アニメタル
アニメタル (ANIMETAL)は、1996年に結成された日本のヘヴィメタルバンド。1996年に同名の曲が発表されているが、基本的にはバンド名を指す。アニメ及び特撮ヒーローもののテーマ曲・挿入歌、いわゆる「アニメソング」をメタル・アレンジし続けている異色のバンドである。 略歴ジャパニーズ・メタル全般が後に「メタル氷河期」と呼ばれる程の低迷の真っ只中にあった1996年春、ギタリスト野村義男と音楽プロデューサー久武頼正との会話で、「アニメソングをメタルでやったらアニメタルじゃない?」という、どちらかといえば軽い冗談からアニメタルの構想が生まれたのが、そもそものことの始まりである。 その後、久武がレコード会社を回り、アニメタルを売り込んだ結果、前年に王様をヒットさせていた佃淳三が興味を示しファンハウス(現:BMG JAPAN)からのシングルCDの発売が決定。ボーカルには複数の元ジャパメタ・バンドのヴォーカリストが候補に挙がっていたが難航し、ディープ・パープルのトリビュートアルバムを企画したウリ川本(インディーズレーベル「マンドレイク・ルート」主宰)の伝手で、当時は元ANTHEMのさかもとえいぞう(当時は漢字の「坂本英三」名義)が起用された。1996年当時の坂本は自身のバンド(練馬マッチョマン等)で音楽活動は続けていたものの、メジャーレーベルとの契約が無くタクシー運転手など会社員として生計を立てていた状態で、久々のメジャーレーベルからの作品となった。 1996年10月23日、1stシングル「アニメタル」をリリース。これは僅か2日間でレコーディング(坂本のヴォーカル収録は実質6時間[1])されたものであった。発売前後のラジオなど各メディアで話題になった時期が、ちょうど年末の宴会シーズンに重なったこともあり「宴会芸ソング」として注目を集め、15万枚以上の売上を記録した[2]。アニメタルのヒットは、「ヘヴィメタルで大規模なカラオケ需要は有り得ない」という、それまでの定説を覆すもので、驚きをもって受け止められたが、この時期のジャパメタシーンにとっても数少ない明るい話題として大きなインパクトがあった。なお、当の坂本本人はまったくヒットを期待しておらず、印税契約を結ぶつもりではなかったが、『およげ!たいやきくん』で子門真人が印税契約をしなかったために、大ヒットしてもまったく恩恵が得られなかった(レコード会社からは賞金を得たものの)ケースを踏まえ、印税契約した。 このヒットによりアニメタルはパーマネント・バンドとしての企画に発展する。ボーカルの「さかもと」はそのまま、ギターに元ガーゴイルの屍忌蛇、ベースにココバットのTAKE-SHIT、ドラムスにガーゴイルのKATSUJIをそれぞれ起用し、佃の移籍(復帰)によりSME移籍、2ndシングル「This is ANIMETAL」を発表。次いで、屍忌蛇(ギター)、元JACKS'N'JOKERのMASAKI(ベース)、元リアクションの梅沢康博(ドラムス)という編成で、1stアルバム『アニメタルマラソン』をリリースし、約30万枚の売上を記録した[2]。マラソンの距離(42.195 km)にちなんだ42分19秒5に及ぶ怒涛のメドレーで構成された本アルバムは、1980年代ヘヴィメタルへのリスペクト溢れるアレンジや、高い演奏技術、「さかもと」の熱唱によって、当初見られていた様な企画性の強いイロモノの域を超えた高評価を獲得し、アニメおたくからメタラーまでをファンに取り込むことに成功した。 1997年5月に3rdシングル「特撮でいこう」、ボーカルに元ピンクレディーのMIE(未唯mie)を迎えたアニメタルレディーの1stシングル「アニメタルレディー参上」が発表されるが、ドラムの梅沢が離脱、以後は作品毎にゲストドラマーを迎え活動することになる。同年7月には元LOUDNESSの樋口宗孝を迎えたシングル「アニメタルサマー」、9月にはシングル「センチメタル」とリリースが続き、同年11月には初のオリジナルソングとして、劇場版『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』のエンディングテーマになったシングル「永遠の未来」が発表された(ドラムにはKATSUJI、キーボードには難波弘之が参加)。 