こちら葛飾区亀有公園前派出所
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(こちらかつしかくかめありこうえんまえはしゅつじょ)は、秋本治による日本の漫画。『週刊少年ジャンプ』において1976年42号から2016年42号まで連載され、その後も約年1回のペースで新作が作られている。通称および公式略称は「こち亀(こちかめ)」。 単行本は連載中は全200巻、2021年に連載終了後に新たに描かれたエピソードを集めた201巻(2024年現在最新刊)が刊行され、これは2021年に『ゴルゴ13』に抜かれるまでは「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」としてギネス世界記録に認定されていた[1]。 概要![]() 東京都葛飾区の亀有公園前派出所に勤務する両津勘吉(りょうつ かんきち)を主人公に、その同僚や周辺の人物が繰り広げるギャグ漫画。劇画に近い比較的リアルな絵柄(特に連載開始当初)を用いたギャグ漫画としては先駆的な作品である。基本的に一話完結だが、複数話に跨ぐことも時々ある。 1976年6月20日発売の『週刊少年ジャンプ』29号に、4月期の月例ヤングジャンプ賞入選作品の読み切りとして掲載された後、同年の42号から2016年42号まで一度の休載もなく連載された。『週刊少年ジャンプ』で歴代最長の連載記録であり、少年誌の最長連載記録でもある。2016年6月時点で累計発行部数は1億5650万部を記録している[2]。2001年に第30回日本漫画家協会賞大賞を、2004年に第50回小学館漫画賞審査員特別賞を受賞。 2006年に連載30周年を迎え、『週刊少年ジャンプ』誌上で「こち亀30周年企画」が行われた。2016年に連載40周年を迎え、それを記念した「こち亀40周年企画」が行われた。40年の週刊連載で歴代担当は13人になる。様々なメディア展開もされている(後述を参照)。 『週刊少年ジャンプ』以外の漫画雑誌では、『りぼん』1999年2月号付録にこち亀特別編が掲載された(その後、Kamedas2に収録された)他、2011年には連載35周年特別企画として、同年8月から10月にかけて集英社の漫画雑誌13誌(『りぼん』、『マーガレット』、『別冊マーガレット』、『コーラス』、『ビジネスジャンプ』、『スーパージャンプ』、『ウルトラジャンプ』、『Vジャンプ』、『ヤングジャンプ』、『YOU』、『ジャンプスクエア』、『ザ マーガレット』、『Cookie』)に『こち亀』出張版が掲載された(その後、コミックス第999巻としてコミックス化されている)。更に、2011年11月28日から12月2日までの5日間、読売新聞朝刊スポーツ面に広告扱いの4コマ漫画『えっ!?こち亀が4コマ漫画に挑戦!?』(秋本本人が執筆)が掲載された。また、2022年3月に開設されたニュースサイト『集英社オンライン』では「毎日こち亀」と題して膨大なエピソード群からの傑作選を1日1本ペースで掲載している[3]。 制作秘話秋本はもともと劇画志望で、アクション漫画を描こうとしていた。最初は中川を主人公にして、アメリカを舞台にした警官アクション漫画『NYポリスストーリー(仮題)』を考えていた。しかし、脇役として登場させる予定だった日系人キャラクターを気に入ったことで、両津勘吉が生まれることになる。ところが、アメリカの警察の銃や制服のことがよく分からず、この企画は頓挫。そこで、両津を主人公にして、日本の警察を舞台にしたギャグ漫画として作り直し、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が誕生した[4]。 連載終了とその後2016年9月3日に神田明神で行われた『こち亀』連載40周年記念絵巻奉納式後の記者会見にて、9月17日発売の『週刊少年ジャンプ』2016年42号をもって連載を完結、同日発売のコミックス第200巻で最終巻とすることが発表された[5]。同日から予約開始になった単行本は瞬く間に売れ、予約開始の1週間後にはセブンネットショッピングなどごく一部を除き予約終了という異例の事態となった。連載終了について体調面や執筆についての問題は特になく、区切りの良い時点で『こち亀』を終了させ、新たな作品に取り組みたいという秋本の意向によるものと報じられた。 