ルックバック
『ルックバック』は、藤本タツキによる日本の漫画。『少年ジャンプ+』(集英社)において、2021年7月19日に公開された。全143ページからなる長編読み切りである。小学4年生の藤野と、同校に在籍する不登校の京本の、漫画を描く女子2人の人生が描かれる[2][3][4]。 2024年6月28日に劇場アニメ映画版が公開された[5][6]。 あらすじ
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舞台藤本の出身地である秋田県にかほ市が主な舞台となっており、同市内に実在する店舗なども作品内にて登場している[9][10]。また、山形県山形市の私立大学で藤本の出身校でもある東北芸術工科大学も登場している[10][11]。 展開日本時間の2021年7月19日から『少年ジャンプ+』で配信。配信開始から30分でTwitter上のトレンド2位に上った[2]。同日の午前10時過ぎにはトレンド1位となり[12]、関連するワードもトレンドを独占した[13][注 1]。閲覧数は一晩で120万を超え[12]、24時間で250万を突破し、2日弱で400万に到達した[15]。7月30日には既に閲覧数500万を超えている[8]。 評価ウェブメディア『リアルサウンド』では、反復構造に意味を仕込む手法や、時代性の高い作風、メッセージ性、作者自身の漫画愛が高く評価された[17]。同メディアの成馬零一は「レイアウトとコマ運びこそが藤本タツキ作品の最大の魅力」「極論を言うなら、2コマあれば世界の本質を表現できてしまう漫画家」と評した[7]。 また成馬は、2019年7月18日の京都アニメーション放火殺人事件や2007年1月15日の京都精華大学生通り魔殺人事件をモチーフにしているとも指摘し、京本ではなく藤野が被害を受けた可能性や、あるいは2人が加害者の立場に立った可能性を仄めかし、「漫画でしか描けない現実」を紡ぎ出していると賞賛した[18]。 2021年12月9日、宝島社発行のムック『このマンガがすごい!2022』において、本作がオトコ編1位に選出され、同誌に描き下ろしイラストが掲載された。同ランキングでは前年にも藤本タツキ作品である『チェンソーマン』がオトコ編1位を獲得しており、オトコ編における同一作者の2年連続受賞は今回が初めてとなった[19]。 本作には、漫画家や漫画関係者が多く反応した。漫画家では渡辺潤が本作と藤本を絶賛し、大童澄瞳も今後の抱負を決意した[11]。浅野いにおも反応を見せた[20]。劇中の舞台でもある東北芸術工科大学も反応を示した[11]。その他、本作に言及した著名人を下記に挙げる。
2023年5月9日に発表された「楽天Kobo電子書籍Award 2023」一巻完結!読み切りコミック部門にて、第1位を獲得[21]。 オマージュを始めとした作品表現について既存作品からのオマージュ本作については、多くの読者から「既存作品からのオマージュではないか?」と指摘されている作品が存在している。 ライターの小林白菜は、2ページ目の"Don't"と最終ページの文字およびタイトルを組み合わせるとオアシスの「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」のタイトルになること、また最終ページには映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のブルーレイ版のパッケージに似たものが描かれていることを指摘している[13]。 編集者の天野龍太郎も『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が描かれていることに同意し、また映画が1969年のシャロン・テート殺害事件を未然に防ぐストーリーであることにも触れ、『ルックバック』の全体的なストーリーと共通しているとも述べた[22]。 天野はこの他にも、藤野が雨に打たれながら喜んでいる場面を『雨に唄えば』や『ショーシャンクの空に』や『台風クラブ』、パラレルワールドが描写されている点を『ラ・ラ・ランド』、漫画が藤野と京本の未来に大きく影響している点を『バタフライ・エフェクト』、事件発生後の藤野と事件発生前の京本がドアの隙間をすり抜けた4コマ漫画を介して繋がっている描写を『インターステラー』との共通点として挙げている[22]。 また、映画作品の他に、小学校の同級生同士で漫画を描く展開や友人が亡くなりパラレルワールドが描写されている点、海辺で構図を探す場面などから、2021年に放送された日本のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』との共通点も挙げられている[8]。 モチーフとなったと思われる事件成馬零一は本作における美術大学襲撃が、2019年の「京都アニメーション放火殺人事件」と2007年の「京都精華大学生通り魔殺人事件」がモチーフになっていると指摘している。前者の事件発生の日付(2019年7月18日)は、本作公開の前日(2021年7月19日)であり[18][23]、後者の日付は京本の命日に近い[18]。 犯人の表現を巡って一部メディアによれば、京本を襲った犯人の描写については、統合失調症をはじめとする精神障害のステレオタイプに見える点、また京都アニメーション放火殺人事件を連想させ事件関係者への配慮が欠けている点が一部の読者から指摘されていたとされている[18][24]。 精神科医の斎藤環は本作を「類まれな傑作」と高く評価した一方で、精神障害を抱えた犯罪者の「意思疎通が不可能な狂人」としての描写は読者に誤った認識を定着させてしまうと懸念した[25]。 2021年8月2日、『少年ジャンプ+』編集部は、本作に不適切なシーンとして読者から指摘があったため表現を修正したと発表した。修正が行われたのは犯人の台詞や報道のテキストで、患者への差別を助長しないための措置であった[25][26][27]。 書誌情報
劇場アニメ
2024年2月14日に劇場アニメ化が発表され[5]、同年6月28日より公開された[6]。また、同年9月13日からDolby Atmos(全国28館)とDolby Cinema(全国10館)での上映も実施された[31]。監督・脚本・キャラクターデザインは押山清高、アニメーション制作はスタジオドリアン[32]。なお、本作は映画鑑賞料金の割引が適用されないODS作品となる[33][34]。 Amazon.com傘下の映画スタジオであるAmazon MGMスタジオが日本のアニメ製作委員会に初参加している。2024年11月8日、同社傘下の定額制動画配信サービスであるAmazon Prime Videoにて世界独占配信が開始された[35][36]。 声の出演スタッフ
受賞・ノミネート
脚注注釈
出典
関連項目外部リンク
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