図。
生体の復元想像図。
タジキスタン の切手に印刷されたメリジオナリスゾウ。
脚注
^ a b The Crag Elephant (Archidiskondon Meridionalis)
^ a b c 高橋啓一 、中嶋雅子「ナウマンゾウ研究百年」(pdf)『琵琶湖博物館研究調査報告』第35号、滋賀県立琵琶湖博物館 、2022年12月、doi :10.51038/rrlbm.35.0_1 。
^ a b 亀井節夫 . “マンモスゾウ ”. ジャパンナレッジ . 2025年7月31日閲覧。
^ a b 収蔵資料データベース. “メリディオナリスマンモス ”. 群馬県立自然史博物館 . 2025年7月31日閲覧。
^ a b c d e f Roman Uchytel、Alexandra Uchytel. “Southern mammoth (Mammuthus meridionalis) ”. Uchytel Prehistoric Fauna Studio . 2025年7月31日閲覧。
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外部リンク