『週刊少年ジャンプ』で最終話に単独表紙と巻頭カラーを同時に飾った作品は、『SLAM DUNK』に次いで史上2作目。「あの不真面目でいい加減な両さんが40年間休まず勤務したので、この辺で有給休暇を与え、休ませてあげようと思います」と秋本が誌面にコメントを寄せた[6]。最終話は同日発売のコミックス第200巻に同時掲載され、途中までは同じだがオチの展開が雑誌とコミックスとでは異なるという演出(劇中の両津曰く「両方買わせるいやらしい商法」)がなされた。 それから2016年の年末にかけて、連載終了に関連した様々な企画・イベントが催された。詳しくは『こち亀40周年企画』を参照。 なお、一度コミックス第69巻7話「両さんメモリアル」の中でニセ最終回が描かれたことがあった[7][注釈 2]。これに関してコミックス第70巻の「備えあれば憂いなし!?の巻」で、「男の読者は笑っていたが、女の子からは“泣いた”という手紙がいっぱい来てしまった」と両津が語っている。また、コミックス第114巻の「両さんおすすめ!!こち亀コミックスプレビュー」にて「うその連載終了で、たくさんの抗議が来た作品だ」と紹介されている。 連載終了から1年となる2017年42号に新作読切と、秋本が『グランドジャンプ』で不定期連載している『BLACK TIGER』の単行本発売を記念したコラボ漫画が掲載された[8]。 また、2018年には腕時計の発売も決定している[9]ほか、週刊少年ジャンプ創刊50周年の記念号となる2018年33号に2度目の新作読切[注釈 3]が掲載された。 2019年には集英社ジャンプリミックスの「平成こち亀 3年1〜6月」に平成最後となるVチューバーと新しい元号をテーマにした描き下ろし新作が掲載された。さらに、PHSサービス終了記念でスペシャルコラボ企画も行われ[10][11]、12月16日発売の『週刊少年ジャンプ』において、紫綬褒章受章記念の短編が掲載されたほか、12月27日発売の『平成こち亀 7年1〜6月』において新作が掲載された[12]。 2020年には、新作が発表されている[13]だけでなく、新型コロナウイルスに立ち向かう人々に向けての書き下ろしイラスト付きポスターも登場している[14]。さらに、WONDAとのコラボも実施されている[15]。また、ビビッドアーミーとのコラボも実施された[16]だけでなく、12月21日発売の週刊少年ジャンプと12月25日発売の「平成こち亀 13年1月〜6月」においても新作が掲載されるとの発表もあった[17]。 2021年には、日暮熟睡男にスポットを当てたリミックス「こち亀 日暮祭」が東京オリンピック開催を受けて7月16日に発売された[18]。さらに、7月19日発売の週刊少年ジャンプにも新作が掲載されただけでなく、10月4日に、201巻の発売も決定した[19]。なお201巻は2016年の連載終了後に描き下ろされた作品がメインで収録されており、これと同時期に平成こち亀にも3号連続で新作読み切りが5ページ分掲載されるとの発表もあった[20]。さらに連載45周年を記念したビッグプロジェクトも実施されることになった[21]。『週刊少年ジャンプ』2021年43号には新作エピソードが掲載された[22]。 2022年には、2024年度を目標に亀有駅南側にこち亀をテーマにした施設を開業させるとの発表もあった[23]。同年8月、『週刊少年ジャンプ』2022年36・37合併号にて、新たな読み切りが発表された[24]。さらに、平成こち亀にも新作が掲載されている[25][26]。 2023年、『週刊少年ジャンプ』が創刊55周年を迎えることを記念して、紅月灯が登場する「希望の煙突」シリーズの第3弾で、「希望の煙突『夏』-1963-勘吉たちの夏休み」というタイトルの読み切りを同年32号に掲載[27]。同号では2025年に本作の観光施設が亀有に展開されるという発表も行われた[27]。さらに、新シリーズ記念で3号連続描き下ろしの新作が『秋本治のナイス!なチョイス こち亀』に掲載されることになった[28]。 2024年、「夏の風物詩」として『週刊少年ジャンプ』36・37合併号に読み切りを掲載[29]。パリ五輪の開催年であるため、日暮熟睡男が登場する内容となっている[30]。さらに、リミックスでの新作読み切りも発表されている[31]だけでなく、香取神社の近くにこち亀記念館という、こち亀をテーマにした観光施設の開業予定日が2025年3月に決定したという[32]。 