空の青さを知る人よ
『空の青さを知る人よ』(そらのあおさをしるひとよ)は、長井龍雪監督、CloverWorks制作による日本のアニメーション映画。2019年10月11日に東宝の配給により全国公開[3]。 キャッチコピーは「これは、せつなくてふしぎな、二度目の初恋の物語」[3]。 第23回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査委員会推薦作品[4]。 製作本作品はアニメ監督の長井龍雪、脚本家の岡田麿里、キャラクターデザイナーの田中将賀で結成されたアニメ制作チーム「超平和バスターズ」によるオリジナル作品を原作とした『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(通称:あの花、あのはな)、『心が叫びたがってるんだ。』(通称:ここさけ)とともに三部作として位置付けられており[3]、前2作同様に埼玉県秩父市周辺が舞台として設定されている[3]。さらにプロデューサーとして『君の名は。』の川村元気、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』の清水博之が参加している[3]。なお、映画の公開が発表された2019年3月21日にノイタミナ枠のテレビアニメ『約束のネバーランド』の中で映画公開発表を記念した特別映像が公開された[3]。 金室慎之介(しんの)の声を担当するのは吉沢亮で[5]、吉沢は長編アニメーション映画の声優初挑戦となる[5]。 あらすじ高校2年生の相生あおいは、秩父市の山あいに31歳の姉のあかねと二人暮らし。二人の両親は13年前に交通事故でそろって他界した。当時高校3年生だったあかねは、同じ高校でバンドのギター担当だった金室慎之介(しんの)と交際していたが、一緒に東京に出るという約束を断念して地元の市役所に就職し、あおいを育てる傍ら独身を貫いていた。あおいは高校を卒業したら東京に出て働きながらバンドをすると決めており、放課後は一人でベースの練習に明け暮れる日常だった。 相生姉妹の住む地区で大物演歌歌手の新渡戸団吉を呼んで音楽祭を開く話が持ち上がる。仕掛け人は、あかねと幼馴染で同じ市役所に務める中村正道。正道は慎之介のバンド仲間でドラム担当でもあった。離婚歴のある正道はあかねに気があり、あおいにもそれをほのめかしていた。正道は、別の部署にいるあかねを「ヘルプ」として音楽祭の要員に加えてしまう。 月曜日、あおいが近所のお堂でベースの練習をしていると、13年前のしんののような高校生が突然現れる。あおいは幼い頃、このお堂でしんののバンドの練習を姉と眺めた記憶があった。あおいが驚いて姉のいる自宅に帰ったところに正道が訪れ、姉妹は団吉の到着を歓迎する手伝いをさせられる。団吉は西武秩父駅前にステージトラックで歌いながら現れ、そのバックバンドでは31歳の慎之介がギターを弾いていた。先に帰宅したあおいは、正道の息子・正嗣とともに再度お堂に向かう。高校生は13年前、あかねに東京に行かないと言われてそのままお堂にとどまり目覚めたしんのだと話す。なぜかしんのは見えない壁に阻まれてお堂から外に出ることができなかった。正嗣はこのしんのは慎之介の「生霊」ではないかという。今の状況をあおいから聞いたしんのは、あかねと今の慎之介がくっつけば生霊の自分は慎之介の中に戻るから、二人を一緒にしてやりたいとあおいに頼む。一方、慎之介は歓迎会で酔いつぶれ、あかねにホテルまで送られる。飲みなおそうと絡む慎之介をあかねはいなし、「がっかりさせないで」と言い残して帰宅した。 翌日、あおいが高校の図書室であかねや慎之介の卒業アルバムを見ると、あかねは「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」と寄せ書きに記していた。団吉のバックバンドではドラムとベースが火を通さずに食べた鹿肉が原因で食中毒に倒れ入院。あかねの提案で正道とあおいが代役を務めることになるが、慎之介は「遊びと一緒にされたくない」と不快感を示し、あおいは意地になり演奏を披露。周囲は好評だったが、慎之介だけは厳しい表情をする。 次の日、練習で正道とあおいの素人ぶりの演奏に慎之介は容赦なく厳しい言葉を浴びせ、高校生の頃の優しい姿との違いにあおいは怒りを覚える。そこへキャバクラ嬢がバンドメンバーを誘いに訪れ、練習は解散。その模様をあおいが貸したスマホを通じてしんのは目にした。未来の「自分」の姿にしんのは憤るも、プロのギタリストになっていたことには素直に感動し、戻ってきたあおいを励まして練習に付き合った。 翌日、慎之介は素人と練習すると腕が鈍るという理由で練習に来なかった。夜、お堂であおいは、自分は卒業後に東京に出てバンドをやるとしんのに打ち明けた。自分の意志を継ぐ者がいたと喜ぶしんのに、あおいはあかねに自由に生きてもらいたいから自分が地元を離れるという邪な理由だと話す。それでもあおいをほめるしんのにあおいはデコピンをねだり、逃げるように自宅に戻った。 金曜日、同級生の大滝千佳が前夜慎之介と一緒にいたと知ったあおいは、帰宅したあかねに「あか姉が一緒についていけば慎之介さんはクズにならなかった」「私はあか姉みたいになりたくない」と思わず傷つける言葉を投げつけ、正嗣の家に行ってしまう。