1998年2月には2ndアルバム『アニメタル・マラソンII 〜特撮編〜』と初のメンバー作詞作曲によるシングル『勇気の証』、同年10月には3rdアルバム『アニメタル・マラソンIII 〜円谷プロ編〜』を発表するなど、順調に活動を続けたが、1999年7月に、活動休止を宣言。同月のライブをもって活動を休止した。 その後、2001年に活動を再開。9月にアルバム『アニメタル・マラソンIV』を発表するが、ギタリストの屍忌蛇が脱退(事実上解雇)、Galneryus、AUSHVITZのSyuが加入する。2003年6月にアルバム『アニメタル・マラソンV』、2004年6月に1stシングルのリメイク盤「THE ANIMETAL 〜RE-BIRTH HEROES〜」、同年9月にアニメのエンディング曲や劇場版主題歌が中心のアルバム『アニメタル・マラソンVI』をリリースした。 2005年10月に特撮ヒーローもの中心のアルバム『アニメタル・マラソンVII 〜戦え!メタル・ヒーロー〜』を発表。『魔法戦隊マジレンジャー』や『特捜戦隊デカレンジャー』のような21世紀に入ってからのスーパー戦隊シリーズが取り上げられたことが話題となる。週刊少年ジャンプの名作を集めた「JUMP IN THE FIRE」がボーナスとして収録された。 2006年7月に、10周年記念ツアーをもって再封印(活動休止)することを宣言。それぞれ多忙になったメンバーのスケジュールの都合のため、と説明された。8月に、10周年記念アルバムで初のフルコーラス・アレンジ・アルバム『DECADE OF BRAVEHEARTS』を発売。10月22日、Zepp東京で行われたライブを最後に再封印。ライブのMCによれば、もし再び活動を再開することがあれば、封印はもう行わないとしている。 影響当初はイロモノ・キワモノの企画盤と目されながらも商業的に成功したアニメタルの影響は小さくなく、1997年頃から「2匹目のどじょう」を狙った企画的なバンドやCDが集団多発的に登場した[3]。また、メタルのみならず、当時市場低迷に悩んでいた他のジャンルのミュージシャンまでもがアニメタルの成功を見て一斉に追随した。 アニメソングをアレンジとしたバンドとしては、パンクにした「アニパンク[3]」、テクノにした「アニテクノ[3]」、ユーロビートにした「アニユーロ」、レゲエにした「レゲエの鬼太郎[3][注釈 1]」、ジャズにした、「アニジャズ(東京ブラススタイル)」などがある。アニメソング以外でも、フォークソングをメタルにした「メタルフォーク[3][注釈 2]」、歌謡曲をメタルにした「メタルっち[3]」「ナツメタル」、テレビドラマ主題歌を取り上げた「ドラメタル[3]」、刑事ドラマ主題歌をメタルにした「刑事(デカ)メタル[3]」、ウルトラマンシリーズの主題歌をメタルにした「ウルトラマンメタル[3][注釈 3]」などがある。なお、以上のバンドの中でも「レゲエの鬼太郎」、「メタルフォーク」「メタルっち」はアニメタルからの派生バンド、「ドラメタル」は坂本英三プロデュースであり、いわゆる「アニメタル・ファミリー」である。 なお、これら「2匹目のどじょう」を狙ったバンドの中には、「モスラメタル」(柴田直人、ボーカルは尾藤イサオ)、昔話・時代劇アニメの主題歌をメタルにした「まんが日本メタルばなし」(柴田、森川之雄らが変名で参加)、演歌をメタルにした「演歌メタル」(福田洋也)等、さかもとがかつて所属していたANTHEMの歴代メンバーが便乗したものもあった。他にも1980年代のメタルシーンで中核をなしていた当時中堅世代と目されていた数多くのミュージシャンがこの種の企画に携わっており、一連の便乗作の登場は、市場が著しく低迷しメタルミュージシャンとして知名度のある者でさえ本筋のメタルだけではまともに食べていけない有様であった、1990年代の底なしのメタル氷河期を一層強く印象づける出来事でもあった。 作風アニメソングや特撮ソングをヘヴィメタル風にアレンジするだけでなく、ヘヴィメタルや歌謡曲等のフレーズをアレンジに取り込んでいる楽曲も数多い。 例