2025年、『週刊少年ジャンプ』6・7合併号に沼駿の『超巡!超条先輩』とコラボレートした読み切りを掲載[33]。1月21日よりリクルートが運営する不動産情報サイト「SUUMO」とタイアップ、WebCM(9篇)を公開[34]。『グランドジャンプ』7号より『TimeTuber ゆかり』の連載が開始された際には、同作の応援として同号に出張版が掲載された[35][36]。3月21日に発売された再編集版コミックス『秋本治のナイス!なチョイス こち亀 LIVE!! 10'25年3月』と『週刊少年ジャンプ』17号には、3月22日にこち亀記念館が開館したことを記念した読み切りを掲載[37]。 主な登場人物→詳細は「こちら葛飾区亀有公園前派出所の登場人物」を参照
名称「亀有公園前派出所」という題名に関して秋本は「長い題名をつけたら審査員が目を引くかなと思って。でも、いざやってみたらあんまり意味なかったですね」と語っている。また、映画『男はつらいよ』の山田洋次監督との対談の中で「『男はつらいよ』のおかげで葛飾区が全国的に広まっていましたから、亀有は知らなくても葛飾区はみんな知っているだろうと思ったんですね。それで長いタイトルになってしまった」とも述べている。もともとアメリカ映画のポリスアクションにあこがれていた秋本はこの要素を取り入れ、身近な派出所を舞台としてこの漫画を執筆したのだという。 略称の『こち亀』は『下町奮戦記』の巻末に作者が「これからはこち亀と略してください」とコメントしたことで、公式の略称となった。コミックスでは、第18巻の巻末コメントで林家しん平が『こち亀』と呼んでいるのが最初である。また書店でもスタッフにはこの略称で通用する。最初期には『派出所』と略されたことがある。 作品の舞台![]() 主な舞台は亀有公園前派出所がある東京都葛飾区亀有地区、両津の実家がある東京都台東区浅草を中心とした下町、東京23区東部。ただし、話の展開によっては、日本国内はもとより全世界、宇宙、天国、地獄、過去、未来などを縦横無尽に駆け巡る。
作風の変化連載初期こそ、警察官として型破りな両津と仲間たちの仕事風景を描く漫画だったが、次第に作者の趣味や主張、思想などが大きく前面に押し出され、大半の話が警察組織とほとんど無関係になっていった。連載が軌道に乗った中期以降は、世間の流行(主にサブカルチャー)を積極的に題材として取り入れ、緻密な取材とそれを活用する構成力、背景にまで細やかに気遣う丹念さ、機知に富む台詞回しや実験的なアイディアを特徴とした。 連載が40年の長期に渡ったため、登場キャラクターの性格や設定が何度も変更されている。初期は単に粗暴で短気だった両津だが、回を重ねる毎に秋本の画風の変化で丸みを帯び、性格も人情的になった。中川と麗子も同様で初期は過激な面があり、特に中川は「世間知らずのお坊ちゃま」であることが強調された両津同様の問題児だった。その後は2人共落ち着いたキャラクターになったが、時には中川が一発ギャグを披露したり態度が粗暴になったりとキャラが崩壊することもある。また、40年の間にキャラクターの入れ替わりがあり、初期では毎回のように登場したが、次第に登場しなくなり消えてしまった戸塚金次やふーたろーなどのキャラクターが多数存在する。 また、かつては男性キャラクターが女性差別的な発言をしたり、両津が事あるごとに麗子の髪を引っ張るといった描写も多く存在していたが、後年になると見受けられなくなり、逆に両津が麗子や婦警たちから反撃を喰らう描写も増えていった。 現代が舞台であるため、いずれの話も当時の社会現象や社会問題、生活様式などがリアルタイムで強く反映されている。分かりやすい例では、派出所内の電話機が黒電話→プッシュホン→コードレスホンと代替されていき、FAX[42]やパソコン[43]も導入され、やがて各人物が携帯電話(フィーチャーフォン→スマートフォン)を持つようになる。かつて作品内に登場していた事象を、十数年後の単行本では両津たちが「過去のもの」として懐かしんだり、存在を知らなかったりするという描写もある[44][45][46]。コミックス第130巻になると、今昔の作風の変化を作中で自らネタにすることが見られるようになった。特に連載末期は流行に敏感であり、時事ネタが非常に多くなってきていた。最先端の話題の描写は緻密であることも特徴で、これは作者による地道な取材が大きく反映されている(詳細は秋本治の項目を参照)。
