OUT (桐野夏生)
『OUT』(アウト)は、桐野夏生の小説。1998年に日本推理作家協会賞を受賞した。テレビドラマ化、映画化、舞台化もされた。 概要深夜の弁当工場で働くパートの主婦・弥生が、夫によるDVに耐えかねて殺害したことをきっかけに、平凡な主婦たち4人が自由を求めて日常を離脱・脱社会化し、「OUT(アウト)」してゆく物語である。 バブル経済崩壊後の現代社会で生きる人々の日常生活や、新宿のヤクザ、日系ブラジル人出稼ぎ労働者などに対する視線と洞察が注目を浴び、1998年に日本推理作家協会賞を受け、80万部を越すベストセラーとなった。1999年にフジテレビでドラマ化され、後に映画化もされた。 日本で発表された7年後の2004年には、米ミステリー界のアカデミー賞といわれるエドガー賞 長編賞の4作品に、日本人作家として初めてノミネートされた。英訳[1]を手がけた講談社インターナショナルは、2003年8月に単行本で出版し、その年のうちに米国で3刷約18,000部を販売し、ペーパーバック版ではない単行本としては異例な売れ行きであったと伝えている。米国の『ワシントン・ポスト』紙は「日本女性のステレオタイプを打ち砕きながら、日本社会の暗部を描いた」と論評した[2]。2004年4月29日(日本時間4月30日)、桐野は、ニューヨークのグランド・ハイアット・ホテルで行なわれた授賞式に黒いロングドレス姿で出席した。受賞を逃したが、エドガー賞の審査委員長は「受賞作と他の作品との差はカミソリほどの薄さで、どの作品が受賞しても不思議でなかった」と選評を述べている。ノミネートされた際に「7年前の自分で判断してほしくない」と漏らしていた桐野は、授賞式後の記者会見において「家庭の崩壊やパートタイム、外国人労働者の問題などが普遍的だと評価されたと聞きました。日本もだんだん世界に近づいてきたなと思った」と感想を語った。なお、米国では2004年に直木賞受賞作『柔らかな頬』の翻訳出版が決まった。 あらすじ東京郊外の弁当工場で、主婦たちは深夜のパート作業に精を出していた。香取雅子、42歳はリストラされた夫との間で家庭が崩壊寸前だった。吾妻ヨシエ、51歳は認知症の姑の介護に疲れ果てていた。城之内邦子、40歳はカードローンや街金からの多重債務に苦しんでいた。山本弥生、30歳はギャンブル依存症の夫から暴力を振るわれるという辛い日々を送っていた。 それぞれ悩みを抱える4人だったが、そんな中、弥生は夫がマイホームの頭金として貯めていた金をバカラ賭博で使い果たしたことに激昂し、殺害してしまう。弥生の窮地を救おうとした雅子は、ヨシエと邦子を巻き込み、死体をバラバラにしてゴミ集積場に分散投棄し、証拠隠滅を図る。しかし、邦子が遺体の一部を公園に捨てたことから、事件は露見する。 警察の捜査が難航する一方、有力容疑者として逮捕された地下カジノのオーナー・佐竹は興信所を使って弥生の周辺を探り始める。また、借金の棒引きと引き換えに邦子から事件の全貌を聞き出した街金のチンピラ・十文字は、死体隠滅の仕事を雅子に持ちかけるなど、雅子たちの日常は確実に崩壊へと向かっていた。 登場人物
書誌
テレビドラマ→詳細は「OUT〜妻たちの犯罪〜」を参照
1999年、「OUT〜妻たちの犯罪〜」のタイトルでフジテレビにて放送された。ドラマ版のオリジナルキャラクターとして、飯島直子が演じる刑事「井口則子」が登場する。 映画
2002年10月19日に公開された。基本的な設定は残しているが、「宮森カズオが一切登場しない」「結末が異なる」など、原作とは違った展開となっている。アカデミー賞の最優秀外国語映画賞に日本代表作品として出品された。
舞台劇2000年新宿スペース・ゼロにて初演された。最も原作に近いとされる。この公演で演出の鈴木裕美が第35回紀伊國屋演劇賞個人賞、第8回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞、主演の久世星佳が第8回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞した。これを受け、2002年にPARCO劇場で再演された。
脚注
関連項目
外部リンク
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