『神谷玄次郎捕物控』(かみやげんじろうとりものひかえ)は、藤沢周平による日本の連作短編時代小説。1975年から1980年にかけて『小説推理』(双葉社)にて断続的に連載され、1980年に『出合茶屋 神谷玄次郎捕物控』と改題され双葉社より単行本化。1985年に『霧の果て 神谷玄次郎捕物控』と再改題され文春文庫より文庫化された。
これまでに3度テレビドラマ化されており、1度目は1980年に東京12チャンネルで『悪党狩り』のタイトルで尾上菊五郎主演で、2度目は1990年にフジテレビ系で古谷一行主演で、3度目は2014年4月よりNHK BSプレミアム「BS時代劇」で高橋光臣主演で放送された。2015年4月よりBS時代劇にて第2期が放送。
あらすじ
自他ともに認める北町奉行所きっての怠け者同心であるものの、剣の腕は確かな神谷玄次郎が、母と妹を惨殺された過去を胸に潜めながら様々な事件の謎を暴いていく。
収録作
『小説推理』(双葉社)にて掲載された。
- 針の光(1975年6月号)
- 虚ろな家(1975年8月号)
- 春の闇(1976年5月号)
- 酔いどれ死体(1979年5月号)
- 青い卵(1979年8月号)
- 日照雨(1979年11月号)
- 出合茶屋(1980年2月号)
- 霧の果て(1980年5月号)
書誌情報
- 『出合茶屋 神谷玄次郎捕物控』
- 『霧の果て 神谷玄次郎捕物控』
- 『神谷玄次郎捕物控 霧の果て』
- その他の収録本
- 『週刊 藤沢周平の世界』(朝日新聞社)第20号
- 『藤沢周平全集』(文藝春秋)第13巻
- 『捕物小説名作選』(集英社)第2巻(「春の闇」収録)
登場人物
- 神谷 玄次郎(かみや げんじろう)
- 本作の主人公で、北町奉行所定廻り同心。
- 小石川竜慶橋で直心影流の道場を開く酒井良佐(さかい よしすけ)の高弟で、2年前までは三羽烏の1人に数えられていたほどの剣豪だが、上役や同僚にはほとんど知られていない。見回りをさぼったり、茶屋に入り浸ったり、と現在は奉行所きっての怠け同心と思われているが、ひとたび事件が起これば、かつて老練な同心として名を馳せた父・勝左衛門譲りの綿密で鋭い調べでたちどころに解決する。
- 無足の見習い同心として奉行所に勤めていた14歳の頃、母と妹が何者かに惨殺され、父も妻子の死で病がちになり、約1年後に亡くなった。
- 母と妹の死は、当時父が追っていたある重要な犯罪の関係者が、父の動きを牽制するために起こしたとされ、奉行所も当初は異例の人数をつぎ込んで捜査したが、ある日突然中断してしまった。上役の金子によれば、奉行所より上の地位にある人物が関わっているであろうことは想像がつき、それゆえに密かに役所に対して不信感を持ち続けている。
- この家族の死を巡る一連の出来事によって、「足をすり減らして真面目に勤めても、父のように見捨てられる」との理由で怠けを正当化するようになってしまった。
- お津世(おつせ)
- 玄次郎の恋人。蔵前三好町の小料理屋「よし野」の女将。24歳。2年前に夫に死なれた未亡人で、3つになる息子がいる。亡き夫を殺した犯人を玄次郎が捕まえた縁で親しくなった。
- 銀蔵(ぎんぞう)
- 玄次郎配下の岡っ引き。38歳。深川六間堀町の髪結い床「花床」の主人。丸顔でひげ面。
- おみち
- 銀蔵の女房。32歳。銀蔵が事件の調査中は、しっかり店を切り盛りする良妻。
- 直吉(なおきち)
- 銀蔵の下っ引き。20歳。板木ずりの職人。身寄りがなく、一人暮らし。結婚を言い交わしている相手がいる。
- 金子 猪太夫(かねこ いだゆう)
- 与力。56歳。怠け者の玄次郎を苦々しく思っており、ことあるごとに小言を言う。
- 鳥飼 道之丞(とりかい みちのじょう)
- 定廻り同心。玄次郎の同僚。27歳。廻る範囲が玄次郎と隣り合っている。剣術は下手だが、捕縛術の腕前はかなりのもの。
- 弥之助(やのすけ)
- 道之丞配下の岡っ引き。
- 勝蔵(かつぞう)・おろく
- よし野の料理人と女中。夫婦。勝蔵は無口だが、おろくはお津世が愚痴をこぼしてしまうほどのおしゃべり。
- おさく
- 神谷家の老女中。神田蝋燭町の桶屋の後家だが、玄次郎の母が体調を崩した時に手伝いに来たのが縁で、女中として神谷家に奉公するようになった。母と妹が死に、勝左衛門が寝込むようになった時から家の中を切り盛りし、玄次郎が不在がちの神谷家を守っている。玄次郎からは「ばあさん」と呼ばれる。
テレビドラマ
東京12チャンネル(1980年)
『悪党狩り』(あくとうがり)と題して、東京12チャンネル系で毎週水曜夜9時からの1時間枠にて1980年10月8日から1981年3月25日まで放送された。全24話。主演は尾上菊五郎。
フジテレビ(1990年)
フジテレビ系列で、1990年6月20日から9月19日まで水曜日 20:00 - 20:54(第1話のみ19:30 - 20:54)に全11話が放映された。
キャスト
スタッフ
- 原作 - 藤沢周平
- 企画 - 鈴木哲夫
- プロデューサー - 佐生哲雄
- プロデューサー補 - 原克子
- 製作主任 - 高坂光幸
- 進行 - 楳村仁一、岸田吉永
- 俳優事務 - 安藤仁一郎
- 助監督 - 津島勝、田中幹人、新村良二、北村義樹
- 殺陣 - 宇仁貫三
- 記録 - 野崎八重子、川原富美子
- 音楽 - 大野克夫
- 主題歌 - 憂歌団「わかれのうた」(作詞:康珍化、作曲:羽田一郎)
- 制作協力 - 京都映画(現:松竹京都映画)
- 制作 - 松竹、フジテレビジョン
放映日程
BSプレミアム(2014年)
NHK BSプレミアム「BS時代劇」枠(毎週金曜日 20:00 - 20:43)にて2014年4月4日から5月2日まで放送された。全5回[2]。主演は高橋光臣で、24年ぶりの再映像化となる。同枠にて2017年9月29日から10月27日までアンコール放送された[3]。
第2期『神谷玄次郎捕物控2』が同枠にて2015年4月3日から5月22日まで放送された、全8回[4]。
キャスト(BSプレミアム)
ゲスト
第1期
- 第一回「誘拐」
