未知との遭遇
『未知との遭遇』(みちとのそうぐう、Close Encounters of the Third Kind)は、1977年に公開されたアメリカ映画。世界各地で発生するUFO遭遇事件と、最後に果たされる人類と宇宙人のコンタクトを描いた。 原題の「Close Encounters of the Third Kind(「第三種接近遭遇」の意)」は、ジョーゼフ・アレン・ハイネックの著書で提唱された用語であり、人間が空飛ぶ円盤に接近する体験のうち、搭乗員とのコンタクトにまで至るものを指す。 概要1977年11月16日公開。日本での公開は1978年2月25日。言語は英語。製作費2,000万ドル。コロムビア映画提供。 オリジナル版の他に、マザーシップ内を公開した1980年の『特別編』、さらに再編集や修正がされた2002年の『ファイナル・カット版』がある。また、アメリカABCテレビで143分の版が放映されたことがある。 アカデミー賞を撮影賞、特別業績賞(音響効果編集)の2部門で受賞したほか、英国アカデミー賞のプロダクションデザイン賞も受賞した。 あらすじ
米国南西部のソノラ砂漠で、フランスの科学者クロード・ラコーム、米国人通訳で地図製作者のデイヴィッド・ラフリン及びその他の研究者たちが、1945年12月5日にバミューダトライアングル上空で行方不明になったアメリカ海軍のグラマンTBMアベンジャー雷撃機5機を発見する。飛行機は完璧な状態だが、乗員は見当たらない。近くにいた年配の目撃者は、「夜に太陽が顔を出し、自分に向かって歌を歌った」と言う。インディアナポリス近郊では、航空管制官らが民間旅客機2機がUFOとの空中衝突を辛うじて回避するのを見る。 インディアナ州マンシー郊外の家で、3歳のバリー・ガイラーが目を覚ますと、おもちゃが勝手に動いているのに気付く。彼は外で何かを追いかけ始め、母親のジリアンは彼を追いかけることになる。域内で大規模な停電が始まり、発電所で働く技師のロイ・ニアリーは調査を余儀なくされる。車に乗って自分の位置を確認していると、ロイはUFOとの接近遭遇を経験し、UFOが彼のトラックの上を飛ぶと、UFOの光で頬が日に焼けたようになる。ロイと3台のパトカーが追跡する中、UFOは他の3機と共に飛び去る。UFOは夜空に飛び去ってしまうが、その形而上学的な体験にロイは魅了される。 研究者らはまた、ゴビ砂漠の真ん中で第一次大戦中の貨物船コトパクシ号が無傷で中味は空になっているのを見つけて驚く。 ロイはUFOに夢中になるが、妻のロニーはおろおろしてしまう。彼は山の形の潜在意識下のイメージに執着し、同様の形のものを色々と作り始める。一方、バリーの母のジリアンもまた、特徴的な山の形のものを描くことに夢中になる。その直後、彼女は雲から降りてきたUFOによって自宅で恐怖を感じる。彼女はUFOや目に見えない存在が暴力的に家に侵入しようとするのを撃退するが、混乱の中でバリーが誘拐されてしまう。 ラコーム、ラフリン及び国連の専門家グループは、増加するUFO活動とそれに関連する奇妙な現象の調査を続けている。インド北部ダラムサラの目撃者らは、UFOが独特の音、即ち五音音階の5音の音楽を発していると報告してきている。科学者たちはこの音を宇宙に向けて流すが、一見無意味に見える一連の数字 (104、44、30、40、36、10) が繰り返されるという反応を理解出来ないままだ。ラコームは異星人からの接触である確信し、「彼ら」と直接面会する地球側の「第三種接近遭遇」プロジェクトをスタートさせる。やがて、地図製作者のラフリンがそれらの数字を一連の地理座標として認識し、それらが示すのは、ワイオミング州ムアクロフト近くのデビルズタワーということが判明する。ラコームら専門家と米軍はワイオミング州に集まる。米国陸軍は、列車事故で有毒な神経ガスが流出したという虚偽の報道をメディアに流し、その地域から住民を避難させる。