画風についても年々変化していた。初期は背景からすべて秋本一人で描いており、細かい所まで入念な劇画調であった。連載が進むとアシスタントを採用するようになり、背景やメカニック描写、モブなどはアシスタントへ任せる割合が増えていく。コミックス第150巻以降はラフで幾分シンプルな絵柄になっていた。作者自身も過去の画風を意図的に再現したエピソードでは、過去の原稿をトレースしたり[48]、初期の単行本を真似て描いていたほどである[49]。また、初期に登場していたキャラを後年に再登場させる際に、「当時の絵はもう描けない」と開き直り、性格も含めて全くの別人にしてしまうこともあった[50]。 当初は連載年数と並行で登場人物が加齢していた[注釈 5]が、長期連載化に伴い頻繁に設定変更が行われるようになり、正式な年齢が言及されることはなくなった。コミックス第133巻収録の『おしえて両津先生 派出所七ふしぎの巻』によれば、「漫画の世界は時空をこえた時の流れがある」とのことで、結局のところ、年齢は(一部を除き)全員不明で加齢はしないということになっている。 初期は必ずと言っていいほど派出所の掲示板や室内の壁などに、作者の趣味絵(戦闘機やスナイパー、自動車など)のポスターや、文章を書いた貼り紙が貼られていた。貼り紙に書かれている内容は、作者の日録、アシスタントや交友関係のある作家の内輪ネタ、担当編集者への愚痴、果てには作者がファンだったアグネス・ラムやノブ・スクリーンに太田裕美、宮崎美子などのネタも並んでいた。
あくまで作者の「創作」として描かれていた劇中の事件や出来事が、後年になって酷似した事件・出来事として現実に発生したケースもある[51]。 2000年から2001年頃にかけて女性キャラの胸が異様に大きく描かれていた時期があり、これは読者に不評だった為に元のサイズに戻されたという。 扉絵扉絵には簡単なキャラクターの立ち絵のほか、作者の好む車やバイク、銃などのメカが描かれることがあった。 東京都内の名所などの風景を緻密に描いた扉絵シリーズが不定期に掲載されることもあった。単行本153巻「大人の事情の巻」で中川が明かした話によると、風景扉絵を描くのは本編の原稿制作で手の空いたアシスタントが主に担当し、通常は完成までに約1ヶ月かかるという。 2006年に両津の銅像を亀有駅に建立されることになったが、そのかわりに「毎月2回、葛飾区を表紙でPRする葛飾扉絵シリーズを制作すること」を葛飾区と約束していた。そうして扉絵はアシスタントの手によりどんどん完成していった。だが、この頃の話はネームが密になりすぎてページが足らなくなって扉絵をカットしてページを増やすことを繰り返しており、その結果いつまで経っても葛飾扉絵シリーズがジャンプ本誌に掲載されない事態に陥った。苦肉の策として前述の「大人の事情の巻」で、完成した葛飾扉絵シリーズの扉絵を本編の合間合間に挿入するという処置が取られたことが劇中で中川と麗子が語っている。この話では葛飾扉絵シリーズのみならず、通常の風景扉絵も挿入して、わざとストーリー進行を阻害するというギャグとなっており、そのため後述する「実験漫画」に含まれている。なお、この話の原稿制作時間は合計で300時間以上かかったことが終盤のページの柱に記載されている。 実験漫画時として奇抜な表現を採り入れた「実験漫画」を制作することがあった。具体例を挙げると以下の通り。
特にコミックス第63巻「想像力漫画の巻」では、両津が何故か透明人間になったという設定で姿が描かれず、扉絵の「顔パターン表」と枠外解説を合わせ、読者に場面ごとの表情を憶測させるという画期的演出がなされた[注釈 8]。 これらの実験漫画のうち、いくつかの話は連載終了後に コンビニコミック『集英社ジャンプリミックス こち亀づくし 挑戦』(2022年11月16日初版発行)にまとめられて発売された。 その他特筆事項実在の人物が登場することもあり、1980年代には『こち亀にオレを出せ!!コンテスト』という企画が二度行われ、入賞した読者が作中に登場したことがある[64]。1990年代にはフジテレビ系の番組『とんねるずのハンマープライス』で“こち亀登場権”を落札した人物が実際に登場したりした[65]。また、2000年にジャンプフェスタの中で催された『こち亀カルト王選手権』の優勝者がその特典で登場したり[66]、実在の有名人や作者の秋本本人が出てきたこともある。 