また、カヴァーだけでなく、各アルバムのOPとEDのインストや歌モノの「永遠の未来」「勇気の証」等のオリジナル曲や『るろうに剣心』のキャラクターソング等も手がけている。 ただ、MAKE-UPが担当した「聖闘士星矢」の主題歌「ペガサス幻想」や、クリスタルキングが担当した「北斗の拳」の主題歌「愛をとりもどせ!!」等、元々からのハードロック曲である物は題材としてあまり取り扱われなかった。これはメンバーであるMASAKIが自身のWebサイトで「元からロックのアレンジのものは、そのイメージがあるのでアレンジしにくい」とも発言していることから、極力避けていたということがわかる。しかし、アニメタルマラソンIVで「愛をとりもどせ!!」が、Vで「ペガサス幻想」がカバーされ、その後も元がハードロックの曲が取り上げられるようになった。 メンバー初期はあくまでユニット形式だったアニメタルだったが、1stアルバム発表と同時にバンドへと昇華。以後メンバーチェンジを繰り返しながら活動した。 ボーカルは一貫してさかもとが務めた。ギターは元ガーゴイル、VOLCANOの屍忌蛇が長く担当した。哀愁漂うメロディックなフレーズを多く披露し、雑誌のインタビューでは「アニメソングにあれほど泣きがあるとは」と語っていた。屍忌蛇脱退後は若手No1とも称されるSyuが担当。屍忌蛇時代とSyu加入後とはギターフレーズなどのアレンジも変わっている。 ベースは日本のビリー・シーンと称されるMASAKIが担当。日本でも屈指と称される超絶技巧は、ベース専門誌「ベース・マガジン」でも高い評価を得ている。 ドラムは梅沢康博脱退後は固定メンバーを決めず、サポートメンバーがプレイしている。その中でもガーゴイルのKATSUJIは「This Is ANIMETAL」でドラムを担当して以来、梅沢脱退後のほぼ全てのアルバムに参加している。 再封印時のメンバー旧メンバー・サポートメンバーここでは、定期的に参加するミュージシャンを「サポートメンバー」、1stアルバム以降脱退したメンバーを「旧メンバー」、ライブや楽曲などに参加したミュージシャンを「ゲストミュージシャン」とした。
ディスコグラフィーアルバム
シングルソニー在籍当時、J-POPのシングルでは8cmCDが一般的であったが、アニメタルは楽曲の長さ(本編・ラジオエディット・カラオケ)から12cmCDでの発売だった。永遠の未来のみメドレーではなくオリジナル曲だったため8センチCDで発売されている(勇気の証もオリジナル曲ではあるが、12センチCDで発売されている)。
映像作品
その他上記は劇場版るろうに剣心の前売りチケット付属シングルとして発表され、後にアニメタルマラソン2のボーナスCDに収録された。
ラジオドラマ「岸和田博士の異常的愛情」主題歌。作曲に渡辺宙明を迎え、作詞は作者のトニーたけざきと坂本の競作になっている。同ドラマCD、アニメタルのベストに収録。
アニメタルFC限定で発売されたシングル(ドラえもんのうた~忍者ハットリくん~すいみん不足~きてよパーマン~ワイワイワールド~オラはにんきもの~おどるポンポコリンのメドレー) 関連バンド
関連ブランド
関連商品アニ○○○
アニテクノ
アニユーロ
アニジャズ二代目アニメタル
○○メタルナツメタル
刑事メタル
ドラメタルバップ、ポニーキャニオンから別々に発売。参加アーティストも異なる。バップ版はさかもとえいぞうがプロデュース。
まんが日本メタルばなし森川之雄が偽名で参加。
演歌メタル福田洋也参加。
モスラメタル柴田直人がボーカルに尾藤イサオを迎えて「モスラの歌~奇跡の詩」のみ企画・プロデュースで参加[4]。
イエロー・メタル・オーケストラ
メタルフォーク便乗企画ではなく、ソニーによる正式な姉妹企画。野村義男参加。
脚注注釈出典外部リンク
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