暴力団排除条例
暴力団排除条例(ぼうりょくだんはいじょじょうれい)とは、地方公共団体の条例である[1]。 概要一般市民に対して暴力団との関わりを規制することを目的としており、公共事業や祭礼からの排除のほか、不動産を組事務所として貸すことなどを禁じる[1]。 2004年6月に、広島県と広島市が条例で公営住宅の入居資格について「本人とその同居親族が暴力団対策法に規定する暴力団員でないこと」と規定した。暴力団排除が規定された条例はこれが初めてである。 また東京都豊島区で、不動産の取引において暴力団を排除することを規定した生活安全条例が制定され、2009年1月に施行された。 佐賀県では、暴力団組事務所[注 1]の開設について、不動産所有者が暴力団に対して賃貸契約を拒否や解除ができる規定をした「佐賀県暴力団事務所等の開設の防止に関する条例」が制定され、2009年7月1日に施行された(同条例は2011年に全面改正されて条例名が「佐賀県暴力団排除条例」となった)。条例名に暴力団を冠した条例は都道府県初。 福岡県では、暴力団の威力を利用する事業契約の禁止、暴力団の公共工事妨害排除、暴力団から危害を加えられる恐れがある者に対する身辺の保護、暴力団を排除するための民事訴訟支援などの総合的な規定が全国で初めて制定され、2010年4月1日に施行された。京都府では、公共工事を請け負う企業に暴力団員がいないことを示した契約書を提出することなどを義務づけ、違反した場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される規定になっている。その他の都道府県でも、2010年以降制定の動きが広がり、2011年10月1日には、残る東京都・沖縄県で条例が施行され、全都道府県で施行された。 暴力団関係者との会食、ゴルフ、旅行など交際を繰り返すことについて、警察がその人物に対し「密接交際者」とみなし、認定を行うことを可能にする自治体もある。影響としては、密接交際者とされた場合に工事の入札から排除されたケースがあった。今回の施行にあたり東京都では、該当者が金融機関からの融資(ローン)を受けたり当座預金の開設ができなくなったり、住宅の賃貸契約もできなくなるよう、関係機関が各業界団体に働きかけていると報道されている。 2011年10月21日、大阪府警察は条例に基づき、山口組総本部を捜索した。暴力団排除条例に基づいて指定暴力団総本部を捜索したのは初めてである[2]。また、同年12月16日には兵庫県公安委員会が、兵庫県内の露天商組合が同県西宮市内の山口組系暴力団に対し用心棒代を渡し、利益供与を行っていたとして、露天商組合に対し、条例に基づき利益供与を停止するよう勧告を実施した[3]。 各都道府県警察では、条例に基づいて暴力団との絶縁を図ったことを原因として暴力団員から危害を加えられる恐れがある者に対する身辺の保護を任務とする「身辺警戒員」(略称PO)の育成を実施し、POの取り組みを通じて条例の実効性強化に努めているところである。警察庁では、全国で数千名程度の警察官を非常勤の身辺警戒員に指定している[4]。 兵庫県西宮市の市営住宅から暴力団組員を排除できるとした暴力団排除条例(条例名は西宮市営住宅条例)に基いて暴力団排除条例制定前から居住していた暴力団組員に西宮市が立ち退きを求めた訴訟で、2015年3月27日に最高裁は市営住宅に絡む暴力団排除条例について平等権を規定した日本国憲法第14条や居住の権利を規定した日本国憲法第22条に違反せず合憲とする判決を下した。 暴力団事務所の開設規制多くの暴力団排除条例では、学校や病院などの施設から200メートル以内の区域で、事務所の開設を禁止する条項が設けられている。2020年代に入ると、これら条項を強化する方向で見直しが進められた。2021年に条例改正を行った福岡県の例では、対象施設に都市公園、体育施設、認可外保育施設を追加するとともに、都市計画法で定める住居系、商業系の指定を受けている用途地域において事務所開設を禁止した。改正により、県内の市街地のほぼ全域で新たに事務所が開設できなくなっている[5]。大阪府では、都市公園法に基づく規制を12の用途地域に拡大しているため、府内の総面積の約47%、大阪市内の約85%において事務所の開設ができなくなっている[6]。 暴力団排除特別強化地域2010年代後半、各自治体は暴力団の資金源を断つために暴力団排除条例を改正して、新たに暴力団排除特別地域を設定する事例が増加した[7]。 暴力団排除特別地域とは特定の繁華街を指定するもので、暴力団と特定営業者との間で みかじめ料や便宜供与のやりとりをすることを禁止し、違反した場合には即座に罰則を適用できるようにするものである。ここでいう特定営業者とは風俗営業、性風俗関連特殊営業、特定遊興飲食店営業、接客業務受託営業、飲食店営業、風俗案内業などを含める[8]。罰則は懲役1年以下または罰金50万円以下とし、店側には自首による減免規定を定めている例が多い[9]が、2022年現在、福井県については罰則規定を条例に盛り込んでいない[10]。 都道府県の条例
市区町村の条例一部の市区町村でも独自の規定を設けた類似の条例が施行されている。 条例制定に反対する意見・動き
条例を取り上げた作品映画TV番組
脚注注釈
出典
関連書籍
関連項目外部リンク
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