『週刊少年ジャンプ』が2008年34号で創刊40周年を迎えた際は、両津・本田・中川・麗子がタイムマシンで過去へ戻り、ジャンプを創刊号から一冊ずつ買い集めながら雑誌の歴史を紹介していく「ジャンプ40年史の旅の巻(前後編)」が「特別編」として描かれた。更に「本編」と合わせ、当号には『こち亀』が3本も掲載されていた[注釈 9]。 両津の少年時代を描く話はいわゆる「古き良き時代」の感動話に収まることが多く、『読者が選ぶ傑作選』のランキングでも上位に入っている。一方で2000年代後半からは、「現在」や「未来」を悲観せず前向きに捉えようと促す話[67] も描かれている。 連載当初は当時の人気ギャグ漫画家の山上たつひこをもじった山止たつひこ(やまどめ たつひこ)のペンネームを使用していたが、山上から「まぎらわしい」という苦情が来たために、連載100回目を区切りに本名の「秋本治」名義に変更した[注釈 10]。変更後の一時期、「山止たつひこ改め秋本治」と掲載されていた。巻末の著者近影イラストは山止たつひこの時が向こうを向いており、秋本になった時に、こちらを向いた。 万が一に備えて、常に編集部に原稿のストックを5本用意しており[68]、最大で20本ストックしていた時期もあった[69]。しかし2016年は40周年の企画に関する仕事や、さらにコミックス第200巻の締切が予想以上に早かったことなどから、原稿のストックが全部なくなりギリギリ状態だったと最終話で明かされた。 連載終了後の『週刊少年ジャンプ』50周年記念に描かれた読切では、ストックしていた原稿を使用する際の裏技が中川の台詞を通して紹介されている。それは、話の内容にあまり係わらない冒頭部分だけ、時節ネタを盛り込んで新しく描き直すというもので、「差し替えればあたかも最近描かれた新作に見える」「どこでどのように繋げても読者には見分けがつかないバインダー漫画」と自虐的に語っている。 書誌情報単行本単行本(ジャンプ・コミックス)には、主に『週刊少年ジャンプ』に掲載された話が収録されている。ただし全て連載順に収録されているわけではなく、諸般の事情により収録順が差し替わるか次巻に持ち越され、あるいは表現の問題等から内容が差し替えられたり収録されなかった話もある[注釈 11]。また、『週刊少年ジャンプ』掲載時から一切変更されることなく収録された話でも、後年表現の問題からサブタイトルや台詞、ポスターに書かれた文字などが変更されたり、他の話と差し替えられたものもある。 コミックスは日本語版だけでなく、台湾中国語版や韓国語版も出ている[70]。台湾タイトルは『烏龍派出所』(ハチャメチャな派出所)[注釈 12]であり、韓国語でのタイトルは、『여기는 잘나가는 파출소』(ここはうまくいく派出所)。 コミックス第1巻から第190巻までの収録話数は8〜10本だが、コミックス第191巻から第199巻まではリニューアルとして収録話数が14〜17本にボリュームアップした。コミックス第200巻は、収録話数が21本となった。 ※リストが膨大であるため、伸縮型のメニューとして表示。 コミック一覧(全201巻)
秋本治 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』 集英社〈ジャンプ・コミックス〉、全201巻
小説
その他
メディア展開アニメ→詳細は「こちら葛飾区亀有公園前派出所 (アニメ)」を参照
1980年にバンビーノより発売されたLSIゲーム『レースンチェイス』のCMが初のアニメ化である(両津と大原部長が出演。声の出演は両津役が肝付兼太、大原役が富田耕生)。1985年には『週刊少年ジャンプ』のイベント用として短編作品2本が制作された。 1996年から両津役にラサール石井を起用したテレビアニメが制作され、フジテレビ系にて1996年6月16日から2004年12月19日まで放送された(全344話)。その間に、テレビアニメのスタッフにより劇場版が2本制作された。その後も2005年から2008年まで不定期で放送された。2016年には実に8年ぶりとなる新作テレビスペシャルが、連載40周年を記念して制作・放送された。 アニメ映画テレビアニメのスタッフにより劇場版が2本制作された。 1作目『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE』 →詳細は「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE」を参照
