立喰師列伝
『立喰師列伝』(たちぐいしれつでん)は、押井守による日本の小説作品、映画作品。 小説角川書店のライトノベル雑誌「ザ・スニーカー」にて、2000年12月号、および2001年8月号から2003年6月号にかけて連載された。単行本は角川書店より2004年2月に出版されている。 小説だが、起承転結のある物語ではなく「戦後から現代に至り日本に存在したとされる『立喰師』に関する資料、伝承などをまとめ、その実態に迫らんとする研究書を押井が民俗学を装って監修し直し、押井の視点で日本の戦後を見つめ直す」という設定で書かれている。押井曰くテーマは「本当はくだらなくてつまんないことを大げさにやって、最後は高らかに謳い上げて、無理やりにでも泣かす。『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』のインチキ版」[1]「日本が豊かになる過程で、失われていった風景と人々はどこへ行ったのか?それらを失った代償として、僕たちもまた何かを失ってきたのではないか?そうした風景が持っていた情緒、それを失った時の喪失感・哀切を正面から取り上げる」[2]と称している。 表紙および挿絵として挿入される写真に、押井の知人であるアニメ制作業界の人間が登場している(後述の映画版出演者を参照)。 書籍情報: ISBN 4048735160 登場人物
映画押井守自らの手によりアニメ映画化され2006年に公開された。
スタジオジブリ短編映画『ジュディ・ジェディ』とコラボ上映。5月27日初日舞台挨拶では中田ヤスタカ、百瀬ヨシユキ、押井守それぞれの直筆サイン入りグッズを抽選でプレゼント。 登場人物に扮する役者をブルーバックの前に立たせてデジタルカメラで撮影し、それを3DCGの人形に貼り付けて動かすという、かつての『ミニパト』を彷彿とさせるペープサート状アニメーションで制作するという手法が採られ、「スーパーライヴメーション」と命名されている。その技術を駆使し、アニメーションと実写の新たな融合に挑んだ。その手法を実現するために、3万枚以上のスチル写真が撮影された。撮影期間は3日間しかなく、その中でエキストラを含めて120人を撮影した。その場で使えるかどうかチェックして選んでいたため、押井とカメラマンはいつもより集中して、1日に40人、1万枚を撮影した[1]。その中から、役者が映っている部分だけを切り抜いて、1点ずつ背景とデジタル合成していった[2]。 メインの登場人物は、小説『立喰師列伝』でキャラクターのモデルとなっていたのと同じ人物が演じる形となっており、さらに役者の全てが押井の知り合いの友人・作家・編集者・アニメ業界関係者である。出演者全員がノーギャラであり、交通費と弁当だけ用意した[2]。これは、制作予算を抑えるのと同時に、押井曰く「今まで自分が仕事を通じて関わってきた人々を、この映画で記録として残したい。それに、知っている人間じゃないと、CGでいじくるときにつまらない」という話である。 映像演出のテーマは「絵を紙人形の様に動かすのと、写真を使うのとでは、印象が全く変わる。写真の方が生っぽい」[2]「これまでアニメーションを作る時は画面の情報量を上げることばかり考えてきた。ただ、実写は情報量が多すぎるから、今回は如何に情報量を減らして、肌の色・まばたき等の生理的な動きを制作現場でコントロールして、演出上のイメージをまとめるのか」を考えていった。そしてスチル写真で演出するのが一番合理的であることに考え付き、合成する時に余計な背景・動き始める時から動きが終わる時の中間の動きをコマ単位で編集して、アニメーションとしてつないでいき、「実写並みの情報量を持ちながら、映像の中でしかありえない存在感を持つキャラクター」を目指していった[1]。 仕上げ作業でも「退色した写真」「印刷の荒れた写真」「新聞の写真」等報道系のモノクロの写真を意識しながら色を落とした。その時の目標として、スティーヴン・スピルバーグの「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」を参考作品とした[1]。 石川光久が「もし『イノセンス』がカンヌ国際映画祭で賞を取れなかったら、押井さんに好きな映画を1本撮らせる」と言ったのがこの映画をつくる契機になったという話もある。 制作費は「イノセンス」の20分の1の、約1億円。押井は「こういう経済的に苦しい映画は、寧ろ結構好きなんです。知恵と勇気で乗り切るシステム作りが面白い」と語っている[2]。 スタッフ
出演
女立喰師列伝『女立喰師列伝 ケツネコロッケのお銀 -パレスチナ死闘篇-』は、本作品のスピンオフ作品。元々は徳間書店の月刊COMICリュウ創刊号DVD付録に収録されたものであったが、2006年12月に単品販売もされている。こちらは通常の実写作品である。 ストーリー伝説の立喰師「ケツネコロッケのお銀」の目撃情報を確かめるべく、フリーのルポライター大塚ギチ男は単身パレスチナへ向かう。そこでギチ男が見たものは…。 スタッフ(スピンオフ)
出演(スピンオフ)
真・女立喰師列伝→詳細は「真・女立喰師列伝」を参照
2007年11月に日本で公開されたオムニバス映画。 6本のオムニバスから成り、それぞれの監督、および主演は以下の通り。
脚注 |
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