そして、UFOとその乗員のための秘密の着陸受け入れ施設を建造する。 一方、ロイの常軌を逸した行動はますます激しくなり、妻のロニーは3人の子供たちを連れて出て行ってしまう。デビルズタワー近くで列車事故があったとされるニュースがテレビで放映されると、ロイとジリアンは、デビルズタワーが自分たちが思い浮かべていたのと同じ形の山であることに気づく。2人は、同様の幻覚を体験した他の人たちと共に、有毒ガスに関する警告が出されているにも拘わらず、デビルズタワーを目指す。 殆どの人は軍に逮捕されるが、夜空に丁度UFOが現れた時に、ロイとジリアンは着陸受け入れ施設に到着する。現場の政府専門家たちは、数十機までに徐々に増えていくUFOとの間で、大きな電光掲示板の光と音を使って交信を開始する。巨大な母船が着陸し、第二次世界大戦時のパイロット、コトパクシ号の船員、大人、子供、動物など、様々な時代に拉致された多くの人たちを解放する。バリーも戻って来てジリアンと再会する。政府関係者はロイを母船への訪問者候補のグループに加える準備を急いで行う。 地球外生命体がついに母船から現れ、ロイを含む数人を選び出す。ロイが母船に乗り込む際、地球外生命体の1人が乗り込む人間たちと共に少しの間立ち止まる。ラコームは、5音符の地球外の音フレーズに対応するカーウィンのハンドサインを使用する。地球外生命体は同じ動作で答え、微笑んで船に戻り、空へ飛び立つ。 登場人物
キャスト
スタッフ
製作スーパーバイザーを務めたのは、元アメリカ空軍UFO研究部顧問のジョーゼフ・アレン・ハイネックで、劇中でもエキストラで登場している。 背景本作のストーリーは『十戒』を基にしている。劇中でも「山」に向かうことになる主人公の家族が家のテレビで『十戒』を観ている。映画監督の和田誠は、自著『ぼくが映画ファンだった頃』(2015)の中で「宇宙船が現れる前ぶれとしての雲の動きは、まさに紅海が割れる場面の雲の動きとそっくりなのである。そして、宇宙船が地球に到着する感動は、モーゼが紅海を割る奇蹟と、意識の中でつながってくるのだ」と解説している[4]。 撮影撮影はまずは人間ドラマを収録し、UFOのシーンは後回しにされた。UFOデザインはなかなか決まらず、当初はあのようなきらびやかなものではなかった。「宇宙人が地球人を安心させるため、地球上の様々なものに似たデザインにするのではないか」という観点で、ネオンっぽいものなども日常で見かける物に似せたアイデアが出た。中にはハンバーガーの看板「M」にそっくりのデザインもあり、却下されたものの赤い光球状のUFOが道端に立てられたハンバーガーの看板の前で小休止する「特別編」以降の追加シーンにその名残を見ることができる。 配役フランスの映画監督フランソワ・トリュフォーが出演しているが、トリュフォーは自作の映画にしか出演せず、またSF嫌いで「宇宙だのロボットだのは生理的に嫌悪感がする」とまで公言していたため、本作への出演は驚かれた[5]。『野性の少年』や『アメリカの夜』を見ていたスピルバーグとはアメリカに行くたびにパーティ等で会い、出演を打診された。コロンビア ピクチャーズはリノ・ヴァンチュラかジャン=ルイ・トランティニャンを起用する予定だったが、スピルバーグがトリュフォーに出演を懇願し続けて実現した。 バージョン
コレクター向けのソフト化はスタッフのインタビューを含む大量の資料/特典とともに'77年版と「特別編」の両方をプログラム再生という形で選択、鑑賞可能にしたレーザーディスクがあり、製作30周年を記念して発売された「アルティメット・エディション」のセット(ブルーレイは2枚組、DVDは3枚組)では、'77年版+「特別編」+「ファイナル・カット」の3種類が同梱されている。 第50回アカデミー賞受賞/ノミネート
補足
参考文献
関連項目
外部リンク |
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