1999年12月23日に東宝洋画系で公開された日本のアニメ映画である。テレビアニメ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の劇場アニメーション映画版第1作目である。亀有に出現した謎の爆弾犯に、両津が女性FBI捜査官・星野リサとコンビで挑む。監督はテレビシリーズ3代目監督の高松信司、脚本は『あぶない刑事』『クライムハンター』など実写刑事アクションを多数手掛けている大川俊道が務めた。エンディング曲は吉田拓郎の「気持ちだよ」。 2作目『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE2 UFO襲来! トルネード大作戦!!』 2003年12月20日に公開された『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の劇場アニメーション映画版第2作目である。両津が小学生時代の親友の娘・ミーナと共に、ハワイと日本を巻き込んで、UFOや竜巻・親友の死の謎に迫る。前作に引き続き監督を高松信司、脚本を大川俊道が務めた。エンディング曲はSEX MACHINEGUNS「語れ! 涙!」。 テレビドラマ→詳細は「こちら葛飾区亀有公園前派出所 (テレビドラマ)」を参照
TBS系列で、ドラマ化され、2009年8月1日から9月26日まで毎週土曜日19:56 - 20:54(JST)に放送された。両津役には香取慎吾が採用された。 実写映画→2009年のテレビドラマ版をベースにした劇場版については「こちら葛飾区亀有公園前派出所 (テレビドラマ) § 劇場版」を参照
1977年12月24日に実写版映画が東映系で公開。監督は山口和彦、脚本は鴨井達比古。併映作品は『トラック野郎・男一匹桃次郎』。上映時間は80分。当初この枠は、清水健太郎主演で『紅の翼』の製作を決定していた(ボクサー (1977年の映画)#影響を参照)が、諸事情で製作中止になったため本作が急ぎ製作された。また同じ年に、本作より先に東京映画企画・東宝配給で映画化が予定され[275]、小谷承靖監督、高橋二三脚本、両津役は山城新伍で、1977年3月にシナハンも終え、1977年4月クランクイン予定であったが『俺の空』の不振の影響で製作されず[275]。「私の出来なかったことを実現した山口和彦監督の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が困難な条件の中でがんばった監督の証として印象に残る」と小谷が話していることから[275]、映画化権の変更も東宝→東映の間で円満に行われたものと見られる[注釈 13]。 連載最初期の映像化であり、公開当時はまだ原作に麗子や本田が登場する前であったため、2人は登場しない。また、当時の原作では両津は苗字だけのキャラクターだったため[注釈 14]「平吉」というオリジナルの名前が与えられたほか戸塚、寺井の名前が原作とは違う。また大原が登場せず代わりに寺井が巡査部長役となっている。『Gメン'75』のメンバーが特別出演した。配給収入は12億260万円を記録した。ビデオソフトは、一般家庭にビデオが普及する前の1981年頃に東映芸能ビデオから4万9000円でVHSが発売されたことがある[276] のみで、その後DVDソフト化及び配信されていない。当時の岡田茂東映社長はシリーズ化を予定していたとされるが[277][278]、この映画の出来栄えについては原作者の秋本が不満を持ったとも伝えられている[277][278][279]。
イメージソング
ラジオドラマ1983年3月26日にNHKラジオ第1放送の『ヤングマガジン』第1部コミック・ナウの枠でラジオドラマが放送された。NHKの青少年課によると配役は次のとおり[280]。
