欧州宇宙機関
欧州宇宙機関(おうしゅううちゅうきかん、仏: Agence spatiale européenne[1], ASE、英: European Space Agency, ESA)は、1975年5月30日にヨーロッパ各国が共同で設立した、宇宙開発・研究機関である。設立参加国は当初10か国、現在は23か国が参加[2]し、2000人を超えるスタッフがいる。 本部はフランスに置かれ、その活動でもフランス国立宇宙センター (CNES) が重要な役割を果たし、ドイツ・イタリアがそれに次ぐ地位を占める。主な射場としてフランス領ギアナのギアナ宇宙センターを用いている。 人工衛星打上げロケットのアリアンシリーズを開発し、アリアンスペース社(商用打上げを実施)を通じて世界の民間衛星打ち上げ実績を述ばしている。2010年には契約残数ベースで過去に宇宙開発などで存在感を放ったソビエト連邦の後継国のロシア、スペースシャトル、デルタ、アトラスといった有力な打ち上げ手段を持つアメリカに匹敵するシェアを占めるにおよび[3]、2014年には受注数ベースで60%のシェアを占めるにいたった[4][5]。 ESA は欧州連合 (EU) と密接な協力関係を有しているが、欧州連合の専門機関ではない。加盟各国の主権を制限する超国家機関ではなく、加盟国の裁量が大きい政府間機構として形成された。リスボン条約によって修正された欧州連合の機能に関する条約の第189条第3項では、「欧州連合は欧州宇宙機関とのあいだにあらゆる適切な関係を築く」と規定されている。 歴史西欧諸国では、当初は個々の国、特にイギリスやフランスで独自に宇宙開発を行っていたが、それでは米ソの熾烈な競争から生まれる成果に対抗できないため、欧州共同の開発計画が組織された。まず1964年に欧州ロケット開発機構 (European Launcher Development Organization; ELDO) を設立し、打上ロケット(ヨーロッパ1およびヨーロッパ2)の開発を進めるが、難航した。また、欧州宇宙研究機構 (European Space Research Organization; ESRO) では、打上はアメリカに依頼することで、探査機や人工衛星の研究開発を行っていた。しかし、より効果的な宇宙開発計画の実現を目指して、1975年、欧州各国は ESA を設立するとともに、新しい打上ロケットとしてアリアンの開発を推進し、1979年にアリアン1ロケット初の打上に成功、以後アリアンスペースを設立して打上ビジネスに参入し、アリアン2、アリアン3、アリアン4、アリアン5を開発した。 また、人工衛星による地球観測や、惑星など太陽系内の天体観測のための探査機の研究開発にも力を入れ、アメリカ航空宇宙局 (NASA) との共同研究も行っている。 ESA は有人宇宙船を有しておらず、有人宇宙飛行を行なっていない。1970年代よりスペースシャトルのような再利用打上機を検討し、1987年からはエルメスを計画した。1995年就役を目指し、エルメス打上げにも利用できるアリアン5も開発した。しかし、冷戦の終結や開発費用の問題により、エルメスはキャンセルされた。2000年代には CSTS による輸送も検討されたが、これも中止されている。国際宇宙ステーションへの有人宇宙飛行にはスペースシャトルやソユーズを利用して参加している。 主力のアリアンを補完する中・小型衛星用の打上げシステムとして、低軌道用のヴェガの開発も行い2012年から運用を開始した。 加盟国![]() ESA加盟国 ESA準加盟国 協力国 (ECS) 協力協定に調印した国
正式な加盟国以外にラトビア、リトアニア、スロバキアが準加盟国として参加している[6]。また、ブルガリア、クロアチア、キプロス、マルタは協力国(ECS: European Cooperating State)、かつ参加予定の協力国 (PECS: Plan for European Cooporating State) として加わっている[6]。トルコ、ウクライナ、イスラエルは協力協定に調印している。またカナダは1979年から特別協力国の地位を持つ。カナダ宇宙庁は ESA の意思決定に参画している。 予算![]() ![]() ESA の予算は2005年度は29億7700万ユーロ、2006年は29億400万ユーロであった[7]。ESA の予算の大部分はロケットの開発である(22%の予算がロケットにつぎ込まれており、有人飛行が次に多い)。2005年は負担額の大きい3か国が全体の3分の2を負担しており、その内訳はフランス (29.3%)、ドイツ (22.7%)、イタリア (14.2%) である[8]。 予算は加盟国のGDP比に基づいて義務的に支出する予算と、加盟国が自らの意思で各プログラムへの参加・不参加を決め、拠出額を決める選択的予算の2本立てとなっている[9]。加盟国が拠出した額に応じて、その加盟国に拠点を置く企業に契約を配分するという、「地理的均衡配分」(Fair return)の原則が貫かれている[注釈 1][9]。義務的予算はESAの事務経費や設備維持、科学探査計画に充当され、選択的予算はロケットや衛星の開発に充当される[9]。選択的予算の拠出額の大きい国が計画の主導権を握り、自国の負担した予算が自国の宇宙産業を発展する仕組みになっている。これまではこの方法が機能していたものの、打ち上げ費用の安価なロシアやインドの攻勢やスペースXの参入のように近年の競争の激化により、従来の方法では意思決定に時間を要し、各国の利害調整が必要なため、見直しの意見も出ている。
宇宙計画実施済
計画中
計画中止
セキュリティインシデント1984年8月3日、ESAのパリ本部が爆弾によって深刻な被害を受け、6人が負傷した。爆弾は極左武装組織であるアクシオン・ディレクトによって仕掛けられた。[10] 2015年12月14日、アノニマスのハッカーがESAのサブドメインに侵入し、数千のログイン情報を流出させた。[11] 脚注注釈
出典
関連項目外部リンク
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