民主主義指数![]()
民主主義指数(みんしゅしゅぎしすう、英語: Democracy Index)とは、週刊誌『エコノミスト』を刊行するイギリスの企業、エコノミスト・グループ傘下の調査部門、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)研究所によって発表されている指数である。 世界167の国・地域(うち166は主権国家、164は国連加盟国)を対象に、各国の政治の民主主義の状態を評価している。 さらに、その指数から各国を4つの政治体制(完全民主主義、欠陥民主主義、混合政治体制、独裁政治体制)に分類している。 最初の民主主義指数の報告書は2006年に発行され、2010年以降は毎年発行されている。 類似した評価基準を用いる別の報告書は、自由度の指数を参照。 統計方法この指数は、専門家によって60の指標を0点、0.5点、1点のいずれかでスコア付けし、うち12の指標を選挙過程と多元性、14の指標を政府機能、9の指標を政治参加、8の指標を政治文化、17の指標を人権擁護と、5つの部門に分類して10点満点とする。その5つの部門の平均を四捨五入で小数点第二位までとし、最終スコアとしている[1]。 政治体制別の民主主義指数 (2024年)下の表には、2024年における政治体制別の国・地域の数と割合、世界人口の割合が示されている[1]。
世界人口は、調査対象となっている167の国・地域の総人口を100%としている。調査対象外の国・地域はいずれも人口が小規模であるため、実際の推計世界人口にほぼ等しい。 地域別の民主主義指数下の表には国・地域と地域別平均スコアの推移が示されている[1]。
下の表には2024年における地域と政治体制別の国・地域の数が示されている。中東・北アフリカには完全民主主義に分類される国が存在せず、北アメリカと西ヨーロッパには独裁政治体制に分類される国が存在しない[1]。
国・地域別の民主主義指数 (2024年)国・地域別の一覧表は、エコノミストのウェブサイトにて入手可能である[1]。
国・地域別の民主主義指数の推移
スコアの増減の最大値
近年の変化2016年、アメリカは前年のスコア8.05から7.98へ低下し、欠陥民主主義へ格下げされた。報告書では、これは米国人が政府機関への信頼を損なっていることによって引き起こされたと述べられている[2]。 2017年、世界平均スコアが過去最低を記録した。中でもアジアでは最も大きな低下を記録、特に中国では習近平思想と呼ばれる中国共産党のイデオロギーへの貢献を党の憲法に書き込むことで、自らの権力をさらに強化していると評された。ベネズエラは権威主義体制に格下げされた。モルドバは問題のある選挙の結果、混合政治体制に格下げされた。一方でアルメニアは権力を大統領から議会に移す憲法改正の結果として、混合政治体制に再び格上げされた。ガンビアは1996年から2017年まで大統領を務めたヤヒヤ・ジャメが2016年ガンビア大統領選挙で野党候補に敗北したことを受け、混合政治体制へ再び格上げされた[3]。 2018年、ニカラグアは抗議運動の影響を受け、2010年の最高スコアから最終的に2.44ポイント低下した3.63を記録し、独裁政治体制に格下げされた[4]。 2019年、フランス、ポルトガルはユーロ危機以来数年ぶりに、チリは初めて完全民主主義へと格上げされた。タイとアルバニアは欠陥民主主義に格上げされた。アルジェリアは再び混合政治体制に格上げされた。一方でマルタは欠陥民主主義に格下げされた[5]。 2020年、台湾は蔡英文政権下でのコロナウイルスの民主的な封じ込めの成功や司法改革の推進を受け、完全民主主義へと格上げされ、前回の33位(7.73)から11位(8.94)に急上昇し、12位のスイスをも追い抜いた。1.21ポイントものスコアの急上昇は、この年の最高記録となっただけでなく、既に民主主義体制と分類されている国のスコアの上昇幅としても史上最高となった。8.94というスコアもまた、西洋世界を除いた国の中で史上最高記録となった。 日本と韓国も再び完全民主主義へと格上げされたが、フランスとポルトガルは再び欠陥民主主義へと格下げされた。香港は混合政治体制へと格下げされた。アルジェリアは権威主義体制へと再び格下げされた。報告書では、民主主義が「2020年に大きな打撃を受けた」と指摘された。民主主義指数の調査対象国のうち約70%で総合スコアが低下した。これは、ほとんどの国が新型コロナウイルス感染症の世界的流行に対応してロックダウンやその他の制限を課し、さらに一部の国では新型コロナウイルス感染症に関する誤情報を拡散したとして記者や市民を逮捕したためである。世界平均スコアは、2006年に始まって以降最低の水準に落ち込んだ[6]。 2021年、中東欧を除き、世界平均スコアと地域平均の両方が引き続き下降傾向を示した。スペインとチリは欠陥民主主義に格下げされ、エクアドル、メキシコ、パラグアイ、チュニジアは混合政治体制に格下げされた。ハイチ、レバノン、キルギスは独裁政治体制に格下げされた。一方でモルドバ、モンテネグロ、北マケドニアは欠陥民主主義に格上げされ、モーリタニアは混合政治体制に格上げされた。また、最下位の国が初めて北朝鮮ではなくなった。ミャンマーでは、選挙で選ばれた政府が軍事クーデターで打倒され、抗議活動が軍事政権によって鎮圧されたため、最終的にスコアは2.02ポイント低下し1.02を記録した。アフガニスタンは、 2021年のタリバンの攻撃とそれに続く政権奪取の結果、民主主義指数史上最低の0.32を記録した[7]。 2022年は、コロナウイルス感染症に関連する制限が解除されたものの、その他の負の変化によってその影響がほぼ相殺され、世界平均スコアは停滞した[8]。 2023年には世界平均スコアはさらに悪化した。ほとんどの低下は権威主義体制が定着したことと、混合政治体制で民主化に苦戦していることにより発生した。この年から8.00は欠陥民主主義ではなく完全民主主義として扱われるなど、スコアの分類が「以下」から「未満」へと変更された[9]。 2024年、チェコは10年ぶり、エストニアは初めて完全民主主義に格上げされ、中東欧の完全民主主義に分類される国家が0から2へ増加した。ラトビア、リトアニアもスコアがそれぞれ0.28ずつ上昇した。他にも、ポーランド、スロバキア、スロベニア、北マケドニアのスコアも増加し、中東欧は最も多くの国がスコアの上昇を示した地域となった。 一方、バングラデシュでは政権の崩壊によりスコアが1.43ポイント低下し、5.87から4.44となった。ルーマニアでは、大統領選挙に不正があったとして憲法裁判所が選挙無効を決定したことにより、スコアが6.45から5.99へ急降下し、混合政治体制に格下げされた。韓国では、非常戒厳令による一連の騒動によりスコアが8.09から7.75へ急降下し、欠陥民主主義に格下げされた。総合して世界平均スコアは再び下降傾向を示した。報告書では、これは主に独裁政権における対立意見に対する弾圧が継続または拡大したためと述べられた。2024年は多くの国で重要な選挙が行われた年であるにもかかわらず、民主主義体制と分類されている国の平均スコアは変わらなかった[1]。 脚注
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