舞台テレビアニメで両津の声を担当したラサール石井が主演で、脚本・演出も担当している。原作者の秋本によると、こち亀の舞台化は過去に何度か持ち上がってたものの、両津役のキャスティングが難航し頓挫し続けていたが、アニメで両津の声を担当したラサールが適任だと考え、舞台化に漕ぎ着けたという[281]。テレビアニメの主題歌として使われた「おいでよ亀有」「亀有は昨日も晴れだった」は元々この舞台版の主題歌であった。この「おいでよ亀有」「亀有は昨日も晴れだった」など、舞台の中で出演者達が歌った曲には「両津勘吉とこち亀うぃ〜ん合唱団」、「斉藤レイとこち亀うぃ〜ん合唱団」といった名義が使われているが、正式名称はこち亀うぃ〜ん少年合唱団である[282]。 1999年版は1999年7月14日 - 8月15日の期間、銀座、亀有、神戸、大阪、滋賀の5つの劇場で公演された。また、2001年7月27日 - 9月2日の期間に、亀有、大阪、名古屋、静岡、浜松、銀座の6つの劇場で再公演された。 2003年版は2003年8月6日 - 8月30日の期間、銀座、土浦、富山、大阪、名古屋の5つの劇場で公演された。公演時のタイトルは『こちら葛飾区亀有公園前派出所 〜海パン刑事の逆襲・檸檬も出るのじゃ!〜』。 2006年版は2006年8月3日 - 8月13日の期間、新宿全労済ホールスペース・ゼロにて上演。公演時のタイトルは『こちら葛飾区亀有公園前派出所 〜30周年だよ!おいしいとこ取りスペシャル!!』。この2006年版はフジテレビ721でテレビ放送もされた。 2016年版は、東京で、2016年9月9日から9月19日まで、大阪で、9月23日から9月25日までの期間で上映、主演のラサール石井は脚本も担当[283]。 キャスト
その他のキャスト
ゲーム→詳細は「こちら葛飾区亀有公園前派出所 (ゲーム)」を参照
1997年7月24日にPlayStation用ゲームソフト『こちら葛飾区亀有公園前派出所 ハイテクビル侵攻阻止作戦!の巻』、同年8月29日にセガサターン用ゲームソフト『こちら葛飾区亀有公園前派出所 中川ランド大レース!の巻』がバンダイ(後のバンダイナムコエンターテインメント)より発売された。どちらもキャラクターデザインおよびキャストはテレビアニメに準じたものとなっている。2010年6月17日にはニンテンドーDS用ゲームソフト『こちら葛飾区亀有公園前派出所 勝てば天国!負ければ地獄! 両津流 一攫千金大作戦!』がバンダイナムコゲームスより発売された。こちらもキャラクターデザインはテレビアニメに準じたものとなっている。 また、バンダイより発売されたファミリーコンピュータ用ソフト『ファミコンジャンプ 英雄列伝』(1989年)と『ファミコンジャンプII 最強の7人』(1991年)、任天堂より発売されたニンテンドーDS用ソフト『ジャンプスーパースターズ』(2005年)、『ジャンプアルティメットスターズ』(2006年)、バンダイナムコゲームスより発売されたPlayStation 3/PS Vita用ソフト『ジェイスターズ ビクトリーバーサス』(2014年)[285] にもそれぞれ登場した。 玩具1996年に増刊「こち亀MAX」にて100名限定で読者プレゼントされたメディコム・トイ製の「G.I.RYO」同年にはバンダイから「巡査長両さん」が発売される。さらに超合金化やS.H.Figuarts化、太陽工業からは自転車搭乗のラジコン化も発売された。 その際に玩具会社の上層部から「なんで公務員の超合金を作らないといけないんだ」と意見が上がった[286]。 その他
こち亀銅像→詳細は「こち亀銅像」を参照
![]() 一般社会にも影響を与え、浅草神社には「生まれも育ちも浅草の両さん」にちなんで、単行本総発行部数1億3000万冊突破記念の石碑が建立されている。 また、JR亀有駅北口には地元の商店街により制服姿の両津の銅像が建てられ、2006年2月11日、作者の秋本、ラサール石井が出席して除幕式が行われた(→ウィキニュース)。さらに南口にも法被姿の両津の銅像が建てられ、2006年11月18日に除幕式が行われた。 2006年3月3日にはアリオ亀有内にこち亀ゲームぱ〜くがオープンした。2008年11月8日には、両津勘吉の少年時代をかたどった「少年両さん像」の除幕式が行われ、当時の麻生太郎内閣総理大臣も出席している[287]。 2010年3月13日には、「敬礼両さん像」、「サンバ両さん像」、「ダブルピース両さん像」、「少年よ、あの星を目指せ!両さん像」、「ワハハ両さん像」、「中川像」、「麗子像」、「本田像」の計8体の除幕式が行われた。その後、2011年8月6日には映画公開と連載35周年を記念して、ベンチに座ったスタイルの新しい両津像が公開された。 歴代担当編集者
脚注注釈
出典
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