正道に、あかねと結婚してもいいと話すあおいだったが、正道が団吉を呼んだ真意が慎之介をあかねに引き合わせるためだったと知って、大人は汚いと非難した。 土曜日、新渡戸団吉一座とあおいやあかね、千佳は音楽祭の準備のためにホールに集まる。千佳は慎之介は真面目で何もなかったとあおいに話す。ホールの裏で一人ギターを爪弾く慎之介のもとにあかねが現れ、慎之介の唯一のソロ曲をねだった。慎之介はいろんな声帯模写を織り交ぜて歌い、あかねは笑い転げる。その場面をあおいは遠くから目撃し、高校生の頃と同じだと気づく。慎之介がその場を去ったあと、あかねが一人静かに泣いているのをあおいは目にした。帰宅後、偶然あおいは、あかねが高校生の時自分の養育のための工夫をつづったノートを見つけ、涙をこぼした。あおいは雨の中お堂に向かい、しんのが好きだがあかねも同じくらい好きであることをしんのに打ち明けた。 翌日、ホールでのリハの前に団吉が肌身離さずつけているペンダントがないと言い出した。スマホの写真から割り出された紛失場所(トンネル)に、あかねは自分の車で探しに出かけた。しばらくして弱い地震があり、あかねの向かった方面で土砂崩れが起きたという知らせが入る。あかねのスマホが不通で不安に駆られたあおいはお堂へと足を向けた。お堂では先に来た慎之介が、しんのと対面していた。しんのはあかねを探しに行こうとせず夢が叶わずやさぐれた慎之介を罵倒する言葉をぶつけ、慎之介にこの世界はコネと運だと現実の厳しさを突きつけられながらも自分と違って外に出たのだから上手くいかないこともあっても将来お前になってもいいと思わせてくれと叫ぶ。しんのは見えない壁を押し始め、それを見たあおいも全力でしんのの手を引くと、しんのはお堂から外に出ることができた。しんのはあおいの手を引いて飛び跳ね、二人は空高く舞い上がり、あかねのいる場所に向かった。一方慎之介はタクシーであかねのいる場所をめざし、通行止めの場所からは歩いて現場のトンネルに駆け付ける。トンネルの入口は土砂崩れで埋まり、あおいが先に来ていた。 そのころ、トンネルの中でペンダントを見つけたあかねは、反対の入口にいたしんのに出会う。しんのは、あおいという妹を大切にできるあかねを好きになれてよかったと話す。しんのはあかねを救出してあおいと慎之介に合流した。あおいは「3人で行って」とあかねの車に乗らなかった。しんのが眠る車中で、慎之介はあかねへの思いを口にし、あかねがそれに応じると、しんのは姿を消した。一人残ったあおいは田舎道を走り、しんのが消えたことに気づくと急に立ち止まって涙をこぼしてから「あー、空、クッソ青い」とつぶやくのだった。 エンドロールでは登場人物の「その後」を描いたイラストが掲示され、その中では慎之介とあかねが2022年6月5日に結婚式を挙げたことが示されている[6]。 登場人物
新渡戸団吉バンド
役名無しスタッフ
音楽
主題歌エンディングテーマ劇中使用曲ゴダイゴの「ガンダーラ」が随所で使用されている[38]。あおい(若山)が歌うシーンもある[39]。ゴダイゴのメンバーであるタケカワユキヒデは本作を公開後に鑑賞し、自身のウェブサイトで「僕はもう嬉しくて、ニヤニヤしっぱなしでした。青春が(特に音楽家を目指す人の青春が)とても素敵に描かれている映画で、ウルウルしながらニヤニヤして、いい時間をもらいました。」と記した[40]。 メディア展開
関連商品映像ソフト2020年6月10日に完全生産限定版(BD:ANZX-12225 - 12226、DVD:ANZB-12225 - 12226)と通常版(BD:ANSX-12225、DVD:ANSB-12225)がリリースされた[49]。当初は4月29日にリリースが予定されていたが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う「緊急事態宣言」により延期された[50]。リリースを記念して、新渡戸団吉役の松平健らが作中に登場する曲「秩父どんと恋」に合わせて踊るダンスムービーが 5月に公開された[51]。 評価「ぴあ映画初日満足度ランキング」において、2019年10月11日・12日公開作品の中で91.9点の1位となった[52]。 アニメーション監督の新海誠は、10月17日に自身のTwitterにおいて「『これは自分のためだけの映画だ』と思ってしまう人がきっとたくさんいるような、とても気持ちのいい映画でした。」と記した[53]。 『サマーウォーズ』の副監督や『ソードアート・オンライン』『HELLO WORLD』の監督を務めた伊藤智彦は、長井龍雪との対談で「子ども目線ではないところへ踏み入ったのが良かった」と語っている[54]。 興行成績興行通信社によると、公開後最初の週末4日間の興行収入が約1億6600万円、観客動員約12万6000人で週末の観客動員ランキング4位となった[55]。公開3週目の10月26日-10月27日には10位に下がったが、動員33万人、興収4億円を突破している[56]。 受賞歴
脚注注釈
出典
参考文献外部リンク
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