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- 弥之助(鳥飼配下の岡引)- 西村和彦
- 菅生半蔵(浪人) - 前川泰之
- 作太郎(ろうそく屋「八幡町菊屋」の主人) - 飯田基祐
- より江(作太郎の女房、菅生の妹) - 陽月華
- お杉(「八幡町菊屋」の子守り女) - 金澤美穂
- お糸(作太郎の妾) - 内田もも香
- 鎌吉(下男) - 長江英和
- 政右衛門(「本家菊屋」の主人) - 西園寺章雄
- 第二回「針の光」
-
- 第三回「疑惑」
-
- 第四回「闇の穴」
-
- 最終回「霧の果て」
-
第2期
- 第一回「出合茶屋」
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- 第二回「昔の仲間」
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- 第三回「消えた女」
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- 第四回「密告」
-
- 第五回「神隠し」
-
- 第六回「鬼ごっこ」
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- 忠兵衛(小間物屋「井筒屋」主人/ムササビの吉) - 金田明夫
- おやえ( 小料理屋「岩五郎」女中) - 須藤温子
- 陣内仙八郎(浪人) - 國本鍾建
- 半左衛門(古手屋「大坂屋」主人/蝮の市蔵) - 渋谷天外
- 第七回「小ぬか雨」
-
- 最終回「日照雨(そばえ)」
-
スタッフ(BSプレミアム)
- 原作 - 藤沢周平『霧の果て〜神谷玄次郎捕物控』
- 脚本 - 安倍徹郎(パート1)、武末勝(パート1)、寺島誓(パート1)、古田求、田上雄(パート2)、渡辺善則(パート2)、保利吉紀(パート2)、中村勝行(パート2)、久貫千彩子(パート2)
- 脚本協力 - 渡辺善則
- 音楽 - 安川午朗
- 語り - 橋爪功
- 演出 - 本木克英、酒井信行
- 制作統括 - 原克子(松竹)、真鍋斎(パート1)、城谷厚司(NHKエンタープライズ)(パート2)、原林麻奈(NHK)
- 制作 - NHKエンタープライズ
- 制作・著作 - NHK、松竹
放映日程(BSプレミアム)
- 第1期(2014年)
回 |
放映日 |
サブタイトル |
原作 |
脚本 |
監督
|
第一回 |
4月04日 |
誘拐 |
虚ろな家 |
安倍徹郎 |
本木克英
|
第二回 |
4月11日 |
針の光 |
針の光 |
武末勝 |
酒井信行
|
第三回 |
4月18日 |
疑惑 |
|
寺島誓
|
第四回 |
4月25日 |
闇の穴 |
|
古田求 |
本木克英
|
最終回 |
5月02日 |
霧の果て |
|
- 第2期(2015年)
回 |
放映日 |
サブタイトル |
原作 |
脚本 |
監督
|
第一回 |
4月03日 |
出合茶屋 |
|
古田求 |
本木克英
|
第二回 |
4月10日 |
昔の仲間 |
神隠し |
田上雄
|
第三回 |
4月17日 |
消えた女 |
『消えた女 彫師伊之助捕物覚え』 |
保利吉紀
|
第四回 |
4月24日 |
密告 |
『霜の朝』 |
中村勝行 |
酒井信行
|
第五回 |
5月01日 |
神隠し |
『神隠し』 |
渡辺善典
|
第六回 |
5月08日 |
鬼ごっこ |
『花のあと』 |
田上雄
|
第七回 |
5月15日 |
小ぬか雨 |
『橋ものがたり』 |
久喜千彩子 |
本木克英
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最終回 |
5月22日 |
日照雨(そばえ) |
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古田求
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関連商品
ソフト化はNHK版のみ、DVDで販売されている。
- DVD
-
- 神谷玄次郎捕物控(2014年10月17日発売、NHKエンタープライズ、19997AA)
- 神谷玄次郎捕物控2(2015年9月25日発売、NHKエンタープライズ、21025AA)
脚注
外部リンク
NHK BSプレミアム BS時代劇 |
前番組 |
番組名 |
次番組 |
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神谷玄次郎捕物控 (2014.4.4 - 2014.5.2)
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神谷玄次郎捕物控2 (2015.4.3 - 2015.5.22)
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神谷玄次郎捕物控(アンコール) (2017.9.29 - 2017.10.27)
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2010年代前半 (2011年 - 2014年) |
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2010年代後半 (2015年 - 2019年) |
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2020年代前半 (2020年 - 2024年) |
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2020年代後半 (2025年 - ) |
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(*1) 後に地上波で放送。 (*2) アンコール放送。(*3) 一部アンコール放送
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